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「原発汚染水 専用港に流出し続けていた可能性」のNHK報道に関連した話

昨日、NHKにおいて港湾内への汚染が少しずつ続いているという報道がありました。動画付きなのですが、数日でWebサイトからなくなってしまいますから、まだ見ていない方はお早めに見た方がいいと思います。
動画のないWeb魚拓はこちら
今日はこれに関する話を少し書きます。

3/17追記:2月の段階で神田先生の英語の論文がでていることを教えていただきました。後日この論文を読んで追加、修正などあれば対応します。
http://www.biogeosciences-discuss.net/10/3577/2013/bgd-10-3577-2013.html


おそらくこのNHK報道を見ても多くの人はそこに記載された数字の意味をあまり理解できないでしょう。

東京海洋大学の神田穣太先生のグループが行った今回の試算は、「汚染水の流出が止まったとされるおととし6月以降も、1年間で事故前の排出限度の73倍に当たる放射性セシウムが専用港に流れ出た可能性があることが分かりました。」というものです。

ニュースですから、「排出限度の73倍」という数字をみて「えーっ」となりますよね。でも、このようなニュースには普通、排出限度がどれだけなのか、記載されていません。単に何倍という数値に踊らされずに、もっとしっかりと情報をチェックしていく必要があります。

まず、保安規定というもので定められている福島第一原発の年間放出管理目標値というものを保安院が昨年8月に作成した資料から確認してみます。これは、原発ごとに定められているもので、福島第一原発の場合は下の図のように2200億Bq/年となっています。

3/16-1
(「平成23年度原子力施設における放射性廃棄物の管理状況及び放射線業務従事者の線量管理状況について」より引用)

なお、この表で「3H(トリチウム)を除く」という表現があります。これは、トリチウムについては別にもっと高い数値が定められているからです。福島第一原発の場合、事故前の保安規定ではこれは22兆Bq/年でした。トリチウム以外の放射性液体廃棄物の100倍ですね。これは、トリチウムが他の放射性物質と比べて人体に対する影響が少ないと考えられているからです。

また、ここで記載した2200億Bq/年というのは、放射性液体廃棄物全てについてです。セシウム137についてだけの数値ではありません。そこを勘違いしないようにして下さい。

一昨年6月以降は、基準値の73倍にあたる16兆1000億Bqが1年間に港湾内に流出していたというのが今回のニュースの内容です。2200億×73=16兆600億なので、確かに計算が合いますね。


さて、73倍の意味がわかったところで、16兆1000億Bqということの意味を考えてみましょう。私たちは、ふだんこんなに大きな数字を使わないので、このような数字を見ただけでびっくりしてしまいます。日本の国家予算が90兆円程度ですから、そういうときにしか見ない数字ですよね。

私は昨年、「福島第一原発2号機の謎に迫る」というシリーズをこのブログで展開してきました。結局まだ未完のままですが、その中で放射能汚染水がどうやって発生したのか、その後どうなっているのか、ということを詳細に分析して解説してきたつもりです。

福島第一原発2号機の謎に迫る(仮題) 目次

その中でも、「福島第一原発事故で海洋に流出した放射性セシウム量は全体のわずか2%?」においては、放射能の量について、全体的な事がわかるように解説しています。まだ読んでいない方はぜひ一度目を通していただけるとありがたいです。

この時は、1000兆Bq=1ペタベクレル(PBq)なので、すべてPBq単位で記載しましたが、海洋に直接放出されたCs-137が3-5PBq、すなわち3000~5000兆ベクレルであるということを示しました。この数値は東京電力も後日(全体的な漏洩量として)認めている数値です。その数字から考えると11兆ベクレルというのは1%にも満たないのですが、元の漏洩量があまりにも巨大だったため、完全に100%漏洩を止めない限り、僅か0.1%もの漏洩が続いていたとしても事故前の保安規定を73倍も上回る量のCs-137が港湾内に流出するということは充分有り得ることだと思います。

3/16-3

3-5PBqのほとんどが、2011年3月末に始まり4月2日に明らかになった2号機スクリーンからの520トン(以上)の高濃度汚染水の流出です。

ですが、「沿岸の放射能データが示している地下水から海へ流出した証拠」で示したように、その後もじわじわと港湾内には放射性物質が流れ出てきていることを示唆する状況証拠はあります。下のグラフを見るとわかるように、2011年4月30日以降は流出量が下げ止まり、少しずつ流出が続いているというモデルが実測値をよく説明できるのです。(詳細は「2号機からの海洋漏洩はいつ始まったのか?(1)シミュレーションからの推定」参照)

3/16-4
(「福島第一原子力発電所から漏洩した137Csの海洋拡散シミュレーション」津旨ら2011より引用)

この時に利用させてもらった論文では、2011年5月末までの解析でしたが、今回のニュースはその後の2011年6月以降についても年間で11兆BqのCs-137が流出しているということなのです。1日あたり80~930億Bqということなので、上のグラフでいうと、1000億Bqが1E+11という一番下の縦軸の目盛りに当たります。930億Bqであれば1E+11という目盛りのすぐ下です。

2011年6月以降もこのグラフの延長線で徐々に下がりつつあるところで下げ止まっているという試算が成り立つと神田教授は考えているのだと思います。


もう一つ今回のニュースでわかったことは、港湾内の海水は毎日44%が入れ替わるということです。これは「沿岸の放射能データが示している地下水から海へ流出した証拠」でも示したことなのですが、私が昨年見つけたある方の計算ではザックリいって20%くらいが入れ替わるということでした。専門家がしっかりと計算すると44%も入れ替わるということなので、これはよく覚えておきたいと思います。

この話、よくわからない方のために再度簡単に説明すると、潮の満ち引きは皆さんご存じだと思います。福島第一原発付近でも毎日2回、下記のように潮位が変化します。

3/16-5
気象庁のサイトより)

すると、港湾内の水が汚染されていても、干潮になって潮が引いた時にはその汚染された海水は港湾外に出ていきます。そして満潮になった時には外洋のほとんど汚染されていない海水が入ってくるので必ず希釈されるのです。そのイメージを示したのが下の図です。色が濃い方が汚染度が高いと考えて下さい。

3/16-6

このような入れ替えが毎日44%もあるので、何も新たな流出がなければ、単純計算では毎日約半分になりますので、1ヶ月もすれば2の30乗で10億分の1程度になります。つまり、10億Bq/Lあったとしても1ヶ月後には1Bq/Lになるという理屈です。実際にはそんなに単純には低下しないですが、東京電力が主張していたようにいくら海底土からの巻き上げがあったとしても、これほどまで汚染が続くということはないだろうということから神田教授らが今回試算してくれたものなのです。

折しも昨日、東京電力のHPに掲載された情報で、港湾内のアイナメから最高で74万Bq/kgのCs-137が検出されたという話がありました。特にこの74万Bq/kgのアイナメは、スクリーンのシルトフェンス内で捕獲されたものだといいます。ここははっきり言って一番汚染のひどいところです。ずっとこのアイナメがここにいたとは思いませんが、ここで捕獲された魚が港湾内の他の魚よりも汚染がひどくてもそれはある意味当然だと思いました。

3/16-7
(東京電力HP 3/15「記者会見資料」より引用)

3/16-8
(東京電力HP 3/15「記者会見資料」より引用)

むしろ気になるのは、以前51万Bq/kgという報道をされたアイナメ(2/17捕獲)が上の図でいうFという港湾入口で捕獲されていることです。魚は移動しますので、捕獲された場所とふだんの生活場所が同じとは限りませんが、Fで汚染度の高い魚が捕獲されているということは、港湾外に逃げ出している魚もそれなりにいるということだと思います。

今回の報道で明らかになったように、こうして今も港湾内に漏れ続けていると考えられるCs-137が、港湾内の魚のCs-137が高いことに関係している可能性はないとは言えません。東京電力に望みたいことは、より多くの情報を開示することです。これまでとれた港湾内が港湾内のどこで捕獲されたかという情報を開示したことはいい事だと思います。

最後に、福島第一原発事故による放射能汚染水や海洋汚染に関する情報をもっと知りたい方は、「福島第一原発2号機の謎に迫る(仮題) 目次」からいろいろと読んでみてください。

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コメント

Re: 論文発表済

> NHKの報道は昨日でしたが,既に2/26付で論文として公表されている情報です(リンク先は下記アドレス).英文ですが,情報ソースをあたり,より正確な情報発信をしていただけると幸いです.
>
> http://www.biogeosciences-discuss.net/10/3577/2013/bgd-10-3577-2013.html

貴重な情報ありがとうございました。すでに論文になっているとは知りませんでした。
元のソースに当たって、追加・修正などあれば対応させていただきます。

これまでならば単なるニュースの紹介ではなく必ず大元の情報をチェックしていたのですが、今回はその姿勢が欠けていました。反省して次回以降に活かしたいと思います。

TSOKDBA

No title

NHKの報道は昨日でしたが,既に2/26付で論文として公表されている情報です(リンク先は下記アドレス).英文ですが,情報ソースをあたり,より正確な情報発信をしていただけると幸いです.

http://www.biogeosciences-discuss.net/10/3577/2013/bgd-10-3577-2013.html

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3.11では、停電・断水のため、一晩避難所で過ごし、震災後の情報収集をきっかけにブログを始めました。
これまで約4年間、原発事故関係のニュースを中心に独自の視点で発信してきました。その中でわかったことは情報の受け手も出し手も意識改革が必要だということです。従って、このブログの大きなテーマは情報の扱い方です。原発事故は一つのツールに過ぎません。

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