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2号機からの海洋漏洩の真実は?2年前の漏洩事故を再検証(2) トレンチの謎

 
前回の「2号機からの海洋漏洩の真実は?2年前の漏洩事故を再検証(1)」に続いて、2年前の2号機スクリーン海水から海への漏洩事故の真実に迫ってみたいと思います。

この一週間で現在も漏えいが続いている可能性がさらに高まり、新たにトレンチにある汚染水のデータも出てきました。この新たな動きを受けて、当初想定していた構成を急遽変更し、今回はトレンチについて情報を整理し、徹底的に検証してみたいと思います。あまりまとまりがないように感じる方がいるかもしれませんが、それは最後に示す今年のトレンチのデータを検証するためにその予備知識としていろいろな情報をお示ししているためです。


6. 福島第一原発にあるトレンチ

まず、トレンチとは何かということから説明が必要でしょう。トレンチとは坑道という意味で、各種のケーブルを通すためのトンネルです。メンテナンスのために中を人が通るようにできています。

また、東京電力の用語の定義(資料の最後)によれば、「立抗」とは、「規模の大きな地中構造物のうち、比較的深い(10m程度)縦の坑道をいう」とあり、「ピット」とは、「深さ1-2m程度の比較的浅い地中構造物でマンホールなどのような構造のものをいう」ということだそうです。

トレンチは福島第一原発の至るところにあるのですが、特にタービン建屋から海に近い取水設備(スクリーンやポンプ)に至るトレンチが2年前に汚染水が通ったルートになっていたため、非常に重要なのです。

タービン建屋の海側にどれだけのトレンチがあるのかまずは東京電力が2011年6月に出した報告書から見てみましょう。

7/13-1

いっぱい線が書いてあるな、と感じたと思います。上の図で、緑と黄色の線がいわゆるトレンチです。緑の線が海水配管トレンチ、黄色の線が電源ケーブルトレンチです。そして、トレンチよりもさらに細く、人は通れませんが、オレンジ色の電源ケーブル管路も今回重要な役目をしていますので見逃すわけにはいきません。

こうやってトレンチの名前を書かれても「何それ?」という方もいるでしょうから、少し脱線しますが、解説を加えます。

まず、タービン建屋の海側は、取水設備であることを頭に入れる必要があります。基本的なことは昨年「福島原発の汚染水をよく知るため、O.P.とサブドレンを理解しましょう」にまとめましたのでここではほとんどくり返しません。原発の基本的な構造に自信のないひとはぜひリンク先を一度読んでから戻ってきてください。

原子力発電所では、原子炉で発生した蒸気がタービンを回して発電します。そのあとその水蒸気を冷やすのが復水器です。復水器には海水を送りこみ、この海水は水蒸気と直接は接触しないのですが、水蒸気から熱を奪って冷やします。冷えた水はまた原子炉に戻って加熱されて水蒸気になります。一方、復水器で水蒸気を冷やすのに使われた海水は温められて、放水口から海に放出されます。原発では実はエネルギーの約3割しか発電に回らず、残りの約7割がこの海水を温めることに使われます。だから、原発は海水を温めている、といわれることもあるくらいです。

では、海水の流れはどうなっているのでしょうか?まず取水口で循環水ポンプ(Circulating Water Pump:CWP)で汲み上げられる前の水は、スクリーンで木片などの異物やタコなどの生物を除去します。そうしないとポンプが詰まってしまうからです。スクリーンの構造については前回の「2号機からの海洋漏洩の真実は?2年前の漏洩事故を再検証(1)」でもご紹介しましたので省略します。

では、スクリーンを通って海水ポンプから汲み上げられた水はどういうルートでタービン建屋の中に入り、復水器を通った後はどうやって放水路に流れていくのでしょうか?実は、東京電力の事故後の資料にはそれに関する説明が一切ありません。上のようにトレンチの図を示した際にも、循環水ポンプで汲み上げられた水が通るルートが省略されています。

そのため、当初私は循環水ポンプの水も海水配管トレンチを通るのだと思っていました。しかしそれは間違いであることに気がつきました。

7. 循環水ポンプから復水器への海水の流れ

まずポンプにはいくつかの種類があります。政府事故調の報告書に合うように、この後紹介する「原子力発電所の事故・トラブル: 分析と教訓」の内容を記載すると次のようになります。

・復水器に大量の海水を送る大型の循環水ポンプ(CWP)
・原子炉系とタービン系の機器や使用済み燃料プールを冷却する補助冷却系の海水ポンプ
・非常用の海水ポンプである原子炉の崩壊熱を冷却する残留熱除去海水系(RHRS)の海水ポンプ
・原子炉格納容器冷却海水系(CCSW)の海水ポンプ、
・非常用ディーゼル発電設備冷却系(DGSW)の海水ポンプ

政府事故調の中間報告書によると、2号機には、循環水ポンプ(CWP)が3台、RHRSポンプが4台、DGSWポンプが3台あるようです。
7/13-5
政府事故調中間報告書資料IIより)

原子力発電所の事故・トラブル: 分析と教訓」という本には福島第一原発の炉心溶融事故という章があり、そこには次のような記載があります。

『建設当初は、これらポンプからの海水配管が直接地中に埋設されていたが、海水配管は腐食しやすいうえ検査ができず、腐食で配管に孔が開くと、孔の場所を探して取り替えるのに大変苦労したことから、循環水配管以外は、トレンチをつくり、トレンチ内に配管を通るように改良した。』(「原子力発電所の事故・トラブル: 分析と教訓」62ページより)

つまり、循環水ポンプの配管は今もトレンチを通らずに直接地中に埋設されているのです。それを確認したうえで再度循環水ポンプについて調べると、2011年の3/11に原子炉に海水を注入する際、逆洗弁ピットにたまっていた海水を利用した、という記述が政府事故調の中間報告書第4章(133ページ)にもありました。

この逆洗弁ピットというのは、東電用語集には「復水器細管を洗浄するために、細管内の海水の流れを逆にするための弁が設置されている場所」とあり、知らない人にとってはますます「??」なのです。そこでさらに調べると、原子力安全基盤機構(JNES)のHPに図解がありました。

7/13-2
原子力安全基盤機構(JNES)のHPより

復水器の中では、海水が非常に細い管(細管)の中を通って、水蒸気を冷やします。でも、常に同じ方向に流しているとゴミが詰まったりするので、逆方向に流して洗浄できるような仕組みが必要です。それが上の図では下の方に小さく描いてある図で、弁を切り替えると水流が逆になるような仕組みです。この逆洗弁が設置されている場所が逆洗弁ピットなのです。

その場所は、下の図に示します。この図は、東京電力が2012年の1月にトレンチについて旧保安院に報告した時の報告書(11ページ)に2号機の部分にだけ一部加筆したものです。

7/13-7

この図を見ればわかるように、2号機のスクリーンを通ってポンプ室から循環水ポンプ(CWP)を通って汲み上げられた海水は、青くなぞったラインを通ってタービン建屋付近にある逆洗弁ピットに行きます。2号機の場合、循環水ポンプは3つなので、それぞれが二つにわかれて逆洗弁ピットは6つになります。そしてタービン建屋の中に入って3台の復水器で水蒸気を冷却し、逆にその熱をもらって温められた海水は、上の図でタービン建屋を出て、赤いラインを通って放水路(放水口)へと放水されるのです。(逆洗弁ピットからタービン建屋内および建屋から放水路への接続部位は不明なため記載していません。)ここでは2号機についてのみ示しましたが、他の号機でも同じようなルートを通ります。

さて、どうしてトレンチから脱線しながらこんな話をしているかというと、2年前にどこから汚染水が海へ漏れ出したのか、現在も漏れ出している可能性はないのか、という疑問を検証するためには、建屋から出ている全てのトレンチや配管について、その可能性を検証する必要があるからです。ところが、さきほどご紹介した2011年6月の東京電力の報告書には、上で示したような循環水ポンプの配管については一切記載がないのです。そのため、何も知らないと、海水配管トレンチという言葉を聞くと、海水はすべてこのトレンチの中を通っているのだと誤解してしまいます(それが東電のねらいだと思います)。

この報告書には、「タービン建屋(海側)貫通口」というものが記載してあります。2号機の例のみ下に示しますが、海水配管トレンチは示されていますが、復水器に行く配管は示されていません。しかし、いかにも全ての貫通口が記載してあるかのような描き方ですよね。

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2011年6月1日の東京電力報告書より)

この図では、復水器を通じて放水口へ至る海水配管を通って汚染水が海へ出て行ったかどうかの検証ができません。この水路は、直接海へ通じている水路ですから、万一ここに汚染水が流れ込むような可能性があると、ただちに海洋汚染につながります。どうしてこの配管の記載がないのでしょうか?

そう思ってさらに調べると、実は復水器への出入り口はタービン建屋の真下にあることがわかりました。同じ政府事故調の中間報告書から2号機のタービン建屋の断面図を見てみます。

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政府事故調中間報告書資料IIより)

上の図で、左が原子炉建屋、右がタービン建屋ですが、タービン建屋のまん中にある①が復水器です。その下に建屋の下から右側(海側)に配管が出ているのがわかると思います。つまり、タービン建屋の真下から配管が出ているのです。これが少し上の図に配管が示していない理由だと思います。東電に問い詰めたとしても、「(海側)と書いてあったでしょ。海側の図面なので下部の配管は書いていないのです」といわれたらおしまいです。

ただ、先ほどの図が貫通口を示したものであるならば、注として復水器につながる海水配管は記載すべきです。そして、そのタービン建屋地下の配管接続部から汚染水が地下水となって漏れ出している可能性がないのかどうか、あるいはこの配管内部に汚染水が混ざり込む可能性がないのかどうか、情報を開示すべきと思います。そういう可能性はまずない、という記載をするだけでもいいのですが、それをしないと余計な疑念を生むと思います(そうは書けないから記載しない?)。

実は、私がこの復水器の海水の流れにこだわっていたのは理由があります。昨年「2号機からの海洋漏洩はいつ始まったのか?(2)細かく検証してみましょう Bバージョン 」を書いた際、ツイッターでいただいたコメントです。togetter.com/li/302436にもまとめてありますのでそこから抜き出します。

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この時の疑問が1年かかってやっと解けました。残念ながら、ポンプ室(循環水ポンプ)からは海水配管トレンチにはつながっていなかったのですが、このやり取りを見てもわかるように、二人ともポンプ室から海水配管トレンチへつながると思い込んでいました。


8. 2011年3月~4月のトレンチのデータを再検証

さて、遠回りしましたが、お約束のトレンチデータの検証に戻りましょう。

まずはこの下の図をご覧下さい。この図は、2012年1月に東京電力が旧保安院に提出したトレンチに関する報告書からの引用です。旧保安院から、トレンチにたまり水があるかどうか、全てのトレンチをチェックせよといわれて、調査をした時の中間報告書です。オレンジの色は、最初にトレンチの図を示した時とは異なり、2012年1月現在で高濃度の汚染水がたまっている場所として東京電力が認識している場所を示します。

7/13-9
2012年1/6 福島第一原子力発電所のトレンチ内で発見された放射性物質を含む溜まり水の対応について(中間報告)より

さて、これにトレンチの立坑の位置と、2011年4月に問題となった2号機スクリーンに至るケーブル管路とピットA、ピットBの位置関係を示します。2号機の部分の拡大図です。上が海(東)、左が北です。

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立坑AからBに至る断面図および立坑DからCに至る断面図は2011年6月の報告書に記載してあります。かなり低いところを通っていますよね。岩盤に直接設置しているのでしょう。

7/13-11
東京電力 2011年6月の報告書より

これに、今回一番最初に示した図に記載のある各トレンチの通っている高さ(O.P.)を加えて考えると、いつどのように汚染水があふれていったのかを検証することができます。こういう作業が苦手な人のために、政府事故調が作成した立体的な見取り図も示しておきます。

7/13-23
政府事故調 中間報告書第五章資料 より)

実は同様に時系列を追った検証は昨年の「福島第一原発2号機の謎に迫る(仮題)」シリーズでも「サイフォンの原理を理解すれば放射能汚染水の管理は理解できる!」で行っています。重複する詳細な部分はそちらを読んでいただくとして、ここでは簡単に時系列を追いながら、前回とは違う視点で見ていきます。

2011年3月28日、東京電力は記者会見において、3/27の時点でトレンチの立坑に水がたまっているということを発見したと発表しました。その時点では、この水が汚染水なのか津波の水なのかはわかっていませんでした。また、どの立坑なのかもはっきりしませんでしたが、記者会見での情報から推論すると、2号機は立坑B、3号機も立坑Bと推論できます。3/27時点で、2号機のトレンチ立坑BにはO.P.3000mm近くになっています。

7/13-12
(「サイフォンの原理を理解すれば放射能汚染水の管理は理解できる!」のデータを新たに発見した情報をもとに一部修正)

2011年3/30時点で各トレンチにたまった水の放射能濃度は2011年4/20に発表されています。

1号機トレンチ(3/29)I-131:5.4E+00 Cs-134:7.0E-01 Cs-137:7.9E-01
2号機トレンチ(3/30)I-131:6.9E+06 Cs-134:2.0E+06 Cs-137:2.0E+06
3号機トレンチ(3/30)I-131:2.0E+02 Cs-134:2.0E+01 Cs-137:2.1E+01
(単位Bq/cm3、6.9E+06=6.9×10^6=6,900,000を意味する。)

と、2号機のトレンチだけはタービン建屋地下の溜まり水とほぼ同じ濃度の高濃度汚染水が検出されていることがわかります。つまり2号機では、2011年3/27の時点でタービン建屋とトレンチは完全に地下でつながっており、タービン建屋地下で検出された高濃度汚染水がトレンチにまでやってきていたということです。

一方、1号機と3号機のトレンチについては、2号機と比べるとかなり濃度が薄いことから、少なくともこの時点ではタービン建屋地下の汚染水はトレンチまで来ていなかった、あるいはつながっていなかったということがわかります。

1号機については、構造的にタービン建屋からトレンチには流出しにくいことがわかっていますので、1号機のトレンチは汚染水という意味では気にしないでいいということです。また、3号機については、「サイフォンの原理を理解すれば放射能汚染水の管理は理解できる!」で紹介したとおり、2011年4/2からプロセス主建屋の滞留水を4号機のタービン建屋地下に移送したところ、3号機のタービン建屋水位及びトレンチの水位が上昇し、4号機と3号機のタービン建屋がつながっていること、また3号機のタービン建屋とトレンチがつながっていることが確認されています。

同じようにタービン建屋とトレンチがつながっているにも関わらず、2号機は高濃度汚染水がトレンチにあふれ出してきていて、3号機はほとんど汚染されていませんでした。2号機と3号機の違いは何なのでしょうか?津波が2号機トレンチにはほとんど入らなかったのか?あるいは2号機トレンチに入った津波は、トレンチのどこかに穴がありタービン建屋からの汚染水があふれてきた際に元々あった津波の水が穴から全て押し出されてしまったのか?

2号機トレンチで検出された放射能汚染水(Cs-137:2.0E+06Bq/cm3)は3/24時点のタービン建屋の汚染水(Cs-137:2.8E+06Bq/cm3)とほぼ同等です。2号機トレンチの体積は6000トンほどあるということなので、津波で一度たまった海水が2週間近くで全て押し出されるというのも考えづらく、2号機トレンチには津波の海水はほとんど入らなかったということなのだと思います。


水位情報については、2011年4/16の朝日新聞の情報などより、2号機では3/27時点でO.P.2960(O.P.4000の上端から104cm)で、4/6まで変わっていません。この時の約O.P.3000という情報と特に矛盾しません。

では、2011年3/27にO.P.2960までトレンチの水位があったとして、その時点でどれだけ2号機のトレンチ内に汚染水が広がっていたと考えられるのか、図に汚染水を赤く塗ってみましょう。

7/13-13

全てを細かく説明できませんが、海水配管トレンチは4つの立坑を含めて全て汚染水が満たされているはずです。そして、「2号機からの海洋漏洩の真実は?2年前の漏洩事故を再検証(1)」でも説明した、4/3にコンクリートをはつった海水配管トレンチと電源ケーブルトレンチの合流点(この合流点はO.P.1985だそうです)を通じて電源ケーブルトレンチにも流れ出していたはずです。さらには、4/2にコンクリートを流し込んだピットBにまでも電源ケーブル管路を通じて流れ込んでいたはずです。

さらに、もし東電が説明しているように、ピットBとピットAの間に電源ケーブル管路があるならば、汚染水の水位がO.P.2960ならばピットAにまで3/27時点で到達していてもおかしくありません。

ところが実際には、4/1にスクリーン付近の空間線量率を測定した際には高くなく、4/2に急に高くなった(政府事故調中間報告書332ページ注118)ということなので、この説明が正しいならば、ピットAには汚染水は3/27には到達していなかったことになります。ということは、ピットBからピットAへつながる電源ケーブル管路は東電発表のような形では存在していなかったということの証明でもあるのです。

このピットAにつながる管路については次回以降に詳細に取り上げる予定です。ここでは、3/27にはピットAには汚染水は到達していなかったということを確認するにとどめておきましょう。

さらに電源ケーブルトレンチから電源ケーブル管路を通ってどこまで汚染水が広がりうるか、ということも考えてみました。

7/13-14

上の図には、2号機から1号機側、あるいは3号機側につながる電源ケーブル管路を点線で囲ってあります。この管路のO.P.が2800及び2820です。ケーブル管路の中にある電線管の丸い穴は直径約10cmです。下の図は別のケーブル管路の図ですが、この図に示すように電線管の穴はおそらく敷高よりも15cm程度高いので、O.P.2960だとするとこの管路を通って汚染水が広がれるかどうかは微妙な所だと思います。2号機トレンチの水位が3/27~4/6まで動かなかったのは、この電源ケーブル管路を通過できる程度の水位だったため、この期間にゆっくりと広がっていったという解釈も成り立ちます。

7/13-15

もちろん、2011年3/27にはすでに海へつながるルートが確立しており、少しずつ流れ出していたという可能性も否定できません。実際、海洋放射能データの解析から2011年3/27頃から海に漏れ出していた可能性を指摘する論文もあるため(「2号機からの海洋漏洩はいつ始まったのか?(1)シミュレーションからの推定」を参照)、いろいろなデータを総合的に考えながら、ほとんどのデータを合理的に説明できる仮説を考えていきたいと思います。

今回はトレンチの情報を全体的にレビューしたいため、この話はとりあえずここまでにしておきます。次回以降に続きを書く予定です。


9.今年測定されたトレンチ汚染水のデータをどう読むか?

さて、2013年になって、トレンチに残っている汚染水が今後の漏えいリスクが高いということで再度クローズアップされてきています。今年の6/28の第13回特定原子力施設監視・評価検討会発表された資料には、2号機について下記の資料が掲載されています。

7/13-16

2011年3月末の段階では、2号機ではタービン建屋、トレンチともに10の6乗(1E+06)Bq/cm3レベルのCs-137が存在しました。汚染水循環処理システムを2年近く運用してきたおかげで、2013年にはタービン建屋でもCs-137は10の4乗(1E+04)Bq/cm3レベルにまで下がってきています。このこと自体は不思議ではありません。しかし、2013年5/30に立坑AのCs-137を測定すると3.7E+04Bq/cm3でした(上の図はCs-134との合算で書かれています)。

みんなこのトレンチのデータについてあまり疑問を持っていないようですが、私は「どうして?」と疑問を持ちました。このサンプルが立坑Aのどこ(上部か下部か?)からサンプリングしたのかにもよるのですが、2号機のトレンチは2011年5月に立坑Bにコンクリートを投入して完全に封鎖しています。

7/13-18
(東京電力 2011年6月の報告書より)

ですから、このトレンチにひび割れなどがなく、どこからも漏れ出していかなかれば、トレンチの汚染水は2年たっても高濃度(10の6乗(1E+06)Bq/cm3レベル)のままで保たれているはずです。タービン建屋とトレンチ入口はつながっているので、多少は混ざると思いますが、1/100の10の4乗(1E+04)Bq/cm3レベルにまで落ちることはないはずです。

7/13-17

しかし、上の図(右)のように、もしこのトレンチにひび割れなどがあって地下から徐々に漏れ出していたとしたら、タービン建屋からトレンチに少しずつ汚染水が出て行くことになります。今回、タービン建屋とトレンチ立坑Aの濃度がほとんど同じだったということは、2年間の間に立坑Bまでのどこかから汚染水が地下に漏れ出して、その分を補充する形でタービン建屋からトレンチに汚染水が出て行ったことを示唆しています。

このデータは、2号機トレンチから少しずつ汚染水が漏れている可能性を示唆する重要なデータだと私は思います。違うと主張するのであれば、3号機で行ったように深さを変えてサンプリングし、深いところでは高濃度(10の6乗(1E+06)Bq/cm3レベル)であるというデータを示して欲しいと思います。

※なお、2号機トレンチの水位データをどの立坑で測定しているのかによってデータの解釈に少し違いが出てくるかもしれません。2号機、3号機のトレンチ水位をA~Dのどの立坑を用いて測定しているかご存じの方がいたら教えてください。


同様の考え方で、2013年7/11に発表された3号機トレンチ立坑Aのデータを検証しましょう。

7/13-19
東京電力HP 7/113号機トレンチ立坑Aサンプリング調査結果より

このサンプリングでは、上から1m、7m、13mと3点のデータを取ってくれています。注目すべきは、塩分濃度及びCs-137の濃度が下にいけばいくほど下がっているのです。

3号機の場合、2号機とは異なり、立坑にコンクリートを入れて封鎖するような措置はできませんでした。単に立坑Cなどを上部を閉鎖して漏れないようにしただけです。

7/13-20
(東京電力 2011年6月の報告書より)

従って、トレンチ内はタービン建屋と通じていて、海水配管トレンチの先で閉鎖された空間になっているはずです。下の図で×印がコンクリートを流し込むなどして閉鎖したピットです。

7/13-21
東京電力HP 7/113号機トレンチ立坑Aサンプリング調査結果より

ただし、立坑Aというのは、タービン建屋との接続部がO.P.-1100の立坑Dとは異なり、接続部がO.P.2550とかなり高く、あまり汚染水の行き来がないことが予想されます。最近は3号機のタービン建屋の水位はO.P.2700程度に収まっていますから、ほとんど影響していないと思います。

するとこのデータはどう考えたらいいのでしょうか?深さ7mと13mのデータがCs-137と塩分濃度ともにほとんど変わらないことを考慮すると、立坑Aの濃度はこの2点の値で代表される濃度に近いと考えるべきでしょう。(ただし、この濃度が立坑Cや立坑Dと同等である保証はありません。)

そして、深さ1mの地点が塩分濃度、Cs-137ともに高いのは、2011年のまだ3号機タービン建屋汚染水の塩分濃度が高かった頃(2011年3月には3号機タービン建屋は10,700ppm)に高濃度の汚染水が立坑Aに流れ出してきて、すでにトレンチにあった海水が混ざった結果という可能性が一つ考えられます。

別の可能性としては、単に上部は水が蒸発したため濃くなったというものです。いずれにせよ、立坑AではCs-137が6.2E+04 Bq/cm3前後で、塩分濃度が7000ppm程度ということには変わりません。

ここにタービン建屋の汚染水の塩分濃度推移を示します(下図で右側のグラフ)。2011年6月に汚染水循環処理システムが稼働してから塩分濃度は低下し続けています。2012年以降は3号機では最高で3000ppmですので、2012年以降に立坑Aにタービン建屋から汚染水が混ざってくれば、塩分濃度はもっと下がるはずです。

7/13-22
2013年4/12 第8回特定原子力施設監視・評価検討会資料 より

ということは、3号機の立坑Aについては、2011年にタービン建屋から少し流出してきた可能性はあるが、2012年以降はほとんど汚染水は混ざっていないということがわかります。いいかえれば、立坑A付近にはひび割れなどはないという事を示しています。

この事実と比較して考えても、2号機トレンチの汚染水がタービン建屋とほぼ同じ濃度になっているということは、2号機トレンチにはひび割れがあって漏れ続けているということがおわかりいただけると思います。


また、立坑A周辺にはひび割れはないだろうといったのは、3号機トレンチの汚染水の移動は主に立坑D→立坑Cというルートで行われていると予想されるからです。それは立坑D付近のタービン建屋接合部がO.P.-1100とかなり低いことから間違いないと思います。立坑Aはタービン建屋とつながってはいますが、実質的には袋小路なので、ほとんど影響を受けず、2年前の状態を保持していたのです。決して今回のデータを3号機トレンチの代表的な値だと思わない方がいいです。


ここで、3号機トレンチについてわかっている情報をまとめてみましょう。

・2011年3/24 3号機タービン建屋 Cs-137:1.6E+05 Bq/cm3 塩分濃度 10700ppm
       ※3号機タービン建屋は、2011年3月は1E+05のレベルだった。 

・2011年3/30 3号機トレンチ Cs-137:2.1E+01 Bq/cm3 O.P.2450
       ほとんどが津波による海水と考えられる。

・2011年5/11 3号機トレンチを通じて3号機スクリーンから海に流出 トレンチ:O.P.3220
       流出水 Cs-137:3.9E+04 Bq/cm3 

・2013年7/10 トレンチ立坑A Cs-137:6.2E+04 Bq/cm3 塩分濃度 7000ppm

先ほど述べたように今回の立坑Aの情報を考慮に入れないとしても、3/30にはほとんど汚染されていなかったトレンチの水が、5/11にはCs-137:3.9E+04 Bq/cm3になったということは、かなりのトレンチの水が系外に出て行かないといけないのです。どれだけの量がどうやって出ていったのか、これは現在も漏洩が起こっているかどうかを考えるためには重要ですので、それについては次回以降に取り上げたいと思います。


今回はここまでにします。東京電力がさらっと説明しているトレンチの情報にも非常に重要な情報が多く含まれているということを今回は理解していただければいいと思います。

2号機からの海洋漏洩の真実は?2年前の漏洩事故を再検証(1)
2号機からの海洋漏洩の真実は?2年前の漏洩事故を再検証(2) トレンチの謎

 
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