「2号機からの海洋漏洩の真実は?2年前の漏洩事故を再検証」 再開予告
最近は汚染水の最新情報をタイムリーに細かくお伝えできていませんが、それには理由があります。
実は、今年の夏頃にずっと書いてきた「2号機からの海洋漏洩の真実は?2年前の漏洩事故を再検証」の再検証シリーズを再開することにしました。最近はこちらに注力しているのと、最新の情報はデータはたくさんあるものの大きな進展があまりないため、なかなかうまくまとめてお伝えできないのが実情なのです。
今回は、新たに東京電力の2011年4月のTV会議の情報を踏まえて、より真実に迫っていく予定です。
1. 東京電力のTV会議とは
2011年3月から4月にかけて、福島第一原発事故をめぐって、目まぐるしいほど多くの出来事がありました。そして、東京電力の中ではTV会議で本店と福島第一原発やオフサイトセンターを結んだTV会議システムが運用されており、それが録画されていました。これは、歴史に残すべき第一級の資料です。しかしながら、東京電力はその公開を頑なに拒んできました。当初は社内資料であるという理由で、ついで社員のプライバシー保護のためという理由です。
しかしながら、報道陣との何度かのやりとりを通じて、やっと一部が公開されました。しかし、それはプライバシー保護という理由で名前などに「ピー」音がかぶせられてしまっています。
これらの中でごく一部が「ピー」音をかぶせた上で東京電力のHPにも公開されています。でも、ほとんどの部分は一般の人には公開されていません。2011年の3月12日の夜から4月11日までの動画は、メディア関係者を対象に限定公開されているそうです。
私も一般に公開されているTV会議のごく一部を見て、ぜひこの続きを見たい、と思いました。ですが、それは一般人にはできません。そこで、同じように2011年4月の漏えいに興味を持っている、おしどりマコさんが主宰するLCMプレスにご協力いただきました。メディア向けに公開されている東京電力のTV会議映像をLCMプレスが視聴してその情報を書き起こしたものをいただきました。
実は、TV会議の書き起こしと言えば、岩波書店から今年の9月に本が出ています。
「福島原発事故 東電テレビ会議49時間の記録」です。一部立ち読みもできます。
私もこの本、買いました。まだ途中までしか読んでいないのですが、非常に読み応えがあり、しかも面白い本です。東京電力が事故当時どのように対応していたのかが記録されているので、これから3号機がどうなっていくのだろうかと(結果は知っていますが)ハラハラするような本です。ぜひ多くの人に読んでもらいたいと思います。
ただ、この本には二つ難点があります。まず一つは2011年3月12日夜から3月14日のほぼ丸2日間しか収録されていないことです。私が興味を持っているのは4月2日から6日なので、ぜひその部分についても出版して欲しいです。もう一つは、この本は430ページもある上に大きすぎて、ふだん持ち歩くことは重くてほとんど不可能です。そのため、読む時間が限られてしまい、時間をとれる時にしか読めません。ぜひこの本を電子書籍として売り出してほしいものです。岩波書店にはぜひ電子書籍化をお願いします。
2. 東京電力のTV会議書きおこしからわかってきたこと
さて、私はLCMプレスからいただいたTV会議の書き起こし(岩波の本のような完全な書きおこしではなく、大筋がわかるような書きおこしです)の内容を読んでビックリしました。
吉田所長を初めとして、現場の人たちがいかに真剣に頑張って対応していたのか、初めて知りました。与えられた情報をもとに非常に合理的に考え、判断しています。記者会見で知らされていた情報から抱く東京電力のイメージとは全く異なります。このギャップはいったい何なのでしょうか。
なかでも一番イメージが変わったのは武黒フェロー(2011年当時)です。政府事故調の報告書などでは、東京電力の代表として首相官邸に詰めていて、3月12日の夜には首相の意向だとして(中間報告書168ページ)(菅首相はそんなことは言っていないという話でした)海水注入を中止するように連絡し、それを吉田所長が表向きは従っておきながら実は海水注入を続けていたという話に出て来る人で、私は非常に悪いイメージを持っていました。
しかし、TV会議に出てくる武黒フェローは違います。吉田所長とやり取りしながら、非常にまともな判断をして議論をリードしていました。これは東京電力のTV会議に記録されている一次情報ですからこれが本当の姿なのだと思います。
どうして東京電力はこのTV会議を全て一般に公開しないのでしょうか?私は東京電力はイメージ戦略としても大きく間違っていると思います。このTV会議の映像を全てHPで公開すれば、いかに当時の東京電力が内部では真剣に対応しようとしていたのか、理解してもらえるはずです。それを公開しないがために、情報を出さない会社というイメージを払拭できないのだと今回痛切に感じました。
3. 2号機の漏洩事故の真実は?
新たにわかった情報をもとに、これまで「2号機からの海洋漏洩の真実は?2年前の漏洩事故を再検証(6)私の仮説」で書いてきたことをもう一度検証してみました。すると、これまで公開されている情報とは前提条件がいくつか違ってきていることがわかりました。一番違っていたのは、ピットAの水位です。この前提条件が異なっていたため、私が当初考えていたピットAとピットBをつなぐ管路についても仮説を大きく修正する必要があることがわかりました。
他にも、いくつかわかってきたこともありますが、TV会議の情報を合わせて考えてもまだ解決できないこともあります。ただ、表で発表されていたことだけではなく、東京電力の内部で行われていたことを含めて総合的に考え直すことができそうです。新たな謎も出てきましたが、それについてもまとめていきたいと思います。
このシリーズはかなり時間をかけて書かないといけないので、今から取りかかっても年末年始を挟んで来年まで続くくらいのタイムスパンになると思います。ただ、せっかく得られた情報をより多くの人に知ってもらいたいと思いますので、時間をかけてもできるところまでやりたいと思っています。
今年になって、No.1エリアの現場の状況はどんどん変わっていっていますし、今後もおそらくこれ以上の情報はもう入手できないでしょうから、今回の一連のまとめが2011年の2号機からの漏洩事故に迫る検証の最後になると思います。
それが終わったら、皆さんが興味があるであろう、2年半にわたって少しずつ海に漏れ続けていた汚染水の話を、この数ヶ月間で得られた情報をもとにまとめていきたいと考えています。
来週末を目標にまず再開後の第1回を始めたいと思います。お楽しみに。
2011年3月から4月にかけて、福島第一原発事故をめぐって、目まぐるしいほど多くの出来事がありました。そして、東京電力の中ではTV会議で本店と福島第一原発やオフサイトセンターを結んだTV会議システムが運用されており、それが録画されていました。これは、歴史に残すべき第一級の資料です。しかしながら、東京電力はその公開を頑なに拒んできました。当初は社内資料であるという理由で、ついで社員のプライバシー保護のためという理由です。
しかしながら、報道陣との何度かのやりとりを通じて、やっと一部が公開されました。しかし、それはプライバシー保護という理由で名前などに「ピー」音がかぶせられてしまっています。
これらの中でごく一部が「ピー」音をかぶせた上で東京電力のHPにも公開されています。でも、ほとんどの部分は一般の人には公開されていません。2011年の3月12日の夜から4月11日までの動画は、メディア関係者を対象に限定公開されているそうです。
私も一般に公開されているTV会議のごく一部を見て、ぜひこの続きを見たい、と思いました。ですが、それは一般人にはできません。そこで、同じように2011年4月の漏えいに興味を持っている、おしどりマコさんが主宰するLCMプレスにご協力いただきました。メディア向けに公開されている東京電力のTV会議映像をLCMプレスが視聴してその情報を書き起こしたものをいただきました。
実は、TV会議の書き起こしと言えば、岩波書店から今年の9月に本が出ています。
「福島原発事故 東電テレビ会議49時間の記録」です。一部立ち読みもできます。
私もこの本、買いました。まだ途中までしか読んでいないのですが、非常に読み応えがあり、しかも面白い本です。東京電力が事故当時どのように対応していたのかが記録されているので、これから3号機がどうなっていくのだろうかと(結果は知っていますが)ハラハラするような本です。ぜひ多くの人に読んでもらいたいと思います。
ただ、この本には二つ難点があります。まず一つは2011年3月12日夜から3月14日のほぼ丸2日間しか収録されていないことです。私が興味を持っているのは4月2日から6日なので、ぜひその部分についても出版して欲しいです。もう一つは、この本は430ページもある上に大きすぎて、ふだん持ち歩くことは重くてほとんど不可能です。そのため、読む時間が限られてしまい、時間をとれる時にしか読めません。ぜひこの本を電子書籍として売り出してほしいものです。岩波書店にはぜひ電子書籍化をお願いします。
2. 東京電力のTV会議書きおこしからわかってきたこと
さて、私はLCMプレスからいただいたTV会議の書き起こし(岩波の本のような完全な書きおこしではなく、大筋がわかるような書きおこしです)の内容を読んでビックリしました。
吉田所長を初めとして、現場の人たちがいかに真剣に頑張って対応していたのか、初めて知りました。与えられた情報をもとに非常に合理的に考え、判断しています。記者会見で知らされていた情報から抱く東京電力のイメージとは全く異なります。このギャップはいったい何なのでしょうか。
なかでも一番イメージが変わったのは武黒フェロー(2011年当時)です。政府事故調の報告書などでは、東京電力の代表として首相官邸に詰めていて、3月12日の夜には首相の意向だとして(中間報告書168ページ)(菅首相はそんなことは言っていないという話でした)海水注入を中止するように連絡し、それを吉田所長が表向きは従っておきながら実は海水注入を続けていたという話に出て来る人で、私は非常に悪いイメージを持っていました。
しかし、TV会議に出てくる武黒フェローは違います。吉田所長とやり取りしながら、非常にまともな判断をして議論をリードしていました。これは東京電力のTV会議に記録されている一次情報ですからこれが本当の姿なのだと思います。
どうして東京電力はこのTV会議を全て一般に公開しないのでしょうか?私は東京電力はイメージ戦略としても大きく間違っていると思います。このTV会議の映像を全てHPで公開すれば、いかに当時の東京電力が内部では真剣に対応しようとしていたのか、理解してもらえるはずです。それを公開しないがために、情報を出さない会社というイメージを払拭できないのだと今回痛切に感じました。
3. 2号機の漏洩事故の真実は?
新たにわかった情報をもとに、これまで「2号機からの海洋漏洩の真実は?2年前の漏洩事故を再検証(6)私の仮説」で書いてきたことをもう一度検証してみました。すると、これまで公開されている情報とは前提条件がいくつか違ってきていることがわかりました。一番違っていたのは、ピットAの水位です。この前提条件が異なっていたため、私が当初考えていたピットAとピットBをつなぐ管路についても仮説を大きく修正する必要があることがわかりました。
他にも、いくつかわかってきたこともありますが、TV会議の情報を合わせて考えてもまだ解決できないこともあります。ただ、表で発表されていたことだけではなく、東京電力の内部で行われていたことを含めて総合的に考え直すことができそうです。新たな謎も出てきましたが、それについてもまとめていきたいと思います。
このシリーズはかなり時間をかけて書かないといけないので、今から取りかかっても年末年始を挟んで来年まで続くくらいのタイムスパンになると思います。ただ、せっかく得られた情報をより多くの人に知ってもらいたいと思いますので、時間をかけてもできるところまでやりたいと思っています。
今年になって、No.1エリアの現場の状況はどんどん変わっていっていますし、今後もおそらくこれ以上の情報はもう入手できないでしょうから、今回の一連のまとめが2011年の2号機からの漏洩事故に迫る検証の最後になると思います。
それが終わったら、皆さんが興味があるであろう、2年半にわたって少しずつ海に漏れ続けていた汚染水の話を、この数ヶ月間で得られた情報をもとにまとめていきたいと考えています。
来週末を目標にまず再開後の第1回を始めたいと思います。お楽しみに。
- 関連記事
-
- 2011年4月のビーバー作戦を再現します その1(2011年4月2日前半) (2013/11/23)
- 「2号機からの海洋漏洩の真実は?2年前の漏洩事故を再検証」 再開予告 (2013/11/10)
- 2号機からの海洋漏洩の真実は?2年前の漏洩事故を再検証(6) 私の仮説 (2013/08/18)


↑日本ブログ村ランキングに参加しました。よかったらクリックお願いします。