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地下貯水槽の汚染水漏れから1ヶ月(5):汚染水対策の本質的な解決策は?後編

 
地下貯水槽の汚染水漏れから1ヶ月(4):汚染水対策の本質的な解決策は?中編」の続きです。

今回は、前2回((3)と(4))であまり取り上げなかったサブドレンの重要性についてまず書きたいと思います。それから、最近ツイッターで知った上原雄三さんの考えていることをご紹介します。

5/30の汚染水処理対策委員会を受けて、東電も凍土壁を陸側にも設けることで動き出しましたが、汚染水対策として本当にこれだけで大丈夫なのか、みなさんが考える際のヒントになればと思います。


1.サブドレンの復旧を急ぐべき

まずは第3回の汚染水処理対策委員会(5/30)に提出された報告書において、サブドレンがどのように評価されているか見てみましょう。

『2)サブドレンによる水位管理
この対応策により、建屋周囲の地下水位をコントロールしながら低下させることが可能となり、地下水の流入量が相当程度抑制されると考えられ、進めていくべきである。事故後に稼働できなくなった設備を復旧するという既存設備の活用であることに加え、新規に設置するものとあわせ、建屋周辺の地下水位を効果的に管理できる唯一の方法であるなど、効果的な地下水の流入抑制策と考えられる。平成26年度半ばからの運用開始を目指しているが、サブドレン中の放射能濃度によっては、稼働できない可能性がある。』(汚染水処理対策委員会(5/30)報告書21ページより)

このように、「地下水位を効果的に管理できる唯一の方法」であるとお墨付きをもらっているのです。しかし一方で、「平成26年度半ばからの運用開始を目指しているが、サブドレン中の放射能濃度によっては、稼働できない可能性がある」とのコメントがあります。

「サブドレン中の放射能濃度によっては稼働できない」とはどういうことでしょうか?そもそもサブドレンとは、下の図のように地下水を汲み上げて建屋に働く浮力を防止し、地下水位のバランスを取るためのものです。つまり、地下水を汲み上げて外に出すのが目的です。ではその汲み上げた水はどうするのでしょうか?原発事故の前ならば海に流していたはずですし、それで問題はありませんでした。

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東電は昨年来、サブドレン中に入り込んだ土砂など(浮遊物質)に含まれている放射性物質がなかなかきれいに除去できないため、サブドレンの復旧には時間がかかるとしています(詳細は「サブドレン浄化試験の現況解説」及び「放射能汚染水情報アップデート(3) サブドレン浄化試験の行方は?」参照)。

これは、汲み上げた地下水を原発事故前と同様にそのまま海に流すという前提で考えているからです。しかし少し考えたらわかることなのですが、基本的に汚染されていないはずの地下水バイパスの水を海に放出することができない現状で、多少なりとも汚染されている可能性があるサブドレンから汲み上げた水をそのまま海に放出するなんて事ができるはずはありません。

サブドレンで汲み上げた地下水を貯めておくという発想に立つならば、ポンプさえ設置して稼働できるならばすぐにでもサブドレンは復旧させるべきです。汲み上げた地下水の汚染の有無はあまり大きな問題ではありません。もし汚染していれば、必要に応じてALPS(多核種除去設備)などで処理していけばいいはずです。サブドレンから汲み上げた水は、建屋の中に入れてしまって汚染水にしてしまうよりは遙かに漏えい時のリスクは少ないはずです。

サブドレンの復旧で現在問題になっているのは、4号機の使用済み燃料の共用プールから燃料棒を取り出す作業など、他の作業との関係でサブドレンの復旧作業がすぐにできないことです。優先順位はあると思いますが、サブドレンはできるだけ早く復旧させて、地下水位を下げ、建屋に流入する地下水量を減らしていくことが重要なのです。今回汚染水処理対策委員会で陸側遮水壁を提案したのは、いかにして早く地下水位を下げるか、ということを目的としています。そしてその対策も基本的にはサブドレンによる水位管理が前提になっています。

このような状況にもかかわらず、東電のこれまでの発表やこの報告書で「サブドレン中の放射能濃度によっては稼働できない可能性」というのは、今はまだ明らかになっていませんが、サブドレン周辺の地下水が実は汚染されているというデータを東電が持っているからだと穿った見方をせざるを得ません。しかし、例えそうであろうと、もうこの段階になったらサブドレンから汲み上げた地下水は当面タンクに貯めるという前提でサブドレンを至急復旧させるべきだと私は思います。

2.上原雄三さんの考え方の紹介

このシリーズで(3)を書いたあと、しばらく(4)を書けなかったのは、実はツイッターで上原雄三さんの存在を知って考え方の整理が必要になったからです。上原さんは、ツイッターのプロフィールに「元文部科学省、試験研究炉規制官(原子力防災専門官・保安検査官・査察官等歴任)及び熊取オフサイトセンター所長として京都大学原子炉実験所等を管轄し定年退職。原子力発電所設計経験者。」と書いてあり、ツイートを見ていても原子炉の設計にも地下水の構造にも詳しい方です。今回の地下貯水槽についても、4/10の時点で(まだ漏えいの全体像が明らかになっていない段階で)ラジオのインタビューに答えて、ベントナイト層が薄すぎて私が規制官だったらあれは絶対に許可しない、と断言された方です。陸側遮水壁が議論に上がった際にも、ツイッターで独自の対応策を提言してくれていました。

ツイッターの文字数制限のせいか、表現がわかりにくい所もあって主旨を理解するのにかなり時間がかかったのですが、専門的な知識に基づく理論を展開されており、ご本人に質問をいくつかして私が理解した範囲でご紹介したいと思います。(ご本人のブログもあるのですが、時々しか更新されませんし、地下水の話はほとんどないようです。)

上原さんの主張は、以下のようなものです。(関連するツイートへのリンクを貼ってありますのでご参照ください。原発事故当時のツイートはこちらのtogetterにあります。)

まず、敷地境界付近に還流井戸(井戸でくみ上げて一部は放流、他はさらに上流の他水脈の地下に戻す)を設けて地下水位を低めにコントロールします。敷地境界付近としているのは、原子炉から十分に離すことによって、現在の地下水バイパスのように地元関係者とのトラブルのリスクをさげるためです。

建屋付近はサブドレンを早急に復旧させ、ウエルポイント(地下に打ち込んだパイプから真空の力で地下水を吸い上げるもの)と併用することで地下水位をコントロールします。

単なる陸側遮水壁はダメだという主張です。これは、陸側遮水壁によって地下水位を下げてしまうと、これまで地下水によって押さえられていた、難透水層の下にある被圧地下水がわき出てくるリスクがあるからだそうです。

6/7-1

これは少し解説を加えますが、原発地下の地下水は少なくとも2層あります。現在議論に上がっているのは上の図で黄色い部分の「中粒砂岩層(透水層)」と書かれた部分を流れる地下水で、流速が1日10cmだそうです。

その下に「泥質部」とかかれた泥岩からなる難透水層があります。そのさらに下は「互層部(透水層)」となっていて、ここにも地下水が流れています。しかし、この部分の地下水には圧力がかかっていて(被圧地下水)、井戸を掘ってここまでパイプを通せば水が上に噴き出してきます。この被圧地下水は、上の図の黄色の透水層の存在によって押さえつけているのですが、陸側遮水壁で単にこの透水層の水をなくしてしまうと、被圧地下水が上に出てきてしまい汚染が拡散するというものです。(「5/10 水の汚染」のツイート参照)

そこで上原さんは、「また決定的に重要なのは原子炉建屋等地階トレンチ基礎の裏の硬化のため、「L型掘削法」による水平配管からの硬化材噴射による地層の水平硬化の新工法適用である。」と、建屋の基礎を水平にも硬化させることが必要であると提案されています。L型掘削法は、シェールガスの掘削にも使われている手法らしいです。

今回の凍土壁も実は上原さんが2年前に提案されていたそうですが、上原さんによると、凍土壁だけではダメで、基盤に水平な面でも凍土を作ることと合わせて行うことが重要だということです。確かに、水平方向にも壁が欲しいですよね。


3.まとめ

東電は、汚染水処理対策委員会の提案と経産大臣の指示を受けて陸側遮水壁(凍土壁)の検討に入りましたが、上原さんの主張・提案を読んでしまうと、水平方向の凍土壁はなくても大丈夫なのか非常に気になるところです。専門家が集まってあのような提案をしたのですが、わずか3回の会議で結論を出していますから、おそらく委員会開催前から大筋の方針はあったと見た方がいいと思います。この委員会に上原さんが呼ばれていたらどういう結論になったのか、その議論を聞いてみたかったと思います。

また、上原さんの話を読んでみて、サブドレンの復旧を妨げているのは実は4号機の使用済み燃料プールの強化のための工事が原因だったということも初めてわかりました。こうなるとなかなか優先順位がつけづらいですね。

ですが、誰もがサブドレンの重要性を認識しているのであれば、サブドレンの復旧を最優先で行い、地下水の汲み出しによる水位管理を早くできるようにすべきと思います。地下水は、建屋に入れてしまって汚染水にしてしまうのではなく、建屋に入れる前に汲み上げてできるだけ汚染しない状況を作り出すべきです。もし地下水バイパスと同様に、地元の了解がなかなか得られなくてすぐに海に放流できなければタンクに貯めておいても良いと思います。サブドレン水として汲み上げてしまえば建屋に流入する地下水=汚染水の量はその分減りますし、汚染水よりはサブドレンで汲み上げた地下水の方がはるかに漏えい時のリスクは低いのは誰もが容易に理解できることです。

汚染水処理対策委員会の「サブドレン中の放射能濃度によっては、稼働できない可能性がある。」というコメントは、現在の地下水バイパスの水すら海に放流することが難しいという現状をあまり考えずに書いているものです。

前回の「地下貯水槽の汚染水漏れから1ヶ月(4):汚染水対策の本質的な解決策は?中編」ではサラッとしか紹介しませんでしたが、汚染水処理対策委員会がまとめた凍土遮水壁を用いる場合の必要タンク量のシミュレーションのグラフでは、地下水バイパスやサブドレンを稼働させると必要なタンク容量は現状よりも大きく低下します。

6/1-8

これは、地下水バイパスで汲み上げた地下水やサブドレンで汲み上げた地下水は汚染水ではないので海に放流するという暗黙の前提の元に書かれていることは敢えてコメントしておく必要があります。

地下水バイパスで汲み上げた地下水は科学的には海に放流しても問題ないと私は考えています。東電のこれまでの姿勢が問題だったために地元の了解が簡単に得られないだけです。一方、サブドレンで汲み上げた水は、放射能濃度にもよりますが、例え多少の汚染があってもまずはサブドレンを稼働させ、汲み上げた地下水は放射能濃度がそれなりにあるならばしばらくはタンクで貯めておくしかないと思います。

仮に放射性核種が検出されたとしても、汚染水よりは遙かに少ないはず(東電が情報を隠していなければ、ですが)ですので、ALPSなどで処理してから海に放流すれば良いと思います。根本的には「高濃度汚染水」ではないはずですので、地下水バイパスで汲み上げた地下水と同列に議論してもいいと考えています。ここから先は科学的な問題ではなく、社会的な問題です。

以上、なかなか復旧できないサブドレンの地下水管理における重要性を理解していただき、早期にサブドレンを復旧することの意義を主張して、この(5)を終わりたいと思います。ちなみに、途中でご紹介した上原さんもサブドレンの復旧については同じ意見です。


このシリーズ一覧:
地下貯水槽の汚染水漏れから1ヶ月(1):ここまでの情報の整理
地下貯水槽の汚染水漏れから1ヶ月(2):過去の漏えいとの位置関係を整理
地下貯水槽の汚染水漏れから1ヶ月(3):汚染水対策の本質的な解決策は?前編
地下貯水槽の汚染水漏れから1ヶ月(4):汚染水対策の本質的な解決策は?中編
地下貯水槽の汚染水漏れから1ヶ月(5):汚染水対策の本質的な解決策は?後編
参考:伊藤教授の土質力学講座

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3.11では、停電・断水のため、一晩避難所で過ごし、震災後の情報収集をきっかけにブログを始めました。
これまで約4年間、原発事故関係のニュースを中心に独自の視点で発信してきました。その中でわかったことは情報の受け手も出し手も意識改革が必要だということです。従って、このブログの大きなテーマは情報の扱い方です。原発事故は一つのツールに過ぎません。

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