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2011年4月のビーバー作戦を再現します その7(2011年4月6日)

 
TV会議の情報を踏まえて2011年4月の2号機スクリーンからの漏えいに対する「ビーバー作戦」を振り返るシリーズ、今回で7回目となりました。

今回は前回に引き続いて4月6日の様子を振り返っていきたいと思います。とりあえずの止水がやっとできて、その後どういう対応を取ったかです。

これまでのシリーズについては、「目次」をご覧下さい。 


7. 止水後の対策

4月6日の5時38分頃にやっと漏えいが止まり、6時30分頃に新たなプレスリリースが出されました。それは現在も東京電力のHPで確認できます。
『本日、午前5時38分頃、ピット側面のコンクリート部分からの海水への流出が止まったことを確認しました。止水状況の詳細は、今後確認してお知らせいたします。

 なお、引き続き止水作業を継続してまいります。』

その後、同日の昼頃(と思われます)には「福島第一原子力発電所2号機取水口付近からの放射性物質を含む液体の海への流出の停止確認について(続報)」として、ボーリングをいつどのように行ったかという資料も公表されました。

0103-2
福島第一原子力発電所2号機取水口付近からの放射性物質を含む液体の海への流出の停止確認について(続報) より)

この時系列の一覧表については、TV会議の発言とほとんどずれがありませんので、おそらく問題ないと思います。一方で、ボーリングした場所については間違っていると思われるところがありますので指摘しておきます。

0103-1
(東電HP2011年4/6 対策工事実施状況 より)

上の平面図で4番は、TV会議においては1番もしくは7番に該当すると思います(詳細は「2011年4月のビーバー作戦を再現します その6(2011年4月5日後半)」参照)が、TV会議の議論においても、当初の計画においても、このように西からピットAに向かって(図では上から下へ)ボーリングするという計画はありません。4月5日のプレスリリースにおいても、「想定される要因と現状考えている対策工事」という資料で、下の右図では1番としてピットBからピットAへつながる管路に向けてボーリングする計画になっています。

0103-3
(東電HP2011年4月5日 想定される要因と現状考えている対策工事 より)

それ以外のどの資料を見ても、4/6の4番のような向きでボーリングしたというものはありませんし、TV会議の流れを見ていればここはピットBへつながる管路の下の砕石層を狙っているのですから、北から南へ向けて掘ったものに間違いありません。情報が錯綜して4番の向きを間違えたのでしょう。


さて、前回ポタポタと漏れているという話を最後に書きましたが、この状態では不安定であるため、もっと完全に物理的に止めるという手段をとりました。

0105-16_80_014
(東電HP 写真動画集 2013年2月1日公開 80-014 より)

上の図で見えるバースクリーンの前にある格子をクレーンでつり上げてどかします。そしてそこに単管パイプの両側にジャッキベースというものを取り付け、先端にゴム板をつけてゴム板ごと釘で固定しました。

0105-17_80_015
(東電HP 写真動画集 2013年2月1日公開 80-015 より)

この時の状態は、4/7の東電の記者会見(ニコ生:ログイン必要togetter)でも説明されていましたが、記者会見の資料は2011年4月25日以降しか東電のHPにはありませんので、旧保安院に残っている資料で見るしかありません。

0105-18
(経産省HP 地震被害情報(第78報)(4月7日8時00分現在)及び現地モニタリング情報 より)

その後、追加的な対策として、凝固剤の追加と、止水作業を行ったということになっています。ただ、これに関してはどこにどのような形で行ったのか、ということについてあまり情報がありません。

2013年になって、東電が規制庁へ説明した資料(規制庁の面談記録:2013年7月18日)に4月6日以降の追加的止水対策について、説明の資料があります。それによると、ピットAの回りに2013年8月にも使用した水ガラスの壁を全部で10本くらい注入した事になっています(この資料は確かこの規制庁の面談記録にしかなかったように記憶しています)。

0105-19
規制庁の面談記録:2013年7月18日 7ページ より)

また、7/29の特定原子力施設監視検討会の場で規制庁が提出した資料に記載してあることをみると、ピットAからピットB、そして海水配管トレンチとの合流地点までその周囲に凝固剤を注入したという事になっています。ただ、これがいつ行われたのかということについてははっきりとした記録は残されて(公開されて)いません。
0105-20
(7/29 第14回特定原子力施設監視・評価検討会資料1-1 より)

これらについては、4/7のTV会議(夜19時過ぎ)ですが、このような発言があります。

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(本店建設復旧班) 2号の漏水に関するその周りの作業についてご報告させて頂きます。2号機につきましては、すでにご案内のとおり、昨日の朝ですね、5:38に止まりましたが、その跡、同じピットの中にですね、もう1本ボーリングを掘りましてやっぱり水ガラス系のエルダブルという薬剤を入れまして、その跡は、全く出てない状況になってます。

今日ですね、更にあそこの中に水分が固形しないまま残っているといけないということで更にもう1本ボーリングを打ちましてそこにやっぱりエルダブルという水ガラス系の薬剤を注入しております。

この後はですね、一応もう、3本やったことによって、2号のピットの中はほぼおさまったと考えておりますが、この周りの砕石層の中にまだそのような高レベルの液体がある可能性がありますので、海のほうにそれが流れないようにその砕石の部分を押さえる段階に入ります。今、本店の方で、どこにやるか、グラウトをやるかという検討チームを作っておりまして、今後ですね、それの準備を進めて今晩若しくは明日以降、それを実施しようと思ってます。

それから2つ目ですけれども、これと同じような事象が起こる可能性があるところがあればですね、事前にグレーのところは全てコンクリートで閉塞しようということで今、検討を始めてまして、その第1回目ということで、4号の海水配管ダクトとそれからケーブルダクトの交差する部分がある、ここは可能性的としては否定できないということで、昨日、コンクリート100m3打ちまして閉塞をしております。あと、集中RW周りについても同じようなところ全て拾い出しておりまして、12日から水が移送できるようにということで11日までには全てコンクリートで閉塞する準備をしております。(以下略)
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ここで出てきたエルダブルというのは、LW工法ともいわれるもので、東電の2011年6月2日の資料に出ていることを見直して発見しました。
0105-21
(東電HP 2011年6月2日 別紙16 より)

TV会議の発言によると、ピットAの中に4/6早朝を含め合計3回水ガラスを注入したのでこの中はもう大丈夫だろうと考え、回りの砕石層にある水が流れるのをどうやって抑えるか検討している、とあります。おそらくその検討結果、上の図にあったようなピットAの回りを囲むような水ガラスの壁を作るということ、それから、ピットAから海水配管トレンチとの合流地点まで凝固剤注入という2段階にわけて実施したのではないかと思います。


8. その後のトレンチ立て坑の水位は?

さて、一応の止水が終わったとはいっても、ケーブル管路の下の砕石層を通っただろうということしかわからず、どこからトレンチの外に漏れ出したのかは全くわからないままでした。となると、出口をふさいでしまうと、行き場を失った水がどこへ行くのか?水位が上昇してくる可能性があるわけです。

TV会議においても当然のことながらそのことを気にしていました。そして上がってきたときにはどうしようか、ということをすでに吉田所長と武黒フェローは考えていました。

以下は、4/6の朝6時30分頃の会話です。つまり、汚染水の海洋への漏えいが止まってまだ1時間も経たない頃の話です。

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(吉田所長) ちょっと●●が来ないと細かい説明ができないんですけれども、今、1Fには一応、OP4000が立坑のギリギリですし、ここの部分もそうなんですけれども、それ考えますと、一応、ジャストでいうと1mの余裕があります。それで、それをですね、今、現時点が4月6日ですから、それを1mの余裕として考えますと、例えば注水量のその今、原子炉には7tかな?6tにしたんだっけ、2号は?

(武黒フェロー) 2号は8t。

(吉田所長) 8tか、ごめんなさい。8tの注水量の例えば2倍がT/Bに流入するというふうにちょっと保守的に考えた場合でもですね、10日ぐらいはOP4000に対しての余裕があります。で、途中でホットウェル排水が今、言っている9日からということになりますと、それで2700tぐらいの今の排出量とのあれがありますから、そこを稼ぐことになりますと、それがあと5日ぐらいですかね、寿命が延びるということで考えると、2倍流れたと考えてた場合でも2週間ぐらいは余裕があるんでそういうことから考えるとホットウェルの排水をしつつ、やはり集中RWのですね、そこに流すということが一番本命かなというふうに思っておりますけれども、はい。

(中略)

(武黒フェロー) あとはだから、このせっかくやっと止まった孔の閉止の状況をどう、そのよりなんていうか確実なものにするかでコンクリート、セメントミルクの注入が夕方ぐらいまでになりそうだということですから、この状況にまず変化が無いこと、それから周辺の状況に注意深く見ていくこと、それから、現地の方でも実際やった人たちに閉止の状況を見て、よく、その閉止の状況の安定性みたいなものについて確認をしておく必要があると思います。

(中略)

(武黒フェロー) その上で、もし他への、閉止したことで他に回りこみだとかヘッドがかかってくることによる影響などの影響を考えると、床からの排水作業を従来よりも急ぎたいところではあるんだけれども、行先がもう限られているからホットウェルのところ、どの程度の水量、空にしてやるのかがいいのか、ある程度水量を残したほうがいいのかという判断だけだと思いますね。

(吉田所長) はい、ホットウェルの方にですね、チンチンの水を送るのもかなり危ない作業なんで、事前手順を今、詰めている所ですが、その辺がしっかりしないとですね、ちょっと怖くてできない部分もありますので、そこはしっかりですね。

(武黒フェロー) はい、あとは、ホットウェルにどの程度の線量にしておくかっていうことですよね。

(武黒フェロー) でもやったって半分くらいにしかならないんだから、大変効率の悪い話になるだけなんだけども。結局だけど、人はどうしたって近づけないわけなんで、いずれ将来、2号については、ホットウェルからまたくみ出してそのDF3ぐらい期待できる除染装置へ持っていって、本当はそこで脱塩までできればいいんだけど、脱塩がムリでも原子炉へという塩が残った状態ではあるけど、グルグル廻しをするということも全体の水バランス上も原子炉の冷却上も好都合だという判断もありえるんだと思うんですよね。あとは塩の問題をどう考えるか、それを考えるとホットウェルに水を入れて薄めておくっていう手もあるんだけども。
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ここで議論されていることは、まず吉田所長が、立て坑のOPが2960で約3mですから、OP4000まで約1mの余裕があるということをいいます。これから水が止まって水位が上昇してくると考えたときに、毎日入れている水が毎時8トンなので、1日あたり192トンです。保守的に見積もってこの2倍がタービン建屋に入ってくるとしても10日の余裕があると言っているので、1日400トンでも10日ということで、4000トン入って水位が1mあがるという計算をしているわけです。つまり、吉田所長は2号機のタービン建屋の面積を約400m2と見積もっていることになります。

そこに4月9日からホットウエルの排水をして2700トン減れば、そこにタービン建屋の水を流し込むことができ、さらに5日(2700÷400=6.75ですが)くらい延びて、立て坑の水位がO.P.4000に達するまでに10+5=15で大ざっぱに2週間くらいの余裕があるという計算をしていたわけです。2週間あるならば、ホットウエルの排水をしつつ、やはりタービン建屋の高濃度汚染水は集中RWに入れるべきだという事を吉田所長は言っているのです。

それに対して武黒フェローは、ホットウエルの水を全部抜いてそこにタービン建屋の水を送りこむ作業をするのか、ある程度抜いた段階でタービン建屋の水を送りこむのかという判断ではないか?ということを言っています。

その後の武黒フェローの発言が注目すべきと思ったのですが、将来的には、ホットウエルからくみ出して、DF(Decontamination Factor)3、つまり除染係数が3 (1/(10の3乗)すなわち1/1000に除染できる)くらい期待できる除染装置へ持っていって、また炉心の冷却水として使用するためグルグル循環させるということをこの時点ですでに述べているのです!しかも、現在の水は海水の塩分が入っているため、脱塩できるかどうかが問題だが、仮にできなくても除染した水を原子炉に注入するということを言っています。今の汚染水循環処理システムのイメージがこの時点ですでに武黒フェローの頭の中にはあったことになります。これにはちょっとビックリしました。


さて、肝心の水位ですが、4/6の朝7時頃にはまだ水位の変化がないという報告が入ります。その日の夜になって、立て坑の水位が4cm上昇したという報告が入ります。

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(吉田所長)
2号機の立坑の水位なですが、朝からずっと変わってなくて、15時ぐらいまで変わってなかったんですが、20時半にデータを採ったところ2960が3000。4cm上がっているというデータがきましたので、トレンドこれからもしっかり見ていくということになると思いますが、はい。
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さらに翌4月7日の朝9時頃です。

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(吉田所長)(前略)それから、昨日修理いたしました、例の流水の部分でございますが、一応、もちろん止まってですね、外側の処置もしてそれからまたグラウトを打つということで昨日より確実な状況にしておりますが、更に今日明日ということでピット周りの地盤の改良を継続するということです。

昨日から2号機の立坑の水位でございますが、2960からですね、今朝の時点で24時間で3010ということで5cm、50mm上昇という傾向が見られています。この傾向が続きますと、1か月くらいで立坑が一杯といいますか、オーバーフローというレベルになりますので、これについては今、急きょ点検をしております集中ラドに送ると。

それからホットウェルに送るというのも両方チョイスがあるんですが、今、本店さんと協議したいのは、条件が整えばですね、もう、集中ラドに入れてしまう方がですね、非常に工程としてはシンプルなんでそっちを優先して、ホットウェルはバッファーでとっておくということはどうかなということでサイトで考えてぎざいます。これについてもまた今後、協議をさせていただきたいというふうに思っております。主なトピックスは以上でございます。一応ここで質疑を。

(中略)

(武黒フェロー)なければピットの方ですが、周囲の地盤強化についてはぜひ、現場の状況をよく把握しながら進めて頂くということが大事だと思います。それから、すでに建設復旧班のほうで手配して頂いていますが、海水中の拡散防止、それから他の類似箇所がないかどうか、こういったことも平行して進めることが必要だと思いますので、関係のみなさんには引き続き大変ご苦労をおかけしますが、よろしくお願いしたいというふうに思います。あと


(吉田所長) すいません。今のところだけ1点追加なんですが、先ほど言いましたように、1日でだいたい50mm上がっております。これを今の2号機の注入量と考えますと、ほぼほぼ同等、相当な値、上がってますので、どちらかというと他への回り込みがなくなって2号機のT/Bの水位上がってきてるという可能性が強いかなって思ってます。まあ、当然のことながらそれ以外の部分についても監視はしっかりとやっていきますが、まあ、建屋に戻っている可能性が強いという風に考えてます。以上です。

(武黒フェロー) そうだろうと私もこの水位の変化から見ると想定します。ただ、水みちができていたことも事実なんで、その点はより周りを固めておいて、不測の事態が生じないようにしておくっていうことが必要だと思います。
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ここでの吉田所長の発言を見ると、24時間で5cm上昇しているということは、今まであふれていたものが全て2号のタービン建屋の水位上昇になったのではないか、というように解釈しているということです。このペースで行くと、O.P.4000に達するまでに1ヶ月程度しか猶予がないので、早く集中RWに送る準備をしようと言っています。

結局、4月19日から集中RWに移送を開始します。それまでにも一度2号機タービン建屋の水を2号機の復水器に660トン入れています。

2012年に私が「昨年3/27のトレンチなどの水位検証により判明した衝撃の事実!」でまとめた2号機の立て坑の水位データがあるのでそれを再掲します。

0105-22
(2012年 「昨年3/27のトレンチなどの水位検証により判明した衝撃の事実!」より)

このグラフで、棒グラフの有効注水量というのは、1,2号機の注水量から蒸発したと思われる量をザックリ引いて出した量になります。トレンチの折れ線グラフで立て坑水位を見ていくと、明らかに止水が終わった4月6日以降は水位が上昇し始めます。細かい計算は2012年の記事を読んでいただきたいので今回は示しませんが、後に発表されたように、1,2号機の建屋がつながっていて、その面積が8000トンであるという考えに立つと、この水位の変動はきれいに計算が合うことがわかります。

そして、このグラフから読み取れるもう一つの重要な情報は、4月2日からではなく、3月27日から2号のトレンチ立て坑の水位はほとんど変化していないということなのです。つまり、4月2日以前も何らかの形で注水された水がどこかへ広がって行っていたということを意味します。

これについては、単純に3月27日から海に漏れていたと断定するのは早計だと思いますので、次回以降このデータを含めていつから海に漏れていたのか、検証していきたいと思います。

なお、これまでは時系列を追って書いてきましたが、これからは全体的なまとめになるため、時間をかけてじっくりと書きたいと思います。そのため、毎週末にという形にはできないかもしれません。予めご了承ください。


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3.11では、停電・断水のため、一晩避難所で過ごし、震災後の情報収集をきっかけにブログを始めました。
これまで約4年間、原発事故関係のニュースを中心に独自の視点で発信してきました。その中でわかったことは情報の受け手も出し手も意識改革が必要だということです。従って、このブログの大きなテーマは情報の扱い方です。原発事故は一つのツールに過ぎません。

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