7/22 ついに東電が汚染水の海への流出を認める!(1)
参議院選挙が終わった翌日の7/22、東京電力はついに(部分的ですが)地下水が開渠内の海水と行き来していることを認めました(リンク先はNHK:Web魚拓)。
今日はこの話について速報として、本日の記者会見で発表されたことを中心に簡単にまとめます。記者会見が予想外に長かったので、まとめる時間が少なくなってしまいました。
本日の記者会見はでは、45枚もの大量の資料を使って発表しています。私は途中からしか記者会見を聞いていないのですが、説明だけで1時間以上かかったそうです。記者会見は夜9時半になってやっと終わりました。
本日の資料はここにあります。「海側地下水および海水中放射性物質濃度上昇問題の現状と対策」。
本日の記者会見及び発表での一番のポイントは、資料の以下の文章です。
『(4)地下水水位変動について
・ 当該エリアの地下水水位の変動を見ると、潮位変動や降雨等の影響を受けて変動している様子が見られることから、開渠内の海水と行き来していると考えている。これらのことから、本年5月以降にNo.1 観測孔で確認された汚染を含む地下水の開渠内との行き来が考えられるため、対策を実施中(対策については後述)。また、新たに設置した観測孔の水位データ等もふまえ、今後、10 月下旬を目途に解析などの詳細評価を行っていく。「資料F」「資料G」』
データの多くはこれまでに発表されているものですが、東電が今回地下水が海(開渠内)に出ていると判断するに至った重要なデータは資料Fです。

「海側地下水および海水中放射性物質濃度上昇問題の現状と対策」資料Fより
8/14追記:この日の発表はT.P.とO.P.の変換分の0.727mが追加されていなかったとして、7/24に修正されています。詳細はこちらをご覧下さい。ここでは敢えて発表当時の情報を残しています。
これをみればわかるように、地下水観測孔の水位は、実は今年の1月31日から自動的に毎日一定時間ごとに測定されていたのです。ここでは紫色のNo.1に注目します。他の観測孔のデータもほぼ同様の動きをしています。
No.1の観測孔のデータを見ると、No.1の水位はO.P.2000近くをずっと推移していましたが、今年の4月頃に急にはね上がりました。これはあとで示すように雨の影響でしょう。また、日々の細かい変動を見ると、拡大したグラフが下にありますが、見事に潮位の変動と一致しています。
つまり、満潮になって海水の水位が上がると地下水の水位が上がり、干潮になって海水水位が下がると地下水の水位がさがるということは、地下水が海に流出し、逆に海水が地下水に入ってきているということなのです。

「海側地下水および海水中放射性物質濃度上昇問題の現状と対策」資料Fより
4月にはね上がった要因として、次に示す図で、東電としては広野町の降水量を同じグラフに示し、降雨との関係を指摘したいようです(この部分の会見を聞いていないので推測で書いています)。降雨があれば地下水の水位が上がるのはサブドレンのデータでもわかっていますから、これは確かに降雨の影響が大きいと思います。

「海側地下水および海水中放射性物質濃度上昇問題の現状と対策」資料Fより
これだけはっきりとわかるデータをもっていながら、地下水が海水とつながっているということをこれまで認めなかったのは不思議な気がします。記者会見では、先週木曜日に社内で確認できたから本日発表した、ということを言っていましたが、実は先週木曜日(7/18)は原子力規制委員会に報告に行っているのです。その時の資料が規制庁のHPにあります。
「被規制者等との面談の予約・実施状況」というページに7月18日の記録が載っています。「東京電力福島第一原子力発電所の海側トレンチ、地下水サンプリング等に係る面談」というタイトルです。その時の資料はここにあるのですが、実はここにも本日(7/22)に発表していない重要な資料がいくつもあります。こちらについては、今執筆中の「2号機からの海洋漏洩の真実は?2年前の漏洩事故を再検証」シリーズで利用していきたいと思いますので本日は省略します。
これまで東電は地下水が海へ出ているということをなかなか認めませんでしたが、今回は部分的ではありますが、地下水と海水が行き来していることを認めました。今回は今年5月以降の観測孔No.1について、ということしか認めていないようですが、これを認めればもうあとはなし崩し的に認めざるを得ません。恐らく社内ではいろいろと検討しながら、発表するタイミングも図っていたことと思います。
さて、今回東電ははっきりと今年5月以降にNo.1地下水観測孔で確認された汚染を含む地下水が、開渠内と行き来していると認めました。ただし、港湾内には影響がなく、沖合にも変化がないということを主張しています。

「開渠」という言葉がわからない人のために上の図を示します。「取水口開渠」というのは上の図の灰色の部分です。
実際、データを確認すると、沖合のデータは当然ですが港湾内のデータにしても、放射能濃度に大きな変化はありません。しかし、2011年の4月のようにいっぺんに大量に出たのではなく、徐々に出続けているため、大きな変化は見えないという可能性もあるのです。ここは慎重に評価しないといけないと思います。開渠以外のデータについては、もっと定量的な評価が必要でしょうから、今回は取り上げません。
ただ、注意しておくべき事は、汚染水が今も海洋に少しずつ漏えいしているからと言って、ただちに福島の魚は汚染されているということにつながるとは限らないということです。少しずつ海洋に漏えいしている場合は、海流で急速に希釈され、実質的にはほとんど影響がないこともあります。
汚染水が地下水を通じて海へ漏れているという事実と、福島の魚が放射能で汚染されているということを短絡的に結びつけないで、後者については海水や魚のデータを見ながら慎重に判断していく必要があります。
最後に宣伝です。2年前の2号機からの漏洩事故について1年前に私なりにまとめましたが、今回、再検証しています。興味のある方はぜひお読みください。
7/7公開 「2号機からの海洋漏洩の真実は?2年前の漏洩事故を再検証(1)」
7/15公開 「2号機からの海洋漏洩の真実は?2年前の漏洩事故を再検証(2) トレンチの謎」
7/21公開 「2号機からの海洋漏洩の真実は?2年前の漏洩事故を再検証(3) 電源ケーブルはどこから?」
本日の資料はここにあります。「海側地下水および海水中放射性物質濃度上昇問題の現状と対策」。
本日の記者会見及び発表での一番のポイントは、資料の以下の文章です。
『(4)地下水水位変動について
・ 当該エリアの地下水水位の変動を見ると、潮位変動や降雨等の影響を受けて変動している様子が見られることから、開渠内の海水と行き来していると考えている。これらのことから、本年5月以降にNo.1 観測孔で確認された汚染を含む地下水の開渠内との行き来が考えられるため、対策を実施中(対策については後述)。また、新たに設置した観測孔の水位データ等もふまえ、今後、10 月下旬を目途に解析などの詳細評価を行っていく。「資料F」「資料G」』
データの多くはこれまでに発表されているものですが、東電が今回地下水が海(開渠内)に出ていると判断するに至った重要なデータは資料Fです。

「海側地下水および海水中放射性物質濃度上昇問題の現状と対策」資料Fより
8/14追記:この日の発表はT.P.とO.P.の変換分の0.727mが追加されていなかったとして、7/24に修正されています。詳細はこちらをご覧下さい。ここでは敢えて発表当時の情報を残しています。
これをみればわかるように、地下水観測孔の水位は、実は今年の1月31日から自動的に毎日一定時間ごとに測定されていたのです。ここでは紫色のNo.1に注目します。他の観測孔のデータもほぼ同様の動きをしています。
No.1の観測孔のデータを見ると、No.1の水位はO.P.2000近くをずっと推移していましたが、今年の4月頃に急にはね上がりました。これはあとで示すように雨の影響でしょう。また、日々の細かい変動を見ると、拡大したグラフが下にありますが、見事に潮位の変動と一致しています。
つまり、満潮になって海水の水位が上がると地下水の水位が上がり、干潮になって海水水位が下がると地下水の水位がさがるということは、地下水が海に流出し、逆に海水が地下水に入ってきているということなのです。

「海側地下水および海水中放射性物質濃度上昇問題の現状と対策」資料Fより
4月にはね上がった要因として、次に示す図で、東電としては広野町の降水量を同じグラフに示し、降雨との関係を指摘したいようです(この部分の会見を聞いていないので推測で書いています)。降雨があれば地下水の水位が上がるのはサブドレンのデータでもわかっていますから、これは確かに降雨の影響が大きいと思います。

「海側地下水および海水中放射性物質濃度上昇問題の現状と対策」資料Fより
これだけはっきりとわかるデータをもっていながら、地下水が海水とつながっているということをこれまで認めなかったのは不思議な気がします。記者会見では、先週木曜日に社内で確認できたから本日発表した、ということを言っていましたが、実は先週木曜日(7/18)は原子力規制委員会に報告に行っているのです。その時の資料が規制庁のHPにあります。
「被規制者等との面談の予約・実施状況」というページに7月18日の記録が載っています。「東京電力福島第一原子力発電所の海側トレンチ、地下水サンプリング等に係る面談」というタイトルです。その時の資料はここにあるのですが、実はここにも本日(7/22)に発表していない重要な資料がいくつもあります。こちらについては、今執筆中の「2号機からの海洋漏洩の真実は?2年前の漏洩事故を再検証」シリーズで利用していきたいと思いますので本日は省略します。
これまで東電は地下水が海へ出ているということをなかなか認めませんでしたが、今回は部分的ではありますが、地下水と海水が行き来していることを認めました。今回は今年5月以降の観測孔No.1について、ということしか認めていないようですが、これを認めればもうあとはなし崩し的に認めざるを得ません。恐らく社内ではいろいろと検討しながら、発表するタイミングも図っていたことと思います。
さて、今回東電ははっきりと今年5月以降にNo.1地下水観測孔で確認された汚染を含む地下水が、開渠内と行き来していると認めました。ただし、港湾内には影響がなく、沖合にも変化がないということを主張しています。

「開渠」という言葉がわからない人のために上の図を示します。「取水口開渠」というのは上の図の灰色の部分です。
実際、データを確認すると、沖合のデータは当然ですが港湾内のデータにしても、放射能濃度に大きな変化はありません。しかし、2011年の4月のようにいっぺんに大量に出たのではなく、徐々に出続けているため、大きな変化は見えないという可能性もあるのです。ここは慎重に評価しないといけないと思います。開渠以外のデータについては、もっと定量的な評価が必要でしょうから、今回は取り上げません。
ただ、注意しておくべき事は、汚染水が今も海洋に少しずつ漏えいしているからと言って、ただちに福島の魚は汚染されているということにつながるとは限らないということです。少しずつ海洋に漏えいしている場合は、海流で急速に希釈され、実質的にはほとんど影響がないこともあります。
汚染水が地下水を通じて海へ漏れているという事実と、福島の魚が放射能で汚染されているということを短絡的に結びつけないで、後者については海水や魚のデータを見ながら慎重に判断していく必要があります。
最後に宣伝です。2年前の2号機からの漏洩事故について1年前に私なりにまとめましたが、今回、再検証しています。興味のある方はぜひお読みください。
7/7公開 「2号機からの海洋漏洩の真実は?2年前の漏洩事故を再検証(1)」
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