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放射能汚染水情報アップデート(5) 254,000Bq/kgのムラソイがいる港湾内の現状

 
1/18の東京電力の記者会見で明らかになった事ですが、港湾内のムラソイから254,000Bq/kgのセシウムが検出されたそうです。

この機会に、港湾内での昨年からのいろいろな動きについてまとめたいと思います。

1.港湾内の魚介類のデータと対策

これまで、港湾内の魚介類のデータは昨年11/2今回(1/18)の2回発表されています。11/2に4検体で最高15500Bq/kg、今回は13検体で合計17検体です。1/18のムラソイは最高なんと254,000Bq/kgでした。17検体のうち、最低でも770Bq/kgと全て基準値(100Bq/kg)超えで、17検体の単純平均(魚種は問わず)で約38000Bq/kgです。

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詳細はコンタンさんがこれまで東電が発表した魚介類のデータを表にまとめてくれています(Excelファイルがダウンロードされます)ので興味のある方はご覧下さい。(コンタンさん(リンクはブログへ)、まとめありがとうございます。)

東京電力がなぜ港湾内の魚介類の調査を始めたのかというと、8/21に発表された太田川沖合1kmのアイナメが25,800Bq/kgもの高い値を示しました。それまで知られていた基準値(100Bq/kg)超えの魚と比べても桁違いの汚染でした。何故こんなに高いのか?ということを調べていくうちに、ひょっとしたら港湾内から移動したのではないか?という一つの可能性が考えられたため、10/10に港湾内を調査し、その結果を11/2に発表したという経緯になります。

この時の調査のまとめが昨年の11/26に魚介類の結果と共に報告されています。太田川河口付近を中心に調べた結果、海水、海底土、エサ生物、河川水のデータからはアイナメの25800Bq/kgを説明できるものではないことがわかりました。

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(東電HP 2012年11/26報道配付資料より)

一方、10/10に港湾内で採取したマアナゴ(11/2に発表)から15500Bq/kgの放射性セシウムが検出されたことから、港湾内にはまだ高濃度に汚染された魚がいて、それが港湾外に移動して高い放射性セシウムを示したということも一つの可能性として考えられました。

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(東電HP 2012年11/26報道配付資料より)

1/18に発表された今回の調査は、この流れに沿って行われたものであり、その結果、港湾内の17検体は全て基準値を大きく超えていることから、港湾で高度に汚染された魚が港湾外に移動している可能性が捨てきれないことを示しています。

なお、この高濃度に汚染された魚については、今月初めにニュースになったように、水産庁から委託を受けた独立行政法人水産総合研究センター(横浜市)などが耳石を調べて、いつ頃汚染されたのかを調べることになっていると1/18の記者会見で言っていました。

港湾内から港湾外に魚介類が移動する可能性を減らすため、港湾口に網を張って魚が移動しにくくすることを検討しているということが1/18の記者会見で示されました。構想自体は前から発表されていたのですが、資料をつけて発表されたのは今回が初めてです。

記者会見の動画を見ていたのですが、港湾口以外に南側と北側の防波堤にも網を張る計画(①とかかれたオレンジ色の部分)になっているのは、魚は防波堤のテトラポッドのあたりに多くいるため、ここから出られないようにするためだという説明でした。

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(1/18 東電記者会見資料より)

対策としては3つに分かれており、(1)魚類移動防止、(2)魚類捕獲(駆除)、(3)港湾内海底土の環境改善(浚渫)になります。浚渫は下の計画表では今年の秋になる予定です。

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(1/18 東電記者会見資料より)

このような対策によって、異常に高い放射能を示す魚が見つからなくなればいいのですが、本当にそうなるかどうかはやってみないとわかりません。


2.取水路開渠内の海水汚染状況と対応策

このブログでは何回もご紹介している政府・東京電力中長期対策会議運営会議において、港湾内での活動についてのいくつもの報告がされていますので、その報告を利用しながらここでこれまでの動きをまとめます。リンク集としてもご利用下さい。

2012年
2月27日 政府・東京電力中長期対策会議運営会議(第3回会合)
福島第一原子力発電所 港湾内海底土被覆工事の開始について(PDF形式:255KB)

2月に報告された港湾内の海底土被覆工事は、2011年の4月と5月に大量の放射能汚染水が海に流出したスクリーンの前面にあたる取水路開渠部分を対象に行われました。工事は5月頃に終わり、その結果がどう反映されたかを5月から8月に報告しています。

4月23日 政府・東京電力中長期対策会議運営会議(第5回会合)
ゼオライト土嚢の投入と効果の確認について(PDF形式:137KB)
海水循環型浄化装置の運転実績について(PDF形式:249KB)

ゼオライト土壌投入の効果はほとんどなかったこと、一方海水循環型浄化装置に関しては一定の効果があったため今後も継続して検討していくことが報告されています。

5月28日 政府・東京電力中長期対策会議運営会議(第6回会合)
海底土の被覆による港湾の水質への影響について(PDF形式:262KB)
2月に報告された港湾内の海底土被覆工事は5月頃に終わり、その結果がどう反映されたかを5月から8月に報告しています。

6月25日 政府・東京電力中長期対策会議運営会議(第7回会合)
海底土の被覆による港湾の水質への影響について(6月時点)(PDF形式:259KB)
2月に報告された港湾内の海底土被覆工事は5月頃に終わり、その結果がどう反映されたかを5月から8月に報告しています。

7月30日 政府・東京電力中長期対策会議運営会議(第8回会合)

海底土の被覆による港湾の水質への影響について(PDF形式:473KB)
海水循環型浄化装置の今後の運用方針(PDF形式:116KB)
港湾関連工事等の今後のスケジュールについて(PDF形式:177KB)

ここでは、遮水壁の工事の予定が紹介されています。
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7/30 政府・東京電力中長期対策会議運営会議(第8回会合)資料より
※ここでは省略しますが、スケジュールのガントチャートもありますので興味のある方はご覧下さい。

取水路のスクリーン前に遮水壁を設ける事になっていますが、完成するのは2014年の予定です。現在物揚場付近にあるメガフロートも移設を行わなければなりません。

メガフロートの移設については、原子力規制委員会のHPに東電とのやり取りが載っていますので参考にして下さい。

8月27日 政府・東京電力中長期対策会議運営会議(第9回会合)
海底土の被覆による港湾の水質への影響について(PDF形式:482KB)

9月24日 政府・東京電力中長期対策会議運営会議(第10回会合)
港湾内の海水中放射能濃度について(PDF形式:204KB)

ここで初めて、「港湾内の海水中放射能濃度について」という資料が出てきます。これまではそれぞれの地点のデータをグラフにしていただけなのですが、はじめてまとめた考察が行われています。

その理由は、「福島第一原子力発電所1~4号機の廃止措置等に向けた中長期ロードマップにおいて、海洋汚染拡大防止計画として、2012 年度半ばまでに港湾内の海水中の放射性物質濃度が告示に定める周辺監視区域外の濃度限度(告示濃度)を下回ることを目指すとしている。」(9/24の資料より)ということがあるからのようです。

これまでもこのブログでは何回かご紹介していますが、東京電力はスクリーンに設けたシルトフェンスの内側と外側、近くの港湾内の海水の放射能濃度を毎日測定して公開しています。その3ヶ月間の平均値を算出し、告示濃度を超えているかどうかを調べました。測定地点は下図に示す場所です。

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9/24政府・東京電力中長期対策会議運営会議(第10回会合)資料より

その結果、被覆工事の前後でどう変わったかを下の表に示してあります。これを見る限り、被覆工事後にはどの地点でも大きく濃度が低下しており、被覆工事の効果があったことがうかがわれます。

「濃度に対する割合の和」というのは、Cs-134、Cs-137の告示濃度がそれぞれ60Bq/L、90Bq/Lなので、例えば4号機のシルトフェンス外側であれば被覆工事後でCs-134が30.4Bq/L(告示濃度60Bq/Lの0.5倍)、Cs-137が45.6Bq/L(告示濃度90Bq/Lの0.5倍)なので合計1.0倍という事になります。1を下回らないため、告示濃度を超えているという判断になるわけです。

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9/24政府・東京電力中長期対策会議運営会議(第10回会合)資料より

12月3日 政府・東京電力中長期対策会議運営会議(第12回会合)
港湾内海水濃度低減対策(11月)(PDF形式:104KB)
港湾内海水濃度低減(調査工程)(PDF形式:54KB)
3号機スクリーン室前面シルトフェンス交換作業(PDF形式:467KB)

「港湾内海水濃度低減対策(11月)」の資料に記載があるのですが、「港湾内の海水濃度が下がらない要因の推定、低減対策の要否の検討のための追加調査を実施し、要因及び追加対策の要否について、社外研究機関等の協力を得て12 月末までに検討する」と書いてあります。つまり、9月の報告で明らかになったように、取水路開渠部に被覆工事を行ってもまだ告示濃度を超えるので、その原因の調査を行うということです。

具体的には、(1)一番濃度の高い3号機のシルトフェンス交換、(2)スクリーンポンプ室内海水濃度の調査、(3)1~4号機取水路開渠内海水濃度の調査、(4)地下水濃度の調査、の4つを行うことにしたそうです。

そして(1)の3号機シルトフェンスの交換はすでに実施しました。

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12/3 政府・東京電力中長期対策会議運営会議(第12回会合)資料より

しかしながら、この後の12/25の資料で報告されているように、シルトフェンスへ付着した放射性物質量はそれほど多くなく、交換した効果はないと判断されました。そのため、他のシルトフェンスの交換は行わないこととなりました。

12月25日 政府・東京電力中長期対策会議運営会議(第13回会合)
港湾内海水中の放射性物質濃度低減 調査結果及び今後の対応について(PDF形式:235KB)

12/3の会議で計画された4つの調査についての報告と今後の方針案が示されています。

(1)シルトフェンス交換
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先ほど述べたように効果がなく、これ以上は行わないことになりました。これは問題ないでしょう。

(2)スクリーンポンプ室内海水濃度の調査です。
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この上の記載はよく読むと、11/30と12/6に各ポンプ室で4点ずつ採取し、2号機の2点についてはこれまでのシルトフェンス内側の範囲(30~250Bq/L)を超えていたということを意味しています。どれくらい超えていたのかは記載がないのでわかりませんが、データを示すことができないということは、何か公表したくないデータがあった可能性もあります。
12/11に再度2号機ポンプ室内の他の5点で採取した結果は、2号機のこれまでのシルトフェンス内側の範囲(60~170Bq/L)を超えていなかったと書いてあります。「他の5点」ということは、当初問題となった2点で再度採取をしていないということを意味します。

となると、2011年3月下旬に高濃度の放射能汚染水が漏れ出した2号機スクリーン付近では、まだ何か異常があるという可能性を否定できません。評価・対応で書いてあることは、東京電力がこの測定データを全て開示しない限り真に受けない方がいいと思います。

(3)1~4号機取水路開渠内海水濃度の調査
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この記載で注目しておくことは、Sr-90のデータでしょう。何の比較もなくSr-90は、取水路開渠内は300Bq/L程度とさらっと書いてありますが、実は「1~4号機取水口内北側」というデータをコンタンさんの集計した資料からSr-90のデータを見ると、2011年6月以外でSr-90が300Bq/Lに達したことはないのです。この後昨年9/4に発表されたデータ(昨年5/14採取)ではSr-90が280Bq/Lなのでそれに近いと言えば近いですが、逆に言うと、昨年5月に増えたままずっと減っていないのは何故?という疑問をかき立てる以外の何ものでもありません。300Bq/Lという数値は「高い」のです。評価・対応に記載してあるようなコメントがどうして出てくるのか不思議です。

是非ともSrのデータについては詳細な結果の公表を求めたいと思います。


(4)地下水濃度の調査
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地下水については、遮水壁の事をまとめた「福島第一原発直下を流れる地下水の水位と流速はどうなっているのか?」を読んでいただきたいのですが、「地下15m」というのをどう解釈するのかが問題です。実は福島第一原発の地下には二つの透水層(水を通しやすい地層)があります。この下の図がどこまで正確か、にもよるのですが、地下15mというのはおそらく下の方の透水層(難透水層に挟まれた層)であると考えられます。

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2011年8/31 東電HPのプレスリリースより)

下の図に示した青いの3地点で採水し、下の方の透水層でCs-137が検出限界値未満であったということが記載してありますが、それだけのデータで、地下水は汚染されていないと言いきっていいのか疑問です。もちろん、下の方の透水層が汚染されていないことは重要ですが、2011年に汚染水が漏れ出したことがまず間違いない、上の方の透水層を測定したらがどうなるのかも知りたいところです。現在はまだ上の図にある遮水壁はない(1年以上先)のですから、上の方の透水層から海に放射性物質が流出している可能性があるのかないのか、調べる必要があると思います。

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というわけで、この追加調査に関しては、私にとっては疑問点だらけです。もちろん、港湾内の汚染がそのまま港湾外に広がっているとは思えないという点は東電の説明に同意できるのですが、データを都合のいいように解釈しているような気がします。先月の報告はあくまで経過報告でしょうから、今月か来月の会議で詳細な結果の公表を求めたいと思います。こんな曖昧な発表だけで終わりにされてしまっては納得できません。

今後もどのような結果が開示されるのか、注目していきたいと思います。

 
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以前、「防波堤の下部は抜けている」と、東電が記者会見で説明していたと思うのですが…。(いつだったかな?)

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3.11では、停電・断水のため、一晩避難所で過ごし、震災後の情報収集をきっかけにブログを始めました。
これまで約4年間、原発事故関係のニュースを中心に独自の視点で発信してきました。その中でわかったことは情報の受け手も出し手も意識改革が必要だということです。従って、このブログの大きなテーマは情報の扱い方です。原発事故は一つのツールに過ぎません。

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