汚染水タンクからこれまで最大の300トンの漏えい!(2) 汚染水WGでの情報(一部訂正)
8/20の「汚染水タンクからこれまで最大の300トンの漏えい!」の続報です。
昨日(8/21)は「第3回特定原子力施設監視・評価検討会汚染水対策検討ワーキンググループ」を初めて最初から最後まで見ていたため、そこで急遽取り上げられたH4エリアからの汚染水漏れについてお知らせします。
8/20時点でわかっていたことは、約300トンがもれたということ、そして一日で漏れたのではない可能性が高いということでした。8/21のワーキンググループでは、1ヶ月近くかけて出たのではないか、という話になっていました。
それは、5番タンクの水位測定の結果、8/20の朝9:30から6時間で5cmの水位低下、その次の6時間で1cmの水位低下があり、合わせて12時間で6cmの水位低下があることから1日約10トンの漏れがあり、そこから逆算すると約30日という計算になります。
8/21のワーキンググループにおいて東京電力が説明したことからすると、もれた5番のタンクは、5番と7番から10番の5つでまとめて管理しました。(今回引用する図は基本的に8/21のワーキンググループ資料より)

水を入れる際は5、7-10がラインで連結されて運用しており、1箇所(おそらく7番)から水を入れていくそうです。そして水位計はこの5つのうち7番にしかついていないということです。5つが連結されているので、7番の水位が満水になったら全て満水になったと判断し、その時点で5つのタンクをつないでいるバルブをそれぞれ閉めるということをしています。
このため、規制庁の金城室長が質問していたのですが、本当に5番が満水になったのか、ということは誰も確かめていないのです。あくまで7番の水位からの類推で5番も満水になったはず、ということであり、ひょっとしたらバルブが完全に開いていなくて5番には最初から満水になっていなかったという可能性も現段階ではゼロではありません。この事は一応頭に入れておく必要があります。
なぜ金城室長がこのような質問をしたかというと、あとで示しますが、300トンが1ヶ月で流出したとして、毎日10トンの水が流れていたことになります。ただ、毎日10トンもの大量の水が流出していたのになぜ気がつかなかったのか、東京電力の説明を聞いていても理解できないことが多いのです。
1日10トンの水が流れていたとしたらなぜ気がつかなかったのか?ドレン孔からも流出したのは間違いないのですが、10トンもの水が流れていて気がつかないというのは信じられないことです。そこで更田委員は、高さ11mもあるこのタンクの下部の基礎のコンクリートにヒビがあるなどの問題があって、下から漏れていった可能性があるのではないか?という指摘をしていました。ただ、その可能性についてはまだ汚染水があって線量が高いためすぐには調査できないということでした。
また、8/20の記者会見でも問題になったことですが、ドレン孔の「開」運用が問題となりました。東電は、雨があるとタンクに設けた堰(高さ約30cm)に水がたまってしまい、漏洩があったかどうかわかりにくいため、ドレン孔は常に開の運用としていたということです。そして、堰の中を常に乾かす運用としていたそうです。乾かしておけば、前日と違って水が多く出ていると漏えいがあった、と発見しやすいという主張です。
東電は、毎日2回、パトロールを行っていました。このエリアでも下図のような感じでタンクのまわりを回って漏えいとみられるおかしな水たまりがないかどうかチェックしていたということです。

しかし、今回漏えいが発覚する前の数日間は水たまりは常にあったということで、それについては毎日2回行うパトロールにおいても特に異常とは見なされずに過ぎていったようです。8/19にはじめて、前日はなかった水たまりを発見したため気がついたということです。
このパトロール、線量計は常に持ち歩いているということですが、いつどこで線量を測定したか、ということは一切記録に残していないということで、ずさんな管理を行っていたことが明らかになりました。
おそらく、汚染水がたまっている水たまりを見ても、前日とあまり変わっていないと判断されると線量計によるチェックもされず、パトロールでもそのまま見過ごされていた可能性が高いということです。
また、もう一つの可能性として、更田委員が指摘したように、タンクの下から漏れていった可能性もあります。上記のような話だとしても、毎日10トンもの水がドレン孔から流れていたのをパトロールで見逃すというのは、あり得ない話ではないですが考えにくいからです。
これについてはすぐにチェックできないのですが、300トンもの水が地下に流れたとしたら、いずれ地下水のデータに何か変化が起こるでしょうからそれでチェックできると思います。この近くには、地下水バイパスのために掘られている揚水井があるため、特に下図のC系統のデータを見れば恐らくチェックできると思います。

(8/20 (いわき市漁協説明会資料)汚染水対策ならびに地下水バイパスについて より)
もう一つの流出ルートとしては、地上を流れて側溝からBラインと呼ばれる排水路に流れていった可能性です。今回明らかになったのは、下図の無線中継所と呼ばれる建物のまわりを通って対策③と書かれたあたりに汚染が広がっているルートがわかっています。

そして、いくつか線量測定をしたポイントのうち、下図で無線中継所近くの10番~12番のあたりの線量が高く、11番の近くの側溝の側面に6mSv/hの線量があったということが明らかになりました。

この場所は、下図のBライン(緑)と呼ばれる排水路ですが、このままCライン(青)と呼ばれる排水路と合流して海に流れていきます。このBラインには流量は多くないものの常時水が流れているということでした。

という情報から、東京電力は昨日の記者会見で「海へ流出した可能性は否定できない」と述べたようです。そのため、この話が昨夜の大きなニュース(リンクはNHK)になりました。ちなみに、この事はワーキンググループではあまり問題とはされませんでした。
このBライン及びCラインの先はというと、以前測定されていた南放水口付近(1~4号機放水口から南側に約330m地点)と呼ばれる地点になります。昨年書いた「4/5【速報】 3/26に続いてまたも同じ種類の配管からSr汚染水が海へ流出?」においてもこの地点のデータは漏えいのモニタリングとして重要なのです。

8/22夜 コメントを受けて間違いに気づき修正
南放水口付近のサンプリングはT-2と呼ばれる330m南から、正確な時期は覚えていないのですが、ある時期に約1km南にあるT2-1という地点に移動になってしまい、現在は測定していないのかと思っていたのですが、実はまだ測定してくれていました。
コメント欄をご覧いただければわかりますが、2012年11/26よりこの地点での測定は約1km南の地点に移動されていました。
8/22現在のHPでは、下記のようにいかにも放水口南330mの地点で測定しているように思えます。私も南に1km移動した情報は知っていたのにこの表記に引っかかってしまいました。

東電HP 福島第一原子力発電所周辺の放射性物質の核種分析結果 下部
しかし、例えば今年の2月のデータでは下記のようになっています。

確かに、2013年2月までは、「※平成24年11月26日採取分より、サンプリングポイントを変更。(これまでの地点から南へ約1kmの地点にてサンプリングを実施)」という注釈がついていますが、今年の3月以降は今月のようにこの注釈が消えています。これでは、現在も測定していると私のように早合点する人が出てきてもおかしくありません。
ここには一例だけ示しますが、この地点のデータから昨年3月や4月の同様のSrを多く含む汚染水の漏洩事故では海洋漏えいの有無を判断できています。ここでは全βというデータを見ればいいのです。

全βのデータは、8/20で19Bq/Lです。この値は、8月の間ほとんど変わらず、さらにそれ以前と比べてもほとんど変わりません。
朝急いで書いたためか、検出限界値を見て書いてしまっていました。ほとんどの期間で検出限界値未満でした。全てのデータを確認したわけではないですが、全βも多くの場合は検出限界値未満です。ですが、南に1.3kmも離れた場所であれば測定している意味がありません。
昨年3月の漏洩事故においては、「3/27 淡水化装置からのSrを含む水が海へ漏れた事故の続報」で示したように、放水口南330mであれば、この地点の全βのデータが一時的に17000Bq/Lにまで上昇しています。その後も300Bq/Lなどと、今回のレベルの10倍以上高い値を示しているのです。有意に上昇しており、モニタリング地点として意味がありました。
この事から考えると、海洋への流出はあったとしても300トン全量とはとても思えません。1日10トン流れれば検出できると思います。更田委員のいうようにコンクリートから地下にもれたか、あるいは金城室長が指摘しているように本当に300トンもれたのか(ひょっとしたらもっと少ないのでは?)、という可能性も考えておいた方がいいと思います。側溝の側面に6mSv/hというのは事実ですが、まだそれだけのデータでは300トン全量が海へ流出したという判断をするには早いと思います。
しかし、放水口南330mのサンプリングポイントを南に1kmもずらしたことにより、こういう時のための常時測定が全く意味がなくなってしまったのです。今回については、海に流れたのかどうかデータで検証しようがありません。
前提が少し変わってしまいましたが、ただ、やはり300トン全てが地表を流出して側溝から海に流れ出したとは思えません。染みこんでいくものもかなりあると思われます。それらは地下水になって流れていくはずです。地下水バイパスのC系統のデータを早く示して欲しいと思います。また、規制庁がワーキンググループで要求したように、ボーリングをするなどして地下水のデータを早く取って欲しいです。
8/22夜 訂正ここまで
今後の対応策として、更田委員は共通要因による破損が懸念されるので、同タイプ(フランジ接続タイプという意味では約350個、全く同じタイプであれば100個ちょい)のタンクからの漏えいを疑い、可能ならば別のタンクに移設するように指示しました。ただそれはかなり時間がかかるので、まずは同タイプのタンク全てに水位計を取り付けること、さらに直近としてはパトロールを強化することを他の規制庁職員から指示されました。
また、ドレン孔の開運用は改めるように指示されました。
以上、時間がなくてかなり荒いまとめですが、昨日(8/21)のワーキンググループにおけるH4エリアからの漏えいについてはだいたいこんな話でした。また続報があれば書こうと思います。
それは、5番タンクの水位測定の結果、8/20の朝9:30から6時間で5cmの水位低下、その次の6時間で1cmの水位低下があり、合わせて12時間で6cmの水位低下があることから1日約10トンの漏れがあり、そこから逆算すると約30日という計算になります。
8/21のワーキンググループにおいて東京電力が説明したことからすると、もれた5番のタンクは、5番と7番から10番の5つでまとめて管理しました。(今回引用する図は基本的に8/21のワーキンググループ資料より)

水を入れる際は5、7-10がラインで連結されて運用しており、1箇所(おそらく7番)から水を入れていくそうです。そして水位計はこの5つのうち7番にしかついていないということです。5つが連結されているので、7番の水位が満水になったら全て満水になったと判断し、その時点で5つのタンクをつないでいるバルブをそれぞれ閉めるということをしています。
このため、規制庁の金城室長が質問していたのですが、本当に5番が満水になったのか、ということは誰も確かめていないのです。あくまで7番の水位からの類推で5番も満水になったはず、ということであり、ひょっとしたらバルブが完全に開いていなくて5番には最初から満水になっていなかったという可能性も現段階ではゼロではありません。この事は一応頭に入れておく必要があります。
なぜ金城室長がこのような質問をしたかというと、あとで示しますが、300トンが1ヶ月で流出したとして、毎日10トンの水が流れていたことになります。ただ、毎日10トンもの大量の水が流出していたのになぜ気がつかなかったのか、東京電力の説明を聞いていても理解できないことが多いのです。
1日10トンの水が流れていたとしたらなぜ気がつかなかったのか?ドレン孔からも流出したのは間違いないのですが、10トンもの水が流れていて気がつかないというのは信じられないことです。そこで更田委員は、高さ11mもあるこのタンクの下部の基礎のコンクリートにヒビがあるなどの問題があって、下から漏れていった可能性があるのではないか?という指摘をしていました。ただ、その可能性についてはまだ汚染水があって線量が高いためすぐには調査できないということでした。
また、8/20の記者会見でも問題になったことですが、ドレン孔の「開」運用が問題となりました。東電は、雨があるとタンクに設けた堰(高さ約30cm)に水がたまってしまい、漏洩があったかどうかわかりにくいため、ドレン孔は常に開の運用としていたということです。そして、堰の中を常に乾かす運用としていたそうです。乾かしておけば、前日と違って水が多く出ていると漏えいがあった、と発見しやすいという主張です。
東電は、毎日2回、パトロールを行っていました。このエリアでも下図のような感じでタンクのまわりを回って漏えいとみられるおかしな水たまりがないかどうかチェックしていたということです。

しかし、今回漏えいが発覚する前の数日間は水たまりは常にあったということで、それについては毎日2回行うパトロールにおいても特に異常とは見なされずに過ぎていったようです。8/19にはじめて、前日はなかった水たまりを発見したため気がついたということです。
このパトロール、線量計は常に持ち歩いているということですが、いつどこで線量を測定したか、ということは一切記録に残していないということで、ずさんな管理を行っていたことが明らかになりました。
おそらく、汚染水がたまっている水たまりを見ても、前日とあまり変わっていないと判断されると線量計によるチェックもされず、パトロールでもそのまま見過ごされていた可能性が高いということです。
また、もう一つの可能性として、更田委員が指摘したように、タンクの下から漏れていった可能性もあります。上記のような話だとしても、毎日10トンもの水がドレン孔から流れていたのをパトロールで見逃すというのは、あり得ない話ではないですが考えにくいからです。
これについてはすぐにチェックできないのですが、300トンもの水が地下に流れたとしたら、いずれ地下水のデータに何か変化が起こるでしょうからそれでチェックできると思います。この近くには、地下水バイパスのために掘られている揚水井があるため、特に下図のC系統のデータを見れば恐らくチェックできると思います。

(8/20 (いわき市漁協説明会資料)汚染水対策ならびに地下水バイパスについて より)
もう一つの流出ルートとしては、地上を流れて側溝からBラインと呼ばれる排水路に流れていった可能性です。今回明らかになったのは、下図の無線中継所と呼ばれる建物のまわりを通って対策③と書かれたあたりに汚染が広がっているルートがわかっています。

そして、いくつか線量測定をしたポイントのうち、下図で無線中継所近くの10番~12番のあたりの線量が高く、11番の近くの側溝の側面に6mSv/hの線量があったということが明らかになりました。

この場所は、下図のBライン(緑)と呼ばれる排水路ですが、このままCライン(青)と呼ばれる排水路と合流して海に流れていきます。このBラインには流量は多くないものの常時水が流れているということでした。

という情報から、東京電力は昨日の記者会見で「海へ流出した可能性は否定できない」と述べたようです。そのため、この話が昨夜の大きなニュース(リンクはNHK)になりました。ちなみに、この事はワーキンググループではあまり問題とはされませんでした。
このBライン及びCラインの先はというと、以前測定されていた南放水口付近(1~4号機放水口から南側に約330m地点)と呼ばれる地点になります。昨年書いた「4/5【速報】 3/26に続いてまたも同じ種類の配管からSr汚染水が海へ流出?」においてもこの地点のデータは漏えいのモニタリングとして重要なのです。

8/22夜 コメントを受けて間違いに気づき修正
コメント欄をご覧いただければわかりますが、2012年11/26よりこの地点での測定は約1km南の地点に移動されていました。
8/22現在のHPでは、下記のようにいかにも放水口南330mの地点で測定しているように思えます。私も南に1km移動した情報は知っていたのにこの表記に引っかかってしまいました。

東電HP 福島第一原子力発電所周辺の放射性物質の核種分析結果 下部
しかし、例えば今年の2月のデータでは下記のようになっています。

確かに、2013年2月までは、「※平成24年11月26日採取分より、サンプリングポイントを変更。(これまでの地点から南へ約1kmの地点にてサンプリングを実施)」という注釈がついていますが、今年の3月以降は今月のようにこの注釈が消えています。これでは、現在も測定していると私のように早合点する人が出てきてもおかしくありません。
ここには一例だけ示しますが、この地点のデータから昨年3月や4月の同様のSrを多く含む汚染水の漏洩事故では海洋漏えいの有無を判断できています。ここでは全βというデータを見ればいいのです。

朝急いで書いたためか、検出限界値を見て書いてしまっていました。ほとんどの期間で検出限界値未満でした。全てのデータを確認したわけではないですが、全βも多くの場合は検出限界値未満です。ですが、南に1.3kmも離れた場所であれば測定している意味がありません。
昨年3月の漏洩事故においては、「3/27 淡水化装置からのSrを含む水が海へ漏れた事故の続報」で示したように、放水口南330mであれば、
しかし、放水口南330mのサンプリングポイントを南に1kmもずらしたことにより、こういう時のための常時測定が全く意味がなくなってしまったのです。今回については、海に流れたのかどうかデータで検証しようがありません。
前提が少し変わってしまいましたが、ただ、やはり300トン全てが地表を流出して側溝から海に流れ出したとは思えません。染みこんでいくものもかなりあると思われます。それらは地下水になって流れていくはずです。地下水バイパスのC系統のデータを早く示して欲しいと思います。また、規制庁がワーキンググループで要求したように、ボーリングをするなどして地下水のデータを早く取って欲しいです。
8/22夜 訂正ここまで
今後の対応策として、更田委員は共通要因による破損が懸念されるので、同タイプ(フランジ接続タイプという意味では約350個、全く同じタイプであれば100個ちょい)のタンクからの漏えいを疑い、可能ならば別のタンクに移設するように指示しました。ただそれはかなり時間がかかるので、まずは同タイプのタンク全てに水位計を取り付けること、さらに直近としてはパトロールを強化することを他の規制庁職員から指示されました。
また、ドレン孔の開運用は改めるように指示されました。
以上、時間がなくてかなり荒いまとめですが、昨日(8/21)のワーキンググループにおけるH4エリアからの漏えいについてはだいたいこんな話でした。また続報があれば書こうと思います。
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