福島原発 汚染水関係データを可視化 その3(11/4版:随時更新予定)
9/4に「福島原発 汚染水関係データの推移を可視化(9/24:随時更新予定)」を書いて、何回かアップデートしたあとに、前回10月に書き直した「福島原発 汚染水関係データを可視化 その2(10/6版:随時更新予定)」は結局アップデートせずに終わってしまいました。10月は時間がとれなかったのですいません。
10月にもいろいろ動きがあったので、その紹介と、最新の現況についてまとめようと思います。
1. 台風対策の失敗
10月の一番のトピックスはなんといっても毎週のようにやってきた台風への対策がことごとく失敗した事でしょう。
「福島原発 汚染水関係データを可視化 その2(10/6版:随時更新予定)」でも書きましたが、規制庁にタンク周りにある堰の「開」運用はおかしいと指摘されて東京電力は「閉」運用に切り替えました。
しかしながら、「閉」運用を行うということは、これまでダダ漏れになっていた雨水及び雨水に混ざった汚染水を貯めるということです。貯めた以上は、その濃度が基準値以下であることを確認してから排水するか、あるいはどこかにため続けないといけないことになります。東京電力はそこまでの準備(対応策)をした上で「閉」運用にしたのかというと、そうではありません。規制庁にいわれたから仕方なく「閉」運用にしたというのが実情だと思います。
そのため、9月中旬からの合計4回もの大雨においてほとんど対策に失敗し、毎回のように何らかのトラブルを起こしました。ここでは詳細は示さずに概略のみに留めます。
なお、以下の降水量は気象庁の浪江町での測定数値を用いており、実際の福島第一原発とは異なる可能性があります。
9/15-16 浪江町 104mmの雨(台風18号)
9/15から大雨が降り、Bエリア(南)では写真のようにあふれ出しました。そこで東京電力はあわてて同エリアのタンクに水を移送する措置をとりました。このことが実は次の10/2の新たな失敗につながっていきます。

9/16、東京電力は堰の水があふれるからという理由で「緊急措置」として排水を行いました。
しかしながら、この時に測定したのは簡易測定法による全β核種のみでした。Csの測定は排水時には行っていません。ただし、後に測定してCs-137も基準値以下であったということは確認できています。
しかも、その時に全βが2Bq/Lという発表をしたものが、実はあとになって24Bq/Lであったという状況でした。情報伝達の仕方の問題があるのですが、このあたりの経緯についてはおしどりマコさんが細かく書かれていますのでご覧下さい。
そして、この時の措置を緊急排水というのは規制庁としては認められない、と9/30の第7回WGにおいて規制委員会の更田委員ははっきりといっています。
9/26 浪江町 19.5mmの雨(台風20号)
この時はあまり雨が多くなかったのでそれほど問題にはなりませんでした。
10/2 浪江町 42.0mmの雨(台風22号)
10/1、台風に備えて堰の水の移送を行っている時に、H6エリア堰内からH2(南)エリア堰内への移送を行う予定のラインを間違えて接続し、ノッチタンクから溢水するという初歩的な間違いが起きました。これについては本来2人で作業するべき作業を一人で行っていたという問題点もあることが発覚しました。
そして10/2には、H8南エリアで溢水が起こりました。さらに、B南エリアタンク上部天板部からも汚染水があふれて、これは堰の外に漏れ出したため、一部が排水路を通じて海に流出しました。この事故は、タンクが傾いた地面の上に建てられているということを計算せずにタンクに水を移送した事による失敗と言えます。

さらに、台風とは直接関係ありませんが、10/9にはジャバラハウスの中にある淡水化装置(逆浸透膜式:RO-3)上流側の配管から汚染水の漏えいが起きました。これは本来作業するべき配管とは別の配管ホース接続を外してしまったために作業員が被曝するという事故になってしまいました。
ここにきて、作業員の質の低下、および東京電力の管理体制というものが改めてクローズアップされました。
10/16浪江町 118.0mmの雨(台風26号)
台風26号が近づいてきている10/15、規制庁の第8回WGが開かれました。そこで東京電力は暫定規制値案を提示しました。しかしながら、その案は不十分であると指摘され、東京電力は修正した案を同日夜に規制庁に提出して、深夜に規制庁が了承しました。

それを受けて台風26号を迎えたわけですが、暫定基準値未満の水についてはドレン弁を「開」にして排水し、暫定基準値を超えるものについてはノッチタンクへの移送だけでは追いつかず、地下貯水槽(未使用のNo.7)への移送も行いました。
10/20浪江町 102.5mmの雨
続いて10/20にはまた100mmを超える雨が降りました。この時は東京電力の予想を超えた雨量だったため、多くのタンクから溢水してしまいました。ただし、この時の水はほとんどがあまり多くの全βを含んでいませんでしたので、汚染水が漏えいした時と比較すると実質的には大きな問題はないと考えられます。

さらに、本来は堰の水を一度サンプリングタンクに移送して、そこで放射性物質を測定してから排水するという手順だったのですが、その手順を守っている余裕がなく、堰の四隅から直接サンプリングして測定して暫定基準値未満ならば排水するという事も行っていたことがわかりました。
10/23には、接近が予想された台風27号に対する対応として、地下貯水槽No.4にも移送を行うということも行っています。ノッチタンク群からはタービン建屋地下への移送も行っており、使えるものは全て使っているという感じです。

そして、10/25に行われた第9回WGでは、「守れる基準を決める(更田委員)」というこれまでの規制委員会では考えられないような措置がとられました。東電がタンクに移送してからそこで放射能を測定して、暫定基準値未満の水は排水するというルールにしたのに、それを守らずに堰で測定してそのまま排水するという事を行っていたため、緊急時にはその運用を追認する形になりました。
具体的には、過去に漏洩があったH4エリアやB南エリアは除き、その時と前回の2回連続して暫定基準値未満だったエリア(11箇所)についてはこの運用をするということで、年内はこの運用をすることになりました。
幸い、この対応が決まってからは、台風27号も南にそれて大雨にはならず、10/26に一部の堰の水は排水しましたが、大きなトラブルにはならずに済んでいます。
今年はもう台風が来ないと思いますので、このような対応はもうしなくても済むと思います。来年以降は、堰の高さを高くするとか、ノッチタンクの容量を確保するとか、移送用のポンプを用意するとかする事で対応可能だと思いますので、しっかりとやって欲しいと思います。
2.H4エリア地下水の汚染状況
H4エリアには、No.5タンク付近にいくつかの地下水観測孔が設けられています。そのデータについては前回の「福島原発 汚染水関係データを可視化 その2(10/6版:随時更新予定)」でも書きましたが、どう説明していいのかよくわからない状況が続いています。基本的にH-3のデータが高めに出ていて、No.5のタンクに多く含まれている全β核種はあまり出ていないのです。
そんな中、台風26号の過ぎ去った10月17日にいきなりE-1の全β核種の数値がはね上がりました。その頃の各観測孔の数値の動きを下記に示します。

上のE-1のデータを見ていただければ一目瞭然だと思いますが、全βは、10/16の61Bq/Lからいきなり400,000Bq/Lにはね上がっています。同時に、H-3も10/16の230,000Bq/Lから790,000Bq/Lにはね上がりました。この話は「H4エリアタンクの漏えい:E-1の地下水濃度が全β、H-3ともに急上昇!」として10/18に書いたとおりです。
東京電力の説明としては、汚染された土壌を完全には除去できていなかったため、その土壌に含まれていた放射性物質が10/16の大雨で流れ出して地下に移行してE-1で検出されたのではないか?という説でした。もう一つの説明としては、H-3と違って土壌中の移行が遅いSrなどの全β核種が、7月あるいは8月の漏えいから3ヶ月かかってようやく地下に到達したというものです。
その後の動きを下に示した10/31の東京電力作成のグラフ(資料60ページ)でみると、一番上がE-1のグラフですが、全βもH-3もどちらも徐々に低下しています。また、このグラフを見ると、10/17の全βの上昇が非常に不自然なものであることがわかると思います。ですから、台風26号による何か大きな状況の変化があってこのような数値の急上昇が引き起こされたのは間違いありません。

その後は、H-3の低下の方が早く、ここ数日の最新データとしては、全βの方がH-3よりも高い状況が続いています。H-3の方が土壌中での移動が早いということを裏付けるものだと思います。ただ、もともとNo.5のタンクには全βが200,000,000Bq/L、H-3が2,400,000Bq/Lありましたので、元の濃度としては全βの方がはるかに高いということは頭に入れておく必要があります。

東京電力は、10/30に新たな観測孔の設置を発表しました。E-9とE-10です。E-10のデータは11/3には全βが出てきています。私は特にE-9のデータに注目しています。

また、E-1付近にウエルポイントを設置して、E-1付近の地下水を汲み上げることも始めました。地下水の移動がゆっくりであるならば、まだ汲み上げも可能だと思います。くみ上げによってどうE-1のデータに変化が出てくるかも注目です。
3.地下水バイパスの汚染状況
タンクエリアの汚染で一番気になるのは、海への流出ですが、特に今年8月のH4エリアの汚染では地下水が汚染された可能性があり、地下水バイパスという地下水を汲み上げて建屋に流れ込む地下水量を減らす方策が使えなくなる可能性があります。
そこで、地下水バイパスの汚染状況が週に1回チェックされています。幸いというか、地下水バイパスについては今のところあまり大きな動きはありません。しかし、下の図を見ていただければわかるように、全βについては検出されていないものの、H-3が検出されています。H-3はこれまでも100Bq/L程度の汚染はあったのですが、今はNo.7やNo.12は高めの数値が出ていて、現段階ではこれが何によるものなのかはわかりません。距離的に考えて8月のH4エリアのタンクからの漏れということではないような気もします。
最新のデータの推移を示します。毎週1回ですが、大きな動きはありません。

しかしながら、これまで3ヶ月ほどのデータをグラフにしてみると、何となく傾向があることもわかってきました。下にグラフを示します(このグラフはコンタンさん作成のグラフをテンプレートに用いました)が、H-3が100Bq/L以上の揚水井については、9月頃がピークで、その後徐々に下がってきていました。それが10/16と10/20の台風26号に伴う大雨で、No.10~12についてはまた一過性に上昇したようです。
ただ、これらの上昇は非常に微妙で、いくつものデータを並べてみて初めて動きがあるな、ということがわかる程度のものです。

4.護岸近くの地下水の状況
6月に護岸の地下水観測孔No.1でH-3(トリチウム)が高濃度で検出されて以来、多くの観測孔が増えました。また、東京電力が取水口開渠の海水と護岸の地下水は通じているということを認めてからは、観測孔も大幅に増え、さらには水ガラスによる土の壁の形成やウエルポイントによる汲み上げといった応急的な対応が相次いでなされてきました。
データを見ると、H-3が高い地点と、全β(この測定結果はSrを含みますが、H-3は含まれていません)が高い地点にズレがあり、1種類の汚染水が漏れただけでは説明がつかない状況になっています。
ここでは、H-3の現況について示します。1号機スクリーンと2号機スクリーンのNo.1エリアと呼ばれる地点のH-3が高いです。これは、2年半前の2号機スクリーンからの漏えいによるものがあるのと、それ以外の漏えい源がある可能性があります。これについてうまく説明できる説はまだありません。ただ、No.1エリアについては地下水濃度が高いということで応急的な対応も進み、地下水を汲み上げるなどの対応も進んでいます。

それ以外のNo.2エリア(2号機スクリーンと3号機スクリーンの間)やNo.3エリア(3号機スクリーンと4号機スクリーンの間)については、H-3に関しては高濃度の汚染はありません。せいぜい1000Bq/L程度です。
しかし、8月から謎なのがNo.0-1と呼ばれる地点のH-3が高いことです。ずっと20,000Bq/L程度の高濃度を保っていました。10月に入り低下してきましたが、それでも10,000Bq/Lを超えています。このH-3がいったいどこから来るのか?それを確かめるために1号機トレンチの濃度を測定したり、No.0-2という地点のボーリングを行いましたがH-3の高い地点はありませんでした。
さらに、建屋側のボーリングも行いましたが、1号機建屋付近でH-3の濃度が高いのは、サブドレンNo.1と、その付近の1T-3というボーリング地点のみです。従って、No.0-1の汚染源がどこなのかは今もって謎です。「汚染水処理の現状レビュー(9/30の第7回汚染水対策検討WGより)」に書いたように、新たに設けるボーリング地点(No.0-4やNo.0-3)によってその謎が解ける可能性もあると思っていました。

今回新たにNo.0-4のH-3のデータが出てきました。10/24現在で13,000Bq/Lとかなり高く、No.0-1の汚染はNo.0-4を経由して来ている可能性が示されました。上の図に示しているように、現在No.0-3という地点を深さを変えて井戸を掘っているので、そちらがあまり高くなければNo.0-1のH-3の由来はNo.0-4経由であると言っても良いと思います。
ではその上流は、というと、これはおそらく以前から時々このブログにコメントをくれているひとり事故調さん(inja改め)さんの説が説得力を持ってくると思います。サブドレンNo.1から1T-3、そしてNo.0-4を経由してNo.0-1に移行するルートです。
まだ現段階ではデータが少ないですが、No.0-4のH-3が高かったことで、謎が一つ解ける可能性が見えてきました。
この問題については、No.0-3のデータが出る今月中旬以降にまた考えてみたいと思います。
全βについてはまだ情報を整理できていないので、できたら追加するか別の記事として書きたいと思います。
また、スクリーン海水や港湾内外のデータについても今回は間に合いませんでしたので、いずれ追加する予定です。
10月の一番のトピックスはなんといっても毎週のようにやってきた台風への対策がことごとく失敗した事でしょう。
「福島原発 汚染水関係データを可視化 その2(10/6版:随時更新予定)」でも書きましたが、規制庁にタンク周りにある堰の「開」運用はおかしいと指摘されて東京電力は「閉」運用に切り替えました。
しかしながら、「閉」運用を行うということは、これまでダダ漏れになっていた雨水及び雨水に混ざった汚染水を貯めるということです。貯めた以上は、その濃度が基準値以下であることを確認してから排水するか、あるいはどこかにため続けないといけないことになります。東京電力はそこまでの準備(対応策)をした上で「閉」運用にしたのかというと、そうではありません。規制庁にいわれたから仕方なく「閉」運用にしたというのが実情だと思います。
そのため、9月中旬からの合計4回もの大雨においてほとんど対策に失敗し、毎回のように何らかのトラブルを起こしました。ここでは詳細は示さずに概略のみに留めます。
なお、以下の降水量は気象庁の浪江町での測定数値を用いており、実際の福島第一原発とは異なる可能性があります。
9/15-16 浪江町 104mmの雨(台風18号)
9/15から大雨が降り、Bエリア(南)では写真のようにあふれ出しました。そこで東京電力はあわてて同エリアのタンクに水を移送する措置をとりました。このことが実は次の10/2の新たな失敗につながっていきます。

9/16、東京電力は堰の水があふれるからという理由で「緊急措置」として排水を行いました。
しかしながら、この時に測定したのは簡易測定法による全β核種のみでした。Csの測定は排水時には行っていません。ただし、後に測定してCs-137も基準値以下であったということは確認できています。
しかも、その時に全βが2Bq/Lという発表をしたものが、実はあとになって24Bq/Lであったという状況でした。情報伝達の仕方の問題があるのですが、このあたりの経緯についてはおしどりマコさんが細かく書かれていますのでご覧下さい。
そして、この時の措置を緊急排水というのは規制庁としては認められない、と9/30の第7回WGにおいて規制委員会の更田委員ははっきりといっています。
9/26 浪江町 19.5mmの雨(台風20号)
この時はあまり雨が多くなかったのでそれほど問題にはなりませんでした。
10/2 浪江町 42.0mmの雨(台風22号)
10/1、台風に備えて堰の水の移送を行っている時に、H6エリア堰内からH2(南)エリア堰内への移送を行う予定のラインを間違えて接続し、ノッチタンクから溢水するという初歩的な間違いが起きました。これについては本来2人で作業するべき作業を一人で行っていたという問題点もあることが発覚しました。
そして10/2には、H8南エリアで溢水が起こりました。さらに、B南エリアタンク上部天板部からも汚染水があふれて、これは堰の外に漏れ出したため、一部が排水路を通じて海に流出しました。この事故は、タンクが傾いた地面の上に建てられているということを計算せずにタンクに水を移送した事による失敗と言えます。

さらに、台風とは直接関係ありませんが、10/9にはジャバラハウスの中にある淡水化装置(逆浸透膜式:RO-3)上流側の配管から汚染水の漏えいが起きました。これは本来作業するべき配管とは別の配管ホース接続を外してしまったために作業員が被曝するという事故になってしまいました。
ここにきて、作業員の質の低下、および東京電力の管理体制というものが改めてクローズアップされました。
10/16浪江町 118.0mmの雨(台風26号)
台風26号が近づいてきている10/15、規制庁の第8回WGが開かれました。そこで東京電力は暫定規制値案を提示しました。しかしながら、その案は不十分であると指摘され、東京電力は修正した案を同日夜に規制庁に提出して、深夜に規制庁が了承しました。

それを受けて台風26号を迎えたわけですが、暫定基準値未満の水についてはドレン弁を「開」にして排水し、暫定基準値を超えるものについてはノッチタンクへの移送だけでは追いつかず、地下貯水槽(未使用のNo.7)への移送も行いました。
10/20浪江町 102.5mmの雨
続いて10/20にはまた100mmを超える雨が降りました。この時は東京電力の予想を超えた雨量だったため、多くのタンクから溢水してしまいました。ただし、この時の水はほとんどがあまり多くの全βを含んでいませんでしたので、汚染水が漏えいした時と比較すると実質的には大きな問題はないと考えられます。

さらに、本来は堰の水を一度サンプリングタンクに移送して、そこで放射性物質を測定してから排水するという手順だったのですが、その手順を守っている余裕がなく、堰の四隅から直接サンプリングして測定して暫定基準値未満ならば排水するという事も行っていたことがわかりました。
10/23には、接近が予想された台風27号に対する対応として、地下貯水槽No.4にも移送を行うということも行っています。ノッチタンク群からはタービン建屋地下への移送も行っており、使えるものは全て使っているという感じです。

そして、10/25に行われた第9回WGでは、「守れる基準を決める(更田委員)」というこれまでの規制委員会では考えられないような措置がとられました。東電がタンクに移送してからそこで放射能を測定して、暫定基準値未満の水は排水するというルールにしたのに、それを守らずに堰で測定してそのまま排水するという事を行っていたため、緊急時にはその運用を追認する形になりました。
具体的には、過去に漏洩があったH4エリアやB南エリアは除き、その時と前回の2回連続して暫定基準値未満だったエリア(11箇所)についてはこの運用をするということで、年内はこの運用をすることになりました。
幸い、この対応が決まってからは、台風27号も南にそれて大雨にはならず、10/26に一部の堰の水は排水しましたが、大きなトラブルにはならずに済んでいます。
今年はもう台風が来ないと思いますので、このような対応はもうしなくても済むと思います。来年以降は、堰の高さを高くするとか、ノッチタンクの容量を確保するとか、移送用のポンプを用意するとかする事で対応可能だと思いますので、しっかりとやって欲しいと思います。
2.H4エリア地下水の汚染状況
H4エリアには、No.5タンク付近にいくつかの地下水観測孔が設けられています。そのデータについては前回の「福島原発 汚染水関係データを可視化 その2(10/6版:随時更新予定)」でも書きましたが、どう説明していいのかよくわからない状況が続いています。基本的にH-3のデータが高めに出ていて、No.5のタンクに多く含まれている全β核種はあまり出ていないのです。
そんな中、台風26号の過ぎ去った10月17日にいきなりE-1の全β核種の数値がはね上がりました。その頃の各観測孔の数値の動きを下記に示します。

上のE-1のデータを見ていただければ一目瞭然だと思いますが、全βは、10/16の61Bq/Lからいきなり400,000Bq/Lにはね上がっています。同時に、H-3も10/16の230,000Bq/Lから790,000Bq/Lにはね上がりました。この話は「H4エリアタンクの漏えい:E-1の地下水濃度が全β、H-3ともに急上昇!」として10/18に書いたとおりです。
東京電力の説明としては、汚染された土壌を完全には除去できていなかったため、その土壌に含まれていた放射性物質が10/16の大雨で流れ出して地下に移行してE-1で検出されたのではないか?という説でした。もう一つの説明としては、H-3と違って土壌中の移行が遅いSrなどの全β核種が、7月あるいは8月の漏えいから3ヶ月かかってようやく地下に到達したというものです。
その後の動きを下に示した10/31の東京電力作成のグラフ(資料60ページ)でみると、一番上がE-1のグラフですが、全βもH-3もどちらも徐々に低下しています。また、このグラフを見ると、10/17の全βの上昇が非常に不自然なものであることがわかると思います。ですから、台風26号による何か大きな状況の変化があってこのような数値の急上昇が引き起こされたのは間違いありません。

その後は、H-3の低下の方が早く、ここ数日の最新データとしては、全βの方がH-3よりも高い状況が続いています。H-3の方が土壌中での移動が早いということを裏付けるものだと思います。ただ、もともとNo.5のタンクには全βが200,000,000Bq/L、H-3が2,400,000Bq/Lありましたので、元の濃度としては全βの方がはるかに高いということは頭に入れておく必要があります。

東京電力は、10/30に新たな観測孔の設置を発表しました。E-9とE-10です。E-10のデータは11/3には全βが出てきています。私は特にE-9のデータに注目しています。

また、E-1付近にウエルポイントを設置して、E-1付近の地下水を汲み上げることも始めました。地下水の移動がゆっくりであるならば、まだ汲み上げも可能だと思います。くみ上げによってどうE-1のデータに変化が出てくるかも注目です。
3.地下水バイパスの汚染状況
タンクエリアの汚染で一番気になるのは、海への流出ですが、特に今年8月のH4エリアの汚染では地下水が汚染された可能性があり、地下水バイパスという地下水を汲み上げて建屋に流れ込む地下水量を減らす方策が使えなくなる可能性があります。
そこで、地下水バイパスの汚染状況が週に1回チェックされています。幸いというか、地下水バイパスについては今のところあまり大きな動きはありません。しかし、下の図を見ていただければわかるように、全βについては検出されていないものの、H-3が検出されています。H-3はこれまでも100Bq/L程度の汚染はあったのですが、今はNo.7やNo.12は高めの数値が出ていて、現段階ではこれが何によるものなのかはわかりません。距離的に考えて8月のH4エリアのタンクからの漏れということではないような気もします。
最新のデータの推移を示します。毎週1回ですが、大きな動きはありません。

しかしながら、これまで3ヶ月ほどのデータをグラフにしてみると、何となく傾向があることもわかってきました。下にグラフを示します(このグラフはコンタンさん作成のグラフをテンプレートに用いました)が、H-3が100Bq/L以上の揚水井については、9月頃がピークで、その後徐々に下がってきていました。それが10/16と10/20の台風26号に伴う大雨で、No.10~12についてはまた一過性に上昇したようです。
ただ、これらの上昇は非常に微妙で、いくつものデータを並べてみて初めて動きがあるな、ということがわかる程度のものです。

4.護岸近くの地下水の状況
6月に護岸の地下水観測孔No.1でH-3(トリチウム)が高濃度で検出されて以来、多くの観測孔が増えました。また、東京電力が取水口開渠の海水と護岸の地下水は通じているということを認めてからは、観測孔も大幅に増え、さらには水ガラスによる土の壁の形成やウエルポイントによる汲み上げといった応急的な対応が相次いでなされてきました。
データを見ると、H-3が高い地点と、全β(この測定結果はSrを含みますが、H-3は含まれていません)が高い地点にズレがあり、1種類の汚染水が漏れただけでは説明がつかない状況になっています。
ここでは、H-3の現況について示します。1号機スクリーンと2号機スクリーンのNo.1エリアと呼ばれる地点のH-3が高いです。これは、2年半前の2号機スクリーンからの漏えいによるものがあるのと、それ以外の漏えい源がある可能性があります。これについてうまく説明できる説はまだありません。ただ、No.1エリアについては地下水濃度が高いということで応急的な対応も進み、地下水を汲み上げるなどの対応も進んでいます。

それ以外のNo.2エリア(2号機スクリーンと3号機スクリーンの間)やNo.3エリア(3号機スクリーンと4号機スクリーンの間)については、H-3に関しては高濃度の汚染はありません。せいぜい1000Bq/L程度です。
しかし、8月から謎なのがNo.0-1と呼ばれる地点のH-3が高いことです。ずっと20,000Bq/L程度の高濃度を保っていました。10月に入り低下してきましたが、それでも10,000Bq/Lを超えています。このH-3がいったいどこから来るのか?それを確かめるために1号機トレンチの濃度を測定したり、No.0-2という地点のボーリングを行いましたがH-3の高い地点はありませんでした。
さらに、建屋側のボーリングも行いましたが、1号機建屋付近でH-3の濃度が高いのは、サブドレンNo.1と、その付近の1T-3というボーリング地点のみです。従って、No.0-1の汚染源がどこなのかは今もって謎です。「汚染水処理の現状レビュー(9/30の第7回汚染水対策検討WGより)」に書いたように、新たに設けるボーリング地点(No.0-4やNo.0-3)によってその謎が解ける可能性もあると思っていました。

今回新たにNo.0-4のH-3のデータが出てきました。10/24現在で13,000Bq/Lとかなり高く、No.0-1の汚染はNo.0-4を経由して来ている可能性が示されました。上の図に示しているように、現在No.0-3という地点を深さを変えて井戸を掘っているので、そちらがあまり高くなければNo.0-1のH-3の由来はNo.0-4経由であると言っても良いと思います。
ではその上流は、というと、これはおそらく以前から時々このブログにコメントをくれているひとり事故調さん(inja改め)さんの説が説得力を持ってくると思います。サブドレンNo.1から1T-3、そしてNo.0-4を経由してNo.0-1に移行するルートです。
まだ現段階ではデータが少ないですが、No.0-4のH-3が高かったことで、謎が一つ解ける可能性が見えてきました。
この問題については、No.0-3のデータが出る今月中旬以降にまた考えてみたいと思います。
全βについてはまだ情報を整理できていないので、できたら追加するか別の記事として書きたいと思います。
また、スクリーン海水や港湾内外のデータについても今回は間に合いませんでしたので、いずれ追加する予定です。
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