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12/1 NHKスペシャル「汚染水-福島第一原発 危機の真相-」より

 
今日の21時からNHKスペシャルで放送された「汚染水 -福島第一原発 危機の真相-」を見逃した方のために、速報でお伝えします。


今日の番組は汚染水ということでどんな内容かと期待していました。

前半1/3は、11月13日から14日にかけてロボットで調査を行い、初めて格納容器からの漏えい箇所が2箇所判明したという話でした。あのロボットは、国家プロジェクトとして4億円かけて、日立が中心となって開発したそうです。日立の技術者に取材して、1号機にも実際にNHKのカメラが入っていました。

2箇所のうち、サンドクッションドレン管からの漏えいに関しては、もともとドレン管なので水が出てきてもおかしくはないが、あれだけの量が出てくるのは絶対に格納容器のどこかに穴が空いているに違いない、ということで、その穴の場所を同定するのが今後技術的にかなり難しいのではないか、と番組に出ていた専門家は話していました。

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(番組の一部よりスクリーンショット)


その後中盤で汚染水がどこからどう流出しているのか、という疑問に挑戦していました。私はこの部分が個人的には一番興味があった部分なので、今回はここを中心に解説します。

汚染水の流出がとまっていないのはなぜか?ということで、その原因を考察していましたのですが、やはり映像の力というのはすばらしいもので、わかりやすい模型やCGなどを駆使して説明をしてくれていました。

まず、これまでにも私のブログでご紹介していますが、No.0-1という地下水観測孔のH-3だけが高いことが汚染水WGでもずっと問題になっていました。そして、そのH-3がいったいどこから来ているのか、2号スクリーンからなのか、1号機のトレンチからなのか、調べるために追加の観測孔をいくつか掘っていました。

これはすでに私が「福島原発 汚染水関係データを可視化 その3(11/4版:随時更新予定)」で示していることなのですが、10月に掘られたNo.1T-3と、No.0-4のデータによって、サブドレンNo.1で観測されている高いH-3がNo.1-3、No.0-4を通ってNo.0-1にいたるルートというのが可能性として見えてきていました。

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福島原発 汚染水関係データを可視化 その3(11/4版:随時更新予定)」より

NHKの番組では、それをこのような形で示してくれています。上下が逆になっていることに御注意下さい。

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(番組の一部よりスクリーンショット)

この漏えいはどこから来たのかということで、タービン建屋からの漏えいの可能性があるのでは、ということで、過去のデータをあたったところ、1号機のタービン建屋の場合、建屋の水位とサブドレンNo.1の水位が逆転している時期があることがわかったのです。(ただし、これはすでに東京電力が記者会見でも今年の9月頃に公表している事実です。)

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(番組の一部よりスクリーンショット)

上のグラフでいうと、2011年3月頃から9月頃までの期間です。赤い線が青い線よりも上に来ている時期があることがわかると思います。ただし、2011年9月以降は水位のコントロールを行っていますので、そのような逆転現象はありません。

なぜ建屋の水位が逆転すると建屋から汚染水が漏れるのか?番組では、東京電力の説明を模型を使って実演してくれていました。


地下水の水位を建屋の汚染水の水位よりも高く保っておくと水圧によって建屋の汚染水は外に漏れないというのが東京電力の説明です。下の図のような感じです。

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(番組の一部よりスクリーンショット)

建屋の壁に穴が開いているという想定で、建屋の模型に一部穴を開けて、そこに色水を流し込んでみます。建屋の水位を地下水よりも低く保っていると、確かに黒い色水は外に漏れません。

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(番組の一部よりスクリーンショット)

ところが、建屋の水位を地下水水位よりも高くすると、建屋の中に入れた色水は漏れ出してしまいます。
12/1-11
(番組の一部よりスクリーンショット)

このような原理から、2011年の9月までは、1号機のタービン建屋から外に汚染水が漏れ出した可能性があるのではないか、ということで、番組では地下水のシミュレーションの専門家である東大の登坂教授にシミュレーションを依頼しました。

そうすると、驚くべき結果が得られました。あくまでシミュレーションですが、一つの仮説としてご覧いただければと思います。

まず、1号機と2号機の近くの地下水の流れをシミュレーションします。そして、タービン建屋の壁面から汚染水が漏れ出したという想定で、赤い色の汚染水が流れ出したと想定します。
12/1-5
(番組の一部よりスクリーンショット)

すると、その汚染水は以下のような動きをする事がシミュレーションの結果わかったのです。

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(番組の一部よりスクリーンショット)

地下水は西から東、つまり山から海に流れますが、タービン建屋を回り込んで流れてくるため、流速は微妙に異なります。そして、いくつもの障害物があるため、単純に東に移動するわけではないのです。

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(番組の一部よりスクリーンショット)

ずっと以前からH-3が高かった、サブドレンNo.1のあたりを通って、1T-3、No.0-4付近を通って、1号スクリーンよりも北側のNo.0-1という地下水観測孔に向かうかのような動きをする事がこのシミュレーションから明らかになったのです。

12/1-8
(番組の一部よりスクリーンショット)

このシミュレーションを出してきたのは、この番組の成果だと思いました。映像による表現力も説得力がありますね。

このシミュレーションの前提は2011年3月から9月までの漏えいです。ここでは量的な説明は一切されていませんが、私も以前この漏えいに関しては考察したことがあり、今回は示しませんが、結構多い量が漏れ出した可能性があります。

その後は建屋の水位を地下水の水位よりも低くコントロールできるようになったため、この分の漏えいは止まったと思いますが、すでに漏えいした分をどうするのか、という対応が必要になるということを番組では訴えたかったのだと思います。

その後、後半の1/3では、凍土壁の話を取り上げます。まだ実証すべき点が多いので技術的にもクリアしないといけない点が多いということを取り上げていました。

更にその後は、アメリカのハンフォード各施設に東京電力のメンバーが視察に行ったところに同行しました。同様に汚染水が漏れ出したのを周辺に汚染を拡大させないためにどのようにコントロールしているのか、今回の福島にも応用が利くかどうか調べるためです。

ハンフォードで用いられていた技術はCaを用いてSrと置換するような技術でしたが、、福島第一原発の汚染水では海水が多く含まれているため、そのまま応用するのは難しいというJAEAの技術者の証言を紹介していました。

そして、最後に今後の廃炉への30年以上にわたる作業で、作業員の確保ができるのか、という事を取り上げていました。線量がオーバーしてしまって、現場で働けなくなってしまった福島在住の作業員を取材し、でもなんとかして頑張って故郷に戻りたいんだ、という話で締めくくっていました。

以上、非常に簡単ですが、番組の概要をご紹介しました。

(スクリーンショットについては、もしクレームがついたら削除するか別のものに置き換えますのでそのつもりでご覧下さい。)

 

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コメント

訂正

建屋の地下水モデルですが、映像を見直すと、上からスポイトで黒い水を入れていましたね。失礼しました。

擬似科学実験

私も、ひとり事故調さんと似た感想を持ちました。番組制作の現場では、こういう実験を『疑似科学の実験』といいます。大学の先生に頼み込んで、欲しい結果が得られるようやってもらう事が多いのです。

・建屋の地下水モデルの疑問点
モデル上部を見せていませんが、密閉しているようです。(だから、水は下に漏れにくい)模型の奥に黒い水を入れるための穴がありますよねw実際の建物は、気密性はないので、水位が低くても漏れるでしょう。

・地下水シュミレーションの疑問点
あくまで『TB建屋の壁面全体』から、という仮定の上の話であり、実際どこから漏れてるのか誰も判っていません。同じTB建屋からでも、漏れの偏りがあれば、また違った結果になるものと思われます。

シミュレーションに惑わされないで下さい

番組の中に出てきた、トリチウム汚染水移動のシミュレーションについてコメントします。

・1号機T/Bの水位変化について
水位測定が始まった2011年4月12日から、2号機T/B側への汚染水移送が始まった同年10月22日まで、1号機T/Bの水位はほとんど一定しています。これは、他の建屋の水位変化に比べ、特異なものとなっています。
この期間には、汚染源である1号機R/Bよりも水位が高い状態となっていることも、2・3号機とは異なる点です(このことからも1号機R/Bの汚染水はT/Bではなく直接地下水系に流出していると言えます)。例外的に、台風15号による豪雨の影響で9月22日から29日にかけて、一時的にR/B側の水位がT/Bより高くなり、それまでずっとO.P.4920で一定だったT/Bの水位が23日にはO.P.5118まで上昇しました。1号機のR/BとT/Bの間にはO.P.5000付近に水理的な通路があり、汚染水が行き来したと考えられます。
このように9月下旬を除き、T/Bの水位変化が無いのは、ずっと滞留しており、外へ流出することが無かったからだと考えられます。確かにT/B水位は、地下水位(サブドレン水位)よりも高いのですが、それだけで流出したとするのは誤りだと思います。もし流出があったのなら、一方でそれとピッタリ同量の水が常に流入していなければなりません。そのように温泉の湯船のような状態になっていたということは考えにくく、もし水の出入りがあったとすれば、他の建屋のような水位変動があったはずだと思われます。

・トリチウム濃度について
1号機T/Bの汚染水は、2・3号機に比べてトリチウム濃度が異常に低く、2011年3月24日に採取された試料の分析値は700Bq/cm^3でした。これは、3月12日のベントにより、ほとんどのトリチウム水蒸気が放出されたためと考えられます。
1号機サブドレン(No.1)の水は、2011年11月14日になって、初めてトリチウムが分析されたのですが、その値は120Bq/cm^3でした。もし、1号機T/Bの汚染水が地下水系に流出していたとすると、約6分の1に希釈されたことになりますが、希釈の程度が異常に小さいと思います。

・地下水の流速
シミュレーションによると、2年半前にT/Bから流出した汚染水が、速い場所でもやっと岸壁部に到達したことになります。流速が遅すぎると思います。
また、1号機サブドレン水のトリチウム濃度は、ずっと異常な値が続いていて、最近では2013年8月5日採取試料からも110Bq/cm^3が検出されており、大きく低下する傾向は認められません。このため、シミュレーションでは、サブドレンNo.1付近の地下水の流速を異常に低く設定しています。大雨が降った後のサブドレンや護岸部観測孔の地下水位は、敏感に反応しており、地層や埋め土の透水性は高いと考えられます。地下水の流速は、シミュレーションよりも2桁速いと思います。
濃度が一向に下がる気配が無いのはR/Bから直接、今も流出が続いているからだと考えます。

・1号機R/Bとサブドレンの水位の連動
これは、以前にコメントさせていただきました。両者の水位は連動しており、水理的に繋がっていて、汚染水は直接R/Bから地下水系に流出していると考えられます。なぜこれに着目しないのか理解できません。なお、1号機R/Bの汚染水は、注入水のトリチウム濃度が高いため、事故直後は低かった値が、高くなったと考えられます(2013年2月22日にトーラス室の水面下1mで採取された汚染水のH-3濃度は2800Bq/cm^3)。

・1・2号機取水口間の地下水のトリチウム
観測孔No.1や、その付近のトリチウムは、シミュレーションでは無視されているようです。おそらく2号機トレンチからの汚染水の影響だと考えているのだと思いますが、トレンチに近い側のトリチウム濃度が低いので、それでは説明できないと思います。

・埋立地の構造
タービン建屋の海側の10m盤と4m盤は、元は海だった場所で、埋立地です。当時、どのように埋め立て工事を行ったか、少し調べてみたのですが、よく分りませんでした。想像ですが、全体の外側を囲って、中に土を入れたような単純な構造ではなく、細かく仕切りがあって、少しずつ埋め立てたのではないかと思います。特に10m盤と4m盤の境には、地中にも壁があるのではないでしょうか。また、複雑に管路が張り巡らされていることは、ご存知の通りです。
おそらく、そのような複雑な構造のために、1号機取水口北側のエリア(No.0のエリア)では、場所によってトリチウムが検出されたりされなかったりするのだと思います。護岸部分は、あのシミュレーションのように、均一で連続的なものではないと考えられます。シミュレーションは、架空の場所の架空の事故を模倣しようとするようなものであり、真実を探ろうという意識は微塵も感じられません。

・コンピューター・シミュレーション批判
コンピューター・シミュレーションを見せられると、科学的で正しいと錯覚しがちですが、世の中に蔓延しているシミュレーションの殆どは、境界条件やパラメーターを緩~く設定して適当に動かし、なんとなく現実に合わそうとしているだけのシロモノです。本件でも、どこまで実際の水位データや透水性、濃度データを反映させているのか、非常に怪しいものです。降雨に伴って地下水位が大きく変動するのですが、そういう「細かいこと」は無視されているはずです。また、漏洩箇所も建屋の海側全面から出ているようにしていますが、そうしないとトリチウムの分布に合わせられないから、というだけの理由であって、現実にそんなことがあるのか、といったことは考えないことになっているようです。
殆どのコンピューター・シミュレーションは机上の空論だと思います。今後、機上の空論という字に変わるかもしれません。あるいは現代の占星術です。世を惑わすものですが、占星術(天動説)の方が、天体の運行の予測においては、かなり正しかったので、まだマシかもしれません。たいていのシミュレーションは後付ですから。

・シミュレーション全盛の理由
なぜ、いんちきシミュレーションが蔓延しているのか、考えてみました。理由を列記します。
現場に行って必要なデータを取るのが大変、あるいは行きたくない。現場作業が嫌。
実験することが出来ない、お金がかかる、時間がかかる、めんどくさい。
とりあえず研究室でできる。何か研究している感じがする。他にすることがない。
サイエンスぽい。シロウトはコンピューターというだけで信じる。テレビ受けが良い。中味が空疎でも外見からはばれない。

研究者のホンネは次のようなものと推察します。
シミュレーションはファッションであり、研究のアクセサリーであり、研究者のマスト・アイテムである。研究者としてカッコをつけたい。
真実など知りたくない。どうでもよい。見栄えのする映像を使って、自分の研究成果がアピールできればよい。
シミュレーションとはこんなものである。過度に信用すべきものではない。騙すつもりは無い。世の中の無知な大衆が過大評価するだけである。グチグチ細かいことに文句をつけるやつは、現代のアカデミズムがコンピューター・シミュレーションによって成り立っていることを理解できない馬鹿者である。人のシミュレーションを批判するのは研究者社会のタブーである。

プロフィール

TSOKDBA

Author:TSOKDBA
twitterは@tsokdbaです。
3.11では、停電・断水のため、一晩避難所で過ごし、震災後の情報収集をきっかけにブログを始めました。
これまで約4年間、原発事故関係のニュースを中心に独自の視点で発信してきました。その中でわかったことは情報の受け手も出し手も意識改革が必要だということです。従って、このブログの大きなテーマは情報の扱い方です。原発事故は一つのツールに過ぎません。

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