2号機からの海洋漏洩の真実は?2年前の漏洩事故を再検証(1)
昨年私は、「福島第一原発2号機の謎に迫る(仮題)」として一連のシリーズを書いてきました。その中でもメインの話の一つが今回書き直す2011年4月の2号機スクリーンから海への高濃度汚染水の漏えい事故の経緯です。この事故さえなければ、今の福島県の漁業への被害の多くは防げただろうと思える重大事故ですから、国民は本当のことを知っておく必要がありますが、まだ真実は明らかになっていません。
そのことが、今年6月の港湾部地下水からの高濃度トリチウムあるいはストロンチウム(全β)発見での大騒ぎにつながっているのです。私自身は今回の地下水観測孔からの高濃度の放射性物質発見は予想通りだったので驚きませんでしたが、さらなる調査により2年前の真実解明につながる可能性があると考えて事態の進展を見守っています。
7/5に「2年前の2号機スクリーン漏洩事故の謎に再度挑戦! 予告編」で予告したように、今回から数回にわたって、昨年5月に書いた「2号機からの海洋漏洩はいつ始まったのか?(2)細かく検証してみましょう Aバージョン」「2号機からの海洋漏洩はいつ始まったのか?(2)細かく検証してみましょう Bバージョン」を書き直して再検証していきます。
もともと「福島第一原発2号機の謎に迫る(仮題)」シリーズの一つだったため、わかりにくいところがあるかもしれませんが、その場合はこのシリーズの他の回を読んでみてください。きっとわかるようになると思います。
昨年書いた内容と重複する部分もかなりありますが、新しい情報と新しい考察を加えて、再度2年前の事故の謎に迫りたいと思います。そして、このところ話題となっている港湾付近の地下水観測孔との関係についても考察しようと思います。
週に1回くらいの更新の予定です。本日は第1回で、新しい情報も踏まえて何が起こったのか、公開された情報から多少の推論を加えて事実を確認していきたいと思います。そのための重要な情報源は、2013年2月に東京電力が公開してくれた大量の写真です。写真が多いので分量はかなり多くなっていますから、お時間のある時にじっくりとお読み下さい。
1. 2号機からの海洋漏洩が起こった場所はどこか?
2011年4/2、東京電力は2号機の海水スクリーンから海に放射能汚染水が漏洩しているという事を発表しました。この写真に見覚えのある方も多いでしょう。

(東京電力HP 写真・動画集より)
まずは「海水スクリーン」って何?という素朴な疑問に答えましょう。「福島第一原子力発電所の基本的な構造、特にサブドレンを理解しましょう」で解説したように、原発は海水を取り入れて冷却水として使っています。しかし、海水には海藻、クラゲ、小魚、などが混ざっているため、それを除去する装置が除塵装置(スクリーン)です(参考:三菱化工機のHP)。
スクリーンにも下の図のようにバースクリーンとトラベリングスクリーンなど種類があるようですが、ここではそこまでは立ち入りません。

(宇部テクノエンジHPより)
そうしてゴミを除いた海水をポンプで吸い上げてタービン建屋に送りこむのです。
福島第一原発2号機のスクリーン、ポンプ室とタービン建屋の位置関係を下の図で示します。今回は、今はもうなくなってしまいましたが、政府の事故調の資料、特に中間報告書の資料を用います。そこにしか細かい情報が出てこないからです。

(東電福島原発事故調査・検証委員会 中間報告書資料V-8より)
上の図では、海(東)が下になっています。2号機のタービン建屋を正面にして海側から見ると、海水スクリーンがあり、その奥に海水をくみ上げるポンプ室があります。そして緑色が海水配管トレンチといって、蒸気を冷却するための海水をタービン建屋の復水器に送りこむための通路です。このトレンチはタービン建屋の内部につながっています。2号機のトレンチに漏れ出してきた汚染水は、タービン建屋からこのトレンチを通じて流れ出してきたと考えられています。
黄色は電源ケーブルトレンチといって、電源ケーブルが埋設されている通路です。また、オレンジ色は電源ケーブル管路といって、電源ケーブルが埋設されています。
上の図で、2号機の海水スクリーン付近をもう少しわかりやすく描いたものが次の図です。この図は立体的に描いてくれているのでイメージしやすいですよね。

(中間報告書資料V-9より)
上の図で、赤い○がついているのが、流出が起こった場所です。赤い○から、厚さ1.5mのコンクリートにできたひび割れを通じて海水スクリーンの中に水が流れ込んでいったのです。
写真でいうと、赤い○に当たるピットが下の写真です。四角い穴が空いているところです。男の人が立っている前のコンクリートに長い亀裂が入っていることにご注目ください。地震でこれだけのひび割れが起こるほどの被害が出ていたのです。

さらに細かい情報を示す図面が次の図です。複数の図があるのでわかりにくいですが、一番上の図が上から見た図です。(画像をクリックすると別画面に拡大されます。他の図も同じです。)そして、そこに記載されているAとかBという記号に沿って切り出した断面図が、B-B断面図とA-A断面図です。B-B断面図は、黄色い電源ケーブルトレンチとオレンジの電源ケーブル管路の部分の断面を示しているものです。ここで出てきているO.P.という数字は、「福島原発の汚染水をよく知るため、O.P.とサブドレンを理解しましょう」で解説したように、小名浜港の基準面からの高さを示しています。O.P.+2,500(またはO.P.+2.5m)と書けば小名浜港の基準面から2.5m高い位置という意味を示します。福島原発付近の平均海面水位はO.P.+0.828mだそうです(Wikipediaより)。

(中間報告書資料V-10より)
A-A断面図は、漏れ出したピットA(電源ケーブル管路の末端にあるピット)のところで南北方向に沿って切った断面図です。海水スクリーンや海水ポンプ室のあるあたりのO.P.はO.P.4200、ピットAはO.P.4150ですので、ピットAの内面の一番下がO.P.+2,200ということは、約2m低くなっているということです。ピットというのは人が入れるほどの大きさなのですね。実際、下の写真はピットAを北側から取った写真(先ほどの男の人が指さしている写真と同じ向き)ですが、海側(東側)に降りるための階段がついています。メンテナンスのために人が降りられる構造になっているのですね。

(東京電力HP 写真・動画集より)
昨年4/2に発見されたこのスクリーンからの放射能汚染水の漏洩事故について、できるだけ具体的なイメージを持ってもらいたいため、いろいろな図や写真を使って説明をしています。わからなくなったら、ぜひもとに戻って確認しながら読んでいってください。
参考までに、2013年7/5に発表されたこの周辺の地下水観測孔の位置を示します。図の描き方が違うので頭の中でひっくり返して欲しいのですが、この図では海(東)が上になっています。7/5に全βが900,000Bq/Lと発表された地下水観測孔No.1-2は、ピットBのすぐ北側にあることがわかります。現在のデータとの関係は次回以降に解説する予定です。

(2013/7/5 タービン建屋東側における地下水及び海水中の放射性物質濃度の状況について に加筆)
2.東京電力が取った対策とその効果(1) 2011/4/2
さて、当然のことながら、東京電力はこの汚染水の漏出を止めようとします。この漏洩を最初に確認したのは4/2の9:30頃。この時、ピットAの側面のコンクリートに20cmほどの亀裂があり、そこから汚染水が海に流出していることを確認したということです。そして4/2の12:20頃に現場で状況を再度確認します。それから、最初に行ったのは、ピットにコンクリートを流し込んで停止しようとすることでした。政府事故調中間報告書第5章(332ページ)によると、4/2の16:25、下の図でいうとピットB(上流にあるピット)にまずコンクリートの注入を開始しました。さらには19:02にピットAにもコンクリートの注入を開始しました。下の図の赤い○の部分です。

(中間報告書資料V-11より)
このとき、ピットAとピットBの間には電源ケーブルが通っており、また、両ピット内にはがれきが入っていたが、汚染水が非常に高濃度であったため、電源ケーブルやがれきを除去しないままピット内にコンクリートを注入したということです。
さて、ここまでは2012年に書いた話と同じなのですが、上の政府事故調中間報告書の記述に誤りがあることを今年2月に公開された写真集から発見しましたので紹介しましょう。4/2の写真の一覧はこれです。(69)2号機取水口付近における汚染水の流出・止水対策の状況(1)。この写真集はダウンロードできますので興味のある方はぜひご自分で確認して下さい。重要な点は、ダウンロードして写真ファイルのプロパティを見ると、撮影日時がついていることです。この日時、1-2分のずれはあるかもしれませんが、ほとんど正確であることは確認しています。
まずはこの写真から。タイムスタンプは2011/4/2 19:02です。写真中の資料番号と時刻は私が加えました(以下同じ)。上の説明でいうピットB(上流のピット)にコンクリートを入れようとしているのがわかります。まだピットはコンクリートで満たされていません。

一方、その4分後の2011/4/2 19:06の写真です。

先ほどの報告書の記述では、19:02からピットAにコンクリートを投入とありますが、上の2枚の写真から判断すると、どう見ても19:02にはピットAではなくピットBに投入していますよね。
つまり、なぜ東電が政府の事故調の取材に対して事実と逆の証言をしたのかという謎は残りますが、政府事故調の記述をひっくり返して、16:25のピットAにコンクリートを投入し、19:02にピットBにコンクリートを投入したというのが事実のようです。
この時点でのピットAの状況は下の写真のようになっています。2011/4/2 19:13の写真です。

もう、ピットAは完全に埋められて、どこにあるのかもわからないような状況になっていますよね。とても11分でここまでの作業が進行するとは思えません。この事からも順番が逆であることは確認できます。
実は、どうしてピットAのすぐそばから水が漏れ出しているのに、ピットAよりも先にピットBにコンクリートを投入したのか、1年前には政府事故調の記述を読んでいて理解できなかったのですが、今回の検証により、誰もが考える順番(ピットA→ピットB)でコンクリートを投入していたことがわかりました。ある意味納得できました。
しかし、上の写真については別の意味で謎があります。単にピットAにコンクリートを投入しただけではなく、周辺も掘り返すか何かしているのです。ピットAの周辺はコンクリートであり、南北にヒビが入っていたことは先ほどの男の人が指を指している写真で示しましたが、この写真ではそのヒビの入ったあたりにも何かをやっているようにも見えるのです。地面の色が黒っぽくなっていることからも、明らかにピットAの周辺に何かをやったことはわかります。
別の東京電力HPに公開されていた写真では、ピットAにコンクリートを投入している途中の写真も公開されています。これは時刻はわかりませんが、4/2の夕方(まだ明るい)ですから、この事からもピットAへのコンクリート投入を先に行ったことは明らかです。

翌朝の2011/4/3 07:07の写真でも周辺が色が変わっています。単にコンクリートを放り込んだだけのピットB(右側)と奥にあるピットA(まん中少し上)の対処の違いが感じられます。

時系列は少し前後しますが、4/4に撮られた別角度(海側)からの写真も紹介します。(2011/4/4 10:50)これだけ見てもよくわからないかもしれませんが、右側に見えるケーブルの束は、ピットAの中を通っていたケーブルを引き出したものです。ピットAの輪郭すらわからなくなっていますよね。でも、このケーブルの束が出てきているのがピットAの一番北側の端なのです。

もう一枚の写真は、北側から撮ったものです。おそらく別のカメラなので、タイムスタンプがこれにはありませんが、4/4のものです。。最初の方で紹介した、男の人がピットを指さしている写真で写っていたコンクリートに入っている亀裂が砂利で覆われて?完全に見えなくなっています。

なんでピットAに対してはこれだけ徹底的にコンクリートなどを投入して、一方ピットBには単にコンクリートを投げ込んだだけなのか?ここに何かカギがあると思います。
3.東京電力が取った対策とその効果(2) 2011/4/3
さて、残念ながら翌日の4/3になっても汚染水の流出は止まりませんでした。また、この汚染水はトレンチやタービン建屋にたまっていた高濃度汚染水と同じ濃度の汚染水であることも確認されました(詳細は次回後述します)。つまり、タービン建屋から高濃度汚染水が流出してきているということが確認されたわけです。
東京電力は、『コンクリート注入によっても流出が止まらない原因は、電線管路内や、ピット内のがれきの隙間にコンクリートが浸透せず、そこを汚染水が流れ続けているためであり、そこを塞ぐ必要があると考えた。しかし、その段階では既に、ピット上部はコンクリートで塞がれ、その下のがれきの隙間を埋めることは困難であったため、電線管路を塞ぐこととし、4 月3 日13 時47 分から、上流のピットBの更に上流に穴をあけ、高分子吸水ポリマー、おがくず及び新聞紙を投入した。しかし、流出は依然として止まらなかった。』(中間報告書第5章(332-333ページ脚注)より)ということです。
これについては下の図に解説がありますが、ピットAもピットBもすでにコンクリートを流し込んでしまったので、そのさらに上流にある黄色の電源ケーブルトレンチの末端部のところのコンクリートをはがして(「はつり」)、そこにおがくずや新聞紙、高分子ポリマーを流し込んでつまらせようという作業を行いました。それでも流出量に変化がありませんでした。
実は私は、おがくずや新聞紙という手法を見てこんな方法でいいの?と疑問を持っていた記憶があるのですが、1年前に読んだ「地下水放射能汚染と地震」(江口工著)という本(60ページ)によると、これはセメント注入工法(グラウト工法)と呼ばれる方法で、ダム建設をはじめ、新幹線や高速道路のトンネル建設でも使われている、地盤強化工法として一般に使われている工法なのだそうです。
投入したおがくずや新聞紙、吸水性の高分子ポリマーが水を含んで膨張するので、その分流速が弱くなり、そこにセメントを投入すると効果があるということらしいです。

(中間報告書資料V-12より)
この4/3の行動についても、写真集で見ることができます。(70)2号機取水口付近における汚染水の流出・止水対策の状況(2) 実はこの日の写真集を時系列順に見ていて、最初は何の写真を撮っているのかが全くわからなかったのですが、よく見ていくと、何のための写真なのかわかってきました。それでも外部の人間にとっては意味がよくわからない写真もあるのですが、おそらく見る人が見たらその意味がわかるような写真の撮り方をしていると思います。
さて、4/3はピットBのさらに上流にあるケーブル管路のコンクリートに穴を開ける(はつる)作業が行われました。朝からもう準備に入っていることがタイムスタンプからわかります。
この写真は、海側(東)から山側(西)に向けて撮った写真です。奥が西です。手前にコンクリート投入済のピットBが見えます。まん中奥に二人作業員がいるのが小さく見えると思います。ここが穴を開けた場所です。(2011/4/3 08:49)この後の写真もオレンジ色の配管に注目するとどの角度から撮ったかわかります。

この写真は、上の写真で右側に写っている3人の人がいたあたりからやや南向きに撮った写真です。(2011/4/3 07:14)冷却用の海水をくみ上げるポンプが後方に写っていますね。

次の写真は、西側から東側に向かって撮ったものです。作業員がコンクリートに穴を開ける場所にチョークで印をつけています。(2011/4/3 08:54)

その3分後の写真ですが、今度は反対に東側から西側に向かって撮った写真です。(2011/4/3 08:57)穴を開ける場所の白い四角が見えると思います。

念のため、この4枚の写真をどういう角度で撮ったのかを、下の図に示します。撮影時刻を書き込んであるので、照合していただけばこの周辺がどのような状況かわかると思います。

ここに穴をあけて(はつり)、おがくずや吸水ポリマーを流し込んだのです。この写真はやや南東側からとったもので、電源ケーブルトレンチ(上の図では黄色い線)と海水配管トレンチ(上の図では緑の線)の合流点が少しわかるような写真です。(2011/4/3 17:47)

この電源ケーブルトレンチに開けた穴に汚染水がたまっている写真がこれです。このトレンチから海側(東側)に向かって伸びていく3段×5列の電源ケーブル管路が見え、その2段目まで汚染水がたまっていることがわかります。(2011/4/3 13:32)

次の2枚の写真は、吸水ポリマーを入れている写真です。こんなようにショベルカーで入れていたのですね。(2011/4/3 17:38)

この写真は、まさに吸水ポリマーを投入している場面です。(2011/4/3 17:36)

残念ながら、4/3の吸水ポリマーやおがくずでは、水の流出の勢いは減りませんでした。ここでは紹介しませんが、毎日スクリーンからの水量がどんな様子か写真が撮られています。
4.東京電力が取った対策とその効果(3) 2011/4/4
翌4/4には立て坑(トレンチの立て坑として2011年3月末から報告されていた立て坑です)にバスクリンのようなトレーサーを入れて、流出口が白く濁るかどうかを確認しましたが、その効果はありませんでした。この話は4/4のtogetterのまとめに出てきた話です。
※実はこの立て坑は、汚染水の流れてくる大元であるため、スクリーンへの流出経路がどうであれ、ここに投入したトレーサーが流出口から流れてこないというのはおかしな話です。もしトレーサーが出てこないとすれば、4/3に投入したおがくずや高分子ポリマーなどに吸着したということしか説明ができません。この事についてはその後何の説明もありませんでした。謎が残ります。

4/4の写真はあまりありません。(72)2号機取水口付近における汚染水の流出・止水対策の状況(3) ここでは、4/3に入れたおがくずの写真が写った写真があります。(2011/4/4 10:56)

4/4はあまり目立った動きがありませんでした。正確に言うと、低濃度汚染水を意図的に放出するかどうか、というギリギリの判断がされたのがこの日です。東電もそちらの対応に注力しており、メディアの取り上げ方もそちらに注目が集まっていました。このあたりの話は政府事故調の中間報告書の第5章(333~337ページあたり)を読んでいただければよくわかると思います。
東電としては、低濃度汚染水の放出の話に注力したためにこちらの対応が手薄になったのか、単にどこから漏れているのかわからないため、トレーサーの様子を見ながら必死に作戦会議をやっていたのかはわかりませんが、表に出てきた動きはほとんどありませんでした。
5.東京電力が取った対策とその効果(4) 2011/4/5
4/5になって東京電力は、なぜ流出が止まらないのか?という原因は、流出ルートがピットやケーブル電源管路にあるのではなく、これらの下の砕石層である可能性が高いと考えて、今度はピットAの下の砕石層をふさぐことにしました。

東電HP:想定される要因(2011年4/5)より
まず、4/5の14:21頃に下のA-A断面図の1番と2番の箇所にボーリングを行い、14:28頃にバスクリンのような乳白色の入浴剤を入れてみて、スクリーンから流出してくる水が乳白色に濁るということが確認しました。

(中間報告書資料V-13より)
そこで、4/5の15:07に1番と2番から水ガラスの止水液をそれぞれ1500Lと660L注入しました。その結果、4/5には下の写真のように少し流量が弱くなったことが確認できました。4/5の夕方の記者会見では水ガラスの効果で流量が弱くなった、といっていましたが、この写真の撮影時刻は14:20ということで、実は水ガラスとは関係ないということが4/5の記者会見終了後に判明しています。

さらには、下の図(これは上から見た平面図です)にあるように別の角度から何回も水ガラスを注入していって、なんとか翌朝の4/6 5:38に流出を止めることができました。

(中間報告書資料V-14より)
この水ガラス投入の様子については、(79)2号機取水口付近における汚染水の流出・止水対策の状況(凝固剤注入状況)と(80)2号機取水口付近における汚染水の止水対策完了の状況で見ることができます。
次回以降検証するために、できるだけ細かく写真で状況をチェックしておきましょう。
まず、上の図に説明があったように、何度も水ガラスを注入しています。この写真は1番と2番の水ガラスを投入する準備をしている写真です。(2011/4/5 14:08)

4/4の立て坑に入れたトレーサーが全く出てこなかったことから、今回もまずトレーサーを注入しました。白いものが地面にこぼれているのが見えますが、これがトレーサーです。(2011/4/5 14:19)

記者会見の様子を記録したtogetter.com/li/120185によると、14:23に1番にトレーサーを注入し、14:34に2番にトレーサーを注入したとはっきりと言っています。参考までにニコニコ動画の記者会見動画へのリンクもつけておきます(ログイン必要)。43分~45分あたりです。
この後に示す3枚の写真は、何枚か撮られた写真のうちの一部です。まずこの写真では、まだ漏れ出している汚染水は透明のように見えます。(2011/4/5 14:21)

次の写真は、2年前にも公開された写真で、先ほどもお見せしたものです。タイムスタンプは14:22です。(2011/4/5 14:22)白く色がついているかどうか、微妙です。

この写真では、手前の水面の色も白くなってきており、この時にはトレーサーが汚染水に混ざって出てきたと考えられます。タイムスタンプは14:22です。記者会見では14:23にトレーサーを投入してほぼ同時に出てきたといっていますから、このデジカメの時刻が1分ほど遅れているのかもしれません。逆にいうとそれくらいのズレしかないということの証明でもあります。(2011/4/5 14:22)

確かにトレーサーが流れだしているということを別角度から撮った写真です。(2011/4/5 14:24)

さらに港湾内に向かってトレーサーが流れ出している様子がこの写真からもわかります。(2011/4/5 14:25)ここでは省略しますが、この時はトレーサーで海水が白く濁っている様子を何枚も写真に撮っています。

2番についても同様にトレーサーを入れて白く濁ったかどうかを確認している写真があるのですが、これは1番と同じなので省略します。
こうして、ピットAの下の砕石層から水が漏れ出しているということが流出発見から3日も経って、やっと確認できました。そこで次に止水剤として水ガラスを投入することになりました。
記者会見によると、15:07に水ガラスを投入したということなのですが、これは投入前の水ガラスを撮った写真です。(2011/4/5 15:02)

次の2枚は同じ場所から汚染水の色の変化を見ているものですが、15:04にはまだ白く濁った状態です。(2011/4/5 15:04)

それが、水ガラスを入れたためか、15:07には出てくる汚染水が茶色く濁りました。(2011/4/5 15:07)

こうして、1番と1500L、2番に660Lの水ガラスを投入しましたが、まだ完全には止まりませんでした。
この後は、場所を変えて3番、4番になります。ややこしいので先ほどの図を再掲します。この図の説明によると、3番、4番では入浴剤(トレーサー)、薬液(水ガラス)ともに注入効果がなしと記載されているのです。つまり、この部分は汚染水の流路でなかった可能性があります。

(中間報告書資料V-14より)
3番、4番の場所を写していると思われる写真です。(2011/4/5 18:58)

実は4番については、先ほどの政府事故調の報告書と、2011年4/6に保安院が発表した資料とでは向きが微妙に違うのです。この4番の向きは結構重要なのでここにはこだわりがあり、写真で検証したかったのですが、どちらの向きかは正確には判断できませんでした。

そして、3番、4番に効果がないことがわかって、次は5番6番です。もう日付が変わろうという頃です。ここでは垂直に水ガラスを注入しています。ですが、先ほどの政府事故調の報告書では、入浴剤(トレーサー)、薬液(水ガラス)ともに注入効果がなしと記載されています。(2011/4/5 23:24)

そして、日付も変わった頃になり、7番8番の準備が始まります。(2011/4/6 00:16)今回は、効果のあった1番2番のさらに深いところをボーリングして、そこに薬液注入を行うという形を取りました。

7番8番にトレーサーを入れた後だと思われる写真です。色が白く濁るとともに、4/5の段階よりもさらに流量が少なく、弱々しい流れになっているのがはっきりとわかります。(2011/4/6 01:58)あと一息だ、と現場の士気も上がってきたのではないでしょうか。

そして、7番8番に注入する準備が整いました。45度近く傾けて、深く注入したようです。(2011/4/6 00:16)

そして彼らの徹夜の闘いが報われる時が来ました。5時38分頃、汚染水の流出が完全に止まったのです。(2011/4/6 05:39)

そして、またここから汚染水が漏れ出してこないように、下の写真のように亀裂の所に20cm平方のゴム板をして、ゴム板が落ちないように突っ張り棒のようなもので押さえるという処理をしました。(2011/4/6 14:23)この説明は保安院の資料に手書きの資料が残っています。また、4/7のまとめのtogetter及びそこにリンクがあったニコニコ動画に関連する情報があります。

最後に、スクリーン近傍の港湾付近の写真が4/6の写真集に載っていましたので、二つご紹介します。
一つは、陸側から海に向かって撮った写真で、埋めてしまったピットAが右側に写っています。(2011/4/6 14:27)

もう一つの写真は、今問題となっていて、これから地盤改良をするといっている場所を含めて南から北に向かって撮った写真です。(2011/4/6 14:25)

これも、場所がイメージしやすいように撮影した場所と向きを図に示しましたので、これを見てこの付近がどんな様子なのかを把握してもらえればと思います。

このようにして、大量の海洋への漏洩事故は一段落したのです。
かなり長くなってしまったので、今日はここまでにしたいと思います。今回は、まず2年前の経緯をしっかりと皆さんに思い出していただくことを目的としています。
次回は、今回確認した内容を出発点として、何が起こったのかを突き止めるために必要な情報の吟味、考察をしていきたいと思います。
続きはこちら
「2号機からの海洋漏洩の真実は?2年前の漏洩事故を再検証(2) トレンチの謎」
2011年4/2、東京電力は2号機の海水スクリーンから海に放射能汚染水が漏洩しているという事を発表しました。この写真に見覚えのある方も多いでしょう。

(東京電力HP 写真・動画集より)
まずは「海水スクリーン」って何?という素朴な疑問に答えましょう。「福島第一原子力発電所の基本的な構造、特にサブドレンを理解しましょう」で解説したように、原発は海水を取り入れて冷却水として使っています。しかし、海水には海藻、クラゲ、小魚、などが混ざっているため、それを除去する装置が除塵装置(スクリーン)です(参考:三菱化工機のHP)。
スクリーンにも下の図のようにバースクリーンとトラベリングスクリーンなど種類があるようですが、ここではそこまでは立ち入りません。

(宇部テクノエンジHPより)
そうしてゴミを除いた海水をポンプで吸い上げてタービン建屋に送りこむのです。
福島第一原発2号機のスクリーン、ポンプ室とタービン建屋の位置関係を下の図で示します。今回は、今はもうなくなってしまいましたが、政府の事故調の資料、特に中間報告書の資料を用います。そこにしか細かい情報が出てこないからです。

(東電福島原発事故調査・検証委員会 中間報告書資料V-8より)
上の図では、海(東)が下になっています。2号機のタービン建屋を正面にして海側から見ると、海水スクリーンがあり、その奥に海水をくみ上げるポンプ室があります。そして緑色が海水配管トレンチといって、蒸気を冷却するための海水をタービン建屋の復水器に送りこむための通路です。このトレンチはタービン建屋の内部につながっています。2号機のトレンチに漏れ出してきた汚染水は、タービン建屋からこのトレンチを通じて流れ出してきたと考えられています。
黄色は電源ケーブルトレンチといって、電源ケーブルが埋設されている通路です。また、オレンジ色は電源ケーブル管路といって、電源ケーブルが埋設されています。
上の図で、2号機の海水スクリーン付近をもう少しわかりやすく描いたものが次の図です。この図は立体的に描いてくれているのでイメージしやすいですよね。

(中間報告書資料V-9より)
上の図で、赤い○がついているのが、流出が起こった場所です。赤い○から、厚さ1.5mのコンクリートにできたひび割れを通じて海水スクリーンの中に水が流れ込んでいったのです。
写真でいうと、赤い○に当たるピットが下の写真です。四角い穴が空いているところです。男の人が立っている前のコンクリートに長い亀裂が入っていることにご注目ください。地震でこれだけのひび割れが起こるほどの被害が出ていたのです。

さらに細かい情報を示す図面が次の図です。複数の図があるのでわかりにくいですが、一番上の図が上から見た図です。(画像をクリックすると別画面に拡大されます。他の図も同じです。)そして、そこに記載されているAとかBという記号に沿って切り出した断面図が、B-B断面図とA-A断面図です。B-B断面図は、黄色い電源ケーブルトレンチとオレンジの電源ケーブル管路の部分の断面を示しているものです。ここで出てきているO.P.という数字は、「福島原発の汚染水をよく知るため、O.P.とサブドレンを理解しましょう」で解説したように、小名浜港の基準面からの高さを示しています。O.P.+2,500(またはO.P.+2.5m)と書けば小名浜港の基準面から2.5m高い位置という意味を示します。福島原発付近の平均海面水位はO.P.+0.828mだそうです(Wikipediaより)。

(中間報告書資料V-10より)
A-A断面図は、漏れ出したピットA(電源ケーブル管路の末端にあるピット)のところで南北方向に沿って切った断面図です。海水スクリーンや海水ポンプ室のあるあたりのO.P.はO.P.4200、ピットAはO.P.4150ですので、ピットAの内面の一番下がO.P.+2,200ということは、約2m低くなっているということです。ピットというのは人が入れるほどの大きさなのですね。実際、下の写真はピットAを北側から取った写真(先ほどの男の人が指さしている写真と同じ向き)ですが、海側(東側)に降りるための階段がついています。メンテナンスのために人が降りられる構造になっているのですね。

(東京電力HP 写真・動画集より)
昨年4/2に発見されたこのスクリーンからの放射能汚染水の漏洩事故について、できるだけ具体的なイメージを持ってもらいたいため、いろいろな図や写真を使って説明をしています。わからなくなったら、ぜひもとに戻って確認しながら読んでいってください。
参考までに、2013年7/5に発表されたこの周辺の地下水観測孔の位置を示します。図の描き方が違うので頭の中でひっくり返して欲しいのですが、この図では海(東)が上になっています。7/5に全βが900,000Bq/Lと発表された地下水観測孔No.1-2は、ピットBのすぐ北側にあることがわかります。現在のデータとの関係は次回以降に解説する予定です。

(2013/7/5 タービン建屋東側における地下水及び海水中の放射性物質濃度の状況について に加筆)
2.東京電力が取った対策とその効果(1) 2011/4/2
さて、当然のことながら、東京電力はこの汚染水の漏出を止めようとします。この漏洩を最初に確認したのは4/2の9:30頃。この時、ピットAの側面のコンクリートに20cmほどの亀裂があり、そこから汚染水が海に流出していることを確認したということです。そして4/2の12:20頃に現場で状況を再度確認します。それから、最初に行ったのは、ピットにコンクリートを流し込んで停止しようとすることでした。政府事故調中間報告書第5章(332ページ)によると、4/2の16:25、下の図でいうとピットB(上流にあるピット)にまずコンクリートの注入を開始しました。さらには19:02にピットAにもコンクリートの注入を開始しました。下の図の赤い○の部分です。

(中間報告書資料V-11より)
このとき、ピットAとピットBの間には電源ケーブルが通っており、また、両ピット内にはがれきが入っていたが、汚染水が非常に高濃度であったため、電源ケーブルやがれきを除去しないままピット内にコンクリートを注入したということです。
さて、ここまでは2012年に書いた話と同じなのですが、上の政府事故調中間報告書の記述に誤りがあることを今年2月に公開された写真集から発見しましたので紹介しましょう。4/2の写真の一覧はこれです。(69)2号機取水口付近における汚染水の流出・止水対策の状況(1)。この写真集はダウンロードできますので興味のある方はぜひご自分で確認して下さい。重要な点は、ダウンロードして写真ファイルのプロパティを見ると、撮影日時がついていることです。この日時、1-2分のずれはあるかもしれませんが、ほとんど正確であることは確認しています。
まずはこの写真から。タイムスタンプは2011/4/2 19:02です。写真中の資料番号と時刻は私が加えました(以下同じ)。上の説明でいうピットB(上流のピット)にコンクリートを入れようとしているのがわかります。まだピットはコンクリートで満たされていません。

一方、その4分後の2011/4/2 19:06の写真です。

先ほどの報告書の記述では、19:02からピットAにコンクリートを投入とありますが、上の2枚の写真から判断すると、どう見ても19:02にはピットAではなくピットBに投入していますよね。
つまり、なぜ東電が政府の事故調の取材に対して事実と逆の証言をしたのかという謎は残りますが、政府事故調の記述をひっくり返して、16:25のピットAにコンクリートを投入し、19:02にピットBにコンクリートを投入したというのが事実のようです。
この時点でのピットAの状況は下の写真のようになっています。2011/4/2 19:13の写真です。

もう、ピットAは完全に埋められて、どこにあるのかもわからないような状況になっていますよね。とても11分でここまでの作業が進行するとは思えません。この事からも順番が逆であることは確認できます。
実は、どうしてピットAのすぐそばから水が漏れ出しているのに、ピットAよりも先にピットBにコンクリートを投入したのか、1年前には政府事故調の記述を読んでいて理解できなかったのですが、今回の検証により、誰もが考える順番(ピットA→ピットB)でコンクリートを投入していたことがわかりました。ある意味納得できました。
しかし、上の写真については別の意味で謎があります。単にピットAにコンクリートを投入しただけではなく、周辺も掘り返すか何かしているのです。ピットAの周辺はコンクリートであり、南北にヒビが入っていたことは先ほどの男の人が指を指している写真で示しましたが、この写真ではそのヒビの入ったあたりにも何かをやっているようにも見えるのです。地面の色が黒っぽくなっていることからも、明らかにピットAの周辺に何かをやったことはわかります。
別の東京電力HPに公開されていた写真では、ピットAにコンクリートを投入している途中の写真も公開されています。これは時刻はわかりませんが、4/2の夕方(まだ明るい)ですから、この事からもピットAへのコンクリート投入を先に行ったことは明らかです。

翌朝の2011/4/3 07:07の写真でも周辺が色が変わっています。単にコンクリートを放り込んだだけのピットB(右側)と奥にあるピットA(まん中少し上)の対処の違いが感じられます。

時系列は少し前後しますが、4/4に撮られた別角度(海側)からの写真も紹介します。(2011/4/4 10:50)これだけ見てもよくわからないかもしれませんが、右側に見えるケーブルの束は、ピットAの中を通っていたケーブルを引き出したものです。ピットAの輪郭すらわからなくなっていますよね。でも、このケーブルの束が出てきているのがピットAの一番北側の端なのです。

もう一枚の写真は、北側から撮ったものです。おそらく別のカメラなので、タイムスタンプがこれにはありませんが、4/4のものです。。最初の方で紹介した、男の人がピットを指さしている写真で写っていたコンクリートに入っている亀裂が砂利で覆われて?完全に見えなくなっています。

なんでピットAに対してはこれだけ徹底的にコンクリートなどを投入して、一方ピットBには単にコンクリートを投げ込んだだけなのか?ここに何かカギがあると思います。
3.東京電力が取った対策とその効果(2) 2011/4/3
さて、残念ながら翌日の4/3になっても汚染水の流出は止まりませんでした。また、この汚染水はトレンチやタービン建屋にたまっていた高濃度汚染水と同じ濃度の汚染水であることも確認されました(詳細は次回後述します)。つまり、タービン建屋から高濃度汚染水が流出してきているということが確認されたわけです。
東京電力は、『コンクリート注入によっても流出が止まらない原因は、電線管路内や、ピット内のがれきの隙間にコンクリートが浸透せず、そこを汚染水が流れ続けているためであり、そこを塞ぐ必要があると考えた。しかし、その段階では既に、ピット上部はコンクリートで塞がれ、その下のがれきの隙間を埋めることは困難であったため、電線管路を塞ぐこととし、4 月3 日13 時47 分から、上流のピットBの更に上流に穴をあけ、高分子吸水ポリマー、おがくず及び新聞紙を投入した。しかし、流出は依然として止まらなかった。』(中間報告書第5章(332-333ページ脚注)より)ということです。
これについては下の図に解説がありますが、ピットAもピットBもすでにコンクリートを流し込んでしまったので、そのさらに上流にある黄色の電源ケーブルトレンチの末端部のところのコンクリートをはがして(「はつり」)、そこにおがくずや新聞紙、高分子ポリマーを流し込んでつまらせようという作業を行いました。それでも流出量に変化がありませんでした。
実は私は、おがくずや新聞紙という手法を見てこんな方法でいいの?と疑問を持っていた記憶があるのですが、1年前に読んだ「地下水放射能汚染と地震」(江口工著)という本(60ページ)によると、これはセメント注入工法(グラウト工法)と呼ばれる方法で、ダム建設をはじめ、新幹線や高速道路のトンネル建設でも使われている、地盤強化工法として一般に使われている工法なのだそうです。
投入したおがくずや新聞紙、吸水性の高分子ポリマーが水を含んで膨張するので、その分流速が弱くなり、そこにセメントを投入すると効果があるということらしいです。

(中間報告書資料V-12より)
この4/3の行動についても、写真集で見ることができます。(70)2号機取水口付近における汚染水の流出・止水対策の状況(2) 実はこの日の写真集を時系列順に見ていて、最初は何の写真を撮っているのかが全くわからなかったのですが、よく見ていくと、何のための写真なのかわかってきました。それでも外部の人間にとっては意味がよくわからない写真もあるのですが、おそらく見る人が見たらその意味がわかるような写真の撮り方をしていると思います。
さて、4/3はピットBのさらに上流にあるケーブル管路のコンクリートに穴を開ける(はつる)作業が行われました。朝からもう準備に入っていることがタイムスタンプからわかります。
この写真は、海側(東)から山側(西)に向けて撮った写真です。奥が西です。手前にコンクリート投入済のピットBが見えます。まん中奥に二人作業員がいるのが小さく見えると思います。ここが穴を開けた場所です。(2011/4/3 08:49)この後の写真もオレンジ色の配管に注目するとどの角度から撮ったかわかります。

この写真は、上の写真で右側に写っている3人の人がいたあたりからやや南向きに撮った写真です。(2011/4/3 07:14)冷却用の海水をくみ上げるポンプが後方に写っていますね。

次の写真は、西側から東側に向かって撮ったものです。作業員がコンクリートに穴を開ける場所にチョークで印をつけています。(2011/4/3 08:54)

その3分後の写真ですが、今度は反対に東側から西側に向かって撮った写真です。(2011/4/3 08:57)穴を開ける場所の白い四角が見えると思います。

念のため、この4枚の写真をどういう角度で撮ったのかを、下の図に示します。撮影時刻を書き込んであるので、照合していただけばこの周辺がどのような状況かわかると思います。

ここに穴をあけて(はつり)、おがくずや吸水ポリマーを流し込んだのです。この写真はやや南東側からとったもので、電源ケーブルトレンチ(上の図では黄色い線)と海水配管トレンチ(上の図では緑の線)の合流点が少しわかるような写真です。(2011/4/3 17:47)

この電源ケーブルトレンチに開けた穴に汚染水がたまっている写真がこれです。このトレンチから海側(東側)に向かって伸びていく3段×5列の電源ケーブル管路が見え、その2段目まで汚染水がたまっていることがわかります。(2011/4/3 13:32)

次の2枚の写真は、吸水ポリマーを入れている写真です。こんなようにショベルカーで入れていたのですね。(2011/4/3 17:38)

この写真は、まさに吸水ポリマーを投入している場面です。(2011/4/3 17:36)

残念ながら、4/3の吸水ポリマーやおがくずでは、水の流出の勢いは減りませんでした。ここでは紹介しませんが、毎日スクリーンからの水量がどんな様子か写真が撮られています。
4.東京電力が取った対策とその効果(3) 2011/4/4
翌4/4には立て坑(トレンチの立て坑として2011年3月末から報告されていた立て坑です)にバスクリンのようなトレーサーを入れて、流出口が白く濁るかどうかを確認しましたが、その効果はありませんでした。この話は4/4のtogetterのまとめに出てきた話です。
※実はこの立て坑は、汚染水の流れてくる大元であるため、スクリーンへの流出経路がどうであれ、ここに投入したトレーサーが流出口から流れてこないというのはおかしな話です。もしトレーサーが出てこないとすれば、4/3に投入したおがくずや高分子ポリマーなどに吸着したということしか説明ができません。この事についてはその後何の説明もありませんでした。謎が残ります。

4/4の写真はあまりありません。(72)2号機取水口付近における汚染水の流出・止水対策の状況(3) ここでは、4/3に入れたおがくずの写真が写った写真があります。(2011/4/4 10:56)

4/4はあまり目立った動きがありませんでした。正確に言うと、低濃度汚染水を意図的に放出するかどうか、というギリギリの判断がされたのがこの日です。東電もそちらの対応に注力しており、メディアの取り上げ方もそちらに注目が集まっていました。このあたりの話は政府事故調の中間報告書の第5章(333~337ページあたり)を読んでいただければよくわかると思います。
東電としては、低濃度汚染水の放出の話に注力したためにこちらの対応が手薄になったのか、単にどこから漏れているのかわからないため、トレーサーの様子を見ながら必死に作戦会議をやっていたのかはわかりませんが、表に出てきた動きはほとんどありませんでした。
5.東京電力が取った対策とその効果(4) 2011/4/5
4/5になって東京電力は、なぜ流出が止まらないのか?という原因は、流出ルートがピットやケーブル電源管路にあるのではなく、これらの下の砕石層である可能性が高いと考えて、今度はピットAの下の砕石層をふさぐことにしました。

東電HP:想定される要因(2011年4/5)より
まず、4/5の14:21頃に下のA-A断面図の1番と2番の箇所にボーリングを行い、14:28頃にバスクリンのような乳白色の入浴剤を入れてみて、スクリーンから流出してくる水が乳白色に濁るということが確認しました。

(中間報告書資料V-13より)
そこで、4/5の15:07に1番と2番から水ガラスの止水液をそれぞれ1500Lと660L注入しました。その結果、4/5には下の写真のように少し流量が弱くなったことが確認できました。4/5の夕方の記者会見では水ガラスの効果で流量が弱くなった、といっていましたが、この写真の撮影時刻は14:20ということで、実は水ガラスとは関係ないということが4/5の記者会見終了後に判明しています。

さらには、下の図(これは上から見た平面図です)にあるように別の角度から何回も水ガラスを注入していって、なんとか翌朝の4/6 5:38に流出を止めることができました。

(中間報告書資料V-14より)
この水ガラス投入の様子については、(79)2号機取水口付近における汚染水の流出・止水対策の状況(凝固剤注入状況)と(80)2号機取水口付近における汚染水の止水対策完了の状況で見ることができます。
次回以降検証するために、できるだけ細かく写真で状況をチェックしておきましょう。
まず、上の図に説明があったように、何度も水ガラスを注入しています。この写真は1番と2番の水ガラスを投入する準備をしている写真です。(2011/4/5 14:08)

4/4の立て坑に入れたトレーサーが全く出てこなかったことから、今回もまずトレーサーを注入しました。白いものが地面にこぼれているのが見えますが、これがトレーサーです。(2011/4/5 14:19)

記者会見の様子を記録したtogetter.com/li/120185によると、14:23に1番にトレーサーを注入し、14:34に2番にトレーサーを注入したとはっきりと言っています。参考までにニコニコ動画の記者会見動画へのリンクもつけておきます(ログイン必要)。43分~45分あたりです。
この後に示す3枚の写真は、何枚か撮られた写真のうちの一部です。まずこの写真では、まだ漏れ出している汚染水は透明のように見えます。(2011/4/5 14:21)

次の写真は、2年前にも公開された写真で、先ほどもお見せしたものです。タイムスタンプは14:22です。(2011/4/5 14:22)白く色がついているかどうか、微妙です。

この写真では、手前の水面の色も白くなってきており、この時にはトレーサーが汚染水に混ざって出てきたと考えられます。タイムスタンプは14:22です。記者会見では14:23にトレーサーを投入してほぼ同時に出てきたといっていますから、このデジカメの時刻が1分ほど遅れているのかもしれません。逆にいうとそれくらいのズレしかないということの証明でもあります。(2011/4/5 14:22)

確かにトレーサーが流れだしているということを別角度から撮った写真です。(2011/4/5 14:24)

さらに港湾内に向かってトレーサーが流れ出している様子がこの写真からもわかります。(2011/4/5 14:25)ここでは省略しますが、この時はトレーサーで海水が白く濁っている様子を何枚も写真に撮っています。

2番についても同様にトレーサーを入れて白く濁ったかどうかを確認している写真があるのですが、これは1番と同じなので省略します。
こうして、ピットAの下の砕石層から水が漏れ出しているということが流出発見から3日も経って、やっと確認できました。そこで次に止水剤として水ガラスを投入することになりました。
記者会見によると、15:07に水ガラスを投入したということなのですが、これは投入前の水ガラスを撮った写真です。(2011/4/5 15:02)

次の2枚は同じ場所から汚染水の色の変化を見ているものですが、15:04にはまだ白く濁った状態です。(2011/4/5 15:04)

それが、水ガラスを入れたためか、15:07には出てくる汚染水が茶色く濁りました。(2011/4/5 15:07)

こうして、1番と1500L、2番に660Lの水ガラスを投入しましたが、まだ完全には止まりませんでした。
この後は、場所を変えて3番、4番になります。ややこしいので先ほどの図を再掲します。この図の説明によると、3番、4番では入浴剤(トレーサー)、薬液(水ガラス)ともに注入効果がなしと記載されているのです。つまり、この部分は汚染水の流路でなかった可能性があります。

(中間報告書資料V-14より)
3番、4番の場所を写していると思われる写真です。(2011/4/5 18:58)

実は4番については、先ほどの政府事故調の報告書と、2011年4/6に保安院が発表した資料とでは向きが微妙に違うのです。この4番の向きは結構重要なのでここにはこだわりがあり、写真で検証したかったのですが、どちらの向きかは正確には判断できませんでした。

そして、3番、4番に効果がないことがわかって、次は5番6番です。もう日付が変わろうという頃です。ここでは垂直に水ガラスを注入しています。ですが、先ほどの政府事故調の報告書では、入浴剤(トレーサー)、薬液(水ガラス)ともに注入効果がなしと記載されています。(2011/4/5 23:24)

そして、日付も変わった頃になり、7番8番の準備が始まります。(2011/4/6 00:16)今回は、効果のあった1番2番のさらに深いところをボーリングして、そこに薬液注入を行うという形を取りました。

7番8番にトレーサーを入れた後だと思われる写真です。色が白く濁るとともに、4/5の段階よりもさらに流量が少なく、弱々しい流れになっているのがはっきりとわかります。(2011/4/6 01:58)あと一息だ、と現場の士気も上がってきたのではないでしょうか。

そして、7番8番に注入する準備が整いました。45度近く傾けて、深く注入したようです。(2011/4/6 00:16)

そして彼らの徹夜の闘いが報われる時が来ました。5時38分頃、汚染水の流出が完全に止まったのです。(2011/4/6 05:39)

そして、またここから汚染水が漏れ出してこないように、下の写真のように亀裂の所に20cm平方のゴム板をして、ゴム板が落ちないように突っ張り棒のようなもので押さえるという処理をしました。(2011/4/6 14:23)この説明は保安院の資料に手書きの資料が残っています。また、4/7のまとめのtogetter及びそこにリンクがあったニコニコ動画に関連する情報があります。

最後に、スクリーン近傍の港湾付近の写真が4/6の写真集に載っていましたので、二つご紹介します。
一つは、陸側から海に向かって撮った写真で、埋めてしまったピットAが右側に写っています。(2011/4/6 14:27)

もう一つの写真は、今問題となっていて、これから地盤改良をするといっている場所を含めて南から北に向かって撮った写真です。(2011/4/6 14:25)

これも、場所がイメージしやすいように撮影した場所と向きを図に示しましたので、これを見てこの付近がどんな様子なのかを把握してもらえればと思います。

このようにして、大量の海洋への漏洩事故は一段落したのです。
かなり長くなってしまったので、今日はここまでにしたいと思います。今回は、まず2年前の経緯をしっかりと皆さんに思い出していただくことを目的としています。
次回は、今回確認した内容を出発点として、何が起こったのかを突き止めるために必要な情報の吟味、考察をしていきたいと思います。
続きはこちら
「2号機からの海洋漏洩の真実は?2年前の漏洩事故を再検証(2) トレンチの謎」
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