福島第一原発 タンクエリアの堰は大丈夫なのか?
この間の3連休(12/21-23)には、立て続けに福島第一原発のタンクエリアでの堰からの漏洩事故がありました。幸いなことに、漏えいした汚染水の放射性物質は現段階では海へ流出した可能性は少なく、その濃度は、基準値を超えているものもあるようですが、タンクからの漏えいがあったと考えられるほど高いケースはなかったようですが、状況から考えて、ある特定のタンクエリアの問題ではなく、タンクエリア全体に関わるような話です。
このような漏えいはもう数が多すぎるのでいちいち取り上げても仕方がないと思っていたのですが、今回は立て続けに起こりましたので、本日(12/24)に東電HPに掲載された資料を元に簡単にまとめます。
1. 21-23日の経緯
今回のタンクエリアからの漏えいは、H5エリアでの漏えいで始まりました。連休中は、報道関係各位一斉メールというところに相次いで報告がされています(登録されている報道関係者にはメールが行っているようです)。

(東電HP 10/21 より)
これまでのあまりに多いタンクエリアからの漏えいで、東電の報道関係者メールでも、各タンクエリアの場所はこの資料を確認してくれ、という定型のパターンまでできあがっています。上の図で、北が左、東が上になります。それを頭に入れて以下の文章をお読みください。
H5タンクエリアからは、12/21に西側で堰からの漏えいが発見されました。それから翌22日には北東側で堰からの漏えいが発見されました。本日(12/24)に発表された資料ではその詳細な場所が明らかにされています。

(12/24 東電HP 報道配付資料 より)
西側からは、12/21の16時15分頃に堰からの漏えいが発見されました。東電のHPに発表された資料では、下のような状況だったようです。水が漏れ出しているのがよくわかりますよね。

(東電HP 写真・動画集 より)
その後、19時12分頃に堰の外に漏れた水はポンプで堰の中に戻し入れました。その時の様子がこれです。

(東電HP 写真・動画集 より)
さらに、23時35分頃に H5タンクエリア堰内水をH6タンクエリア堰内へ移送を開始しました。堰内の水位が約13cmから約5cmに低下し、仮設ポンプでの吸い上げが難しくなったことから、12月22日午前2時40分に移送を停止しました。さらに、22日午前中には、漏えいの確認された堰の基礎の継ぎ目部のシール作業を実施しました。
これで終われば大した話ではなかったのですが、今回はそれだけで済みませんでした。
22日の16時13分頃、同じH5エリアの今度は北東側で堰外への漏えいが確認されました。今回は堰の継ぎ目部分からの漏えいでした。すぐさま漏えい箇所(堰外側)に、土のうおよびビニルシートで水受けを設置し、さらに水受け内に仮設ポンプを設置して堰内に水を移送しました。
漏えい箇所の基礎コンクリート打継目のシール補修を実施して、23日の15時20分、H5エリアの漏えいは止まったことが確認できました。
一方、H5の東側でH4の南側にあるG6エリアでも22日に堰から漏えいが確認されました。北側の堰の下側と、西側の堰に発生したヒビからです。

(12/24 東電HP 報道配付資料 より)
G6北タンクエリアの堰の水はG6南タンクエリア堰内へ移送するとともに、G6北タンクエリア北側堰の漏えい箇所(堰外側)には、土のうおよびビニルシートで水受けを設置しました。また、西側堰の漏えいしていたヒビには、コーキング材による補修を実施しました。これらの処理により、同日夜、漏えいは停止しました。
それぞれの堰内の水の濃度については、それぞれの東電の発表をご覧下さい。
H5エリア西側
12/21 福島第一原子力発電所H5タンクエリアの堰からの漏えい(続報2)
H5エリア北東側、G6北エリア北側、G6北エリア西側
12/23 福島第一原子力発電所H5、G6タンクエリアの堰からの漏えい(続報4)
(参考)関係する写真: 写真・動画集(12/24)
2.考えられる原因
今回の漏えいは、人為的なミスではありませんでした。逆に、堰にヒビが入っていたり、コンクリート止水シールが劣化したということが原因と考えられるということなので、今回発覚したエリア以外でも同様の事が今後起こる可能性が高いことが示されたと思います。
12/24の東京電力の原因分析の資料を見てみましょう。

H5エリアについては、止水シールの劣化が原因だと考えられるということでした。そのため、応急措置として、止水シールの補修は行っています。

また、G6エリアでは、コンクリートに入っていたクラックが気温低下により目開きして漏えいしたと考えられるということでした。これに対しては、基礎表面クラックに止水シールを施工予定ということです。

このようなことが原因で漏えいが起こるとすると、二つの疑問が出てきます。
一つは、他のタンクエリアでも同じ事が起こる可能性が高いのではないか?ということ。それから二つ目は、昨年も同様の理由で漏れ出していたのではないのか?ということです。
1番目の疑問については、おそらく今回はたまたまH5とG6で起こっただけで、他のエリアでも同様なことが起こる可能性が高いと思います。H5とH6が特殊ということでない限り、全エリアに対してこのような事が起こる可能性があると考えて対策を打つべきです。
2番目の疑問については、過去の情報についてはもうわからないのですが、タンクエリアに対する注目が昨年はこれほどなかったため、同じ事がすでに起こっていた可能性があります。ただし、今年の夏までは堰は開運用で堰の中には水をためない運用を行っていました。そのため、堰の中に水がたまるということはあまりなく、これらの水はたまる暇もなくどんどん堰の外側に出て土壌中に染みこんでいったと思われます。それはそれで問題なのですが、今年の夏以降、堰の閉運用をするようになって初めてこの問題がクローズアップされたということなのでしょう。
3. 24日に発見されたH4エリアとH4東タンクエリア堰内の水位の低下
24日に新たに明らかになったところによると、12月24日のH4タンクエリアおよびH4東タンクエリアの堰内水位データ確認において、当該タンクエリア堰内水位が徐々に低下していることがわかったということです。
H4エリア: 12月20日:約12cm → 12月24日昼頃:約5cm
H4東エリア:12月20日:約12cm → 12月24日昼頃:約1cm
堰の外側には水は漏れていないということから、堰内のコンクリートがひび割れて、堰の下に漏れ出している可能性があると思います。
NHKの報道によると、225トンが減っているということでした。
「福島第一原発で、24日、タンクを囲むせきのうち、4号機の山側にある2つのせきにたまった水の水位が4日前の今月20日に比べて大きく下がっていることがわかりました。
▼H4東と呼ばれるエリアのせきでは、20日に12センチあった水位が11センチ下がって1センチに、▼H4エリアのせきでは12センチあった水位が7センチ下がって5センチになっていました。東京電力によりますと、減った量はあわせて225トンになりますが、今のところ、水が周辺の土壌に漏れた跡は確認されていないということです。
せきの水に含まれる放射性ストロンチウムの濃度は最高で1リットルあたり440ベクレルで、国が認めたせきからの放出基準の44倍にあたります。」(NHKオンラインより)
この問題については、24日の段階では原因その他はまだ明らかにされていません。明日以降詳細な情報が入ると思いますが、堰の耐久性ということが新たにクローズアップされてくるのではないでしょうか。
相変わらず汚染水問題では、予想外の問題が新たに出てくるようです。この現象は今後も当分続くと思います。
今回のタンクエリアからの漏えいは、H5エリアでの漏えいで始まりました。連休中は、報道関係各位一斉メールというところに相次いで報告がされています(登録されている報道関係者にはメールが行っているようです)。

(東電HP 10/21 より)
これまでのあまりに多いタンクエリアからの漏えいで、東電の報道関係者メールでも、各タンクエリアの場所はこの資料を確認してくれ、という定型のパターンまでできあがっています。上の図で、北が左、東が上になります。それを頭に入れて以下の文章をお読みください。
H5タンクエリアからは、12/21に西側で堰からの漏えいが発見されました。それから翌22日には北東側で堰からの漏えいが発見されました。本日(12/24)に発表された資料ではその詳細な場所が明らかにされています。

(12/24 東電HP 報道配付資料 より)
西側からは、12/21の16時15分頃に堰からの漏えいが発見されました。東電のHPに発表された資料では、下のような状況だったようです。水が漏れ出しているのがよくわかりますよね。

(東電HP 写真・動画集 より)
その後、19時12分頃に堰の外に漏れた水はポンプで堰の中に戻し入れました。その時の様子がこれです。

(東電HP 写真・動画集 より)
さらに、23時35分頃に H5タンクエリア堰内水をH6タンクエリア堰内へ移送を開始しました。堰内の水位が約13cmから約5cmに低下し、仮設ポンプでの吸い上げが難しくなったことから、12月22日午前2時40分に移送を停止しました。さらに、22日午前中には、漏えいの確認された堰の基礎の継ぎ目部のシール作業を実施しました。
これで終われば大した話ではなかったのですが、今回はそれだけで済みませんでした。
22日の16時13分頃、同じH5エリアの今度は北東側で堰外への漏えいが確認されました。今回は堰の継ぎ目部分からの漏えいでした。すぐさま漏えい箇所(堰外側)に、土のうおよびビニルシートで水受けを設置し、さらに水受け内に仮設ポンプを設置して堰内に水を移送しました。
漏えい箇所の基礎コンクリート打継目のシール補修を実施して、23日の15時20分、H5エリアの漏えいは止まったことが確認できました。
一方、H5の東側でH4の南側にあるG6エリアでも22日に堰から漏えいが確認されました。北側の堰の下側と、西側の堰に発生したヒビからです。

(12/24 東電HP 報道配付資料 より)
G6北タンクエリアの堰の水はG6南タンクエリア堰内へ移送するとともに、G6北タンクエリア北側堰の漏えい箇所(堰外側)には、土のうおよびビニルシートで水受けを設置しました。また、西側堰の漏えいしていたヒビには、コーキング材による補修を実施しました。これらの処理により、同日夜、漏えいは停止しました。
それぞれの堰内の水の濃度については、それぞれの東電の発表をご覧下さい。
H5エリア西側
12/21 福島第一原子力発電所H5タンクエリアの堰からの漏えい(続報2)
H5エリア北東側、G6北エリア北側、G6北エリア西側
12/23 福島第一原子力発電所H5、G6タンクエリアの堰からの漏えい(続報4)
(参考)関係する写真: 写真・動画集(12/24)
2.考えられる原因
今回の漏えいは、人為的なミスではありませんでした。逆に、堰にヒビが入っていたり、コンクリート止水シールが劣化したということが原因と考えられるということなので、今回発覚したエリア以外でも同様の事が今後起こる可能性が高いことが示されたと思います。
12/24の東京電力の原因分析の資料を見てみましょう。

H5エリアについては、止水シールの劣化が原因だと考えられるということでした。そのため、応急措置として、止水シールの補修は行っています。

また、G6エリアでは、コンクリートに入っていたクラックが気温低下により目開きして漏えいしたと考えられるということでした。これに対しては、基礎表面クラックに止水シールを施工予定ということです。

このようなことが原因で漏えいが起こるとすると、二つの疑問が出てきます。
一つは、他のタンクエリアでも同じ事が起こる可能性が高いのではないか?ということ。それから二つ目は、昨年も同様の理由で漏れ出していたのではないのか?ということです。
1番目の疑問については、おそらく今回はたまたまH5とG6で起こっただけで、他のエリアでも同様なことが起こる可能性が高いと思います。H5とH6が特殊ということでない限り、全エリアに対してこのような事が起こる可能性があると考えて対策を打つべきです。
2番目の疑問については、過去の情報についてはもうわからないのですが、タンクエリアに対する注目が昨年はこれほどなかったため、同じ事がすでに起こっていた可能性があります。ただし、今年の夏までは堰は開運用で堰の中には水をためない運用を行っていました。そのため、堰の中に水がたまるということはあまりなく、これらの水はたまる暇もなくどんどん堰の外側に出て土壌中に染みこんでいったと思われます。それはそれで問題なのですが、今年の夏以降、堰の閉運用をするようになって初めてこの問題がクローズアップされたということなのでしょう。
3. 24日に発見されたH4エリアとH4東タンクエリア堰内の水位の低下
24日に新たに明らかになったところによると、12月24日のH4タンクエリアおよびH4東タンクエリアの堰内水位データ確認において、当該タンクエリア堰内水位が徐々に低下していることがわかったということです。
H4エリア: 12月20日:約12cm → 12月24日昼頃:約5cm
H4東エリア:12月20日:約12cm → 12月24日昼頃:約1cm
堰の外側には水は漏れていないということから、堰内のコンクリートがひび割れて、堰の下に漏れ出している可能性があると思います。
NHKの報道によると、225トンが減っているということでした。
「福島第一原発で、24日、タンクを囲むせきのうち、4号機の山側にある2つのせきにたまった水の水位が4日前の今月20日に比べて大きく下がっていることがわかりました。
▼H4東と呼ばれるエリアのせきでは、20日に12センチあった水位が11センチ下がって1センチに、▼H4エリアのせきでは12センチあった水位が7センチ下がって5センチになっていました。東京電力によりますと、減った量はあわせて225トンになりますが、今のところ、水が周辺の土壌に漏れた跡は確認されていないということです。
せきの水に含まれる放射性ストロンチウムの濃度は最高で1リットルあたり440ベクレルで、国が認めたせきからの放出基準の44倍にあたります。」(NHKオンラインより)
この問題については、24日の段階では原因その他はまだ明らかにされていません。明日以降詳細な情報が入ると思いますが、堰の耐久性ということが新たにクローズアップされてくるのではないでしょうか。
相変わらず汚染水問題では、予想外の問題が新たに出てくるようです。この現象は今後も当分続くと思います。
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