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高性能多核種除去設備(ALPS)の開発計画 -第1回タスクフォースより-

 
今年は汚染水に関してあまりに多くの動きがありました。特に夏以降は汚染水情報が爆発的に増えた、という感じで、細かくフォローすることができていませんでした。

少しまとめて時間がとれる年末年始に、2013年の動きをまとめておきたいと思います。一つ一つのトピックについて少しずつまとめていく予定です。

今回は、現行の多核種除去設備(ALPS)の問題点を解消したバージョンになる予定の「高性能多核種除去設備」のコンセプトについてご紹介します。

1. 高性能多核種除去設備の開発事業

多核種除去設備(ALPS:Advanced Liquid Processing System)については、このブログでは2012年6月にすでに「9月に導入予定の多核種除去設備とはどんなもので何が出来るのか?」として取り上げています。しかし当初2012年9月にホット試験を開始する予定だったのが、旧保安院が原子力規制委員会に組織変更されたことにより手続き上の問題もあり、ALPSの稼働が遅れに遅れました。結局ホット試験が開始されたのは2013年3月でした。この問題については「放射能汚染水情報アップデート ALPSの稼働をめぐる部分最適の是非(1)」「放射能汚染水情報アップデート ALPSの稼働をめぐる部分最適の是非(2)」に書きました。

ただ、実際に試運転(ホット試験)を開始したものの、ALPS自体にも設計上の問題と思われる原因によるトラブルが相次ぎ、なかなか順調に稼働できていません。250トン/日処理できる設備をA系列からC系列の3系列用意してあるため、フル稼働させれば750トン/日処理できる能力はあるのですが、残念ながら今年で処理したのは33000トン前後にすぎません。12/11の報道によると、ALPSの本格稼働は来年4月以降になるということです。

そこで、国が前面に出るという発言がでた9月以降、ALPSについても高性能多核種除去設備を開発することが決定され、2013年度の災害へ備える予備費から陸側遮水壁(凍土壁)と合わせて205億円を支出することが決定されました。一方で、東京電力もALPSを増設することを計画しています。

この開発については、経済産業省から「平成25年度「汚染水処理対策事業」に係る補助事業者の募集を開始します」として2013年9/11に補助事業として公募されました。内訳は、凍土壁に135億円、高性能ALPSに70億円かける事業を行うのでその業者を募集するというものでした。

当初は9/24までの募集期間の予定でしたが、非常に問い合わせが多かったため、応募期間は10/1まで延長されました。そして10/10に14件の応募の中から補助事業の対象者が東京電力株式会社、株式会社東芝、日立GEニュークリア・エナジー株式会社の3者の共同提案に決定した旨が公表されています。

東芝はALPSおよびセシウム除去のサリーを開発してきた企業で、ある意味この共同提案が採択されるのは予定通りのことだったと言えると思います。この事業は2015年度までは補助金対象になるということですから、今年度の70億円にプラスしてさらに2年間はそれなりの額のお金がつぎ込まれることと思います。


2. 第1回タスクフォース(11/29)で紹介された概要

10/25に開催された第8回汚染水処理対策委員会において、委員会の下部組織として高性能多核種除去設備タスクフォースを設置することが決定されました。

そして、11/29に第一回の高性能多核種除去設備タスクフォースが開催されました。委員のメンバーは下記のような構成です。

12/28-1
(11/29 第1回タスクフォース 高性能多核種除去設備タスクフォースの設置について より)

会議は企業秘密を多く含むため原則として非公開。資料は企業秘密を除いて公表し、議事概要のみを公表するというやり方で行われます。この後は、第1回の資料の中で、資料2「高性能多核種除去設備整備実証事業の概要」が一番よくまとまっていてわかりやすいので、この内容を中心にご紹介します。

まずは、現行のALPS(多核種除去設備)の概略です。1年以上前ですが私の書いた「9月に導入予定の多核種除去設備とはどんなもので何が出来るのか?」にも詳しく記載がありますのでそちらもご覧下さい。ALPSは前処理設備と多核種除去設備に分かれています。ALPSで処理することによって、汚染水は多くの放射性物質が除去されてかなりきれいになるのですが、逆にいうとALPSで吸着などして出てくる廃棄物はかなり高濃度の放射性物質を含んでいるわけです。

それらはHICと呼ばれる容器に詰めて保管される仕組みになっています。原子力規制委員会がなかなかALPSのホット試験を認めなかったのは、HICの安全性に問題があるとしたためです。

12/28-3

さて、このHICは実は前処理設備(鉄共沈処理設備、炭酸塩沈殿処理設備)からでてくるのが95%と圧倒的に多いのです。現行のALPSを500トン/日のペースで処理し続けるという前提で試算すると、下図のように廃棄物で毎年約2300トン(HICで約800体)が発生します。

毎年これだけの廃棄物が出るとすると、保管場所がなくなってしまいます。そこで、これから開発する予定の高性能多核種除去設備においては、この廃棄物量を削減する事が目標の一つになっているのです。

12/28-4

そのためには、鉄共沈・炭酸塩沈殿処理による放射性物質の除去プロセスを採用せず、かつ、現行多核種除去設備と同等以上の除去プロセスを開発する必要があるということなのです。

実はこれは、この補助事業の技術要件としてもあげられているのです。廃棄物を80%以上削減する事が目標として掲げられています(最後の安全設計上の考慮等のところは省略しました)。

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平成25年度「汚染水処理対策事業」に係る補助事業者公募要領 より)

それから、現行のALPSにおいては、バッチ処理のタンクに腐食がおきてそこから汚染水が漏えいしたことが問題となりました。この事は上記の技術要件としても取り上げられており、耐食性の高い素材を用いることが必要になっています。

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また、現行ALPSの性能として、福島第一原発の原子炉において発生すると考えられる62核種の放射性物質(トリチウムを除く)について、告示濃度以下にする事はできていますが、A系列における実績としてCo-60などいくつかの核種については、微量ながら検出されています。これらの核種についてもどれだけ検出限界値未満にまで下げられるか、ということがポイントになってきます。

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これらのことを受けて、高性能多核種除去設備のコンセプトは以下の3つが考えられています。

(1) フィルタ・吸着材処理を主体とした除去プロセスにより廃棄物発生量を低減する。
(2) 除去性能を向上させるため、新たなフィルタ・吸着剤処理技術の開発・実証を行う。
(3) 耐食性を考慮した材料選定を行う。

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また、公募における技術要件に対する対応として、目標値を下記のように設定しています。

(1) 廃棄物発生量を現有する多核種除去設備(年間2,300トン)に対して約95%削減し、年間約120トンにする。
(2) 62核種については、告示濃度以下のみならず、目標とされるNDレベル以下にする。

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目標とされる濃度というのは、さきほどの募集要項に掲載されていたもので、参考までにここにも載せておきます。

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参考資料 処理対象水の性状について より)

廃棄物量を削減するための考え方ですが、当初はCsやSrはイオン状で存在すると考えられていたのですが、実際の汚染水の中ではCs-137やSr-90などは多くは粒子状あるいはコロイド状で存在するということがわかりました。そのために、粒子状・コロイド状の核種を選択的に吸着できるフィルタの開発をする事が必須であるということです。

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私がこの資料を読んだ限りでは、このフィルタをうまく開発できるかどうかが技術的なポイントで、廃棄物量の削減はここで達成できるかどうかが決まると思いました。

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3. 今後の開発スケジュール

さて、その他の技術的な部分は省略して今後の段取りとスケジュールです。ALPSの時と同様に、ラボ試験、1/10スケールの検証試験、実証試験と3段階のステップを踏む予定です。

ALPSの時も、ラボ試験と検証試験では問題なく62核種の全てについて検出限界以下に除去することができるという実績があったので期待したのですが、実際の実証試験においてつまずいてしまいました。なので、今回の補助事業ではそのようなことがないようにしてほしいものです。

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そして肝心のスケジュールですが、ラボ試験と検証試験までを2014年3月末、つまり今年度末までに終え、来年度中に実証プラントを設置し、稼働するというスケジュールになっています。

12/28-15

実は、この高性能多核種除去設備だけでなく汚染水処理の全体のスケジュールというのが決まっています。国の「東京電力(株)福島第一原子力発電所における廃炉・汚染水問題に対する追加対策(12/20)」においても汚染水を「取り除く」の項目として「国費を投入し、より処理効率の高い高濃度汚染水の浄化処理設備を実現。(平成26年度中のできるだけ早い時期に運用開始。) 」と記載があり、2014年度の9月頃には稼働するように求められているのです。

そして、東京電力が発表しているタンク増設計画によると、来年度中つまり2015年3月までには、今30万トン以上あるRO濃縮水(濃縮塩水)を全てALPS処理を終える、という予定になっているのです。これは、現行のALPSに加えて、今回ご紹介した高性能ALPS、そして東電が増設を予定している増設ALPSを含めて1700トン/日の処理量を2014年10月から達成する問計画なのです。

今年の10月に発表された「福島第一原子力発電所1~4号機における滞留水貯留タンク増設計画について(2013/10/31)」では、いくつかのケースが想定されていますが、ベストシナリオでは下図の黄色い線で示す濃縮塩水が2015年3月(平成27年3月)にはゼロになって、それが全てALPS処理水にリプレースされるという予定になっています。

12/28-16


実際にどれだけのスケジュールで進められるかは、このALPSだけでなくサブドレンその他の稼働状況にもかかってくるため、予定通りには行かない可能性が高いと個人的には思います。ただ、東京電力や国がどういう計画でいるのかということについては、情報を入手して理解しておく必要があります

このタスクフォースも第1回はまだ計画を話すことがメインでしたので、今後は実際のデータに基づいていろいろな議論がなされていくと思いますから、それについてもフォローしていきたいと思います。

最後に、第1回タスクフォース議事概要へのリンクを載せておきます。委員の人からのコメントがいくつか載っています。これを読むと実証試験は東芝ではなく日立GEが行うようですね。
 
 
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