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地下貯水槽の汚染水漏れから1ヶ月(4):汚染水対策の本質的な解決策は?中編


本来はこの(4)は、5/11に書いた「地下貯水槽の汚染水漏れから1ヶ月(3):汚染水対策の本質的な解決策は?前編」に続いて後編としてすぐに書くつもりでした。

というのも、5/17(金)には原子力規制委員会の第10回特定原子力施設監視・評価検討会が開催されることになっていて、そこでも議題の一つとして汚染水への対応が話し合われることになっていましたし、経産省主導の汚染水処理対策委員会も5月中旬に第2回5月下旬に第3回の委員会が開催されることになっていました。ですから、専門家の意見が出る前に予習として情報を整理しておくことは重要だと思って5月15日までには書き上げるつもりでいたのです。

ですが、諸般の事情でうまくまとめきれないうちに一連の会議が終わり、資料を読むのも追いつかないまま、汚染水処理対策委員会の提言が出されるという状況になってしまいました。

そこで、今回は「中編」として、5月に行われた一連の会議の流れを整理する形にしたいと思います。特定原子力施設監視・評価委員会は第10回(5/17)第11回(5/24)が開催されたのですが、これについては直接関係する部分が少ないので省略します。


経産省が主導して行われた汚染水処理対策委員会は5/16に第2回を開催し、5/30には第3回が開催されました。第3回の委員会においては、汚染水処理の対策として凍土壁を陸側遮水壁として使用するようにという提言を出すところまで行きました。それを受けて5/30には経産大臣が東電社長を呼び、陸側遮水壁を検討して実施するように指示(リンクは時事ドットコム)しました。東電も30日の記者会見で凍土壁遮水壁を設置する方向で検討することを表明しました。

まずは5/16の第2回委員会から見ていきます。

第2回においては、第1回の鹿島、大成建設、清水建設に加えて安藤・間(安藤ハザマ)が呼ばれています。そして、安藤ハザマはグラベル(砕石)連続壁と呼ばれる方法を提案しています。砕石(グラベル)で作った遮水壁の中に高さを変えることができるポンプを入れて、地下水の水位を調節します。地下水を面でとらえるため、比較的均一な高さの地下水位面を保持することができることができるのが特徴だそうです。

6/1-1

そして、水位を下げ終わったら連続壁などにセメントミルクなどを入れて遮水壁に転換させることができるということが特徴だそうです。

これにより、「地下貯水槽の汚染水漏れから1ヶ月(3):汚染水対策の本質的な解決策は?前編」でご紹介した大成建設の粘土壁や鹿島の凍土壁と合わせて3種類の陸側遮水壁の提案がなされたことになります。

これら陸側遮水壁以外にも、第2回の委員会では、汚染水全体の管理という視点から、これまで東電が検討・一部実施している地下水バイパス、サブドレンの復旧、海側遮水壁、建屋の貫通部止水に加えて、トーラス室(原子炉建屋地下階)へのグラウト充填による止水、建屋間ギャップの止水、循環注水冷却の小ループ化、汚染水貯留タンクの保全化、海水配管トレンチ内の汚染水の除去などが検討されました。

これまでも廃炉作業の計画として議論はされてきたのですが、あまりこのブログでは取り上げてこなかったので循環注水冷却の小ループ化についてご紹介します。

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今回の汚染水循環処理システムは、いずれは現在の総延長4kmにもわたる長いシステムから建屋内循環に移行する予定になっています。しかし、いきなり建屋内循環に移行するのは不可能ですので、第一段階では復水貯蔵タンク(Condensate Storage Tank:CST)を用いた循環に切り替える予定になっています。

CST循環は、炉注水の水源の信頼性を向上するために行うもので、上の図では今年の6月から切り替えることになっています。これにより、下の図に示すように総延長は3kmと1km短くなります。

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いずれ移行することを目指している建屋内循環ですが、現在タービン建屋(T/B)からセシウム除去装置に送っている汚染水をCSTタンクに移送し、CSTタンクから炉注水用の水を送り出す形になります。ただし、地下水流入分については、これまで同様にセシウム除去装置に送ってセシウムなどを除去し、淡水貯蔵タンクに貯めておきます。

セシウム除去をしないでそのまま炉注水に利用できるのか?という疑問があると思います。2011年当時は汚染水の中に海水がかなり含まれていたのですが、2年間汚染水循環処理システムを運用する中で淡水化がかなり行われ、炉内構造物の腐蝕を防止するための指標としての塩化物イオン濃度は今年の3月で100ppm程度にまで下がってきました。

6/1-4

ただ、作業員の被曝を考えると、塩化物イオンだけでなく、Cs-137濃度ももっと下げる必要があります。このペースで行けば、来年度末には目標としている塩化物イオン濃度100ppm、Cs-137濃度100Bq/cm3という基準をクリアできる可能性があります。炉注水の水質から考えると、その頃が建屋内滞留水に切り替えるタイミングだということです。

長いループをいつまでも維持しているよりも、短い循環にした方がリスクは下がるのは間違いないので、できるだけ早くループを短くして建屋内循環に持っていければいいのはいうまでもありません。


それ以外の資料については、ここでは割愛します。経産省のHPから資料を参照してください。


さて、第3回の汚染水処理対策委員会においては、「地下水の流入抑制のための対策」という46ページにも及ぶ長い資料が提示されています。ここには、第2回の委員会での議論を元に、委員会としての結論が述べられています。最初の2ページに概要が書いてあるため、それを読めばだいたい理解できるのですが、これまでの方針には見られなかった大きな考え方の変化があります。

これまで東京電力が取り組んできた方策は、それなりに考えて取った対策ではあるものの、結果として充分に機能しない場合がありました。地下貯水槽もその一例です。そのためこの報告書では、今後も実施した対策が予定通りに機能しないリスクはあるという前提で何重もの対策を講じて行く必要があるという考え方を明確にしました。それぞれの対策には立案から実施まで数ヶ月から1年かかることを考えると、予め各種のリスクを想定して先手先手で複数の手法を立案していくことを基本的な考え方としています。

今回の東京電力福島第一原子力発電所の事故の教訓の一つは、安全対策にこれで大丈夫ということはなく、準備している対策が機能しないことを想定して、先手先手に対策を講じていく必要があるということである。』(5ページより)

この考え方に基づき、委員会では、これまで東京電力が実施してきている地下水バイパス、サブドレンの復旧、建屋の貫通部の止水、海側遮水壁の設置というのは予定通り実施するのに加えて、陸側遮水壁を設置するべきとしました。これは、サブドレンがもし十分に機能しなかった場合の対策としては陸側遮水壁は不可欠であるという考え方からです。また、万一建屋の汚染水が外部に流出しても、汚染水が海洋へ流出するのを食い止めるためには、海側遮水壁に加えて陸側遮水壁を設置することが必要という考え方も入っています。

ただし、最短でも施工計画の策定に6ヶ月、施工に1年が必要であり、燃料取り出しカバー工事や使用済み燃料の共用プールへの輸送作業などとの工程調整も必須になります。また、凍土壁の場合は、2年程度の運用実績しかないため、長期にわたる運用ができるかどうかの検討や代替法も準備しておく必要があるということも述べています。

各遮水壁において、原子炉建屋への地下水流入量の効果をシミュレーションしてみると、これから8年後の平成33年(2021年)までの地下水流入量を押さえることができるのは下のグラフでケース4にあたる凍土遮水壁です。

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さらに、サブドレンや地下水バイパスと凍土遮水壁(あるいは粘土遮水壁)を組み合わせることによって、仮にサブドレンによる水位管理が行えない場合があったとしても対応できるケースとして、、ケースFの地下水バイパス+サブドレン+凍土遮水壁というパターンを選択することにしました。

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一方で、そのような場合でも必要となるタンク容量は最低でも今後8年間で80万トン(80万m3)のタンク容量が必要となるため、タンク容量の増設は現計画の70万トンから80万トンに上方修正し、8年後を見据えた対応をしておく必要があるとしました。

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陸側遮水壁は、鹿島が提案したように1-4号機を囲むような形で設置して、現在建設中の海側遮水壁とつなぐ形が想定されています。

6/1-9

他にも、詳細はここでは紹介しませんが、トレンチの止水工事を東電の計画よりも前倒しして来年度(2014年度)末までに実施することや、トーラス室グラウト充填による地下水流入抑制なども計画に加え、下記のようなスケジュールで進めることを提案しています。

6/1-10

そして、これがうまくいった場合の簡単な試算としては、8年後の平成33年(2021年)には地下水流入量をゼロにでき、建屋を完全にドライアップできるという道筋が示されました。

6/1-11

長い資料で、しかも結構中身が充実しているため、かなり中身をはしょってのご紹介になりましたが、短期間でまとめたにしてはいい提言となっているように思いました。特に今回提案する対策も万全の効果を示さない可能性があるという前提で何重もの方針を立てているところがこれまでにない考え方だと思いました。

なお、この報告書については、原子力規制庁の見解も別の資料でついていて、この計画を含めた形で特定原子力施設である1Fの実施計画として申請されるであろうからそれを受けて「的確に評価・確認していく」としています。

今年4月に起こった地下貯水槽からの漏えいは、結果的にはそれほど大量の漏えいは起こさずに済んだようです。しかしこの事故により汚染水の現況がいかに危険であるかについての認識が共有され、汚染水処理を今までのように東電任せにしていてはいけない、という世論の合意を導き、このように専門家委員会による陸側遮水壁の提案と、それを受けての実施計画策定へと急展開することになりました。

次回(5)は、「後編」として、これまで紹介しきれなかった話や、最近知った専門家(上原雄三さん)の意見などを紹介していきたいと思います。

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3.11では、停電・断水のため、一晩避難所で過ごし、震災後の情報収集をきっかけにブログを始めました。
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