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地下貯水槽から約120トンの濃縮塩水が地中へ漏出!(9)

 
4/6の第一報
地下貯水槽から約120トンの濃縮塩水が地中へ漏出!(1)
4/7午前の記者会見までの情報をまとめた
地下貯水槽から約120トンの濃縮塩水が地中へ漏出!(2)
4/7夕方の記者会見をまとめた
地下貯水槽から約120トンの濃縮塩水が地中へ漏出!(3)
タンク容量の余力についてまとめた
地下貯水槽から約120トンの濃縮塩水が地中へ漏出!(4)
4/9のNo.1からの漏えいに関する会見をまとめた
地下貯水槽から約120トンの濃縮塩水が地中へ漏出!(5)
4/10の記者会見と濃縮塩水中のSr-90の量についてまとめた
地下貯水槽から約120トンの濃縮塩水が地中へ漏出!(6)
4/11のニュースと、今回の事故を避けられた可能性について書いた
地下貯水槽から約120トンの濃縮塩水が地中へ漏出!(7)
No.1での漏えい量とそのメカニズムの考察(まだ不完全)を書いた
地下貯水槽から約120トンの濃縮塩水が地中へ漏出!(8)」 

につづく第9報です。今回は、先週末からの動きをまとめてみたいと思います。

17. 先週末からの動き

(7)においては、4/11に起きたNo.3からNo.6への移送中の漏洩事故についてまでお伝えしました。その後いろいろな動きがありました。

4/10には茂木経産大臣が衆院経済産業委員会で「地下貯水槽は使用しないようにする」と述べた(読売)のですが、翌11日には、『原子力規制庁の池田克彦長官と資源エネルギー庁の高原一郎長官は11日に会談し、東京電力福島第1原子力発電所での汚染水漏れなど、トラブルへの対応で連携することを確認した。両庁の審議官が定期的に会合を開いて意見交換するほか、規制庁の検討会にも資源エネルギー庁から職員を出席させる。意思疎通を密にして、政府一体で東電の廃炉事業を支援する。』(日経より)ということが決まりました。

さらに12日には『経産省と東電などでつくる東電福島第1原子力発電所廃炉対策推進会議(議長・茂木敏充経産相)に新たに田中俊一原子力規制委員長が参加。同会議の下に原子力規制庁が加わる汚染水処理対策委員会を新設する。同原発の廃炉を所管する経産省が規制庁と連携して安全面の助言やチェックを強める。』(日経より)ということで、これまで東電任せにしてきた後処理に対して、国としても関与を強める方向性を打ち出しました。ただ、これは今後を見守っていかないと、どこまで実効性があるのかはわかりません。

また、同じ4/12には、原子力規制委員会の「第8回特定原子力施設監視・評価検討会」が開催され、この地下貯水槽からの濃縮塩水の漏洩事故について多くの議論がなされました。その時の資料は、原子力規制委員会がまとめたものが「東京電力福島第一原子力発電所における地下貯水槽からの漏えいについて」に、東電が提出した資料が「地下貯水槽からの汚染水漏えい及び対応状況について」にまとめられています。

YouTubeの映像も公開されているのですが、他の話題も含めて全部で5時間にも及ぶ長い会議ですので全部を見ることはできていません。ただ、この会議は、東電で行われる記者会見とは違い、専門家が専門的な視点から厳しい質問をするので、記者会見では得られないような貴重な情報も得られる場合があります。

この日の様子は、時事ドットコムでは、『事故担当の更田豊志委員は「1号貯水槽は水位を上げていないのに漏えいが強く疑われる。別の要因も説明してほしかった」と不満を示した。』と記載しています。実際、『この資料の作り方は満水に近かったNo.3の原因調査を書いているだけで、ミスリーディングであり、他の貯水槽の汚染水漏れの原因考察には全然なっていない』と不満を示していました。

12日の夕方、東電は水がほとんど抜けているために調査ができるNo.2の貯水槽の上部を調査した結果を発表しました。No.2ではNo.3で予想していたような、上部の漏えい検知孔からの水漏れはなかったと発表しました。
4/16-1
地下貯水槽の漏えいに関わる本日(4月12日)の作業実績 より

これを受けて、「汚染水貯水槽上部に異常なし 調査振り出しに(NHK:リンク先はWeb魚拓)」といった報道が相次ぎました。

また12日には、経済産業大臣の指示なども踏まえてこれまでの方針を転換して、地下貯水槽は使わずに地上のタンクに全て移送するという計画を示しました。今も漏えいしている可能性があるNo.2とNo.1を最優先とし、これらをまずH2エリアにあるタンクとろ過水タンクに移し、ついでNo.3とNo.6のタンクをH6エリアにあるタンクに移送するという計画です。ただ、これらの移送が完了するのは6月になってからの計画です。

4/16-3
地下貯水槽の今後の移送計画について(4/12) より


翌13日の土曜日、「汚染水「漏れたら直ちにタンクへ」 東電、計画時に説明(朝日)」という報道がありました。これは、昨年8月から9月にかけて行われた保安院による「東京電力福島第一原子力発電所における中期的な安全確保及び信頼性向上に係る意見聴取会」のことを指しています。

『・・・意見聴取会を開いた。この場で、委員から地下貯水槽の遮水シートが破れた場合の対応を問われ、東電の担当者は「実は空のタンクを用意しておいて、検知した瞬間に、すべてそちらに移送するという計画」と説明。保安院は計画を了承していた。』

今回の事態において、空のタンクというのは別の地下貯水槽という意味だと東電は記者会見で説明したそうです。実際には、「検知した瞬間に移送する」というのはとても守られたとは言えないと思います。

またこの日、東電はHP(プレスリリース)において、福島第一原子力発電所地下貯水槽からの水漏れについて(続報47)【報道関係各位一斉メール】で『4月10日から12日に実施した地下貯水槽No.1ドレン孔(北東側)の全β値に上昇傾向を確認したことから、一番外側のシート(ベントナイトシート)から外部へ微量な漏えいがあるものと判断しました。』と、No.1でもドレーン孔での全βの濃度が上昇したため、外部への漏えいが起こったと正式に認めました。ただ、どれだけの漏えい量があったかについては推定すらしていません。

この日は原子力規制委員会の田中俊一委員長が初めて福島第一原発を視察しました。『東京電力に対し、汚染水対策に加え、廃炉作業も含めて、今後起きうる「危険」や「課題」を改めてすべて検討したうえで報告するよう指示しました。(NHK:リンクはWeb魚拓)』

このように、東京電力だけに対応を任せていいのか、という論調が多く出るようになりました。ただ、マスコミはいつも事故があるとこのような事を書きますが、その後のフォローはほとんどしないことが多いです。今回もおそらく、落ち着いてきたらまた何事もなかったかのようにこの問題についてはほとんど報道しなくなるでしょう。

14日、東京電力はプレスリリースで「福島第一原子力発電所地下貯水槽からの水漏れについて(続報52)【報道関係各位一斉メール】」『本日(4月14日)から地下貯水槽No.2からH2エリアタンクへ移送を開始する予定でしたが、本日の移送は行いません。先日、地下貯水槽No.3から地下貯水槽No.6への移送開始後に漏えいが発生したため、移送工程については改めて調整しています。』
と発表しました。

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地下貯水槽の今後の移送計画について (4/15)より

これについては、本日16日、プレスリリースにおいて、「福島第一原子力発電所地下貯水槽からの水漏れについて(続報62)【報道関係各位一斉メール】」『地下貯水槽No.2からH2エリアタンクへの移送について、本日(4月16日)午後0時13分、移送ラインに漏えいがないことを確認したことから、同時刻に移送を開始しました。』と移送を開始したことを明らかにしました。

しかし、東電HPのプレスリリースは、毎日細切れに発表するので、だんだん訳が分からなくなってきています。これを毎回メールで受信する記者の人たちはもっと大変でしょうね。

ただ、これまで多くのデータを取っていながらわかりにくく発表していたドレーン孔や漏えい検知孔のデータは、やっときれいにまとめて発表してくれるようになりました。これは進歩だと思います。これで毎日の変化を追いやすくなりました。

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地下貯水槽・新設観測孔(貯水槽周辺)分析結果(採取日:4月15日) より

気になるのは、漏えい検知孔でNo.4とNo.6の全βのデータが4/15の「福島第一原子力発電所地下貯水槽からの水漏れについて(続報57)【報道関係各位一斉メール】」で示されているように『地下貯水槽No.4の漏えい検知孔(北東側)および地下貯水槽No.6の漏えい検知孔(北東側)で全β値が上昇していましたが、変動範囲内であり、今後も注視していきます。』という所です。

本当なのかどうか、過去の発表データを当たって表にしてみました。

4/16-5
(クリックで拡大)

確かに、No.4もNo.6も4/7や4/8には1~3×10(-1)Bq/cm3=100~300Bq/Lにまでなっていますので、これ以上上がらなければ変動の範囲と言えるかもしれません。

そもそも、No.4にはメガフロートから移送した、5,6号の濃度の低い水が入っていますので、そんなに高い濃度になるはずがないのです。No.4が高くなるとすると、このあたりの地下水の汚染とかそういうことを考えた方がいいような気がします。

やっと少し落ち着いてきた気がしますが、東電にはしっかりと今回の原因を調査して欲しいと思います。今後の動きによっては「地下貯水槽から約120トンの濃縮塩水が地中へ漏出!(10)」も書くかもしれません。

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3.11では、停電・断水のため、一晩避難所で過ごし、震災後の情報収集をきっかけにブログを始めました。
これまで約4年間、原発事故関係のニュースを中心に独自の視点で発信してきました。その中でわかったことは情報の受け手も出し手も意識改革が必要だということです。従って、このブログの大きなテーマは情報の扱い方です。原発事故は一つのツールに過ぎません。

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