2号機からの海洋漏洩の真実は?2年前の漏洩事故を再検証(4) トレンチの謎2 追加データ
昨年「福島第一原発2号機の謎に迫る(仮題)」として書いてきた一連のシリーズの再検証として今年の7月から新たに再検証シリーズを始めました。
7/7 「2号機からの海洋漏洩の真実は?2年前の漏洩事故を再検証(1)」
7/15「2号機からの海洋漏洩の真実は?2年前の漏洩事故を再検証(2) トレンチの謎」
7/21 「2号機からの海洋漏洩の真実は?2年前の漏洩事故を再検証(3) 電源ケーブルはどこから?」
今週はその続きで、これまでわかっている情報から2年前に起こったことを仮説として示そうと思っていたのですが、地下水が海に出ている事を東京電力が初めて認めるなどの新たな情報が出てきたため、予定を変更します。
特に、7/26に発表されたトレンチの調査計画は、調査結果によっては話の前提が変わってくるかもしれませんので、今回は「再検証(4) トレンチの謎2 追加データ」として(2)の追記の形で書きたいと思います。
もし私の仮説を期待していた方がいたら申し訳ありません。
7/29追記:本日東電のHPに「福島第一原子力発電所2号機取水電源ケーブルトレンチの調査結果と現時点での評価」という資料が公表されました。内容的には私のこの記事とほとんど同じです。
13.トレンチ調査計画について
7/26、東京電力は「福島第一原子力発電所海側トレンチ調査の考え方について」という資料を発表しました。それによると、2号機及び3号機の海水配管トレンチ及び取水電源ケーブルトレンチについて、水位やその変化、線量を調べるということになっています。

「福島第一原子力発電所海側トレンチ調査の考え方について」より
具体的な場所としてあげられているのは次の箇所です。まずは2号機です。

「福島第一原子力発電所海側トレンチ調査の考え方について」より
A:海水配管トレンチとして、立て坑Aおよび立て坑Cが調査対象に上がっています。
立て坑Bはすでにコンクリートなどを流し込んで閉塞したので調査の対象外になっています。立て坑Dは立て坑Cで代表させるつもりなのでしょうか?
B:取水電源ケーブルトレンチとしては、B1-1、B1-2、B2の3箇所をあげています。これについては後で詳しくふれます。
続いて3号機です。

「福島第一原子力発電所海側トレンチ調査の考え方について」より
A:海水配管トレンチとして、立て坑Aおよび立て坑Bが調査対象に上がっています。立て坑Cは上部を閉鎖してしまったため、調査できません。立て坑Dはどうして調査しないのでしょうか?
B:取水電源ケーブルトレンチとしては、B1-1、B2、B3(4号機側3箇所)の5箇所をあげています。
さて、7/15「2号機からの海洋漏洩の真実は?2年前の漏洩事故を再検証(2) トレンチの謎」でご紹介した時よりもさらにデータが増えてきていますので、それらをまとめて再度示します。

いろいろゴチャゴチャ書きこんであるのでわかりにくいかもしれませんが、7/27現在、2号機のトレンチの中で汚染水の濃度が調査されて発表されたのは3箇所です。
・立て坑A:Cs-137:3.7×10E4Bq/cm3(2013年5/30採取)
(6/27 東京電力福島第一原子力発電所廃炉対策推進会議/事務局会議(第5回) 資料3-2 「2~4号機海水配管トレンチについて」 より)
・B2:Cs-137:2.4×10E4Bq/cm3(2013年7/17採取)
(7/19 「タービン建屋東側における地下水および海水中の放射性物質濃度の状況について」より)
・B1-1:Cs-137:1.6×10E6Bq/cm3(2013年7/26採取)
(7/27 「福島第一2号機海側トレンチ滞留水分析結果」 7/28 福島第一2号機海側トレンチ滞留水分析結果 より)
※Bq/Lに直すと単位が大きすぎてわかりにくくなってしまうので、敢えてBq/cm3で記載しています。Bq/Lに直す場合は1000倍して下さい。なお、10E4というのは10の4乗で10,000という意味です。10E6は100万です。
14.これまでわかっているトレンチデータの持つ意味
どうしてB1-1だけCs-137濃度が高いのか?それは何故なのか?というところが多くの人にとって疑問なのではないでしょうか?今回はそこを解説したいと思います。
では、これらについて一つずつ見ていきましょう。
まずは一番新しく発表されたB1-1のデータと、そのデータの持つ意味を見ていきます。
B1-1:Cs-137:1.6×10E6Bq/cm3(2013年7/26採取)
塩素濃度:8000ppm
全β:7.5×10E5Bq/cm3
H-3(トリチウム):8,700Bq/cm3(7/28 追加)
(7/27 「福島第一2号機海側トレンチ滞留水分析結果」 より)
また、原子力規制委員会(7/24)の資料には

「2号機海水配管トレンチ立坑B近傍の電源ケーブルトレンチでは、表面線量率で830mSv/h(7/18)の汚染水が確認されている」と記載されており、2011年4/2のピットAで表面線量率が1000mSv/hを超えたという記載と同レベルであることからこの記載はB1-1のことを指していると思います。
B1-1の水位:7/23 O.P.3150、7/26 O.P.3150
(7/27 福島第一 2号機海側トレンチ 水位測定結果 より)
このB1-1の水位は、立て坑Bを2011年に閉塞したことにより、この部分の電源ケーブルトレンチの水位が変化していないかどうかを確認するためのものです。この部分のトレンチは、7/22の「海側地下水および海水中放射性物質濃度上昇問題の現状と対策」という資料にも載っていますが、すでに立て坑Bにコンクリートやモルタルを投入して立て坑Aや立て坑Cとのつながり、さらにはタービン建屋とのつながりを遮断された部分のはずなのです。

(7/22 「海側地下水および海水中放射性物質濃度上昇問題の現状と対策」より)
この図にB1-1の位置を予想で書き込んでみるとこのような位置になります。

(7/22 「海側地下水および海水中放射性物質濃度上昇問題の現状と対策」に一部改変)
これは、この下の右側にある図と断面図としてもほぼ一致します。

7/19 タービン建屋東側における地下水および海水中の放射性物質濃度の状況について より
つまり、本来ならば、2011年4月から6月のピット閉鎖などの処理により、下の図の赤い部分に汚染水は閉じ込められているはずなのです。だとすると、この部分は水位は変動せず、トレンチの水位変化にも連動していないはずなのです。(ただし、7/27現在ではB1-2の位置と、その付近の管路のつながりが不明確なため、場合によっては他にもつながっている可能性はあります。B1-2の正確な情報開示が待たれます。)

B1-1の水位に関しては今後も継続してデータが取られていくと思いますが、ほとんど変動しなければ立て坑Bの閉塞が有効に機能していることになりますし、トレンチ水位に合わせて変動するならば立て坑Bでは閉塞されていないことになります。
現在のところ、2号機トレンチの水位データを毎日確認できていないのですが、
7/21 18時 O.P.+3011
(7/22 浪江町では21mmの降雨)
7/25 18時 O.P.+3258
7/26 18時 O.P.+3296
7/27 18時 O.P.+3231
と7/26までは上昇傾向にありますが、B1-1の水位は変化していないため、あまり影響を受けていない可能性が高いと思います。それは別のデータからも裏付けられます。
7/21 「2号機からの海洋漏洩の真実は?2年前の漏洩事故を再検証(3) 電源ケーブルはどこから?」でもまとめましたが、2年前の海洋漏えいの際、4/2のピットAのCs-137は1.9×10E6Bq/cm3でした。今回が1.6×10E6Bq/cm3と2割ぐらいしか変わっていません。立て坑AのCs-137が3.7×10E4Bq/cm3と当時の1/50に低下しているのとは対照的です。このB1-1付近の汚染水は、当時の状態で閉じ込められたままで、ほとんど漏えいもしていない可能性が高いと言えると思います。
ニュースでは、このトレンチB1-1の汚染水の濃度が非常に高いため、こんなに高い濃度の汚染水があった、というニュアンスで報道しているようにも思えるのですが、むしろ逆で、2年前とほぼ同じ濃度の汚染水が発見できたということは、これまでの2年間ではほとんど外に漏れ出していなかったということを示唆しており、むしろ安心できる情報であると考えるべきだと思います。その部分はたまった汚染水をくみ出せばそれで対応は終了です。
逆に、2年前よりもかなり低い濃度の汚染水しかなかった場合は、2年間の間にどこかに漏れ出した可能性が疑われるため、要注意です。
次にB2です。これについては7/19のタービン建屋東側における地下水および海水中の放射性物質濃度の状況についてに結果が示され、その後追加データが発表されました。
まずは場所を示した資料から。7/17に水を採取したと記載されています。マンホール蓋と書いてあるところです。

採取方法と、実際のマンホール内部を写した写真が公開されています。向きを変えて撮ってあります。ケーブルが何本も通っているのがはっきりとわかります。右側の写真では、北側に向かうケーブルが見えています。ということは、このマンホールの北側に電源ケーブル管路があるのでしょうか?

この地点の予想される断面図も記載されています。この部分にはわずか7cmの水深でしか水はたまっていませんでした。

実際のデータですが、7/26の資料が最新の情報も含めて発表されているのでそこから引用します。

7/26 福島第一原子力発電所海側トレンチ調査の考え方について より
このデータを見ると、塩分濃度が70ppmと当時のタービン建屋のデータの1/100程度であることが注目されます。先ほどのB1-1が8000ppmであること、上の表で3号機トレンチ立て坑Aのデータが7000ppm程度である事からもかなり薄いことがわかります。また、Cs-137濃度や全β、トリチウムの濃度を見ても、これを全て100倍にしたら2年前の濃度にほぼ近いのです。
ということは、何かが起こって約100倍希釈されたということでしょう。一つの可能性は、2年前の4/3に行われたおがくずや吸水性ポリマー、あるいは4/6の後に投入された可能性のあるグラウトに吸着されたということです。もう一つの可能性は、この付近のトレンチにはひびが入っていて、2年間の間に周辺の地下水が流入し、別のヒビから流出しているために地下水で希釈されたということです。両方が起こっているかもしれません。
そもそも東電の2011年4/5の発表によれば、このマンホールから2011年4/3にコンクリートをはつった場所の間のどこかにヒビが入っていて汚染水が砕石層に移行した可能性があるということでした。東電が当時発表した断面図は明らかに間違いであることはこのシリーズでも述べているのでくり返しませんが、この付近のトレンチにヒビが入っていてそこから流出した可能性は非常に高いのです。2年前の対応でそのヒビからの漏れが止まったかどうかについては全く検証されていません。
水位がわずか7cmしかなく、O.P.2760しかないというところも重要な情報です。先ほどの7/19の場所を示した図で、「孔あけ箇所」という記載がありますが、そこがB1-1です。そこから下の図のようにコンクリートはつり地点に汚染水が流れていき、B2の地点にまで到達したのですが、2011年4/3にここにはおがくずや吸水性ポリマーを投入してこの流路は止められたはずです。

原子力規制委員会 被規制者等との面談概要・資料(7/18) の資料に一部加筆修正
すでに見たように、B1-1の水位がO.P.3150と高くあまり変動がなさそう(=密閉された空間である)ということは、はつった地点での2011年4月の止水が有効であることを示唆しています。一方で、B2付近の水位がO.P.2760であるということは、2011年4/3頃のO.P.2960よりも20cm低いです。ということは、やはりこの付近でトレンチにひび割れが起きていて汚染水が砕石層に出て行ったと考えないと低くなる理由がありません。もし密閉されていれば、グラウトを投入したらその分水位が高くなるはずですから、一切ひび割れがないと仮定するとO.P.2960以上になっていないといけないはずです。
以上の状況証拠から、私は以下の推論をします。
・立て坑Bの閉塞及びコンクリートをはつった部分の2011年4月の止水は有効であった。
・B1-1付近のトレンチは完全に密閉されており、水が漏れるようなヒビは入っていない。従ってB1-1は当時の汚染水濃度を維持できている。
・B2付近では東電が当時予想したようにトレンチにヒビがはいっていた可能性が高い。そのためにB2の水位が低い可能性がある。
・B2の塩分濃度が薄い理由の一つとして、今も地下水が流入流出していてそれによって希釈されたという可能性もある(これについてはあまり明確な根拠があるわけではありません)。
最後の立て坑Aの情報については、すでに「2号機からの海洋漏洩の真実は?2年前の漏洩事故を再検証(2) トレンチの謎」で私なりの考えを書きました。
・立て坑A:Cs-137:3.7×10E4Bq/cm3(2013年5/30採取)
(6/27 東京電力福島第一原子力発電所廃炉対策推進会議/事務局会議(第5回) 資料3-2 「2~4号機海水配管トレンチについて」 より)
ただ、この時に考慮に入れていなかった情報があります。前回書いた時は、立て坑Bにコンクリートなどを投入して閉塞しているために立て坑Aの部分はタービン建屋とはつながっているが、他の立て坑とはつながっていないという考えでいました。
しかし今回改めて情報を読み直すと、立て坑Bの閉塞とは、立て坑の上部だけであり、一番下の立て坑A及び立て坑Cとつながっている部分には単に砕石を投入しただけなのです。ということは、立て坑Aから立て坑Cには汚染水はつながっていると考えた方が自然です。立て坑Bの閉塞処理により切り離されたのは立て坑Bの上部より下流のトレンチだけなのです。

となると、7/26で発表されたように、立て坑Aと立て坑Cの両方の水位及び放射能濃度を測定して、それらが同じなのか違うのかを明らかにしていくことが2号機トレンチ内で何が起こっているのかを判断するのに必須の情報になります。
現段階では、私には2号機及び3号機で毎日測定されているトレンチ立て坑の水位情報が、どの立て坑で測定されているのかわかりません。ご存じの方がいたら是非教えてください。

http://www.tepco.co.jp/nu/fukushima-np/tairyusui/tai-newest-j.pdf
また、この情報は毎日2回上書き更新されてしまいます。昨年の後半からこのような発表の形になって、それ以降は一度公表された過去の情報をHPで確認できないようになってしまいました。東京電力にはこれまでの水位情報をまとめて公開することをお願いするとともに、この情報を残していくことに協力いただける方を求めたいと思います。地道な作業ですが、毎日ご協力いただける方がいたらぜひご連絡下さい。ブログへの非公開コメント、メールフォーム、ツイッター何でも構いません。
3号機に関しては、前回の7/15「2号機からの海洋漏洩の真実は?2年前の漏洩事故を再検証(2) トレンチの謎」で書いた以上の情報はまだ出てきていません。
新たに全βやトリチウムの濃度が出てきましたが、それはB2のデータと一緒に上で示しましたので今日の時点では省略します。
新たに情報がわかってきたら追記していきたいと思います。
「2号機からの海洋漏洩の真実は?2年前の漏洩事故を再検証(5)」については、来週以降に書く予定です。お楽しみに。
7/26、東京電力は「福島第一原子力発電所海側トレンチ調査の考え方について」という資料を発表しました。それによると、2号機及び3号機の海水配管トレンチ及び取水電源ケーブルトレンチについて、水位やその変化、線量を調べるということになっています。

「福島第一原子力発電所海側トレンチ調査の考え方について」より
具体的な場所としてあげられているのは次の箇所です。まずは2号機です。

「福島第一原子力発電所海側トレンチ調査の考え方について」より
A:海水配管トレンチとして、立て坑Aおよび立て坑Cが調査対象に上がっています。
立て坑Bはすでにコンクリートなどを流し込んで閉塞したので調査の対象外になっています。立て坑Dは立て坑Cで代表させるつもりなのでしょうか?
B:取水電源ケーブルトレンチとしては、B1-1、B1-2、B2の3箇所をあげています。これについては後で詳しくふれます。
続いて3号機です。

「福島第一原子力発電所海側トレンチ調査の考え方について」より
A:海水配管トレンチとして、立て坑Aおよび立て坑Bが調査対象に上がっています。立て坑Cは上部を閉鎖してしまったため、調査できません。立て坑Dはどうして調査しないのでしょうか?
B:取水電源ケーブルトレンチとしては、B1-1、B2、B3(4号機側3箇所)の5箇所をあげています。
さて、7/15「2号機からの海洋漏洩の真実は?2年前の漏洩事故を再検証(2) トレンチの謎」でご紹介した時よりもさらにデータが増えてきていますので、それらをまとめて再度示します。

いろいろゴチャゴチャ書きこんであるのでわかりにくいかもしれませんが、7/27現在、2号機のトレンチの中で汚染水の濃度が調査されて発表されたのは3箇所です。
・立て坑A:Cs-137:3.7×10E4Bq/cm3(2013年5/30採取)
(6/27 東京電力福島第一原子力発電所廃炉対策推進会議/事務局会議(第5回) 資料3-2 「2~4号機海水配管トレンチについて」 より)
・B2:Cs-137:2.4×10E4Bq/cm3(2013年7/17採取)
(7/19 「タービン建屋東側における地下水および海水中の放射性物質濃度の状況について」より)
・B1-1:Cs-137:1.6×10E6Bq/cm3(2013年7/26採取)
(7/27 「福島第一2号機海側トレンチ滞留水分析結果」 7/28 福島第一2号機海側トレンチ滞留水分析結果 より)
※Bq/Lに直すと単位が大きすぎてわかりにくくなってしまうので、敢えてBq/cm3で記載しています。Bq/Lに直す場合は1000倍して下さい。なお、10E4というのは10の4乗で10,000という意味です。10E6は100万です。
14.これまでわかっているトレンチデータの持つ意味
どうしてB1-1だけCs-137濃度が高いのか?それは何故なのか?というところが多くの人にとって疑問なのではないでしょうか?今回はそこを解説したいと思います。
では、これらについて一つずつ見ていきましょう。
まずは一番新しく発表されたB1-1のデータと、そのデータの持つ意味を見ていきます。
B1-1:Cs-137:1.6×10E6Bq/cm3(2013年7/26採取)
塩素濃度:8000ppm
全β:7.5×10E5Bq/cm3
H-3(トリチウム):8,700Bq/cm3(7/28 追加)
(7/27 「福島第一2号機海側トレンチ滞留水分析結果」 より)
また、原子力規制委員会(7/24)の資料には

「2号機海水配管トレンチ立坑B近傍の電源ケーブルトレンチでは、表面線量率で830mSv/h(7/18)の汚染水が確認されている」と記載されており、2011年4/2のピットAで表面線量率が1000mSv/hを超えたという記載と同レベルであることからこの記載はB1-1のことを指していると思います。
B1-1の水位:7/23 O.P.3150、7/26 O.P.3150
(7/27 福島第一 2号機海側トレンチ 水位測定結果 より)
このB1-1の水位は、立て坑Bを2011年に閉塞したことにより、この部分の電源ケーブルトレンチの水位が変化していないかどうかを確認するためのものです。この部分のトレンチは、7/22の「海側地下水および海水中放射性物質濃度上昇問題の現状と対策」という資料にも載っていますが、すでに立て坑Bにコンクリートやモルタルを投入して立て坑Aや立て坑Cとのつながり、さらにはタービン建屋とのつながりを遮断された部分のはずなのです。

(7/22 「海側地下水および海水中放射性物質濃度上昇問題の現状と対策」より)
この図にB1-1の位置を予想で書き込んでみるとこのような位置になります。

(7/22 「海側地下水および海水中放射性物質濃度上昇問題の現状と対策」に一部改変)
これは、この下の右側にある図と断面図としてもほぼ一致します。

7/19 タービン建屋東側における地下水および海水中の放射性物質濃度の状況について より
つまり、本来ならば、2011年4月から6月のピット閉鎖などの処理により、下の図の赤い部分に汚染水は閉じ込められているはずなのです。だとすると、この部分は水位は変動せず、トレンチの水位変化にも連動していないはずなのです。(ただし、7/27現在ではB1-2の位置と、その付近の管路のつながりが不明確なため、場合によっては他にもつながっている可能性はあります。B1-2の正確な情報開示が待たれます。)

B1-1の水位に関しては今後も継続してデータが取られていくと思いますが、ほとんど変動しなければ立て坑Bの閉塞が有効に機能していることになりますし、トレンチ水位に合わせて変動するならば立て坑Bでは閉塞されていないことになります。
現在のところ、2号機トレンチの水位データを毎日確認できていないのですが、
7/21 18時 O.P.+3011
(7/22 浪江町では21mmの降雨)
7/25 18時 O.P.+3258
7/26 18時 O.P.+3296
7/27 18時 O.P.+3231
と7/26までは上昇傾向にありますが、B1-1の水位は変化していないため、あまり影響を受けていない可能性が高いと思います。それは別のデータからも裏付けられます。
7/21 「2号機からの海洋漏洩の真実は?2年前の漏洩事故を再検証(3) 電源ケーブルはどこから?」でもまとめましたが、2年前の海洋漏えいの際、4/2のピットAのCs-137は1.9×10E6Bq/cm3でした。今回が1.6×10E6Bq/cm3と2割ぐらいしか変わっていません。立て坑AのCs-137が3.7×10E4Bq/cm3と当時の1/50に低下しているのとは対照的です。このB1-1付近の汚染水は、当時の状態で閉じ込められたままで、ほとんど漏えいもしていない可能性が高いと言えると思います。
ニュースでは、このトレンチB1-1の汚染水の濃度が非常に高いため、こんなに高い濃度の汚染水があった、というニュアンスで報道しているようにも思えるのですが、むしろ逆で、2年前とほぼ同じ濃度の汚染水が発見できたということは、これまでの2年間ではほとんど外に漏れ出していなかったということを示唆しており、むしろ安心できる情報であると考えるべきだと思います。その部分はたまった汚染水をくみ出せばそれで対応は終了です。
逆に、2年前よりもかなり低い濃度の汚染水しかなかった場合は、2年間の間にどこかに漏れ出した可能性が疑われるため、要注意です。
次にB2です。これについては7/19のタービン建屋東側における地下水および海水中の放射性物質濃度の状況についてに結果が示され、その後追加データが発表されました。
まずは場所を示した資料から。7/17に水を採取したと記載されています。マンホール蓋と書いてあるところです。

採取方法と、実際のマンホール内部を写した写真が公開されています。向きを変えて撮ってあります。ケーブルが何本も通っているのがはっきりとわかります。右側の写真では、北側に向かうケーブルが見えています。ということは、このマンホールの北側に電源ケーブル管路があるのでしょうか?

この地点の予想される断面図も記載されています。この部分にはわずか7cmの水深でしか水はたまっていませんでした。

実際のデータですが、7/26の資料が最新の情報も含めて発表されているのでそこから引用します。

7/26 福島第一原子力発電所海側トレンチ調査の考え方について より
このデータを見ると、塩分濃度が70ppmと当時のタービン建屋のデータの1/100程度であることが注目されます。先ほどのB1-1が8000ppmであること、上の表で3号機トレンチ立て坑Aのデータが7000ppm程度である事からもかなり薄いことがわかります。また、Cs-137濃度や全β、トリチウムの濃度を見ても、これを全て100倍にしたら2年前の濃度にほぼ近いのです。
ということは、何かが起こって約100倍希釈されたということでしょう。一つの可能性は、2年前の4/3に行われたおがくずや吸水性ポリマー、あるいは4/6の後に投入された可能性のあるグラウトに吸着されたということです。もう一つの可能性は、この付近のトレンチにはひびが入っていて、2年間の間に周辺の地下水が流入し、別のヒビから流出しているために地下水で希釈されたということです。両方が起こっているかもしれません。
そもそも東電の2011年4/5の発表によれば、このマンホールから2011年4/3にコンクリートをはつった場所の間のどこかにヒビが入っていて汚染水が砕石層に移行した可能性があるということでした。東電が当時発表した断面図は明らかに間違いであることはこのシリーズでも述べているのでくり返しませんが、この付近のトレンチにヒビが入っていてそこから流出した可能性は非常に高いのです。2年前の対応でそのヒビからの漏れが止まったかどうかについては全く検証されていません。
水位がわずか7cmしかなく、O.P.2760しかないというところも重要な情報です。先ほどの7/19の場所を示した図で、「孔あけ箇所」という記載がありますが、そこがB1-1です。そこから下の図のようにコンクリートはつり地点に汚染水が流れていき、B2の地点にまで到達したのですが、2011年4/3にここにはおがくずや吸水性ポリマーを投入してこの流路は止められたはずです。

原子力規制委員会 被規制者等との面談概要・資料(7/18) の資料に一部加筆修正
すでに見たように、B1-1の水位がO.P.3150と高くあまり変動がなさそう(=密閉された空間である)ということは、はつった地点での2011年4月の止水が有効であることを示唆しています。一方で、B2付近の水位がO.P.2760であるということは、2011年4/3頃のO.P.2960よりも20cm低いです。ということは、やはりこの付近でトレンチにひび割れが起きていて汚染水が砕石層に出て行ったと考えないと低くなる理由がありません。もし密閉されていれば、グラウトを投入したらその分水位が高くなるはずですから、一切ひび割れがないと仮定するとO.P.2960以上になっていないといけないはずです。
以上の状況証拠から、私は以下の推論をします。
・立て坑Bの閉塞及びコンクリートをはつった部分の2011年4月の止水は有効であった。
・B1-1付近のトレンチは完全に密閉されており、水が漏れるようなヒビは入っていない。従ってB1-1は当時の汚染水濃度を維持できている。
・B2付近では東電が当時予想したようにトレンチにヒビがはいっていた可能性が高い。そのためにB2の水位が低い可能性がある。
・B2の塩分濃度が薄い理由の一つとして、今も地下水が流入流出していてそれによって希釈されたという可能性もある(これについてはあまり明確な根拠があるわけではありません)。
最後の立て坑Aの情報については、すでに「2号機からの海洋漏洩の真実は?2年前の漏洩事故を再検証(2) トレンチの謎」で私なりの考えを書きました。
・立て坑A:Cs-137:3.7×10E4Bq/cm3(2013年5/30採取)
(6/27 東京電力福島第一原子力発電所廃炉対策推進会議/事務局会議(第5回) 資料3-2 「2~4号機海水配管トレンチについて」 より)
ただ、この時に考慮に入れていなかった情報があります。前回書いた時は、立て坑Bにコンクリートなどを投入して閉塞しているために立て坑Aの部分はタービン建屋とはつながっているが、他の立て坑とはつながっていないという考えでいました。
しかし今回改めて情報を読み直すと、立て坑Bの閉塞とは、立て坑の上部だけであり、一番下の立て坑A及び立て坑Cとつながっている部分には単に砕石を投入しただけなのです。ということは、立て坑Aから立て坑Cには汚染水はつながっていると考えた方が自然です。立て坑Bの閉塞処理により切り離されたのは立て坑Bの上部より下流のトレンチだけなのです。

となると、7/26で発表されたように、立て坑Aと立て坑Cの両方の水位及び放射能濃度を測定して、それらが同じなのか違うのかを明らかにしていくことが2号機トレンチ内で何が起こっているのかを判断するのに必須の情報になります。
現段階では、私には2号機及び3号機で毎日測定されているトレンチ立て坑の水位情報が、どの立て坑で測定されているのかわかりません。ご存じの方がいたら是非教えてください。

http://www.tepco.co.jp/nu/fukushima-np/tairyusui/tai-newest-j.pdf
また、この情報は毎日2回上書き更新されてしまいます。昨年の後半からこのような発表の形になって、それ以降は一度公表された過去の情報をHPで確認できないようになってしまいました。東京電力にはこれまでの水位情報をまとめて公開することをお願いするとともに、この情報を残していくことに協力いただける方を求めたいと思います。地道な作業ですが、毎日ご協力いただける方がいたらぜひご連絡下さい。ブログへの非公開コメント、メールフォーム、ツイッター何でも構いません。
3号機に関しては、前回の7/15「2号機からの海洋漏洩の真実は?2年前の漏洩事故を再検証(2) トレンチの謎」で書いた以上の情報はまだ出てきていません。
新たに全βやトリチウムの濃度が出てきましたが、それはB2のデータと一緒に上で示しましたので今日の時点では省略します。
新たに情報がわかってきたら追記していきたいと思います。
「2号機からの海洋漏洩の真実は?2年前の漏洩事故を再検証(5)」については、来週以降に書く予定です。お楽しみに。
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