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2号機からの海洋漏洩の真実は?2年前の漏洩事故を再検証(3) 電源ケーブルはどこから?

 
今回は、7/15に書いた「2号機からの海洋漏洩の真実は?2年前の漏洩事故を再検証(2) トレンチの謎」の続きです。まだお読みでない方は、まず「2号機からの海洋漏洩の真実は?2年前の漏洩事故を再検証(1)」を最初に読んでください。そうでないと、話がわからなくなる可能性が高いと思います。

2013年12月8日追記:TV会議の情報を加えた最新の再検証シリーズを再開しています。そちらもぜひお読みください。詳しくは「2号機からの海洋漏洩の真実は?2年前の漏洩事故を再検証 目次」からどうぞ。

これまでのところ、今回を入れて3回に分かれています。あと1回か2回はかかりそうです。

7/7 「2号機からの海洋漏洩の真実は?2年前の漏洩事故を再検証(1)

7/15「2号機からの海洋漏洩の真実は?2年前の漏洩事故を再検証(2) トレンチの謎

7/21 「2号機からの海洋漏洩の真実は?2年前の漏洩事故を再検証(3) 電源ケーブルはどこから?



10.旧原子力保安院の写真からわかった事実

昨年も「2号機からの海洋漏洩はいつ始まったのか?(2)細かく検証してみましょう Bバージョン」で書いたのですが、私は昨年5月、東京電力がこれまでしてきた説明はどう見ても間違っている証拠になる写真を発見しました。それによって、真実を突き止めるために、再度一から考え直すことにしました。

その証拠とは、原子力保安院が撮影して公開していた6枚の写真です。貴重な写真を掘り起こした、と思ったら、実はこれと同じ写真は2011年の地震被害情報(第71報)(4月3日15時30分現在)ですでに公開されていたことを知って、1年も知らなかった自分の調査能力不足にちょっとがっかりしました。

脇道にそれましたが、ここに掲載された写真の何がすごいのか、これから細かく説明していきます。まず、最初の水漏れの写真2枚は映りが悪いのでここでは飛ばします。写真3から写真6までにご注目ください。これらは全て2011年4/2、つまり海への漏えいが発表された日の写真です。

まずは写真6です。手前に見えるのがピットB(上流)で、奥に見えるのがピットAです。写真の奥には見えませんが海があります。ピットAとピットBの説明は「2号機からの海洋漏洩の真実は?2年前の漏洩事故を再検証(1)」でしましたので今回は省略します。

5/8-保安院4
写真6 スクリーン設備本体(2)

次は写真5です。「2号機からの海洋漏洩の真実は?2年前の漏洩事故を再検証(1)」でもご紹介した東京電力のHPにある写真から人を除いたような写真です。ここに写っているのがピットAです。この写真は北から南に向かって撮っています。このピットAの形をよく見ておいてください。

5/8-保安院3
写真5 スクリーン設備本体(1)

比較のために、東京電力のHPの写真を再度示します。カメラが違うせいか、コントラストは違いますが、ほとんど同じですよね。

5/1-5
(東京電力のHPにある写真)

さて、これからが問題の2枚の写真です。まず下は写真4です。これは、ピットAの中が見えるように拡大して撮った写真です。

5/8-保安院2
写真4 ピット内部の状況(2)

先ほどの東京電力のHPにある写真を次に並べて示しますので、微妙に角度が違うのがわかるでしょう。でも、上の写真には、下の写真では見えなかった決定的に重要な情報が載っているのです。

5/1-7
東京電力HP 写真・動画集より)

その話をする前に、続いて写真3を示します。この写真は、どのピットか解説はありませんが、上の写真4とじっくり見比べれば、上の写真4がピットAを北側から撮って、上の写真3が同じピットAを西側から撮ったものだということはおわかりだと思います。

5/8-保安院1
写真3 ピット内部の状況(1)

どうです。写真4の重要な情報、わかりましたか?「えっ、何が重要なの?」と思った方のために解説しましょう。

下の図のように、写真4と写真3は別々の角度からピットAを撮ったものであることは明らかです。ここまではいいですよね。

5/8-保安院7

さて、上の図に記載したように、写真3にはピットAから北側に向かうケーブル管路(これは写真4や東京電力のHPの写真では絶対に見えないものです)があります。そしてその管路の脇には大きな亀裂が縦に入っています。上の図は政府事故調の中間報告書(資料V-14)を改変したものですが、たまたま地表面クラックという記載があります。しかし、地表面クラックの位置は、写真5と比べればわかるように、ピットAのまん中よりも東側(海側)に寄っています。つまり、写真3にある壁面にできた亀裂とぴったり一致することがわかるのです(下の図参照)。

5/11-3

実はピットAにはこんな大きな亀裂が入っていたのです。どうして東京電力のHPの写真ではこの亀裂を隠して写したのでしょうね。見せたくないのでしょうか?

それから、ケーブル管路についてですが、政府事故調の中間報告書において、この資料V-14の図だけがさらりと「スクリーン操作室(電線)管路」と記載してあります。しかし本文中にはこの管路に関する記載は一切ありません。また、他の資料の図には、これまでお見せしてきたように、いっさいこのケーブル管路に関する情報は載っていないのです。

さらにです。写真4をよく見て欲しいのです。木片でしょうか、がれきの陰になって見にくいですが、ピットAの西側(山側)の壁面がこの写真では写っています。本来ならば、下の図(中間報告書資料V-10)のように、この壁面にはケーブル管路がピットBから続いてきて、この写真で見えるケーブルは西側の管路から出てこないといけないのです。

5/8-保安院8
(政府事故調 中間報告書資料V-10を改変)

東京電力の記者会見において、このピットAにおいて、ケーブル管路から来たケーブルがこのピットでスクリーンの方に上がっていって、スクリーンに電源を供給するのだ、と説明していました。確かにケーブルは来て、スクリーンの方につながっていましたが、来る方向が、上の図のように西側から来るのではなく、北側から来ていました。しかも、西側にはケーブル管路はありません。これはいったいどういうことなのでしょうか?

さらに写真4および東京電力HPの写真をよく見ると、南側の壁面には、東京電力があると主張している3段×5列(あるいは6列?)のケーブル管路がかつてあり、それが埋められているのがわかります。南側の壁の先は1.5mの厚さのコンクリートなのですが、そこに穴を開けていた時期もあったのでしょうか?これについてはこれ以上はわかりませんが、東電がいうピットBとピットAをつなぐケーブル管路が3段×5列必要ならば、以前はこの南側の壁につながっていたという事だと思います。
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※このあたりの記述、結構重要な話なので、北とか西とかいわれてわからないと思った人は、読み飛ばさないで、手元に図を描くか印刷して、じっくり照らし合わせながら読んでいってくださいね。

今までの説明では、下の図で左のような流路でケーブル管路に沿って水が流れてきてピットAにもたまっていた、という理解でした。しかしながら、ピットBからピットAに行くケーブル管路が予想された場所になく、右のように別の場所にあるとなると、東京電力の説明図は間違っていることになります。

5/8-保安院9

一方、ピットBの方はどうなのでしょうか。これは東京電力のHPに1枚だけ写真があります。

ピットBの写真(南から見たもの)
5/11-5

これを見たら明らかなのですが、東側(海側:写真では右側)の壁には、ピットAにつながるケーブル管路の出口などありません。3段×5列のケーブルなど走っていないことは間違いありません。

つまり、ピットAとピットBの写真を解析した情報からまとめると下の図のようになっているということです。

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これが真実の解明にどう影響するか、説明しましょう。下の図は、東電が想定される要因として2011年4/5に説明に用いていた図です。この図では、ピットBとピットAの間をケーブル管路が走っていて、その下を砕石層があるという話で漏えい経路が推定されていたのですが、上のようにピットBとピットAの間にはケーブル管路がないとすると、その下の砕石層が本当にあったのかどうか疑問が生じてくるのです。

ピットの写真を見る限り、私は東電の説明は間違っていると確信しています。ただ、以前は東電が説明するような位置にケーブル管路があって、福島第一原発の稼働40年間のうちにケーブル管路の位置が変更になったとすると、砕石層自体は残っている可能性も否定はできません。他の事実と合わせてどちらが正しいと考えられるか今後検証していきたいと思います。

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実は、東京電力の記者会見でも、2011年4/5の時点ではピットAの北側のケーブル管路らしきものは記載しています。ただ、それが何かという説明はありませんでした。参考までに記者会見動画はこのリンクから見ることができます(ログイン必要)。(4/5 18:28会見のニコニコ動画より)

保安院のHPにも、4/5の16時現在の情報(第75報)としてしっかりと載っています。こちらもケーブル管路とは明示されていません。

5/11-7

ですが、東電のHPには、2011年4/6に「福島第一原子力発電所2号機取水口付近からの放射性物質を含む液体の海への流出の停止確認について(続報)」として収束した後に同様の説明が載っていますが、その前日の説明ではケーブル管路が削除されています。このケーブル管路を書いた方が正確な情報が伝わるのに、です。ここに何か意図的な削除の気配を私は感じました。

7/6-5
2011年4/6の東電HPより)

7/6-6
2011年4/5の東電HPより)


一方、政府事故調の中間報告書もお粗末です。あれだけ詳細な解析があり、3次元の見取り図を東京電力に提出させておき、資料V-14で「スクリーン操作室(電線)管路」という情報まで付け加えているのです。この中間報告書以外にこの管路の名前はありません。ということは、東京電力に聞き出して書いているのです。(V-14は「東京電力作成資料を元に作成」なので、事故調で付け加えて描いている図です。)

このケーブル管路の存在を知ったら、この先はどこにつながっているのか?この管路のO.P.はいくつなのか?割れ目からピットの水が漏れ出した可能性はないのか?などと、聞きたいことは山のように出てくるはずです。それを聞かなかったのか、聞いたけどわざと記載からは除外したのか?ならばなぜV-14には「スクリーン操作室(電線)管路」と記載したのか?政府事故調についても疑問が残る行動です。

ただ、この「スクリーン操作室」という記載は非常に重要でした。1年前から探していてわからなかったのですが、今回過去のいろいろな資料を見直していて、スクリーン操作室がどこにあるかついに発見しました。

2011年4月5日の資料に「試料採取場所(4月2日)」というものがありますが、そのpdfには拡大してよく見ると「スクリーン操作室」と読める場所がはっきりと記載してあります。(詳細は示しませんが、複数の資料で確認してあります。)

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2011年4/5の資料を拡大して加筆)

つまり、ピットAに来ていた電源ケーブル管路は、ピットAの北側にあるスクリーン操作室から来ていたのです。当時の東電の記者会見での説明からしても、スクリーンに電源を供給するのだということですから、電源ケーブルがスクリーン操作室からスクリーンにまで達しており、スクリーン操作室でスクリーンを操作するというのは理にかなっています。

では、その位置を別の資料で再度確認してみましょう。下の図は、今年7/19に発表されたもので、現在問題になっている地下水観測孔の位置もわかる資料に加筆してあります。

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今年7/19「タービン建屋東側における地下水および海水中の放射性物質濃度の状況について」p20の図に加筆

ということは、東電が資料でピットBからピットAまで電源ケーブル管路としてつないでいるのは間違いで、正しくはピットBからピットAへのケーブル管路は存在せず、スクリーン操作室からピットA(北から南)に来ているということになります。残念ながらその先はどこからケーブルが来ているのかはわかりませんが、おそらく西側からケーブルが延びていてどこかのトレンチにつながるのだと想像します。これについては東電が正しい資料を公開しない限り永遠に謎で終わる可能性も高いです。

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では、なぜ東電はこのスクリーン操作室の存在を隠すのでしょうか?上の図でも、よく見れば「スクリーン操作室」という文字の上に白い四角を貼り付けて見えなくしているのが消し損じて文字の左側の一部だけ見える漢字の列から判別できます。この情報はおそらく隠さないといけないのでしょう。ただ、ここには原子炉も核燃料もないので、いわゆる核物質を扱う上での機密とも思えません。それ以外に何か東電が隠したい理由があるのだと思います。

cryptomeというサイトに福島第一原発の写真がいくつも載っているのですが、そこの写真で確認すると、2011年3/20のスクリーン付近の写真があります。右下の煙を出している建物が爆発したあとの3号機です。2号機原子炉建屋の2という番号がうすく見えると思います。

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上の写真の部分拡大図にコメントをつけました。スクリーン操作室の跡は見えますが、建物があるようには見えません。
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確かなことは言えないのですが、cryptomeというサイトに載っている別角度からの写真(1枚目)でも3/20時点ではこの建物が確認できません。一方、同じサイトの別のページの最後の写真(2010年9/18)では事故前の福島第一原発の全景が写った写真があるのですが、そこでは明らかに該当する場所に建物が写っています。地震・津波の前までは存在していたことは間違いありません。

ということは、おそらくこのスクリーン操作室は津波で流されてしまったのでしょう。ただ、そのことをなぜ隠さないといけないのかはわかりません。何か理由があるのでしょう。

しかし、この正しい管路の情報については、第三者である旧保安院が別角度から撮った写真を公開さえしなければ絶対にわからなかった情報なのです。東京電力が公開している情報だけでは絶対にわかりませんでした。この件からもわかるように、東京電力はかなりチェックしてから情報公開を行っていた(いる?)のです。


11.情報を整理します

旧保安院の写真によって、話の前提が変わってしまいました。そこで、ここまでわかっていることと疑問点を再度整理してみたいと思います。

(1) ピットの構造について

ピットA周辺の構造について

・サイズ:1.2m×1.9m×深さ2m:4/2には下の約20cmには溜まり水があった。
・ピット底面の高さはO.P.2200。従って20cmたまっているならば水の水位はO.P.2400。2011年4/2のタービン建屋および立て坑の汚染水の液面はO.P.2960なので、約50cm低いことになる。
・北側の壁面:写真3から3段×3列のケーブル管路がある。震災直前までこの管路は使われていて、多数のケーブルが管路の中を通っている。ケーブルは、スクリーン操作室(北)から来て南のスクリーンへとつながっている。
 また、この壁面には地表のクラックと連なると思われる大きな亀裂が上下に入っている。これだけの亀裂があれば、もし汚染水がピットAにたまったらこの亀裂からあふれ出すことは容易に想像できる。
・東側の壁面:ハシゴがある。そのハシゴの付近によく見ると小さなケーブル用の穴が二つある。このケーブルは東側(海側)につながっている模様。
・西側の壁面:写真4でがれきに隠れて見にくいが、中間報告書資料V-10に記載されているような3段×5列の管路は存在しないと断言できる(あれば横120cm×縦70cmもあるので写真3のようにはっきりと写っているはず)。
・南側の壁面:写真4及び東京電力HPの写真から、3段×5列(もしくは6列?)のケーブルが通るサイズの穴があった形跡がある。しかし今はその穴は埋められていて使われていない。

5/11-4

ピットB周辺の構造について

東京電力のHPに1枚だけ写真がある(南から北に向かって撮った写真)。
・水が数10cmたまっている。高濃度汚染水かどうか情報が一切なく、どのような水かは不明。
・東側の壁面:東京電力HPの写真から、地震によるものかどうか不明だが、大きな穴のようなものがあり、鉄筋が露出している。中間報告書資料V-10に記載の3段×5列の管路は存在しないと断言できる。
・北側の壁面:ハシゴがある。地上に近いところに地面に平行に大きなクラックがある。
・南側の壁面:見ることができない。ピットAのようにケーブル管路のあとがあるかどうか気になる。もしあれば南側にピットBとピットAをつなぐ管路があった可能性がある。
・西側の壁面:見ることができない。電源ケーブルトレンチにつながるケーブル管路があるかどうか気になる。
ピットBの写真(南から見たもの)
5/11-5

つまり、まとめると下の図のようになっているということです。

7/21-6


(2) 東京電力の取った対応について

4/2 朝9:30頃発見。12:20頃に再度確認し、スクリーンに水が流出していることを確認。スクリーンの壁に亀裂が20cmほどあった。ピットAの水面から120cmのところで空間線量率が、>1000mSv/h。

4/2 12:40サンプリング ピットAの水のCs-137は1,900,000Bq/cm3。2号機スクリーンは120,000Bq/cm3(正確な数値は4/5発表だが4/2時点で速報は判明済)。

4/2 16:25 ピットAをコンクリートで埋める。19:05 ピットBも埋める。しかし流量に変化はなかった。

4/3 上流の電源ケーブルトレンチのコンクリートをはがし、そこにおがくず、高分子ポリマー、新聞紙を投入して下流のケーブル管路を塞ごうとした。下記は保安院の昨年4/6報告書5ページより。
『2号機バースクリーン近傍にあるピット内に溜まっている水の海水への流出を防止する措置として、取水電源トレンチの天端を破砕し、おがくず(3kg/袋)20袋、高分子吸収材(100g/袋)80袋、裁断処理した新聞紙(大きいゴミ袋)3袋を投入(4月3日13:47~14:30)』
おがくずが滞留していたので、水を入れてさらにバイブレーターで撹拌した。しかし流出量に変化はなかった。
4/3 18:25サンプリング 2号機スクリーンのCs-137は36,000Bq/cm3(4/5発表)。この日、物揚場と4号機は午前中のサンプリング。

4/4 さらに上流のトレンチの立て坑にトレーサー(バスクリンのような乳白色の入浴剤)を13kg投入。一日経ってもトレーサーは流出口から出てこなかった。
4/4 9:00サンプリング2号機スクリーンのCs-137は96,000Bq/cm3(4/5発表)。

4/5 8:00サンプリング 2号機スクリーンのCs-137は5500Bq/cm3と前日の1/10以下に低下。
4/5 夕方の記者会見で、14:20撮影(タイムスタンプ14:22)の流量が落ちた写真を公開。これはまだトレーサーを入れる前後で、水ガラスは入れる前のもの。
4/5 14:18頃にピットAの下にある砕石層にボーリング及び14:23と14:34頃にトレーサー注入。すぐに流出口から出てきたため、15:07、水ガラスを2箇所から約2100L投入。その後も合計6000Lの水ガラスを投入。

4/6 5:38頃、流出が止まる。同日、ゴム板で亀裂を塞ぐ。下記は保安院の昨年4/7報告書5ページより。
『さらに、流出していた箇所について、ゴム板と治具(つっかえ棒)により止水の対策を実施(4月6日13:15完了)』

(3) 海水の放射能濃度の推移

次に示す表は、東京電力のHPから抜き出してきたデータです。(沿岸:2011年4/44/54/64/74/84/9スクリーン:2011年4/54/64/74/84/9単位がいつものBq/LではなくBq/cm3であることにご注意下さい。Bq/Lにしたらこの1000倍です。なお、「-」は測定していないことを示します。

5/3-5

上の表に記載したそれぞれの場所を念のために下の図で示します。5,6号放水口北と、1-4号南放水口は港湾の外で、外洋そのものですが、1-4号スクリーンと物揚場は港湾内部ですので、港湾によって多少は拡散が防がれる可能性もあります。

5/3-4

実際にデータを見ると、5、6号放水口北と1-4号南放水口のCs-137の濃度は、4号スクリーンよりも100倍程度低い濃度であることがわかります。このことから、港湾の岸壁によって外海への漏洩がガードされており、海水でかなり希釈された状態でしか外海へは漏洩していないことが見て取れます。

ただ、今回は詳細には示しませんが、昨年4月末に「2号機からの海洋漏洩はいつ始まったのか?(1)シミュレーションからの推定」で示したように、5、6号放水口北と1-4号南放水口の海水濃度は2号機スクリーンの漏えいが発見された4/2よりも数日前の3/26から始まっている可能性がI-131/Cs-137比率から示されているのです。これも、4/2以前の動きを推論する際には重要な条件の一つとなります。

なお、例えば1-4号南放水口の数字の動きについては、潮の流れを計算すると、「流れが速い場合には濃度が低くなり、流れが遅い場合には濃度が高くなる」風応力を反映したものだということが津旨さんの日本語論文に記載されていました。この数字の上下には潮の流れの速さが関係しているようです。


一つだけ細かくこのデータを見ておきましょう。2号スクリーンにおいて、4/5 朝8時には前日の1/10以下に下がっています。これは実は重要なポイントだと私は考えています。この時点ではまだ水ガラスは注入していませんので、それ以前のおがくずや新聞紙がある程度の効果を発揮していた可能性が高いと思います。真実を突き止めるためには、この事実を説明できる仮説が必要です。


12.真実は何か?満たさなければいけない条件は?

上で整理したことには実はまだ多くの謎があります。その中のいくつかは東電が把握しているが公表していないこともあるでしょうし、東電自体も把握していないこともあるでしょう。そのため、永遠に明らかにならないこともあると思います。

しかしながら、ピットAとピットBの間の電源ケーブルがないなど、東電が公表している説明では明らかに事実と合致せず、何が起こったのかを解明することにはつながらないのです。

今後、地下水観測孔をいくつも掘って調査することによって判明してくることもあるでしょうが、少なくとも今まで明らかになっている事実を説明できる仮説が必要です。

その仮説が満たすことが必要と私が考える条件を以下に挙げます。

(1) 4/1以前にはピットA付近の雰囲気線量はそれほど高くなく、4/2になって初めて上昇したこと。これは、ピットAには4/1か4/2に初めて高濃度の汚染水が流れ込んできたことを意味します。

(2) 4/2にピットA内の汚染水はCs-137が1,900,000Bq/cm3、スクリーンから海に流れ出している水はCs-137が1,800,000Bq/cm3と、どちらも2号機のタービン建屋内とほぼ同じ濃度の放射能が検出されたこと。つまり、ピットAに流れ込んできた汚染水が地下水などで希釈されずにほぼそのまま流出したこと。ピットAの水位はO.P.で約2400であったこと(その日のトレンチの水位はO.P.2960であるがそれより低いこと)。

(3) 4/3に上流のケーブル管路をはつっておがくずや吸水ポリマーを投入したのに流量が下がらなかったこと。

(4) 4/4にトレンチ立て坑にトレーサー(バスクリンのようなもの)を投入したにも関わらず、スクリーンからはトレーサーは一切出てこなかったこと。

(5) 4/5の2号スクリーンの海水放射能は、Cs-137でいうと前日4/4 9:00の96000Bq/cm3から4/5 8:00の5500Bq/cm3にまで低下したこと(この期間には新たな対策はとっておらず、最終的に漏えいを止めた水ガラスなどの投入は4/5 15:07以降である)。一方、漏えいが止まった翌日4/6 7:40には3200Bq/cm3にしか低下していないこと。

(6) 4/5にピットAの下部に水ガラスを大量に投入して止水できたこと。また、直前のトレーサーの投入では、トレーサーを入れてすぐに白い水が出てきたこと。

(7) 4/6に止水をしたことにより、トレンチ立て抗やタービン建屋の水位がさがらずに上がったこと。

(8) そもそも、海洋への直接流出が始まったのは2011年3/26頃の可能性が論文などで示されていること。ただし、このことは今回の海洋漏えい経路と直接関係していないかもしれないため、これは必ずしも満たされなくても良いと思います。


これらの条件を全て満たす説明を考えるのは実は結構大変です。今回は東電の説明が上の8条件をどこまで満たしているか、検証しましょう。まず東電の説明をもう一度確認します。

当初(4/2)保安院が発表した資料(第69報)では、政府事故調の中間報告書と同じく、正しい情報を記載しています。緑色の海水配管トレンチ(ダクト)とオレンジの取水電源トレンチとの合流する地点(底版O.P.1985というあたり)に注目してください。コンクリートをはつって(穴を開けて)おがくずなどを投入したのはこの二つのトレンチの交わった点です。
7/6-9

ところが断面図については、翌4/3の朝の保安院の第70報の資料以降、基本的なトレンチの配置はその後の4/5の朝の保安院の第74報の資料4/5の東京電力HP掲載資料と全く同じです。海水配管トレンチと電源ケーブルトレンチのつなぎ目は、4/3にコンクリートをはがしておがくずを入れた場所よりも山側(西側)にあることになっています。
7/6-7

本来は、断面図でいうと、下のような図になるべきなのです。
7/6-10

これは、東電が断面図を書いた際に(恐らく意図的に)実際とは異なる断面図を書いて保安院にも提出したからなのです。二つを合わせて見たら矛盾することは誰だって理解できます。ではなぜ東電はこのような図を作成したのか?それは上の条件(3)を説明するためなのです。

東電の説明で(1)(2)は問題ありません。しかし、(3)については、おがくず投入地点よりも上流(西側:陸側)に亀裂ができてそこから汚染水が砕石層に流れ出したからおがくずや吸水性ポリマーを加えても効果がなかったという説明をしてしまうと、(4)で立て坑に入れたトレーサーが出てこなかったことを説明できないのです。

トレンチ立て坑→海水配管ダクト(トレンチ)→取水電源トレンチ→ヒビ→砕石層→ピットA下部→スクリーンから海へ、という流れで汚染水が海に流出したならば、立て坑にトレーサーは必ず出てくるはずなのです。

従ってこの東電の説明では(4)を説明できないですし、(5)で4/5になぜCs-137の濃度が1/20程度に下がったのか、ということも説明ができません。わざわざ間違った図を描いても、何の意味もないのです。

もちろん、この時はまだかなり現場は慌てていましたから、間違えてしまった、という可能性もあります。ただ、ピットAとピットBをつなぐ管路がないことは現場では周知の事実のはずですから、それを含めてこういう説明をするというのは、何か隠したい事実があって、それを隠すためのストーリー展開をしている可能性も否定できないのです。

この場合、隠したい事実がもしあるとしたら、それは地下水への流出ではないかと思いますが、これについてはわかりませんのでこれ以上の言及はしません。

では、(4)や(5)を含めて、これらの条件をうまく説明できる仮説があるのでしょうか?

これについては、これからの一週間で大きな展開がない限り、次回にでも私なりの仮説を示したいと思います。東電がケーブル管路の情報を全て開示しないためにいくつかの仮定が入ってしまうのですが、仮定を含めても観測事実を説明できる仮説を提示しようと思います。

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3.11では、停電・断水のため、一晩避難所で過ごし、震災後の情報収集をきっかけにブログを始めました。
これまで約4年間、原発事故関係のニュースを中心に独自の視点で発信してきました。その中でわかったことは情報の受け手も出し手も意識改革が必要だということです。従って、このブログの大きなテーマは情報の扱い方です。原発事故は一つのツールに過ぎません。

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