T-2-1で判明した10Bq/L程度の全βの検出は何を意味する?
今回の話は、12/17に書いた「汚染水処理対策委員会が12/10にまとめた対策」についたコメントを受けての話です。
私は8月に「汚染水タンクから最大300トンの漏えい!(4) 測定地点T-2とT-2-1のその後」という記事を書きました。T-2という観測地点がいつの間にか1kmも南にあるT-2-1という地点に移動していた事を中心に書いています。
まずは東京電力のサンプリングポイントである、T-1、T-2、T-2-1の場所を再度確認しましょう。T-2「南放水口付近」という地点は、2011年3月から毎日測定されてきた地点で、T-1の「5-6号放水口北」と並んで重要な測定地点です。

「第4回特定原子力施設監視・評価検討会汚染水対策検討ワーキンググループ」資料3 60ページ に一部加筆
しかしながら、2012年11月からは、南放水口から約330m南にあったT-2での測定は中止になり、T-2-1という南放水口から1.3kmも離れた地点での測定に変更になってしまいました。その理由は、T-2でも海底土を採取していたのですが、工事の影響で海底土の採取が難しくなったからというわけのわからない理由でした。海底土の採取が難しいならば、海底土のサンプリングだけはT-2-1で行い、海水のサンプリングは、C排水路からの出口のサンプリングという位置づけでこれまで通り続けるべきでした。
なぜならば、T-2においては2012年3月と4月のタンクエリアからの漏洩事故の教訓として、Csが除去されてβ核種がほとんどであることがわかっているタンクエリアから漏えいがあっても検出できるように、Cs-137とCs-134以外に全β核種の測定も毎日行われていたのです。
もし昨年11月にサンプリング地点を変更せずにT-2でのサンプリングを続けていれば、2013年8月のH4エリアからの漏洩事故においても、大量の海洋への漏えいがまず間違いなく検出できたと考えられますが、T-2-1という1kmも南に移動した場所で全βを測定していたため、C排水路を通じての海洋への漏洩があったかどうかは判断できませんでした。
ちなみに、T-2付近の写真が規制庁の資料に1枚だけ公開されています。残念ながら、現場の状況があまりよくわからない写真です。

(規制庁HP 第8回汚染水WG資料3 より)
しかし、2013年8月に起こったH4エリアのタンクからの漏洩事故によって、T-2での測定が重要であることが再認識されて、T-2でのサンプリングは復活しました。その後はT-2でのサンプリングは毎日行われ、Cs-134、Cs-137と全βの測定が毎日行われて発表されるようになりました。データは、排水路のデータ群の一つとして発表されています。
C排水路については、出口を港湾内に移動するという計画や、連続モニタリング装置をつけるという計画はありますが、現状ではまだ1日1回のモニタリングのみです。
さて、これからが本題です。今回コメントでひとり事故調さんが教えてくれたことは、東京電力HPにある「福島第一原子力発電所周辺の放射性物質の分析結果」というページの下の方にある「1~4号機側南放水口付近の分析結果(2013年12月分)」というところのデータに関する話です。

このカレンダーから見たい日付を押すと、例えば12/16のデータは下記のようにまとめられています。

(東京電力HP 12/16のT-2-1のデータ より)
この「注2:12/10の試料より、5/6号機ラボよりもバックグラウンドの低い化学分析棟で分析をすることとしたため、検出限界値が低下。」に出てくる化学分析棟というのは福島第一原子力発電所の入退室管理棟の近くに新しく建った分析棟です。これまでの検出限界値が、だいたい全β核種の場合で15-20Bq/L(上の表ではBq/cm3で書いてありますが、わかりやすくするため変換しました)だったのですが、今回測定場所を変更したことによりバックグラウンドが下がり、検出限界値が4-5Bq/Lに下がりました。その結果どうなったかというと、12/10の結果(発表は12/11)以降、毎日数値が検出され、9-14Bq/Lという全β核種の数値が出ています。これまでの検出限界値の15-20Bq/Lではおそらくギリギリでわからなかった値だと思います。
実は、東京電力のHPには最近データを見やすくまとめてくれるようになり、「福島第一原子力発電所周辺の放射性物質の分析結果」の一番上にある地図の番号をクリックすると、例えば「1.海水(港湾外近傍)」を押すと、下のように最新のデータをまとめて表示してくれるようになりました。

(東京電力HP 12/21の港湾外海水のまとめ より)
残念ながら、この資料は毎日上書きされてしまい、古いものは残らないので、これもぜひ残すように要望したいと思います。それはさておき、このまとめを見ると、港湾外海水や港湾内海水も週に1回もしくは何回か全β核種を測定しています。しかし、その検出限界値はほとんどが15-20Bq/Lです。
ということは、海水中に、今回T-2-1で判明したように10BqL程度の全β核種が存在していても、全くわからない可能性が高いということなのです。
一つ上の表で12/16のデータを出したのは実は訳があって、この日はCs-137が1.8Bq/L検出されています。12/10以降ではこの日だけがT-2-1の海水におけるCs-137と全βの比を確認できるデータがとれた日なのです。その時の数字で比較すると、全βが13Bq/Lですので、全βがCs-137よりも一桁高い数字になっています。
ひとり事故調さんのコメントでは、「事故当初はセシウムの方がストロンチウムより圧倒的に多かったのに、いつの間にか逆転して、今はストロンチウム90がメインとなっていることに今回気付かされた格好です。」ということでしたので、再度確認してみました。
確かに、海水中のCs-137は、今では港湾内ではかなり高いものの、港湾外ではかなり低くなっており、福島第一原子力発電所から20km以上離れたところ(沿岸部を除く)では事故前と同等程度にまで低下して1~5mBq/L=0.001~0.005Bq/L程度にまで下がってきています。
このブログを読んでいただいている方はおそらく勘違いする人はいないと思いますが、原発事故前(2011年以前)にも海水中にCs-137は1mBq/L程度存在しました。これは1960年代の核実験の影響がいまだに残っているのです。海水に関しては、偉大なる海の希釈作用のおかげで、やっと事故前の汚染レベルに戻ったということです。
規制庁が英語版で出している資料をみると、それがよくわかると思います。この資料、なぜか日本語版ではこのようにまとめたものは存在しないのですよね。

(規制庁HP 海洋モニタリングに関する英語情報(12月17日現在) より)
T-2-1のCs-137の検出限界値は1.3Bq/L前後です(12/10からは少し下がって0.6Bq/Lになりました)ので、それでほとんど検出されていない(ND)ということですから、ここ数ヶ月では平均してCs-137が1Bq/L未満であったことは確かだと思います。下のT-2&T-2-1のセシウム測定データを見てもそれはわかります。

(規制庁 第3回海洋モニタリング検討会資料 より)
一方、全βです。こちらに関しては、これまでの検出限界値の15-20Bq/Lでは検出できずにNDが続いていたのは間違いないのですが、ではどれくらいの量だったのかというのはほとんどわかりません。しかしながら、これまでのデータから、全βの約6割程度がSr-90であるということがわかっています。そして、T-2-1においてのSr-90というのは、一月に1度程度は測定されてきているのです。
Sr-90については、コンタンさんのブログに東京電力のHPから抜きだしてまとめた素晴らしいデータ集がありますので、そこから借りてきて引用します。(ちなみに、ここでも全βは測定されていますが検出限界値が高くてほとんど全てNDでした。)

(コンタンさんのブログのExcelシートより引用)
このグラフで青い線がT-2-1(2012年11月まではT-2)のSr-90のデータを示します。過去に2回ピークがあるのは、2011年12月と2012年3月のタンクエリアからの漏洩事故の影響を明瞭にとらえたものです。しかしながら、それ以外ではほぼ一定して0.1~0.5Bq/L程度の範囲に収まっていることがわかります。
残念ながらSr-90のデータが出てくるのは遅いため、ここ数ヶ月のデータは出ていませんが、2013年8月のH4エリアのタンクからの漏えいによって大きく上がっているのでない限り、T-2-1でのSr-90はおそらく0.1~0.5Bq/L程度であるということが言えると思います。これは、事故前はSr-90も0.001Bq/Lのオーダーだったので、高いままで止まっていることになります。それは護岸エリアなどから2年半にわたって常に汚染水が漏れ続けてきたからということで説明できるのだと思います。
Sr-90が0.1~0.5Bq/L程度と仮定すると、全βはおそらくその2倍程度ですので、0.2~1.0Bq/L程度というのが本来のT-2-1での濃度だと思います。とても15-20Bq/Lという検出限界値では検出できませんよね。
以上の検討から考えると、ここ最近数ヶ月のT-2-1でのCs-137と全βの値は、それぞれおよそ0.1~1Bq/Lの間に入っていると推論するのが妥当だという事になります。
そういう目で再度、12/10から検出限界値が下がった全βのデータを見直してみましょう。

まだ10日ほどのデータしかないので、微妙な変動に意味があるのかどうか不明ですが、ほぼ10Bq/L程度で変わらないことがわかります。ということは、さきほど書いた、0.1~1Bq/Lという値よりはかなり多いということがわかります。
だとすれば、この結果はこれまで知られていない何らかの漏洩を反映しているのでしょうか。だとすればいつからなのでしょうか。
一番考えられるのが2013年8月のH4エリアからのタンクからの漏えいです。しかしながら、T-2およびT-2-1の全βのデータは、今年の8月以降は検出限界値の15-20Bq/Lを超えることはほとんどありませんでした。

(経産省HP 2013/11/28より)
となると、20Bq/L以上あれば検出できているはずですから、漏えいがあったにせよ、2012年3月のように一度に大量に漏えいしたというものではなさそうです。徐々に漏れ出しているのか、あるいはH4エリアのタンクとは別の漏えいが最近あったのか、このあたりについては今後のデータを踏まえて調べていく必要がありますが、いずれにせよ、今回新たにバックグラウンドの低い場所で計測を行い、数値が検出できるようになったことで、これまでわからなかった情報が明らかになったということは重要です。
今回の情報を受けて、可能ならば他のサンプリング地点でも全β核種をルーチンの分析とは別に化学分析棟で測定してみて、いったいどれくらい全βが出ているのか確認する必要があると思います。できるだけ多くのサンプルを化学分析棟で測定するべきとは思いますが、実務上そこまでなかなかできないでしょうから、せめて1-2回は港湾外海水のサンプル(測定済)を一度化学分析棟で測定し直すだけでも意味がある(NDだったものが数値検出される)と私は思います。
上で述べたことはSr-90と全βの比率から全βの値を推論しているため不確実な部分があり、現段階のデータだけでは何が起こっているのかははっきりというのは難しいのですが、海水の全βの値とSr-90の値、全βとSr-90の値の比については今後も注目していく必要があると感じました。
最後に、福島県のHPをみていたら全βの測定法がいくつも記載してありました。おそらく東京電力で取っている方法は蒸発乾固法だと思いますが、測定方法によってデータが大きく変わってくるので、比較する際には注意が必要であることがわかりました。
まずは東京電力のサンプリングポイントである、T-1、T-2、T-2-1の場所を再度確認しましょう。T-2「南放水口付近」という地点は、2011年3月から毎日測定されてきた地点で、T-1の「5-6号放水口北」と並んで重要な測定地点です。

「第4回特定原子力施設監視・評価検討会汚染水対策検討ワーキンググループ」資料3 60ページ に一部加筆
しかしながら、2012年11月からは、南放水口から約330m南にあったT-2での測定は中止になり、T-2-1という南放水口から1.3kmも離れた地点での測定に変更になってしまいました。その理由は、T-2でも海底土を採取していたのですが、工事の影響で海底土の採取が難しくなったからというわけのわからない理由でした。海底土の採取が難しいならば、海底土のサンプリングだけはT-2-1で行い、海水のサンプリングは、C排水路からの出口のサンプリングという位置づけでこれまで通り続けるべきでした。
なぜならば、T-2においては2012年3月と4月のタンクエリアからの漏洩事故の教訓として、Csが除去されてβ核種がほとんどであることがわかっているタンクエリアから漏えいがあっても検出できるように、Cs-137とCs-134以外に全β核種の測定も毎日行われていたのです。
もし昨年11月にサンプリング地点を変更せずにT-2でのサンプリングを続けていれば、2013年8月のH4エリアからの漏洩事故においても、大量の海洋への漏えいがまず間違いなく検出できたと考えられますが、T-2-1という1kmも南に移動した場所で全βを測定していたため、C排水路を通じての海洋への漏洩があったかどうかは判断できませんでした。
ちなみに、T-2付近の写真が規制庁の資料に1枚だけ公開されています。残念ながら、現場の状況があまりよくわからない写真です。

(規制庁HP 第8回汚染水WG資料3 より)
しかし、2013年8月に起こったH4エリアのタンクからの漏洩事故によって、T-2での測定が重要であることが再認識されて、T-2でのサンプリングは復活しました。その後はT-2でのサンプリングは毎日行われ、Cs-134、Cs-137と全βの測定が毎日行われて発表されるようになりました。データは、排水路のデータ群の一つとして発表されています。
C排水路については、出口を港湾内に移動するという計画や、連続モニタリング装置をつけるという計画はありますが、現状ではまだ1日1回のモニタリングのみです。
さて、これからが本題です。今回コメントでひとり事故調さんが教えてくれたことは、東京電力HPにある「福島第一原子力発電所周辺の放射性物質の分析結果」というページの下の方にある「1~4号機側南放水口付近の分析結果(2013年12月分)」というところのデータに関する話です。

このカレンダーから見たい日付を押すと、例えば12/16のデータは下記のようにまとめられています。

(東京電力HP 12/16のT-2-1のデータ より)
この「注2:12/10の試料より、5/6号機ラボよりもバックグラウンドの低い化学分析棟で分析をすることとしたため、検出限界値が低下。」に出てくる化学分析棟というのは福島第一原子力発電所の入退室管理棟の近くに新しく建った分析棟です。これまでの検出限界値が、だいたい全β核種の場合で15-20Bq/L(上の表ではBq/cm3で書いてありますが、わかりやすくするため変換しました)だったのですが、今回測定場所を変更したことによりバックグラウンドが下がり、検出限界値が4-5Bq/Lに下がりました。その結果どうなったかというと、12/10の結果(発表は12/11)以降、毎日数値が検出され、9-14Bq/Lという全β核種の数値が出ています。これまでの検出限界値の15-20Bq/Lではおそらくギリギリでわからなかった値だと思います。
実は、東京電力のHPには最近データを見やすくまとめてくれるようになり、「福島第一原子力発電所周辺の放射性物質の分析結果」の一番上にある地図の番号をクリックすると、例えば「1.海水(港湾外近傍)」を押すと、下のように最新のデータをまとめて表示してくれるようになりました。

(東京電力HP 12/21の港湾外海水のまとめ より)
残念ながら、この資料は毎日上書きされてしまい、古いものは残らないので、これもぜひ残すように要望したいと思います。それはさておき、このまとめを見ると、港湾外海水や港湾内海水も週に1回もしくは何回か全β核種を測定しています。しかし、その検出限界値はほとんどが15-20Bq/Lです。
ということは、海水中に、今回T-2-1で判明したように10BqL程度の全β核種が存在していても、全くわからない可能性が高いということなのです。
一つ上の表で12/16のデータを出したのは実は訳があって、この日はCs-137が1.8Bq/L検出されています。12/10以降ではこの日だけがT-2-1の海水におけるCs-137と全βの比を確認できるデータがとれた日なのです。その時の数字で比較すると、全βが13Bq/Lですので、全βがCs-137よりも一桁高い数字になっています。
ひとり事故調さんのコメントでは、「事故当初はセシウムの方がストロンチウムより圧倒的に多かったのに、いつの間にか逆転して、今はストロンチウム90がメインとなっていることに今回気付かされた格好です。」ということでしたので、再度確認してみました。
確かに、海水中のCs-137は、今では港湾内ではかなり高いものの、港湾外ではかなり低くなっており、福島第一原子力発電所から20km以上離れたところ(沿岸部を除く)では事故前と同等程度にまで低下して1~5mBq/L=0.001~0.005Bq/L程度にまで下がってきています。
このブログを読んでいただいている方はおそらく勘違いする人はいないと思いますが、原発事故前(2011年以前)にも海水中にCs-137は1mBq/L程度存在しました。これは1960年代の核実験の影響がいまだに残っているのです。海水に関しては、偉大なる海の希釈作用のおかげで、やっと事故前の汚染レベルに戻ったということです。
規制庁が英語版で出している資料をみると、それがよくわかると思います。この資料、なぜか日本語版ではこのようにまとめたものは存在しないのですよね。

(規制庁HP 海洋モニタリングに関する英語情報(12月17日現在) より)
T-2-1のCs-137の検出限界値は1.3Bq/L前後です(12/10からは少し下がって0.6Bq/Lになりました)ので、それでほとんど検出されていない(ND)ということですから、ここ数ヶ月では平均してCs-137が1Bq/L未満であったことは確かだと思います。下のT-2&T-2-1のセシウム測定データを見てもそれはわかります。

(規制庁 第3回海洋モニタリング検討会資料 より)
一方、全βです。こちらに関しては、これまでの検出限界値の15-20Bq/Lでは検出できずにNDが続いていたのは間違いないのですが、ではどれくらいの量だったのかというのはほとんどわかりません。しかしながら、これまでのデータから、全βの約6割程度がSr-90であるということがわかっています。そして、T-2-1においてのSr-90というのは、一月に1度程度は測定されてきているのです。
Sr-90については、コンタンさんのブログに東京電力のHPから抜きだしてまとめた素晴らしいデータ集がありますので、そこから借りてきて引用します。(ちなみに、ここでも全βは測定されていますが検出限界値が高くてほとんど全てNDでした。)

(コンタンさんのブログのExcelシートより引用)
このグラフで青い線がT-2-1(2012年11月まではT-2)のSr-90のデータを示します。過去に2回ピークがあるのは、2011年12月と2012年3月のタンクエリアからの漏洩事故の影響を明瞭にとらえたものです。しかしながら、それ以外ではほぼ一定して0.1~0.5Bq/L程度の範囲に収まっていることがわかります。
残念ながらSr-90のデータが出てくるのは遅いため、ここ数ヶ月のデータは出ていませんが、2013年8月のH4エリアのタンクからの漏えいによって大きく上がっているのでない限り、T-2-1でのSr-90はおそらく0.1~0.5Bq/L程度であるということが言えると思います。これは、事故前はSr-90も0.001Bq/Lのオーダーだったので、高いままで止まっていることになります。それは護岸エリアなどから2年半にわたって常に汚染水が漏れ続けてきたからということで説明できるのだと思います。
Sr-90が0.1~0.5Bq/L程度と仮定すると、全βはおそらくその2倍程度ですので、0.2~1.0Bq/L程度というのが本来のT-2-1での濃度だと思います。とても15-20Bq/Lという検出限界値では検出できませんよね。
以上の検討から考えると、ここ最近数ヶ月のT-2-1でのCs-137と全βの値は、それぞれおよそ0.1~1Bq/Lの間に入っていると推論するのが妥当だという事になります。
そういう目で再度、12/10から検出限界値が下がった全βのデータを見直してみましょう。

まだ10日ほどのデータしかないので、微妙な変動に意味があるのかどうか不明ですが、ほぼ10Bq/L程度で変わらないことがわかります。ということは、さきほど書いた、0.1~1Bq/Lという値よりはかなり多いということがわかります。
だとすれば、この結果はこれまで知られていない何らかの漏洩を反映しているのでしょうか。だとすればいつからなのでしょうか。
一番考えられるのが2013年8月のH4エリアからのタンクからの漏えいです。しかしながら、T-2およびT-2-1の全βのデータは、今年の8月以降は検出限界値の15-20Bq/Lを超えることはほとんどありませんでした。

(経産省HP 2013/11/28より)
となると、20Bq/L以上あれば検出できているはずですから、漏えいがあったにせよ、2012年3月のように一度に大量に漏えいしたというものではなさそうです。徐々に漏れ出しているのか、あるいはH4エリアのタンクとは別の漏えいが最近あったのか、このあたりについては今後のデータを踏まえて調べていく必要がありますが、いずれにせよ、今回新たにバックグラウンドの低い場所で計測を行い、数値が検出できるようになったことで、これまでわからなかった情報が明らかになったということは重要です。
今回の情報を受けて、可能ならば他のサンプリング地点でも全β核種をルーチンの分析とは別に化学分析棟で測定してみて、いったいどれくらい全βが出ているのか確認する必要があると思います。できるだけ多くのサンプルを化学分析棟で測定するべきとは思いますが、実務上そこまでなかなかできないでしょうから、せめて1-2回は港湾外海水のサンプル(測定済)を一度化学分析棟で測定し直すだけでも意味がある(NDだったものが数値検出される)と私は思います。
上で述べたことはSr-90と全βの比率から全βの値を推論しているため不確実な部分があり、現段階のデータだけでは何が起こっているのかははっきりというのは難しいのですが、海水の全βの値とSr-90の値、全βとSr-90の値の比については今後も注目していく必要があると感じました。
最後に、福島県のHPをみていたら全βの測定法がいくつも記載してありました。おそらく東京電力で取っている方法は蒸発乾固法だと思いますが、測定方法によってデータが大きく変わってくるので、比較する際には注意が必要であることがわかりました。
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