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福島第一原発で地下水が海に出ているのはいったい一日何トン?

 
昨日(8月7日)から福島第一原発の汚染水が地下水を通じて海に流出していることについていろんなニュース(リンク先は朝日)が流れています。その量も、エネ庁が発表している数字と、東電が述べている量とが微妙に合わないという状況です。

非常に情報が錯綜しているのですが、現状を簡単にレビューします。


まず、昨日(7日)に久し振りに第31回原子力災害対策本部会議が開催されました。その中で、「資料2:福島第一原子力発電所における汚染水問題への対策」として汚染水問題も議論されました。

8/8-1
資料2:福島第一原子力発電所における汚染水問題への対策より

その中に「福島第一原発1~4号機には、一日約1000トンの地下水流入があり、このうち約400トンが建屋に流入。残りの約600トンの一部がトレンチ内の汚染源に触れて、汚染水として海に放出されている状況」と記載されています。

この会議の後で行われたブリーフィングで、資源エネルギー庁は1日約300トンが流出していると発表したそうです。このブリーフィングの動画を見て確認したわけではないのですが、ブリーフィングをコアジサシさん(@mtx8mg)がまとめてくれたtogetterによると、この数字は、東電が1-2号機間で約100トン汲み上げると言ったから約100トン漏れているだろうと判断したということのようです。似たようなエリアが3箇所あるのでその3倍で300トンという説明だったのでしょうか。

その後の8/7の東電記者会見(togetter参照)によると、東電が8/4にエネ庁に示した資料(未公開)で、地盤改良が完成して水位が上がってきた時に1日300トンのくみ上げの必要があるという資料を提示したそうです。そして、それ以上の対策を行うと60トンのくみ上げが必要になるということです。エネ庁はそれを海に流出している量と判断したことのようです。記者会見では、東電としては汲み上げ量を提示しただけであって、海への流出量を提示したわけではないと主張しています。ただ、このエネ庁に提出した資料は記者会見では提示されていません。

また、1000トンという数値は、8/2の「第1回特定原子力施設監視・評価検討会汚染水対策検討ワーキンググループ」でトリチウムの流出量を試算する時に用いた数値で、東電の説明としては1日1000トンの地下水が流れてきており、そのうち建屋内に400トン流入するため、残りが約600トンだという説明が記者会見でありました。

ただ、この時のワーキンググループに提出された資料では、1000トンという数値は出てきていません。これについては「ついに東電が汚染水の海への流出を認める!(2) 規制庁のワーキンググループ第1回会合」の最後の方でご紹介していますので読んでいただきたいのですが、1-4号機の取水口全体で1日約400トンという数値が出ているだけです。

エネ庁に提出したという資料が公開されないと、この微妙な数値のズレはわからないと思います。

ただ、東電の主張していることももっともなことで、300トンというのはあくまで水ガラスで止めて水位が上がって来たことによって汲み上げが必要になった量であり、それでもおそらくまだ地表から1.8m(O.P.2200)を超える部分については漏れていると思いますので、実際にはもっと多い可能性もあります。従って汲み上げ量=流出量ではなく、流出量は汲み上げ量以上である可能性も否定できません。

また、今回の300トンという数値も1-2号機間の約100トンを3倍して300トンとしているようですが、それ以外にスクリーンのある部分からも海に漏れ出ている可能性もあるので、8/2の資料でトリチウムの流出量を試算する時に用いられた400トンという数値の方が正しいような気もします。

それから、勘違いしていただくと困るのですが、一日300トンにせよ400トンにせよ、その地下水の全てが高濃度に汚染されているわけではありません。地下水が汚染されている可能性が高いというだけで、どれだけの量(濃度)の汚染があるのかについては今回は提示されていないということを理解しておく必要があります。それについては8/2の東電資料がトリチウムについて初めて試算を示しただけです。



また、8/7の東電記者会見では、今週から行う予定の汲み上げ計画について示されました。これは、8/2のワーキンググループで指摘を受けたため、当初の予定よりもくみ上げを早めたものです。

8/8-2
8/7 福島第一原子力発電所1-2号機取水口間の排水計画について より

まずは上の図の右上にある集水ピットを掘り始めるそうです。それと並行して2mおきに28本ほど設置する予定のウエルポイントの設置準備を始めるそうです。

8/8-3
8/7 福島第一原子力発電所1-2号機取水口間の排水計画について より

ここで問題なのは、集水ピットで汲み上げた水を、2号機海水配管トレンチの立て坑Cに入れるという計画だということです。2号機立て坑Cのデータについては「2号機からの海洋漏洩の真実は?2年前の漏洩事故を再検証(5) トレンチの謎3」で示したように、このトレンチのどこかで水が漏れている可能性があることを示すデータが出ています。

そのため、ここに汲み上げた水を入れるのは危険な気もします。東電はあくまでこの海水配管トレンチが耐震設計上問題ないはずだから漏れていないと考える、という理屈を言っていますが、データをみてどう考えるか、ということは全く行っていません。

ただ、仮にこのトレンチにヒビがあって漏れていたとしても、そんなに大量に漏れ出すようなヒビではないでしょうから、一時しのぎとしては仕方ないことかもしれません。このトレンチは1,2号機の建屋約8000m2とつながっていますから、1cm水位が上がるのに80トンの水が必要です。現在はO.P.で約3200程度なので、1日100トン汲み上げて立て坑Cから入れたとして、1日1cm水位が上昇するかどうかというところだと思います。

今回の対応はあくまで一時しのぎの応急措置的な対応であり、政府が来年度の概算要求で予算措置を盛り込むことを決めた陸側の「凍土遮水壁」のような対策が(これに関してもいろいろ議論があるようですが)行われるまで、まだまだ課題は出てくることが予想されます。

今日のところはこのくらいにします。

8/9朝追記:コンタンさんに教えていただきましたが、8/8に行われた第4回汚染水処理対策委員会の資料が東京電力HPに公開されていました。その中に山側から一日1000トンの資料(資料5)がありました。これと同様の資料がエネ庁にも提示されたものと思われます。

8/8-4
8/8 第4回汚染水処理対策委員会(資料5) より

また、この会議では、地下水バイパスを利用して入り込む地下水を減らすなどの対策が議論されました。(NHKのニュース参照

 
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これまで約4年間、原発事故関係のニュースを中心に独自の視点で発信してきました。その中でわかったことは情報の受け手も出し手も意識改革が必要だということです。従って、このブログの大きなテーマは情報の扱い方です。原発事故は一つのツールに過ぎません。

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