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6/6の第23回監視評価検討会 凍土壁をめぐる議論はもうヤマを超えたか? 

 
前回6/1に書いた「陸側の凍土遮水壁は6月2日に着工へ!第22回監視評価検討会はあっさりと決着」において規制委員会も凍土壁の6月の着工は妨げないということが決まったことをお伝えしました。

その後に行われた6/6の第23回監視評価検討会では地盤沈下以外の論点について議論が行われましたので、その概要についてお伝えします。


これまでの規制委員会の特定原子力施設監視評価検討会における凍土壁に関する議論については「規制委の監視評価検討会(4/18)での規制委とエネ庁のバトルは必見!」と「5/2 第21回監視評価検討会のトピックス紹介(凍土壁をめぐる議論)」と「陸側の凍土遮水壁は6月2日に着工へ!第22回監視評価検討会はあっさりと決着」でお伝えしてきました。

陸側の凍土遮水壁は6月2日に着工へ!第22回監視評価検討会はあっさりと決着」でもお伝えしましたが、この5/26の第22回監視評価検討会後に山側の凍土壁については6/2に着工しました。

具体的には、下の図に示してあるように、全ブロックを13ブロック(BLK)にわけ、そのうち海側の10BLK~13BLKを除く1~9BLKについて工事に取りかかったということになります。海側についても準備だけは始めているようです。
0608-6
(資料1 凍土方式遮水壁の設置工事における地下埋設物等への考慮について(1/4) 5ページ より)

具体的な作業のイメージは下の図に示されたような段階を追って進んでいきます。ただ、実際にはこのような単純な工事であるわけではなく、トレンチやダクトが多数出入りしています。

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(資料1 凍土方式遮水壁の設置工事における地下埋設物等への考慮について(1/4) 8ページ より)

1-4号の建屋には、さまざまな埋設物があり、それをいかにうまくよけながら凍土壁を作っていくか、という課題があります。凍土壁が選択された理由の一つがこの埋設物への対応が容易であるということなのですが、一つ上の図にあるように、全部で170ヶ所も埋設物への対応をしないといけないのです。

6/6の第23回監視評価検討会では、凍土壁工法の売りの一つである、トレンチや配管などの埋設物があっても対応ができるのかどうか、という点をメインに議論がなされました。

埋設物の種類に応じて施工方法が単列施工、複列施工、貫通施工の3種類に分類されます。

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(資料1 凍土方式遮水壁の設置工事における地下埋設物等への考慮について(1/4) 14ページ より)

埋設物がある場合、その埋設物の幅が狭ければ(小規模埋設物)1m間隔に設置する凍結管の間に埋設物がくるように凍結管を配置(単列施工)すれば問題ないのですが、下図のように埋設物の幅が広い場合には、凍結管を複数(この図の例では3本)縦に並べること(複列施工)によって、埋設物を包み込むようにして凍結させることができるという考え方が示されています。

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(資料1 凍土方式遮水壁の設置工事における地下埋設物等への考慮について(1/4) 11ページ より)

しかしながら、トレンチのような大きな埋設物の場合、複列施工を行っても凍土壁が壁として繋ぐことができません。そこでそのような構造物がある場合には凍結管がその構造物を貫通するような貫通施工を行うという考え方です。

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(資料1 凍土方式遮水壁の設置工事における地下埋設物等への考慮について(1/4) 12ページ より)

トレンチなどには汚染水あるいは地下水がたまっている可能性があり、それを漏洩させないように凍土壁を作っていく必要があるため、凍結管を貫通させることにより下の図の左側のようにトレンチから水が上下に漏れてしまっては意味がありません。そのための工夫が必要になるわけです。

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(資料1 凍土方式遮水壁の設置工事における地下埋設物等への考慮について(1/4)  16ページ より)

そこで、その場所の地下水位によって、貫通部の止水対策(マルチステップ工法)を行うかどうかを分けて施工する予定になっています。地下水位が低い場合は、上部は単純に貫通させるだけとして下部は止水対策を行います。一方、地下水位が高い場合には上部も下部も止水対策(マルチステップ工法)を行うということで考えているということです。

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(資料1 凍土方式遮水壁の設置工事における地下埋設物等への考慮について(1/4)  13ページ より)

逆に、K排水路(構内排水路)にも貫通施工する必要があるのですが、K排水路を凍結してしまっては意味がないので、そういうところには凍結管に断熱材を設置し、貫通する埋設物の内部が凍結しないように考慮するという計画になっています。
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(資料1 凍土方式遮水壁の設置工事における地下埋設物等への考慮について(2/4)  32ページ より)

これらの計画に対して、かなり多くの技術的な質問が規制庁及び専門家からなされました。時間にしたら1時間近くがこの質疑に費やされました。ただ、地盤沈下のように大きくもめるという話はなかったように思いましたので、詳細は興味のある方にYouTubeの動画(43分以降)を見ていただくこととして、ここでは省略させていただきます。

次に、YouTube動画でいうと1:45:00頃からですが、資料2の水位管理についての説明と議論がありました。

ここでは、5/2の第21回検討会で宿題となっていた、建屋内の水位をどうやって絶対値でコントロールするのか、という計画について説明がありました。

まず、3年前の震災後に新たに原発構内に設置した基準点を用います。
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(資料2 凍土方式遮水壁の設置に伴う地下水および建屋内汚染水の水位管理について  54ページ より)

これらの基準点との位置関係を測量することにより、建屋1階床面及びサブドレンピット上端のエレベーション(O.P.)を計算します。
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(資料2 凍土方式遮水壁の設置に伴う地下水および建屋内汚染水の水位管理について  53ページ より)

そして、1階床面と水位計検出器の高さの差を出すことによって汚染水の水位を計算することができるというやりかたです。
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(資料2 凍土方式遮水壁の設置に伴う地下水および建屋内汚染水の水位管理について  55ページ より)

これについてはいろいろな指摘がありましたが、現在の問題点として、放射線によって計器のドリフト(測定データが徐々にずれてくる)という問題があり、放射線に耐性のある機器を使わないといけないということがわかってきているため、どうしても使える機器は限られてくるということが質疑の中で浮かび上がってきました。現在は校正のために月に2回液面計による補正を行っていますが、これは作業員に被曝を強いるものであるため、今後は水位計の数も現在の12ヶ所から71ヶ所へと大幅に増えるため、そのような負担の少ない計器に変更していく予定ということでした。
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(資料2 凍土方式遮水壁の設置に伴う地下水および建屋内汚染水の水位管理について  52ページ より)

最後に、もう予定終了時間の12時30分をオーバーしてしまったので駆け足で資料3の「凍土方式遮水壁に係る地下水等の監視及び緊急時の対応について」についての質疑があり、その後でALPSをめぐる問題点について少しだけ資料4「濃縮塩水処理の対応状況(多核種除去設備等の状況)」について規制庁からコメントがありました。

本当は時間があればALPSの議論も行いたかったようなのですが、埋設物の処理のところで時間を取り過ぎてしまったため、ALPSについてはほとんど議論が行われなかったようで残念です。資料をよくみたら、ここには増設ALPSと高性能ALPSの設置スケジュールが載っていました。

0608-13
(資料4 「濃縮塩水処理の対応状況(多核種除去設備等の状況)」 18ページより)

これを見ると、現在のALPSとほとんど同様(若干仕様を変更するようですが)の増設ALPS(これは東京電力が行います)と、国がお金を出して経産省の事業として実施する高性能ALPS(こちらは東電、東芝、日立GEで行います)がどちらも今年の9月から10月にかけて処理を開始する予定になっています。(なお高性能ALPSについてはこちら(「高性能多核種除去設備(ALPS)の開発計画 -第1回タスクフォースより-」)をご参照下さい。)

ただ、現在のALPSが全くまともに稼働できていない状況でさらに新たなALPSを二つも稼働させたら、この秋以降はトラブル続きでさらに収拾が付かなくなるのではないか?という危惧を私は感じました。


次回の検討会は、更田委員によると、これまでは凍土壁について集中して議論してきたが、次回以降は海側のトレンチとタービン建屋の縁切りの話とか、もっと他の議論もしていきたいということでしたので、今日の議論も含めて、凍土壁をめぐる議論はヤマを越した、という印象を持ちました。

今回の検討会に関しては以上で終わりにしますが、今後も凍土壁をめぐる議論や監視評価検討会についてはできるだけフォローしていきたいと思います。

 
 
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これまで約4年間、原発事故関係のニュースを中心に独自の視点で発信してきました。その中でわかったことは情報の受け手も出し手も意識改革が必要だということです。従って、このブログの大きなテーマは情報の扱い方です。原発事故は一つのツールに過ぎません。

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