福島県と農水省が1/24にまとめた米の放射能についてのまとめ(2)
1/24、福島県農業振興課・農林地再生対策室のHPに「放射性セシウム濃度の高い米が発生する要因とその対策について」という資料の解説の続きです。前回の「福島県と農水省が1/24にまとめた米の放射能についてのまとめ(1)」と合わせてお読み下さい。
3.玄米中の放射性セシウム濃度に影響する要因
今回は前回の続きで、(2) 水田に流入する水の影響 からです。
(2) 水田に流入する水の影響
水田が畑と一番違うのは、常に水を張っているというところです。そのため、用水などの水から稲が汚染される可能性があるのではないか、という説は2011年の調査時点からありました。
水に含まれる放射性セシウム(Cs)には、水中にイオンの形で溶けている溶存態Csと、浮遊している土壌粒子や有機物などの懸濁物に吸着・固定されている懸濁態Csの二つの形があります。

下の実験では、水田の田面水を有機物、土壌粒子、溶存態の3つに分画し、それぞれがどれくらい稲に吸収されるのかを調べたところ、溶存態Csは稲に吸収される率が一番高く79%もあることがわかりました。一方で有機物画分は16%、土壌粒子画分は4%しか稲に吸収されませんでした。このことから、溶存態Csの量がどれくらいあるのかを注意しておくことが重要だとわかります。

そこで、ため池98カ所における放射性セシウム濃度を時期を変えて3回調べたところ、ほとんどが検出限界値(2Bq/L)未満であることがわかりました。しかも検出(1.8~13.6Bq/L)された水は全て濁っていたため、フィルターでろ過してろ過後の放射性セシウム濃度を測定したところ、全て検出限界値未満でした。つまり、ため池の水からは稲に吸収される可能性はかなり低いということが言えます。

つぎに、渓流水についても調べました。福島県内6箇所の調査で時期を変えて調査したところ、ほとんどが検出限界値未満でした。降雨後などで検出されたケースも、その水をろ過してろ過後の水を再測定したところ、全て検出限界値未満でした。つまり、渓流水についても水から稲が汚染される可能性はかなり低いということがわかりました。

さらに今度は、水田内のかんがい水や表面排水について8月から9月に何回かサンプリングして調べました。すると、懸濁態Csと溶存態Csが混合した状態での測定では最大で42.3Bq/Lでしたが、それら数値が検出された水をフィルターでろ過するとろ液の溶存態Csには全て検出限界値(0.2Bq/L)未満でした。

これらのことから、
『水田に流入する水に含まれる放射性セシウムのうち、溶存態のセシウムは作物が直接吸収できるのに対して、懸濁態のセシウムは作物が直接吸収し難く、作物への移行は基本的に小さいと考えられる。
こうした濁水をろ過した水に含まれる溶存態のセシウムは検出下限値未満であることが明らかとなった。こうした結果であれば、水からの影響は限定的と考えられる。』
という結論を出しています。
次に「その2:水からの移行及び土壌中のカリ含量との関係」についてです。
下の図は、ポットを用いた実験で、用水として溶存態Csを大量(40Bq/L)に含む水を与えた場合と、その際にポットにカリウム施肥、あるいはゼオライトを与えた場合でどうなるかを見たものです。Aは水道水を与えた場合ですので、Bで溶存態Csを与えると玄米中の放射性セシウム濃度が高くなることはわかります。ただし注意して欲しいのは、ここでは用水からの効果が見えるようにわざとかなり高い濃度(40Bq/L)の溶存態Csを含む水を実験的に与えているということです。実際にはこんなに高い用水はなかったことは上の実験でわかっています。
Bに対してCではカリウム施肥、Dではゼオライト投与をしていますが、どちらの場合も玄米中の放射性セシウム濃度は大きく低下し、Aと同じレベルにまで下がっていることがわかります。
このことから、
『また、カリ肥料等の施用による吸収抑制対策により、水からの移行についても低減できることが明らかとなった。』
という結論を出しています。

次の実験はもう少し実際の条件に近い実験です。
まず、2011年に500Bq/kg以上のセシウムが検出されたA地区の土壌を実験に用います。この土壌は、交換性K2Oが5.0mg/100g乾土しかない土壌で、なおかつ雲母由来の粘土鉱物を含んでいないという条件の悪い土壌です。比較として、農業総合センターの土壌(交換性カリウム17.6mg/100g乾土、雲母鉱物多い)も使用しました。

農業総合センターの用水(0.04Bq/L)と、溶存態で1.0Bq/Lのセシウムを含むように調製した水で比較したところ、A地区の土壌では玄米中の放射性セシウム濃度が農業総合センターの用水では27Bq/kgのところ1.0Bq/Lの水で61Bq/kgと34Bq/kgの増加でした。同様に農業総合センターの土壌で同じ事を行うと、2Bq/kgが9Bq/kgへと7Bq/kgの増加にとどまりました。10Bq/Lの用水では玄米中の放射性セシウム濃度が263Bq/kgの増加を示しましたので、用水中の溶存態Cs濃度と玄米中の放射性セシウム濃度にはある程度比例関係があることがわかります。
しかしながら、実際のA地区の降水後の用水(1.4Bq/Lだが懸濁態を含む)で同じ実験を行うと、全てが溶存態Csであれば計算上は34Bq/kg×1.4=46Bq/kg増加してもおかしくないのですが、実際には27Bq/kgから36Bq/kgへと9Bq/kgの上昇しかありませんでした。
これらの実験と、上での用水中の溶存態Cs濃度の測定から、用水による玄米中の放射性セシウム濃度への関与はかなり限定的だろうと考えられました。
ただし、ここでは慎重に『玄米中の放射性セシウム濃度が土壌からの移行だけで説明することが難しい事例も一部にあり、水からの影響については引き続き調査を行うこととしている。』という結論にしています。

③ 乾燥・調製等のプロセスでの交差汚染・混入
次は全袋検査機によるスクリーニング検査において何度も出てきた事例です。これについてはすでに「「ふくしまの恵み安全対策協議会」HPで公開されている最新情報」で取り上げていますので細かくは触れませんが、玄米は汚染されていなくても、もみすり機などによる汚染のために見かけ上高く出てしまうケースがあるということを周知し、倒伏した稲は区分管理するとか、作業場の床に落ちた籾は籾すり機に再投入しないといった注意を改めて行っています。

4.24年産で基準を超過した米が生産された要因の解析
次は、昨年度に基準値(100Bq/kg)超えをした米がどのような場所で生産され、なぜ基準値超えをしたのかという要因の解析です。下の表はまだ分析途中のデータですが、分析が終了している7か所の圃場のデータは、下の表中の交換性カリウム濃度(mg K20/100g乾土)が10 mg K2O/100g乾土を下回っていました。さらに、これらの圃場ではデータ分析中の圃場も含めて13箇所全てで稲わらの持ち出しを行っていました。稲わらの還元はカリウムの補充になることは実験的に示されています(「福島県と農水省が1/24にまとめた米の放射能についてのまとめ(1)」参照)が、それを裏付けるものです。

さらに、すぐ上の表に示すように、同じ地区の近隣の圃場と比べると、土壌中の放射性セシウム濃度はあまり変わりないにもかかわらず、稲わらの持ち出しか還元かという点が土壌中の交換性カリウム濃度の違いにも反映し、玄米中の放射性セシウム濃度にも影響したということが結論できそうです。
これらのデータから、
『24年産で基準を超過した米が生産された要因を調査するため、栽培状況や土壌等の調査を行ったところ、これまで分析が終わった7カ所のほ場ではいずれも土壌の交換性カリ含量が10 mg K2O/100gを下回っていた。
また、各ほ場とも、稲わらをほ場から持ち出しており、これにより土壌中の交換性カリ含量が低かったものと考えられる。
このため、基準値を超過した要因は、土壌中に十分なカリが無かったため、放射性セシウムの移行が高まったと考えられ、25年作では、カリ施肥を徹底することで玄米の放射性物質濃度が低減できると見込まれる。』
という結論と今年度の作付に向けて明るい見通しを出しています。
5.総括
総括として、これまでの解析をまとめています。詳しくは下のまとめを読んでいただきたいと思います。

今回の一連の調査・研究で明らかになった事は、玄米中の高い放射性セシウム濃度は、土壌中の放射性セシウム濃度とは関係ないこと、また土壌中の交換性カリウム濃度(mg K2O/100g 乾土)が高ければ稲への放射性セシウムの以降は防ぐことが出来る事がはっきりと示されたことです。
昨年の研究結果から、カリウム濃度との関連はすでに指摘されていました(「1/15 福島県と農水省の規制値越えの中間検討会(12/25)資料その2」参照)。今回、さらにデータを積み重ねることによって、それがほぼ間違いないということが示されると共に、稲わらの還元などといった方法だけでも効果があることを示し、今年度の作付におけるヒントを示してくれたと思います。
ただ、「12/8 第五回放射能の農畜水産物等への影響についての研究報告会より-米のセシウム汚染の話-」でもご紹介したように、交換性カリウム濃度だけでは説明できない「はずれ値」が出るケースがあります。特に平野部ではなく山沿いの田んぼの場合、懸濁態Csでも稲に吸収されやすいケースがあるというデータも一部では観察されています。
そのため、一般論としては上に掲げたまとめでいいのですが、特殊な条件の田んぼについては個別の対策をしていくことが必要です。今年度はそういう個別の対策をきめ細やかに行っていって、福島県のどこからも基準値超えのセシウムは検出されないという状態を作っていくことが目標になると思います。
昨年度も、1000万袋を検査して基準値超えはわずか71袋でした。ですから、2011年から考えれば極めて優秀な成績だったと思います。しかし、たった1件の基準値超えだけでもイメージが悪くなりますので、今年の福島県の米作りは基準値超えゼロを目指していくということになるでしょう。そういう意味では非常に大変です。
しかし、それが可能になるかもしれないだけの材料を、稲作農家と多くの農学系研究者が協力して出してきました。米のように非常に複雑で様々な条件が関与する農作物の中から、玄米の放射性セシウム濃度に影響する要因とその対策をわずか2回の米作りで導き出した関係者の努力には敬意を表すると共に、今年の福島県の稲作では基準値超えをするセシウムを含んだ米が作付けされないことを願ってこのまとめを終わりたいと思います。
「福島県と農水省が1/24にまとめた米の放射能についてのまとめ(1)」
福島県HP:「放射性セシウム濃度の高い米が発生する要因とその対策について」
今回は前回の続きで、(2) 水田に流入する水の影響 からです。
(2) 水田に流入する水の影響
水田が畑と一番違うのは、常に水を張っているというところです。そのため、用水などの水から稲が汚染される可能性があるのではないか、という説は2011年の調査時点からありました。
水に含まれる放射性セシウム(Cs)には、水中にイオンの形で溶けている溶存態Csと、浮遊している土壌粒子や有機物などの懸濁物に吸着・固定されている懸濁態Csの二つの形があります。

下の実験では、水田の田面水を有機物、土壌粒子、溶存態の3つに分画し、それぞれがどれくらい稲に吸収されるのかを調べたところ、溶存態Csは稲に吸収される率が一番高く79%もあることがわかりました。一方で有機物画分は16%、土壌粒子画分は4%しか稲に吸収されませんでした。このことから、溶存態Csの量がどれくらいあるのかを注意しておくことが重要だとわかります。

そこで、ため池98カ所における放射性セシウム濃度を時期を変えて3回調べたところ、ほとんどが検出限界値(2Bq/L)未満であることがわかりました。しかも検出(1.8~13.6Bq/L)された水は全て濁っていたため、フィルターでろ過してろ過後の放射性セシウム濃度を測定したところ、全て検出限界値未満でした。つまり、ため池の水からは稲に吸収される可能性はかなり低いということが言えます。

つぎに、渓流水についても調べました。福島県内6箇所の調査で時期を変えて調査したところ、ほとんどが検出限界値未満でした。降雨後などで検出されたケースも、その水をろ過してろ過後の水を再測定したところ、全て検出限界値未満でした。つまり、渓流水についても水から稲が汚染される可能性はかなり低いということがわかりました。

さらに今度は、水田内のかんがい水や表面排水について8月から9月に何回かサンプリングして調べました。すると、懸濁態Csと溶存態Csが混合した状態での測定では最大で42.3Bq/Lでしたが、それら数値が検出された水をフィルターでろ過するとろ液の溶存態Csには全て検出限界値(0.2Bq/L)未満でした。

これらのことから、
『水田に流入する水に含まれる放射性セシウムのうち、溶存態のセシウムは作物が直接吸収できるのに対して、懸濁態のセシウムは作物が直接吸収し難く、作物への移行は基本的に小さいと考えられる。
こうした濁水をろ過した水に含まれる溶存態のセシウムは検出下限値未満であることが明らかとなった。こうした結果であれば、水からの影響は限定的と考えられる。』
という結論を出しています。
次に「その2:水からの移行及び土壌中のカリ含量との関係」についてです。
下の図は、ポットを用いた実験で、用水として溶存態Csを大量(40Bq/L)に含む水を与えた場合と、その際にポットにカリウム施肥、あるいはゼオライトを与えた場合でどうなるかを見たものです。Aは水道水を与えた場合ですので、Bで溶存態Csを与えると玄米中の放射性セシウム濃度が高くなることはわかります。ただし注意して欲しいのは、ここでは用水からの効果が見えるようにわざとかなり高い濃度(40Bq/L)の溶存態Csを含む水を実験的に与えているということです。実際にはこんなに高い用水はなかったことは上の実験でわかっています。
Bに対してCではカリウム施肥、Dではゼオライト投与をしていますが、どちらの場合も玄米中の放射性セシウム濃度は大きく低下し、Aと同じレベルにまで下がっていることがわかります。
このことから、
『また、カリ肥料等の施用による吸収抑制対策により、水からの移行についても低減できることが明らかとなった。』
という結論を出しています。

次の実験はもう少し実際の条件に近い実験です。
まず、2011年に500Bq/kg以上のセシウムが検出されたA地区の土壌を実験に用います。この土壌は、交換性K2Oが5.0mg/100g乾土しかない土壌で、なおかつ雲母由来の粘土鉱物を含んでいないという条件の悪い土壌です。比較として、農業総合センターの土壌(交換性カリウム17.6mg/100g乾土、雲母鉱物多い)も使用しました。

農業総合センターの用水(0.04Bq/L)と、溶存態で1.0Bq/Lのセシウムを含むように調製した水で比較したところ、A地区の土壌では玄米中の放射性セシウム濃度が農業総合センターの用水では27Bq/kgのところ1.0Bq/Lの水で61Bq/kgと34Bq/kgの増加でした。同様に農業総合センターの土壌で同じ事を行うと、2Bq/kgが9Bq/kgへと7Bq/kgの増加にとどまりました。10Bq/Lの用水では玄米中の放射性セシウム濃度が263Bq/kgの増加を示しましたので、用水中の溶存態Cs濃度と玄米中の放射性セシウム濃度にはある程度比例関係があることがわかります。
しかしながら、実際のA地区の降水後の用水(1.4Bq/Lだが懸濁態を含む)で同じ実験を行うと、全てが溶存態Csであれば計算上は34Bq/kg×1.4=46Bq/kg増加してもおかしくないのですが、実際には27Bq/kgから36Bq/kgへと9Bq/kgの上昇しかありませんでした。
これらの実験と、上での用水中の溶存態Cs濃度の測定から、用水による玄米中の放射性セシウム濃度への関与はかなり限定的だろうと考えられました。
ただし、ここでは慎重に『玄米中の放射性セシウム濃度が土壌からの移行だけで説明することが難しい事例も一部にあり、水からの影響については引き続き調査を行うこととしている。』という結論にしています。

③ 乾燥・調製等のプロセスでの交差汚染・混入
次は全袋検査機によるスクリーニング検査において何度も出てきた事例です。これについてはすでに「「ふくしまの恵み安全対策協議会」HPで公開されている最新情報」で取り上げていますので細かくは触れませんが、玄米は汚染されていなくても、もみすり機などによる汚染のために見かけ上高く出てしまうケースがあるということを周知し、倒伏した稲は区分管理するとか、作業場の床に落ちた籾は籾すり機に再投入しないといった注意を改めて行っています。

4.24年産で基準を超過した米が生産された要因の解析
次は、昨年度に基準値(100Bq/kg)超えをした米がどのような場所で生産され、なぜ基準値超えをしたのかという要因の解析です。下の表はまだ分析途中のデータですが、分析が終了している7か所の圃場のデータは、下の表中の交換性カリウム濃度(mg K20/100g乾土)が10 mg K2O/100g乾土を下回っていました。さらに、これらの圃場ではデータ分析中の圃場も含めて13箇所全てで稲わらの持ち出しを行っていました。稲わらの還元はカリウムの補充になることは実験的に示されています(「福島県と農水省が1/24にまとめた米の放射能についてのまとめ(1)」参照)が、それを裏付けるものです。

さらに、すぐ上の表に示すように、同じ地区の近隣の圃場と比べると、土壌中の放射性セシウム濃度はあまり変わりないにもかかわらず、稲わらの持ち出しか還元かという点が土壌中の交換性カリウム濃度の違いにも反映し、玄米中の放射性セシウム濃度にも影響したということが結論できそうです。
これらのデータから、
『24年産で基準を超過した米が生産された要因を調査するため、栽培状況や土壌等の調査を行ったところ、これまで分析が終わった7カ所のほ場ではいずれも土壌の交換性カリ含量が10 mg K2O/100gを下回っていた。
また、各ほ場とも、稲わらをほ場から持ち出しており、これにより土壌中の交換性カリ含量が低かったものと考えられる。
このため、基準値を超過した要因は、土壌中に十分なカリが無かったため、放射性セシウムの移行が高まったと考えられ、25年作では、カリ施肥を徹底することで玄米の放射性物質濃度が低減できると見込まれる。』
という結論と今年度の作付に向けて明るい見通しを出しています。
5.総括
総括として、これまでの解析をまとめています。詳しくは下のまとめを読んでいただきたいと思います。

今回の一連の調査・研究で明らかになった事は、玄米中の高い放射性セシウム濃度は、土壌中の放射性セシウム濃度とは関係ないこと、また土壌中の交換性カリウム濃度(mg K2O/100g 乾土)が高ければ稲への放射性セシウムの以降は防ぐことが出来る事がはっきりと示されたことです。
昨年の研究結果から、カリウム濃度との関連はすでに指摘されていました(「1/15 福島県と農水省の規制値越えの中間検討会(12/25)資料その2」参照)。今回、さらにデータを積み重ねることによって、それがほぼ間違いないということが示されると共に、稲わらの還元などといった方法だけでも効果があることを示し、今年度の作付におけるヒントを示してくれたと思います。
ただ、「12/8 第五回放射能の農畜水産物等への影響についての研究報告会より-米のセシウム汚染の話-」でもご紹介したように、交換性カリウム濃度だけでは説明できない「はずれ値」が出るケースがあります。特に平野部ではなく山沿いの田んぼの場合、懸濁態Csでも稲に吸収されやすいケースがあるというデータも一部では観察されています。
そのため、一般論としては上に掲げたまとめでいいのですが、特殊な条件の田んぼについては個別の対策をしていくことが必要です。今年度はそういう個別の対策をきめ細やかに行っていって、福島県のどこからも基準値超えのセシウムは検出されないという状態を作っていくことが目標になると思います。
昨年度も、1000万袋を検査して基準値超えはわずか71袋でした。ですから、2011年から考えれば極めて優秀な成績だったと思います。しかし、たった1件の基準値超えだけでもイメージが悪くなりますので、今年の福島県の米作りは基準値超えゼロを目指していくということになるでしょう。そういう意味では非常に大変です。
しかし、それが可能になるかもしれないだけの材料を、稲作農家と多くの農学系研究者が協力して出してきました。米のように非常に複雑で様々な条件が関与する農作物の中から、玄米の放射性セシウム濃度に影響する要因とその対策をわずか2回の米作りで導き出した関係者の努力には敬意を表すると共に、今年の福島県の稲作では基準値超えをするセシウムを含んだ米が作付けされないことを願ってこのまとめを終わりたいと思います。
「福島県と農水省が1/24にまとめた米の放射能についてのまとめ(1)」
福島県HP:「放射性セシウム濃度の高い米が発生する要因とその対策について」
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