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地下貯水槽から約120トンの濃縮塩水が地中へ漏出!(7)

 
4/6の第一報
地下貯水槽から約120トンの濃縮塩水が地中へ漏出!(1)
4/7午前の記者会見までの情報をまとめた
地下貯水槽から約120トンの濃縮塩水が地中へ漏出!(2)
4/7夕方の記者会見をまとめた
地下貯水槽から約120トンの濃縮塩水が地中へ漏出!(3)
タンク容量の余力についてまとめた
地下貯水槽から約120トンの濃縮塩水が地中へ漏出!(4)
4/9のNo.1からの漏えいに関する会見をまとめた
地下貯水槽から約120トンの濃縮塩水が地中へ漏出!(5)
4/10の記者会見と濃縮塩水中のSr-90の量についてまとめた
地下貯水槽から約120トンの濃縮塩水が地中へ漏出!(6)
 
に続いての第7報です。今日のニュースと、今回の事故を防ぐことはできなかったのか、ということを私なりの視点で書いてみました。ご意見等あればコメントやツイッターなどでお願いします。

12. 本日(4/11)のニュース

本日、新たなニュースがありました。地下貯水槽のNo.3からNo.6への移送を開始したところ、ポンプの配管から水漏れがおき、約22LがNo.3の貯水槽の上に被せてある土に染みこんだというのです。

4/11-1
地下貯水槽No.3からNo.6への移送開始時の配管フランジ部からの水の漏えいについて より

今回漏洩があったNo.3の南西部に設置してあるマンホールにつながっている配管は、下の写真のようなものです。これは水漏れする前(4/9)に取った写真です。

4/11-2
地下貯水槽No.3からNo.6への移送開始時の配管フランジ部からの水の漏えいについて より

それが、水が漏れたためにこのように漏れが広がらないように周りを覆われています。

4/11-3
地下貯水槽No.3からNo.6への移送開始時の配管フランジ部からの水の漏えいについて より

今回の漏えい量は約22Lと評価しているということです。2.9×10(5)Bq/cm3=2.9×10(8)Bq/Lなので、22Lをかけると6.38×10(9)Bq、すなわち約64億ベクレルが漏れたということです。

しかし、このような水漏れは他の配管でも以前から起こしていることですし、今回は漏れた先もNo.3の地下貯水槽の上に被せた土の上に限定されていますので、これだけを取り立てて騒ぐ必要はないと思います。


4/11現在の移送状況です。下の図にあるように、No.2からNo.6への移送は続けられています。また、No.3からNo.6への移送をしはじめたところで今回のトラブルになってしまったため、No.3からNo.6への移送は中断中です。拝見フランジの分解をしているため、いつ再開できるかどうかはわからないということでした。

4/11-4
地下貯水槽の移送状況について(4月11日16時現在) より

その他、4/11の作業実績という資料もありますが、今回は省略しますので興味のある方はご覧下さい。


13.今回の地下貯水槽からの漏洩事故は防げなかったのか?

まだ漏洩事故の原因が明らかになっていない段階ですので、このような事故を防ぐ手段がなかったのかどうか、ということを議論するには早いかもしれません。ここでは、現段階(4/11)の情報で私が考えることを書かせてもらいます。

本日4/11のマスコミの報道でも、
原発汚染水 産廃用、貯水能力に疑問」(msn産経ニュース)
『そもそも、同貯水槽は産業廃棄物の処理に使われる技術といい、汚染水をためる十分な能力を備えていたかについて、疑問が生じ始めている。』

朝日新聞デジタル
『福島第一原発で相次いで汚染水漏れを起こした地下貯水槽の基本構造は、遮水シートを使った「管理型」と呼ばれるごみ処分場と同じだったことが、東京電力の説明で分かった。その構造について、専門家からは「ごみ処分場の水準から見てもお粗末だ」などと厳しい批判が上がっている。』

というように、設計に問題があるのではないかという声があがってきています。

朝日新聞では、さらに『この構造について、日本環境学会前会長の畑明郎・元大阪市大教授は「ため池にシートを敷いて汚染水をためているようなもの。近年の処分場ではあり得ないお粗末さだ。考え方自体が間違っている」とあきれる。その上で「一定の漏出は防ぐことができない。漏れることを前提に造るのが常識で、漏れてもすぐ分かる地上型ステンレスタンクにすべきだ」と提案する。』

とか『全国各地のごみ処分場の調査結果を持つ廃棄物処分場問題全国ネットワークの藤原寿和・共同代表は「管理型より手厚くコンクリートで固めた『遮断型』でさえ汚染水漏れの例がある」と指摘。「放射能汚染水ならば、遮水シートのほかコンクリート、鋼矢板、補強材などで二重、三重の安全防護措置を講じるのは当然だ。規制庁や東電のリスク評価は甘すぎる」と警鐘を鳴らす。』と厳しい批判の内容があります。

ただ、この地下貯水槽の仕様は東電が勝手に決めたものではなく、保安院が昨年8月から9月にかけて行われた「東京電力福島第一原子力発電所における中期的な安全確保及び信頼性向上に係る意見聴取会」において確認し、8/15(第2回)の資料1-1 第1回意見聴取会「多核種除去設備・地下貯水槽・地下水バイパス等」の変更に対する委員等からのコメントへの回答(PDF形式(698kb)) (45ページ)や9/5(第3回)の資料3 第2回意見聴取会「多核種除去設備・地下貯水槽・地下水バイパス等」に対する委員等からのコメントへの回答(PDF形式(2.0mb)) (50ページ)におけるやり取りを経てこの地下貯水槽に汚染水を入れても問題ないと評価したものです。そういう意味では、当時の保安院にも責任の一端があります。

また、「放射能汚染水情報アップデート ALPSの稼働をめぐる部分最適の是非(1)」と「放射能汚染水情報アップデート ALPSの稼働をめぐる部分最適の是非(2)」ですでに指摘していたように、保安院から引き継がれた原子力規制委員会(原子力規制庁)においても、半年近くにわたってALPS(多核種除去設備)の稼働(ホット試験)を認めなかったという事実があります。

東京電力は本来、昨年9月からALPSを稼働する計画でした。ところが、保安院とのやりとり、さらには規制庁とのやりとりの中で、HICと呼ばれる保管容器の落下試験が満足のいく結果が出なかったため、半年近くもALPSのホット試験が遅れてしまったのです。

このために、本来はALPS処理水を入れるつもりで考えており、濃縮塩水(汚染水)を入れるつもりがなかった地下貯水槽にも濃縮塩水を入れざるを得ない状況に追い込まれてしまいました。それが今年の1月の事です。東電も記者会見などでは、地下貯水槽も濃縮塩水を入れることができる仕様だとは説明していますが、それは他に入れるタンクがないための強弁だと私は考えています。規制庁がALPSのホット試験を許可してくれないから仕方なく地下貯水槽に入れた、とは言えないでしょう。ただ本音では、濃縮塩水を入れたくはなかったのだと思います。

1月に書いたブログで、規制庁は部分最適を考えており、汚染水処理のための全体最適を考えていないという趣旨の事を書きましたが、その時に私が感じていた不安が今回的中してしまった形になります。原子力規制庁は汚染水処理全体をうまく進めるためには、何が重要か、何がリスクが少ないか、ということを考えて対応すべきだったと思います。

もし、規制庁がHICの安全性にあそこまでこだわらずにALPSのホット試験開始を早めに認めて、地下貯水槽に濃縮塩水を入れずに済むようにしていたら、少なくとも今回の事故は防げたでしょう。もちろん、それによって、今度はALPSの運用中にHICのトラブルが出てきたかもしれません。ただ、これも「放射能汚染水情報アップデート ALPSの稼働をめぐる部分最適の是非(2)」で書いたのですが、保安院は「漏えいを早期検知し、必要な対応ができるよう万全の体制を敷くこと。HICは漏えいするものとして適切に監視すること」としていたので、漏れることを前提にした対応策、特に地中や海への漏えいの可能性を少なくする対策をしっかりと取っていれば、大きな問題にはならないと思います。

昨日の原子力規制委員会の議事録を読むと、更田委員の発言として下記のようなことが載っています。

『(前略)より長期的には、このRO濃縮水に関しては、多核種除去装置、ALPS(アルプス)と呼んでいる装置によって、トリチウムを除く放射性核種を取り除いて、同じ貯蔵するにしても、漏えい時の影響が格段に小さい状態に持っていくことが急がれますけれども、一方で、多核種除去装置で取り除いた放射性核種のスラリーであるとか、フィルター類、より放射性核種の濃度がはるかに高い、高濃度の廃棄物が生まれます。これの管理のための、貯蔵のためのシステムにおいて、これまで少し落下試験等において不備があって、当初の予定よりも多核種除去装置の指導が遅れてしまった。これは、さらにもっと大きなリスクに対処するために、HIC(ヒック;廃棄物を移送・貯蔵する高性能容器)と呼ばれている、より濃度の高い放射性物質を貯蔵するための容器の強度に規制委員会として疑いを持ったために、さらに試験を重ねてもらっていたという背景があります。そのALPS装置もようやく1つのラインのホット試験に漕ぎ着けていますので、今後、A系、B系、C系と3ラインありますけれども、それぞれの試験を急いでもらって、より水に含まれる放射性物質の量を下げていくことになろうかと思います。(後略)』
第二回原子力規制委員会 議事録より)

これについて、4/11の河北新報では、『10日の原子力規制委員会で、ALPSの試運転を規制委がなかなか認めず、稼働遅れの一因となった点に反省の声も出た。』という表現がありました。(4/12追記)


原子力規制委員会には彼らなりの理屈があると思いますが、彼らの過剰な介入が今回の事故を引き起こした遠因であることは間違いないと思います。

そういう意味で、東電の管理体制や地下貯水槽の設計・監視にも問題があるのは事実ですが、今回の事故については東電だけを批判するのではなく、保安院、そして原子力規制委員会にも責任がかなりあると考えるべきだ、というのが現段階での私の主張です。

また、汚染水処理が綱渡りの状況であることは半年ほど前からわかっていたのにほとんどそれを取り上げず、事故が起こったらその時になって初めて注目して、東電を無責任に批判し、またニュース性がなくなると取り上げない、といった多くのマスコミの姿勢にも問題が多いと思います。

今回はこれで終わりにします。明日になるか週末になるかわかりませんが、「地下貯水槽から約120トンの濃縮塩水が地中へ漏出!(8)」も書く予定ですのでお楽しみに。
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3.11では、停電・断水のため、一晩避難所で過ごし、震災後の情報収集をきっかけにブログを始めました。
これまで約4年間、原発事故関係のニュースを中心に独自の視点で発信してきました。その中でわかったことは情報の受け手も出し手も意識改革が必要だということです。従って、このブログの大きなテーマは情報の扱い方です。原発事故は一つのツールに過ぎません。

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