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原子力規制委員会の資料でわかった福島第一原発での標高管理の注意点

 
7/29に行われた「第14回特定原子力施設監視・評価検討会」では、原子力規制庁が東電からヒアリングした事を受けてまとめた資料が公開されました。資料1-1です。

今日は、この資料の中でも特に標高管理について、このブログでも良く用いてきたO.P.について少し書きたいと思います。


O.P.= Onahama peil というのは、小名浜港平均海面を基準とした標高の表し方です。詳細については、昨年書いた「福島原発の汚染水をよく知るため、O.P.とサブドレンを理解しましょう」に書きました。結構初歩的なところから解説していますのでまだ読んでいない方はそちらを是非ご覧下さい。

O.P.と東京湾平均海面であるT.P.とは同じではありません。東京湾の方が72.7cm高いため、T.P. 0m=O.P. 0.727mです。

7/31-1
第14回特定原子力施設監視・評価検討会」資料1-1より

3.11の前は、この換算だけで十分でした。そして、東電の福島第一原発においては、O.P.での標高管理が行われていました。スクリーンポンプ室あたりはO.P.4m、タービン建屋や原子炉建屋はO.P.10mということで、その基準面(O.P.+4000mm)に対して80cm低いからO.P.+3200mmとかそういう表記をしてきました。東電がこれまで発表してきた資料は全てこの方法で記載されてきたのです。

ところが今般、地下水位や潮位を測定しないといけなくなりました。そうする時に注意しないといけないのは、実は3.11の地震で福島第一原発付近は平均70cmも地盤沈下が起こっていたのです。そこで、東電は地下水位や潮位に測定値に70cmを足して発表しました。O.P.4mと言っていた数値が4mになるように換算するためです。

ところが、7/22に東電が地下水の海への漏えいを認めた際に発表したその根拠資料G
7/31-4

が、実は規制庁に7/18に説明した際に用いた資料

7/31-5

70cm違っていることをTV朝日の松井記者に指摘されました。実際には上の資料はO.P.で記載し、下の資料はT.P.で記載しているような気がしますが、確証はありません。

そのことがきっかけとなり、7/24に「福島第一原子力発電所の海側地下水位および潮位データの訂正について」という訂正がなされました。

7/31-2

どういう訂正かというと、実は気象庁が発表する潮位データはT.P.を基準として測定されるため、O.P.にするには気象庁データ(T.P.)+0.727mで計算しないといけなかったのです。そして、70cmの地盤沈下を考慮すると、これまで東京電力は報告してきたO.P.いくつという数値は相対値としては問題ないのですが、O.P.4m盤や10m盤を基準にして測定してきたトレンチ水位と、T.P.で測定値が出てくる潮位や地下水位とを比較する時には、上の計算にあるようにGPSで計測されるT.P.の数値に、地震による地盤低下の0.7mにさらに0.727mを足さないと計算が合わないことになるのです。

7/22の資料では、潮位について、この+0.7mはしていたのですが、T.P.をO.P.に変換するのを忘れて0.727m足していなかったようです。一方で、なぜか地下水位の測定値は、潮位と同じGPS測量値、すなわちT.P.を基準として測定されるのですが、GPS測量値(T.P.)+0.727m+0.7mで正しく計算して発表していたようです。

そのため、「7/22 ついに東電が汚染水の海への流出を認める!(1)」で当初7/22に発表した時の潮位データはこのように大体O.P.0.7m前後でしたが、

7/22-8
7/22 ついに東電が汚染水の海への流出を認める!(1)」より。7/22にキャプチャしたもの。

実際にはT.P.とO.P.の変換を加えて、さらに0.727m加算して下の図のようにならないといけないのです。地下水位との関係が実際よりもかなり水位に差があるような発表を7/22の段階ではしていたことになります。

7/31-3
7/22「海側地下水および海水中放射性物質濃度上昇問題の現状と対策」 訂正版より

T.P.とO.P.の差が72.7cmで、地盤沈下が70cmなのでほとんど同じであるため、どちらの数値を足していないのかがわかりにくく、さらに混乱しやすい事になっています。私も当初は数値の意味を読み間違えていました。今は正しい解釈をしていると思うのですが、もし間違いがあればご指摘ください。

以上のことが7/29の原子力規制庁の資料でははっきりと記載されており、さらにそこから踏み込んだ分析をしています。次の図をご覧下さい。

7/31-6
第14回特定原子力施設監視・評価検討会」資料1-1より

この図では小さくてたぶん数字が読み取れないと思いますが、この図は、これまで東電が発表してきた図から、地盤沈下分の70cmを差し引いて、実際のO.P.で敷高(砕石層の下端の高さ)を記載したものです。

また、この図では、海水配管トレンチのように岩盤にトンネルを掘っているために砕石層が設置されていないトレンチは白抜きのままで、砕石層のあるトレンチ及び管路について赤茶色に色をつけています。この砕石層の話はまた別の時に詳細に取り上げたいと思いますが、今回はこれまでO.P.4mと言われてきたスクリーン付近のO.P.が、沈下後の現在の正確なO.P.に直した場合にどうなるか、という視点で捉え直した資料として見る必要があります。

つまり、東電の資料は基本的に全てスクリーン付近の標高O.P.4mを地震前のO.P.4000として記載しているのに対し、この規制庁の資料はO.P.3300として記載しているのです。こういう表記をされると混乱するのですが、この規制庁の記載の方が、気象庁の潮位と比較する時など、T.P.で出てくる数値を+0.727mしただけの実際のO.P.で計算する際には理解しやすいというメリットがあります。

二つを区別するため、東京電力が用いている標高を「管理O.P.」、規制庁がこの時の資料で用いた標高を「O.P.」と呼びましょう。「管理O.P.」ではスクリーン付近は管理O.P.4000ですが、実際には70cm沈下しているので「O.P.」は3300です。

ただ、この後の資料で規制庁はおかしな事を議論しています。下の図をご覧下さい。

7/31-7

ここでは砕石層の標高を「O.P.」で記載しています。そしてO.P.2m以下のトレンチやO.P.2.5m以下のトレンチを色分けしているのです。そこまではいいのですが、地下水位が「O.P.」2~2.5mだからそれと比較してそれよりも低いトレンチの砕石層は地下水に満たされている可能性があるという議論をしています。

この砕石層が実は地下水に満たされているということは東電は決して言わなかったのですが、これを初めて取り上げた規制庁は偉いと思いました。私もずっと前からこの可能性については気がついており、正確な地下水水位がわかればそれを過去の汚染水漏洩事故の原因分析にも用いるつもりでした。

しかし、しかしです。ここで規制庁は地下水水位がO.P.2~2.5mといい、その根拠として次に示す資料でNo.1の地下水位がO.P.2m程度であることを示しています。

7/31-8

でもよくよく見直すと、この図では潮位と地下水位がかなり近くなっています。ということは、先ほどの東電の訂正後の水位を用いています。つまりT.P.+0.727m+0.7mの水位です。これは先ほどの私の分類では「管理O.P.」であり、この水位を用いるならば、トレンチの標高も0.7m足した数値で議論しないと行けないのです。

先ほどの砕石層のO.P.の色分けをする際には、「O.P.」で議論するのですから、地下水位は2mではなく1.3mで表記しないといけないのです。

この表記方法、非常にわかりにくいです。多くの人が混乱すると思います。特に、T.P.とO.P.の差が72.7cmと地盤沈下の70cmとかなり似ていることも混乱に拍車をかけていると思います。東電はずっと「管理O.P.」で表記していますので、これを変更しないでいてくれて、T.P.で出されるデータの変換さえ間違わなければ良いと思います。

今回は、O.P.のデータを読む時、特に潮位や地下水位との比較の際にはよく注意しないといけないということを注意喚起するために書いてみました。

実は、書いているうちに私自身もちょっと混乱してきました。一度書き直したので、おそらく私の考え方は間違っていないと思うのですが、いや、規制庁の考え方で正しいよ、というご指摘があれば教えてください。訂正します。
 

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コメント

Re: 汚染水の海への流出を示すデータ

xls-hashimotoさん

情報ありがとうございました。この土木技術、「概要(2)」は読んだ記憶があるのですが、(1)は読んでいませんでした。

東電自身も地下水が山から海へと流れているのは以前から認めていたのですが、実際に海に汚染水が地下水を通じて流出したデータがないと主張してきたのです。でも、先月公式に認めましたので、あとはズルズルと認めていく形になるのでしょう。



汚染水の海への流出を示すデータ

「私説0003 汚染水の海への流出を示すデータ」
http://xls-hashimoto.cool.coocan.jp/shisetu_jikocyo/No_0003/shisetu_jikocyo_0003.html
に掲載した「土木技術 22巻9号」に「福島原子力発電所土木工事の概要(1)」には(c)排水対策の項があり、湧水線図と共に次の様に記されています。
「土工事ににとって最も重要な問題は排水処理である。当所でもこの問題には大いに悩まされた。」
敷地面を覆うコンクリートとアスファルトと、岩盤である泥岩層の間を多量の地下水が海に向かって流れています。
これは46年前の建設当所からわかっていたことです。
この流れに途中から加わった汚染水は、当然、海に向かって流れていきます。



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3.11では、停電・断水のため、一晩避難所で過ごし、震災後の情報収集をきっかけにブログを始めました。
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