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地下水バイパスの実施にあたっての運用目標とその問題点

 
今回は、4/8に書いた「地下水バイパスで汲み上げた地下水は5月にも海へ放出へ」の続きになります。

福島県漁連の了承が得られたため、東京電力は4/9から地下水バイパスの試験的な汲み上げを開始しました。
4/9には福島県主催の「平成26年度第1回 福島県原子力発電所の廃炉に関する安全監視協議会」が開催され、そこで地下水バイパスについての詳しい説明資料がありました。

4/11の記者会見の模様もあわせて私が理解したことを解説します。


地下水バイパスで汲み上げた地下水は5月にも海へ放出へ」でも書きましたが、4/8までに公表されていた情報では、地下水バイパスの具体的な運用があまり明確になっていませんでした。

そのあたりが今週どこまで開示され、明らかになるかが焦点だったわけですが、4/9に東京電力のHPに掲載された地下水バイパスの資料をよく読んでみると、だいたいわかってきました。4/8に報道配付資料として開示された資料はあまりにも情報が少なく、どんな運用をするのか全くわからなかったのですが、4/9の地下水バイパスの資料は細かい情報まで載せられています。

今回は、この資料に沿って概略を見ていきます。

1.地下水バイパスの運用の考え方

地下水バイパスとは何か?という話はここでは省略させていただきます。読みたい方は2013年1月に書いた「放射能汚染水情報アップデート(4) 地下水バイパスの現状」や2013年6月に書いた「地下水バイパスで汲み上げた地下水はいったいどれだけ汚染されているの?」などをご覧下さい。

まず地下水バイパスの位置の確認です。地下水バイパスは、地下水の流れが西(陸側)から東(海側)に流れているので、建屋の上流側(陸側)で地下水を汲み上げて建屋に流れ込む地下水の量を減らそう、という考えで始まったものです。従って、建屋よりも陸側に合計12本の揚水井が掘られています。このあたりはO.P.35mと建屋がある部分(O.P.10m)よりもかなり高くなっています。

1日約400トン流れ込んでいる地下水を地下水バイパスを運用することによって約100トン減らすことができると言われています。

0412-1
(4/9 東電HP「地下水バイパスについて」 より)

上の図では上が海(東)になるのですが、地下水は地図上では下から上に流れていきます。黄色の番号で示された青いが12本の揚水井の位置を示します。そこから出ている黄色いラインで一時貯留タンクに送られて、分析後に基準値以下であれば排水路を通って海に放出する予定です。

12本の揚水井で汲み上げられた地下水は、No.1~4(A系統)、No.5~10(B系統)、No.11~12(C系統)の3組に分けられ、それぞれの系統で揚水受タンクに溜めたあと、一時貯留タンクに送られます。一時貯留タンクは3タンクが3セットで合計9つのタンクから構成されています。

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(4/9 東電HP「地下水バイパスについて」 より)

9つのタンクは、それぞれが1000トン入る大きなタンクです。これらをGr1-1~Gr1-3のGr1、Gr2-1~Gr2-3のGr2、Gr3-1~Gr3-3のGr3の3つにわけて運用する予定になっています。

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(4/9 東電HP「地下水バイパスについて」 より)

昨年試験的に汲み上げた地下水がすでにGr1-1(240トン)、Gr2-1(390トン)、Gr3-1(480トン)にたまっていてそれぞれ分析済なのですが、今回の地下水バイパス運用決定を受けて新たに水を汲み上げるため、昨年に汲み上げた地下水はGr3-1にすべて移送しました。その移送手順の詳細は省略しますが、興味のある方は地下水バイパスの資料に記載がありますので読んでみて下さい。

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(4/9 東電HP「地下水バイパスについて」 より)

しかしながら、移送するといっても、どうしてもタンクの底部には160トンは水が残る仕組みになっており、その上にGr1-1に新しい地下水を溜めていく形になります。下の図でも、Gr2-1には160トン(=160m3)水が残っていますが、これはそういう理由からです。

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(4/9 東電HP「地下水バイパスについて」 より)

数日経って試験的に汲み上げた水がGr1-1にたまったら(本来ならばGr1-2やGr1-3にも貯めるのだとおもいますが、今回はGr1-1だけのようです)、分析を行います。その結果が出て、あとで説明する運用目標以下であればGr1-1の水を放水することになります。そして分析期間中は揚水井から汲み上げた水はGr2-1~Gr2-3のGr2に貯留していくことになります。

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(4/9 東電HP「地下水バイパスについて」 より)

今回は、昨年分析した地下水をGr3-1に貯めているため、今年の4月に汲み上げて分析したGr1-1の地下水を放水したらその後は昨年に分析が完了した地下水をGr3-1から放水します。その時には、Gr2-1~Gr2-3に貯めた地下水を分析し、今度はGr1-1~Gr1-3に地下水を貯めるという形を取ります。その後は、Gr2-1~Gr2-3を放水し、Gr1-1~Gr1-3を分析し、Gr3-1~Gr3-3に地下水を貯めていきます。

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(4/9 東電HP「地下水バイパスについて」 より)

そうやって、Gr1からGr3までを順番に運用していこうという計画になっています。以上が地下水バイパスで9つのタンクをどのように使っていくか、という計画の概略です。


2.運用目標とその運用の方針

では、最終的に福島県漁連に了承された運用目標とはどのようなものだったのでしょうか。

0412-8
(4/9 東電HP「地下水バイパスについて」 より)

上の表に記載があるように、Cs-134:1Bq/L未満、Cs-137:1Bq/L未満、全β:5Bq/L未満、H-3:1500Bq/L未満という数値を4/4の漁連への回答書でも記載しています。

この基準で一つだけよく理解できないのは、排水の前に一時貯留タンクのGrごとにサンプリングを行い運用目標を満たしているかどうかを確認することになっているのですが、その際に「運用目標以上となった場合は、稼動を一旦停止し、運用目標未満(全ベータは1ベクレル/リットル未満)になるよう対策した上で、再開いたします。」という記載がある点です。

これは、CsとH-3については運用目標未満になるように希釈するなどしてから排水するということをいいたいのだと思いますが、全βについてだけは1Bq/Lと運用目標の5Bq/Lよりも大きく低い数値を出している点です。もちろん低くするに越したことはないのですが、どうして全βだけは5Bq/Lではなく1Bq/Lと厳しくしているのかがよくわかりません。

また、この記載に関してはどのような「対策」を具体的に考えているのか?という誰もが思う疑問があったのですが、それについては4/11の記者会見(まとめのtogetter参照のこと)において、おしどりマコさんが東電から引き出した回答は驚くべきものでした。

簡単に言うと、4/4の福島県漁連向けの回答書には「運用目標を超えた場合には運用目標未満になるように対策する」と記載したが、現在は具体的な対策を何か考えているわけではなく、運用目標を超えた水は排出しないという意思表示であるということだったのです。

おそらく、東電の目論見としては、揚水井1本1本の数値ではなく、あくまで12本を合わせて一時貯留タンクにためた地下水についてサンプリングして測定するため、運用目標を超えることはまずないであろうという読みがあるのだと思います。その根拠としては、昨年すでに汲み上げて現在はGr3-1に貯めてある地下水の分析値です。

Gr1にためてあった240トンの地下水の分析値は下記の表にまとまっています。

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(4/9 東電HP「地下水バイパスについて」 より)

Gr2にためてあった390トンの地下水の分析値は下記の表にまとまっています。ここではSr-90の測定も行っています。Sr-90は0.026Bq/Lでしたから、全βの半分あるいはそれ以上がSr-90であることを考慮すると、全βの濃度も0.1Bq/L未満なのかもしれません。

0412-10
(4/9 東電HP「地下水バイパスについて」 より)

Gr3にためてあった480トンの地下水の分析値は下記の表にまとまっています。ここでもSr-90は0.019Bq/Lとかなり低いです。

0412-11
(4/9 東電HP「地下水バイパスについて」 より)

これらが現在ではGr3-1に合わせて790トン保管されています。ただし、先ほども記載したように、タンクの構造上どうしてもタンク底部の水は空にできないため、160トンはGr1-1およびGr2-1にたまったままです。ついでに書いておくと、上部は1000トンまでしか貯められないため、実質的な運用はタンク1基あたり840トンになります。Grごとのタンク3基だと約2500トンを貯めることができます。

0412-13
(4/9 東電HP「地下水バイパスについて」 より)


これらの分析結果を見ると、Cs-134およびCs-137については、0.02Bq/Lとか0.04Bq/L程度なので、運用目標の1Bq/Lを上回ることはなさそうです。

全βについては、どれもNDですが、その時の検出限界値は詳細分析値でも5.3Bq/Lとか6.4Bq/Lです。福島県漁連に対しては全βは5Bq/L未満と回答してしまったので、検出限界値が6.4Bq/LでNDだったからといって、5Bq/L未満であるという保証にはならないため、現在の検出限界値では5Bq/Lを保証できないと思います。もっと検出限界値を下げるような測定を行わないといけないのですが、そういう対策を取るつもりがあるのでしょうか?

0412-12
(4/9 東電HP「地下水バイパスについて」 より)

この管理基準を見ると、10日に1回全βは検出限界値を1Bq/Lで測定してNDであることを確認するようです。この表には複数の基準が書いてあるため、相互の関係が不明瞭なのですが、揚水井は週に一度検出限界値を5Bq/Lあるいは15Bq/Lで測定しているが、一時貯留タンクについては10日に一度検出限界値を1Bq/Lで測定してNDであることを確認するという運用をするようです。また、ここには明記されていないのですが、放出前に行う一時貯留タンクの全βの分析は検出限界値を1Bq/L以下で設定しているのだと思われます。

だとすると、福島県漁連に対して回答した中での、運用目標を上回った場合の対策として、全βを1Bq/L未満にしてというのも理解できるような気がします。ただ、そうであるならば運用目標も全βを1Bq/L未満とするべきだったと思います。基準になる数値が複数あると混乱するからです。

H-3(トリチウム)についてですが、昨年度に貯めた水の分析結果では最高でも342Bq/Lだったのですが、現在の揚水井は毎週結果が公表されており、No.12については最近上昇しています。4/10のデータでは1300Bq/Lと、運用目標の1500Bq/Lに迫る数値になっています。

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(4/10 東京電力HP 報道発表資料 より)

4/11の記者会見でもこの事が取り上げられましたが、東京電力の考え方は揚水井一つ一つのデータで判断するのではなく、汲み上げて一時貯留タンクに貯めた地下水の分析結果が運用目標未満であることを確認するということでした。つまり、仮にNo.12のH-3が1500Bq/Lを超えることがあっても、12本の揚水井を混ぜた一時貯留タンクでは運用目標未満であれば海に放出したいという考えのようです。

この事に関連する報道が福島民友福島民報に出ています。これに対して福島県は、個別の揚水井で運用目標を超えた場合の対応について事前に明確にすべきと東京電力に対して求めたそうです(リンク先はNHKのWeb魚拓)。


地下水バイパスの具体的な運用の仕方はだいぶクリアになってきましたが、福島県漁連に対して「対策をした上で再開する」と回答した以上、運用開始前に運用目標を超えた場合の対策案を示さないということは問題であると思います。それさえ明示しておけば、よけいな疑問を惹起することはないのですが、このようないい加減な対応を取ることによってさらに信頼を失うということを東京電力が理解できていないのは残念です。

最後に、もし運用目標を上回った場合にはどうすべきなのか考えてみました。今回示された一時貯留タンクの仕組みから考えると次の方法しかないと思います。

まず、一時貯留タンクのサンプリングデータ以外にも毎週1回個別の揚水井のデータは取得しているため、個別のデータが運用目標を大きく上回ったらその揚水井(あるいはその揚水井を含むグループ)からは一時貯留タンクに回さないという方法を取って事前に対応することが可能です。

それでも、ある揚水井のH-3濃度や全βの濃度が急に上昇して、全体の一時貯留タンクの濃度が運用目標を上回ってしまった場合は、Gr1からGr3までの3グループで運用していますから、例えばGr1の分析結果が出たときにはGr2は貯留中ですが、Gr3は排水して空になっているはずです。そこで、Gr3にきれいな水を入れてGr3とGr1の水を循環させて混ぜることによって半分以下の濃度にする事はできます。いくらなんでも全体として運用目標の2倍以上になることはないでしょうから、大抵の場合はそれで対応可能なはずです。

私は当初、どうして何かあったときの予備タンクを設けないのだろうか、と思っていましたが、おそらく3グループでの運用をすることで上記のようなことがあってもなんとか対応できるという読みが東京電力にもあったはずです。ただ、そういうことを発表しないでごまかそうとするから問題になるのです。

今回、福島県が個別の揚水井で運用目標を超えた場合の対応策を明確にするように要求しているようですので、早く対応策を明確にした方がいいと思います。これまでの汚染水対策では、トラブルがあったときの対応策をしっかり考えずにその場しのぎで対応してきたため、予期せぬトラブルが発生した際にことごとく失敗してきたということを東京電力もそろそろ認識して欲しいと思います。

この記事を書き上げたあとにおしどりマコさんがデイリーノーボーダーに書いた記事を見つけましたのでそれもご紹介しておきます。私が今回省略した、地下水バイパスの概念図や、地下水バイパス揚水井のさらに上流側にあるタンク群でおこった汚染水漏れの話も掲載されています。


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3.11では、停電・断水のため、一晩避難所で過ごし、震災後の情報収集をきっかけにブログを始めました。
これまで約4年間、原発事故関係のニュースを中心に独自の視点で発信してきました。その中でわかったことは情報の受け手も出し手も意識改革が必要だということです。従って、このブログの大きなテーマは情報の扱い方です。原発事故は一つのツールに過ぎません。

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