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放射能汚染水情報アップデート(4) 地下水バイパスの現状

 
前回の「放射能汚染水情報アップデート(3) サブドレン浄化試験の行方は?」において、ALPS以外に東電が取っている施策として(1)サブドレン浄化、(2)地下水バイパス(3)遮水壁などがあると書きました。前回はサブドレン浄化について書きましたので、今回は(2)の地下水バイパスについてです。

地下水バイパスについては、昨年一度「福島第一原発直下を流れる地下水の水位と流速はどうなっているのか?」において遮水壁と共に書きました。(3)の遮水壁についてはあまり大きな進捗はないのですが、(2)の地下水バイパスについてはその後具体的な進捗がありましたので主にそれについてまとめたいと思います。


1.なぜ地下水バイパスが必要なのか?

私のブログで関連する情報を読んだことがない方には、地下水バイパスと言ってもなんのことかわからないでしょう。この話は、福島第一原発における放射能汚染水全体のことを理解していないと全体像をつかみにくいのですが、簡単にまとめると以下のようになります。

2011年3月の原発事故以降、原発の炉心を冷却するために注水し続けた水が全て放射能汚染水になりました。津波でかぶった水などを加えると2011年6月に汚染水循環処理システムが稼働した際に原子炉建屋やタービン建屋にたまっていた水は全部で約12万トンでした。その後、汚染水循環処理システムを稼働させたにもかかわらず汚染水の総量は増え続けました。その理由は毎日建屋に侵入してくる地下水で、その量が毎日約400トンです。この地下水は建屋地下の既存の放射能汚染水と混ざって、全て放射能汚染水になっています。

その後、放射能汚染水は増え続けていて、昨年末時点で約33万トンにもなっています(セシウムをほとんど除去した濃縮塩水を含む)。これ以上放射能汚染水を増やさないようにするための手法として、いくつもの対策が取られてきています。この間ご紹介したALPS(多核種除去設備)により、ほとんどの核種の放射能を検出限界値未満にすることが一つの方法です。また、建屋に流入してくる地下水そのものを減らそうという方法も試みられています。

その一番有望な方法が前回「放射能汚染水情報アップデート(3) サブドレン浄化試験の行方は?」でご紹介したサブドレンの浄化とその後の運用再開です。しかしながら、この方法は今のところうまくいっていないようです。

ところでなぜ地下水が建屋の地下に入ってくるのでしょうか?まず、基本的な事実を理解しておく必要があります。福島第一原発の建屋の周りには地下水が流れています。事故前はサブドレンでこの地下水を汲み上げて水位の調整を行ってきましたが、事故後はサブドレンが使えないために水位の調整を行うことができなくなってしまいました。

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上の図のように、地下水の水位と建屋にたまっている汚染水の水位差によって、地下水が建屋の中に流入するのか、逆に汚染水が地下水に流出するのかが決まります。両者の水位差が大きいと、その流入(流出)量も大きいということがわかっているのです。建屋の壁はコンクリートだと思いますが、全く水を通さないわけではなく、スピードは遅いものの水は通ります。もし壁面にひびなどがあればさらに水の流通は容易になります。

2011年4月、5月に起こった汚染水の海への流出事故の際は、汚染水の水位が高かったということが問題でした。この事故を通じて、建屋およびトレンチはすべて地下でつながっており、いかにその水位(O.P.)をコントロールするかが重要であるとわかりました。その後、東京電力は水位のコントロールに注力してきました。具体的には海につながりうるトレンチの高さから計算して、余裕を持って建屋内の汚染水の水位をO.P.+3000(=O.P.+3m)前後に保つようにしています。

東京電力は、本当は汚染水の水位を早く下げてしまいたかったのですが、あまり水位を下げると、今度は建屋の周りから地下水が大量に流入してきてしまうことがわかりました。建屋地下にたまっている汚染水の水位が建屋外部の地下水よりも高いと汚染水が外部に流出しますし、下げすぎると地下水が大量に流入してきてしまいます。となると、建屋の汚染水の水位を下げるためには、周りの地下水の水位を下げることが必須だという事になります。

そこで、サブドレン浄化と並行して考案されたのが地下水バイパスです。これは下の図に示すように、原発建屋の周りを陸(西)から海(東)へと流れていく地下水を建屋の上流(西)で汲み上げて流れを変え、建屋周りの地下水の水位を下げようという作戦です。
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(2012年4/23 政府・東電中長期対策会議第5回運営会議資料より)

これによって地下水の水位がさがってくれれば、毎日建屋に流入する地下水の量も下げられるという算段なのです。

2.地下水バイパスの現状

地下水バイパスが成立することを確認するために東京電力は以下の3つの条件を順次確認していっています。
(1) 揚水した地下水が汚染されていないこと、(2) 地下水バイパスにより建屋周辺の地下水位が低下すること、(3) 地下水バイパスに建屋内滞留水が吸い込まれないこと。

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(2012年4/23 政府・東電中長期対策会議第5回運営会議資料より)

このうち、(1)についてはバイパス運用開始前のデータがすでに取られています。この下の図は昨年9月に報告されたものですが、2012年3月~6月の時点では地下水に汚染がほとんどないことは確認されています。地下水は山側から海側に流れていますので、これは当然の結果であると思います。トリチウムが検出されていますが、これは基準値(告示濃度:60,000Bq/L)から考えるとそれほど大きな問題ではないと思います。

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(2012年9/24 政府・東電中長期対策会議第10回運営会議資料より)


(2)については、下図に示すように、既存の水位を測定している14のサブドレンに加えて、二つのサブドレンを新設し、二つの観測孔を新設して水位の低下をモニタリングして確認していく計画になっています。なお、図で赤いは地下水を汲み上げるための12の揚水井です。

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(2012年9/24 政府・東電中長期対策会議第10回運営会議資料より)
 
現在、二つの揚水井が完成し、地下水をポンプで汲み上げ、揚水量と水位の変化の測定、および水質の検査を行っているところのようです。1月もしくは2月の運営会議でその結果の報告がなされると思います。

3.地下水バイパスで汲み上げた地下水の行方は?

ところで、汲み上げた水はどうするのでしょうか?これは多くの人が関心を持つところでしょう。実はこの地下水は、一度タンクに貯留して水質チェックを行い、設定した目安以下の放射能であれば海に放水する計画になっています。

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(2012年12/3 政府・東電中長期対策会議第12回運営会議資料より)

上の図に配管ルートとして点線で記載されているように、揚水井から、一時貯留タンクにまで汲み上げた水を運びます。そしてそこで水質検査を行った後に、下に記載してあるように放水の許容目安値として定めた値(Cs-137で1Bq/L)以下であることを確認し、海に放水する予定です。上図を見る限り、すでにある排水用のラインを通じて海へ放水するようです。

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(2012年9/24 政府・東電中長期対策会議第10回運営会議資料より)

東京電力は、2011年4月に高濃度の放射能汚染水が海に流出した際、更なる汚染水による海洋汚染を防ぐために「低レベル」の放射能汚染水(この時は告示濃度は超えていました)を意図的に放出しました。背に腹は代えられない事情があったとはいえ、この時の事前通告の遅れから漁協や近隣自治体との関係が悪くなりました。その経験を踏まえて、今回はそのあたりの関係者への説明をしっかりと行ってから放水する予定になっています。なお、今回は法的には問題のないレベルの水を放水する予定です。

私は、この地下水バイパスについては、建屋の山側(西側)に設置してあるため、よほどのことがない限り汲み上げた地下水が汚染されているということはないと考えています。もしこれが汚染されているのであれば、建屋の地下はかなり汚染されているということの証明であると思います。

今後の地下水バイパスの進捗状況に注目していきたいと思います。
 
 
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コメント

Re: No title

> 原発を取り囲むような形で地下に万里の長城を築き、地下水の流れそのものを変えることは不可能なのでしょうか。きれいな地下水をわざわざ汚染し続け、それをため込むなどそもそもが不可能だと思うのですが。

技術的なことはよくわかりませんが、おそらく地下の「万里の長城」が可能だとすると、今度は建屋から地下に汚染水が流出するでしょうね。これは東電も陸側の遮水壁を検討してやめた理由の一つとしてあげています。その対策をどうするか?

もともと、この計画を作った時は、1年くらいで汚染水を全部処理するつもりで汚染水循環処理システムを作っていたのです。でも、サブドレンが機能していない現在では地下水が大量に入り込んでくることを計算に入れていなかったため、地下水が400トン/日入ってくることがわかってからは方針が変更になり、現在に至っているのが現状です。

おそらく東電も2年以上先の見通しを持てていないのだと思います。だからこそ、日本だけでなく世界から広く意見を聞いて対応すべき時に来ているのでしょうね。

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No title

原発を取り囲むような形で地下に万里の長城を築き、地下水の流れそのものを変えることは不可能なのでしょうか。きれいな地下水をわざわざ汚染し続け、それをため込むなどそもそもが不可能だと思うのですが。

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3.11では、停電・断水のため、一晩避難所で過ごし、震災後の情報収集をきっかけにブログを始めました。
これまで約4年間、原発事故関係のニュースを中心に独自の視点で発信してきました。その中でわかったことは情報の受け手も出し手も意識改革が必要だということです。従って、このブログの大きなテーマは情報の扱い方です。原発事故は一つのツールに過ぎません。

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