海水配管トレンチの止水、方針確定せず。9月中旬に再度判断へ。
前回、「海水配管トレンチとタービン建屋の縁切りは計画からもうすぐ1年 現状は?」で第25回検討会の話をまとめましたが、その時にお盆明けにもう一度、と言っていた第26回検討会が8/19に行われました。
東京電力は止水のためのステップ2として間詰め材の充填を行いたいと提案しましたが、それでいいという決定はでず、間詰め材の準備をしながら躯体外側の凍結管設置や追加パッカーの設置検討も行い、間詰め材の充填準備が完了するであろう9月中旬頃に再度この監視評価検討会を開催してそこで判断するということになりました。
第26回検討会の内容をまとめます。
1. 氷とドライアイスの投入では凍らず
前回の第25回監視評価検討会においては、なぜ温度が下がらないのかということに対して、氷やドライアイスを投入して温度を下げることで氷の壁ができることを期待してその効果を見ることになりました。お盆明けにはその効果がわかるだろうとして、今回の時期に第26回監視評価検討会を行うことは予定されていました。
しかしながら、7/24から氷の試験投入が開始されたものの、すでに8月上旬の段階で東京電力の記者会見や各種報道から、氷を入れ始めたもののあまりいい効果が得られていないということがわかっていました。下の資料には何を行ったかの実績が記載されていますが、これといった大きな成果は出ていません。もちろん、東電は全体で92%は凍ったとしている(資料1の19ページ)ので、少しずつ凍っているのは確かなのでしょうが、温度を下げることによって完全に凍らせるという当初の予定は達成できませんでした。

(8/19 第26回監視評価検討会 資料1 7ページより)
8月中旬からはドライアイスの投入も始めましたが、ドライアイスが浮き上がってしまったり、非常に狭い場所での作業と細い管から氷を投入する作業現場のため、思うように作業がはかどりませんでした。8/18までに累計で約410トンの氷と5トンのドライアイスを投入しました。氷の投入量は最大で1日26トンということです。現在は24時間体制で交代で行っているということでした。

(8/19 第26回監視評価検討会 資料1 8ページより)
なぜ凍らなかったかというと、その理由がこのあとの図に示されています。前回の検討会においてもいったん温度が下がったものがまた上がったりする現象が見られましたので、今回は測温管を増やすことによりより精密に温度測定を行いました。下のグラフは多くの観測点のデータを1枚のグラフに押し込んでいるため、非常にわかりにくくなっていますが、ここでは8/15まで温度が下降していたいくつかの観測点のデータが8/16以降に温度が上昇に転じていることに注目してください。

(8/19 第26回監視評価検討会 資料1 12ページより)
上の図でS2-3、S2-4、S6-4、S6-5という測温管がどこにあるかを下図に示します。これらの測温管のデータを、上の図のように8月だけのデータだけではなく、7月以前からのデータも含めて示したものが下の図ともう一つ下の資料13ページのグラフになります。下のグラフで黒い線が2号トレンチ立坑の水位です。これはポンプでタービン建屋の汚染水を定期的に汲み上げて3号タービン建屋或いはHTI建屋に移送しているためにこのようなギザギザしたグラフになるのです。

(8/19 第26回監視評価検討会 資料1 より作図)
このようにして詳細に調べた結果、驚くべき事がわかりました。それは、汚染水の水位が、トレンチ内にケーブルトレイが設置されているO.P.+2.7m~+2.8mよりも低下すると、それまでケーブルトレイを流れていた水が今度はトレンチの底部(O.P.+0.5m付近)を流れ出すため、底部の温度が上昇するということです。S2-3、S2-4、S6-4、S6-5の4つのグラフの変化を元の資料で拡大してよく見ていただければわかると思います。
水位がO.P.2800前後を超えると水の流れが上部のケーブルトレイから起こるために底部の温度が下がり、ポンプで水を移送して水位がO.P.2800よりも下がってくると今度は水の流れが底部(S2-4付近)に移行するため、底部の温度が上がるという現象が何度もくり返されているのがわかります。前回の検討会において、一度凍ったはずの部分がまた温度が上がったというのはこの現象をとらえていたのだということがわかりました。
なお、S-2とS-6をよく見比べると、S-2の温度変化はS-6と若干パターンが違いますが、それはS-2とS-6のおかれている環境の違いによるものでしょう。S-2はO.P.+2800を超える日が続かない限りほとんど凍っていませんからそれも影響しているかもしれません。ここではそれ以上細かくは追求しないこととします。

(8/19 第26回監視評価検討会 資料1 13ページより)
さて、これらの結果をレビューして、東電は下記のようにまとめています。
凍結自体は全体の92%まで進んだ。しかしながら水位によって水の流れが変わることがわかり、通水断面積が小さくなった結果として流速は速くなっていることも判明した。さらに凍結をさせるためには水流の抑制が必要であるが、そのためには氷の投入は継続しつつ、ステップ2の間詰め充填の準備に入りたい。

(8/19 第26回監視評価検討会 資料1 19ページより)
そして、東電の説明はステップ2としての間詰め充填について移ります。トレンチの部位によって、例えばケーブルトレイがあるためにパッカーを充填できない場所と、配管の近くとでは間詰め充填を行うために要求される性能が異なっているからです。

(8/19 第26回監視評価検討会 資料1 20ページより)
下の表では、間詰め充填すなわちグラウトにはいろんな材料があることを示しています。2011年4月にスクリーンからの流出を止めた時には水ガラスが有効でしたが、それ以外にもいろいろな材料があることがわかります。実際に投入できる場所は限られているため、それらの条件も含めてどの材料がいいのかについてはまだ検討中であるということでした。

(8/19 第26回監視評価検討会 資料1 22ページより)
つまり、これからどのような材料がいいか検討を行っていくということなのですが、東電としては下記のようなスケジュールでステップ2に入りたいという提案をしました。

(8/19 第26回監視評価検討会 資料1 21ページより)
つまり、9月の中旬には間詰め充填を開始できるようにしたいと計画です。
2. 検討会の主な議論
この東電の説明を受けて、更田委員や規制庁ならびに専門家の委員からいろいろな質問・疑問が提示されました。
最初に更田委員から全体的な質疑がありました。一番問題になったのは、もしこの間詰め充填を行ってもうまく凍らなかった場合、この間詰め充填が後の方策にとって足かせになるのではないか?という懸念でした。
まず、「前回の検討会で計画にあった躯体外側への凍結管の設置はどうなっているのか?」という質問に対して、これは現場が狭いために氷の投入を優先しているため遅れているという東電の回答でした。
次に、「凍結という方針自体に変更はないのか?間詰め材の投入はあくまで凍結とセットであるという認識であるが、もし凍結の方針を変更するのであれば、間詰め材は別の方針に対して足かせになるのではないか?という懸念がある」という質問もありました。これに対して東電は凍結の方針は変更がない、という回答でした。
つづいて山本審議官からは、「仮に凍ったとしても、全て充填剤で壁を作るのではないのであれば、その後にトレンチの地下水を抜くと、氷と充填剤の壁でタービン建屋からの水圧を受けるため、強度も要求されるが、大丈夫なのか?」という疑問が提示されました。また、「充填剤を投入すると水和熱が発生するため、その熱によってせっかくできた氷の壁がとけてしまう可能性があるのではないのか?だから凍結をいったん中断して全て間詰め材で壁を作った方がまだいいのではないか?」という意見のようでした。
しかし、東電の回答としては凍結工法は続けていきたい。間詰め材は水流の抑制のために使うもので、今まだ凍っていない部分の水流を抑制することができればきっと凍るはずという考え方でした。
更田委員からは、「トレンチを汚染水という液体の状態で保有しておくことはくリスクが高いので、なんとしてもこの状態を解消したい。最悪の策としては汚染水をトレンチから抜かないままで充填してしまうことで、それによって汚染水が外部に流出することは防げるが、一方で地下に放射性物質をずっと閉じ込めておくことになる。それよりもましな選択としては、トレンチの下部で水を抜きながら充填剤を入れていくというアイデアもある。しかしできればトレンチの汚染水を抜いてしまい、トレンチをコンクリートなどで埋めてしまいたいということで今の凍結工法を実施している。
ただ、いつまでも凍結工法の検討をやっているわけにもいかず、いつかは判断しないといけないため、場合によっては最悪の選択をしないといけないかもしれない。」という考え方が示されました。
規制庁の小坂統括は「現場の作業環境が非常に狭くて足場の確保も十分な状況でないからステップ2の作業を同時に行うことは無理だろう」、という指摘をしました。「現在でも氷の投入作業と躯体外側の凍結管の工事ができていないため、これに加えてさらにステップ2の間詰め材投入の準備をするというのは無理なので、氷の投入を24時間体制で続けるのをやめる方がいいのではないか?」という指摘です。これを受けて更田委員も「急がば回れ」で一度氷の投入を中断した方が結果的にはうまくいくのではないか?という指摘をしました。ただ、最終的には現場の状況を見て決めて欲しいという要望でした。
会津大学の角山前学長からは、「戦略的にもう一度冷静に考えないと泥縄式にズルズル行ってしまう。発想を変えないといけないのではないかと思った。原子力屋は枯れた技術ではあるが、落ち度がないように細かい点を事前に試験をしておいて取りかかるもの。土木屋の発想でだめならそれで加えていくというようなやり方は福島のプラントでは困る。間詰め材は典型的な泥縄式のアプローチ。別働隊がクールに頭を冷やして考えるべき。」という趣旨の厳しい発言をされました。
それに対して東電の姉川本部長は、「泥縄に見えるのは確かだが、繰り返しになるが、9割ほどは目的は達成しているのでこのまま続けたい。」と回答しました。
福島大学の渡辺先生は、「凍土壁でも同じように凍らない事態が起こらないのか気になる。」と指摘しました。これに対して更田委員は、「トレンチの止水と水抜きができなければ海側の凍土壁はできないので、まずはこのトレンチの止水に集中する。」と回答しました。
これらの議論は概して東電の進め方に対して懐疑的なものでしたが、一連の議論を受けて、まずは今の東電の方針で間詰め材の選定などを進めて、スケジュールから見て9月の上旬から中旬くらいに間詰め材の投入の前にもう一度検討会を開いてGoサインを出すかどうか確認をしたいというのが更田委員のまとめでした。
これらの議論の詳細については、公式YouTube動画とコアジサシさんのtogetterまとめを参考にして下さい。
3. 今後はどうなるのか?個人的感想
今回の議論を見ていて、氷の壁が完成してトレンチの汚染水を除去し終わるのはまだまだ時間がかかりそうな気がしました。9月中旬に開かれる次回の検討会では恐らく間詰め剤の充填にゴーサインが出ると思います。しかし、それでうまく凍結できるという保証はなく、またうまくいきませんでした、という話になって次の策を、となりそうな気がします。
今回は専門家の角山先生のコメントが印象的でした。
「戦略的にもう一度冷静に考えないと泥縄式にズルズル行ってしまう。発想を変えないといけないのではないかと思った。原子力屋は枯れた技術ではあるが、落ち度がないように細かい点を事前に試験をしておいて取りかかるもの。土木屋の発想でだめならそれで加えていくというようなやり方は福島のプラントでは困る。間詰め材は典型的な泥縄式のアプローチ。別働隊がクールに頭を冷やして考えるべき。」
泥縄式のアプローチをするのではなく戦略的に実行するべき、というものです。2011年以来、汚染水対策では戦略的アプローチが決定的に欠けていると思います。それに加えて東電の考え方の根本にある「後ろ向きの汚染水対策に余計なお金をかけたくない」という考え方があるため、対策は全て小出しであり、結果として後手を引いています。
東京電力の記者会見や検討会の議論を見ていると、今のままでは今後も「予想外」の現象が何度も起きてしまい、うまくいきませんでした、という話がくり返されるような気がしています。凍土壁についても、確かに水を直接凍らせるトレンチの止水とは違うのですが、場合によっては地下水の流速が速い場所もあるはずで、そういう場所で壁に穴が空いた状態になるのではないか、という懸念もあります。
今後もトレンチの止水の問題、凍土壁の問題については検討会の話を中心にフォローしていきますので、ぜひブログが更新されたときには見に来ていただければと思います。
前回の第25回監視評価検討会においては、なぜ温度が下がらないのかということに対して、氷やドライアイスを投入して温度を下げることで氷の壁ができることを期待してその効果を見ることになりました。お盆明けにはその効果がわかるだろうとして、今回の時期に第26回監視評価検討会を行うことは予定されていました。
しかしながら、7/24から氷の試験投入が開始されたものの、すでに8月上旬の段階で東京電力の記者会見や各種報道から、氷を入れ始めたもののあまりいい効果が得られていないということがわかっていました。下の資料には何を行ったかの実績が記載されていますが、これといった大きな成果は出ていません。もちろん、東電は全体で92%は凍ったとしている(資料1の19ページ)ので、少しずつ凍っているのは確かなのでしょうが、温度を下げることによって完全に凍らせるという当初の予定は達成できませんでした。

(8/19 第26回監視評価検討会 資料1 7ページより)
8月中旬からはドライアイスの投入も始めましたが、ドライアイスが浮き上がってしまったり、非常に狭い場所での作業と細い管から氷を投入する作業現場のため、思うように作業がはかどりませんでした。8/18までに累計で約410トンの氷と5トンのドライアイスを投入しました。氷の投入量は最大で1日26トンということです。現在は24時間体制で交代で行っているということでした。

(8/19 第26回監視評価検討会 資料1 8ページより)
なぜ凍らなかったかというと、その理由がこのあとの図に示されています。前回の検討会においてもいったん温度が下がったものがまた上がったりする現象が見られましたので、今回は測温管を増やすことによりより精密に温度測定を行いました。下のグラフは多くの観測点のデータを1枚のグラフに押し込んでいるため、非常にわかりにくくなっていますが、ここでは8/15まで温度が下降していたいくつかの観測点のデータが8/16以降に温度が上昇に転じていることに注目してください。

(8/19 第26回監視評価検討会 資料1 12ページより)
上の図でS2-3、S2-4、S6-4、S6-5という測温管がどこにあるかを下図に示します。これらの測温管のデータを、上の図のように8月だけのデータだけではなく、7月以前からのデータも含めて示したものが下の図ともう一つ下の資料13ページのグラフになります。下のグラフで黒い線が2号トレンチ立坑の水位です。これはポンプでタービン建屋の汚染水を定期的に汲み上げて3号タービン建屋或いはHTI建屋に移送しているためにこのようなギザギザしたグラフになるのです。

(8/19 第26回監視評価検討会 資料1 より作図)
このようにして詳細に調べた結果、驚くべき事がわかりました。それは、汚染水の水位が、トレンチ内にケーブルトレイが設置されているO.P.+2.7m~+2.8mよりも低下すると、それまでケーブルトレイを流れていた水が今度はトレンチの底部(O.P.+0.5m付近)を流れ出すため、底部の温度が上昇するということです。S2-3、S2-4、S6-4、S6-5の4つのグラフの変化を元の資料で拡大してよく見ていただければわかると思います。
水位がO.P.2800前後を超えると水の流れが上部のケーブルトレイから起こるために底部の温度が下がり、ポンプで水を移送して水位がO.P.2800よりも下がってくると今度は水の流れが底部(S2-4付近)に移行するため、底部の温度が上がるという現象が何度もくり返されているのがわかります。前回の検討会において、一度凍ったはずの部分がまた温度が上がったというのはこの現象をとらえていたのだということがわかりました。
なお、S-2とS-6をよく見比べると、S-2の温度変化はS-6と若干パターンが違いますが、それはS-2とS-6のおかれている環境の違いによるものでしょう。S-2はO.P.+2800を超える日が続かない限りほとんど凍っていませんからそれも影響しているかもしれません。ここではそれ以上細かくは追求しないこととします。

(8/19 第26回監視評価検討会 資料1 13ページより)
さて、これらの結果をレビューして、東電は下記のようにまとめています。
凍結自体は全体の92%まで進んだ。しかしながら水位によって水の流れが変わることがわかり、通水断面積が小さくなった結果として流速は速くなっていることも判明した。さらに凍結をさせるためには水流の抑制が必要であるが、そのためには氷の投入は継続しつつ、ステップ2の間詰め充填の準備に入りたい。

(8/19 第26回監視評価検討会 資料1 19ページより)
そして、東電の説明はステップ2としての間詰め充填について移ります。トレンチの部位によって、例えばケーブルトレイがあるためにパッカーを充填できない場所と、配管の近くとでは間詰め充填を行うために要求される性能が異なっているからです。

(8/19 第26回監視評価検討会 資料1 20ページより)
下の表では、間詰め充填すなわちグラウトにはいろんな材料があることを示しています。2011年4月にスクリーンからの流出を止めた時には水ガラスが有効でしたが、それ以外にもいろいろな材料があることがわかります。実際に投入できる場所は限られているため、それらの条件も含めてどの材料がいいのかについてはまだ検討中であるということでした。

(8/19 第26回監視評価検討会 資料1 22ページより)
つまり、これからどのような材料がいいか検討を行っていくということなのですが、東電としては下記のようなスケジュールでステップ2に入りたいという提案をしました。

(8/19 第26回監視評価検討会 資料1 21ページより)
つまり、9月の中旬には間詰め充填を開始できるようにしたいと計画です。
2. 検討会の主な議論
この東電の説明を受けて、更田委員や規制庁ならびに専門家の委員からいろいろな質問・疑問が提示されました。
最初に更田委員から全体的な質疑がありました。一番問題になったのは、もしこの間詰め充填を行ってもうまく凍らなかった場合、この間詰め充填が後の方策にとって足かせになるのではないか?という懸念でした。
まず、「前回の検討会で計画にあった躯体外側への凍結管の設置はどうなっているのか?」という質問に対して、これは現場が狭いために氷の投入を優先しているため遅れているという東電の回答でした。
次に、「凍結という方針自体に変更はないのか?間詰め材の投入はあくまで凍結とセットであるという認識であるが、もし凍結の方針を変更するのであれば、間詰め材は別の方針に対して足かせになるのではないか?という懸念がある」という質問もありました。これに対して東電は凍結の方針は変更がない、という回答でした。
つづいて山本審議官からは、「仮に凍ったとしても、全て充填剤で壁を作るのではないのであれば、その後にトレンチの地下水を抜くと、氷と充填剤の壁でタービン建屋からの水圧を受けるため、強度も要求されるが、大丈夫なのか?」という疑問が提示されました。また、「充填剤を投入すると水和熱が発生するため、その熱によってせっかくできた氷の壁がとけてしまう可能性があるのではないのか?だから凍結をいったん中断して全て間詰め材で壁を作った方がまだいいのではないか?」という意見のようでした。
しかし、東電の回答としては凍結工法は続けていきたい。間詰め材は水流の抑制のために使うもので、今まだ凍っていない部分の水流を抑制することができればきっと凍るはずという考え方でした。
更田委員からは、「トレンチを汚染水という液体の状態で保有しておくことはくリスクが高いので、なんとしてもこの状態を解消したい。最悪の策としては汚染水をトレンチから抜かないままで充填してしまうことで、それによって汚染水が外部に流出することは防げるが、一方で地下に放射性物質をずっと閉じ込めておくことになる。それよりもましな選択としては、トレンチの下部で水を抜きながら充填剤を入れていくというアイデアもある。しかしできればトレンチの汚染水を抜いてしまい、トレンチをコンクリートなどで埋めてしまいたいということで今の凍結工法を実施している。
ただ、いつまでも凍結工法の検討をやっているわけにもいかず、いつかは判断しないといけないため、場合によっては最悪の選択をしないといけないかもしれない。」という考え方が示されました。
規制庁の小坂統括は「現場の作業環境が非常に狭くて足場の確保も十分な状況でないからステップ2の作業を同時に行うことは無理だろう」、という指摘をしました。「現在でも氷の投入作業と躯体外側の凍結管の工事ができていないため、これに加えてさらにステップ2の間詰め材投入の準備をするというのは無理なので、氷の投入を24時間体制で続けるのをやめる方がいいのではないか?」という指摘です。これを受けて更田委員も「急がば回れ」で一度氷の投入を中断した方が結果的にはうまくいくのではないか?という指摘をしました。ただ、最終的には現場の状況を見て決めて欲しいという要望でした。
会津大学の角山前学長からは、「戦略的にもう一度冷静に考えないと泥縄式にズルズル行ってしまう。発想を変えないといけないのではないかと思った。原子力屋は枯れた技術ではあるが、落ち度がないように細かい点を事前に試験をしておいて取りかかるもの。土木屋の発想でだめならそれで加えていくというようなやり方は福島のプラントでは困る。間詰め材は典型的な泥縄式のアプローチ。別働隊がクールに頭を冷やして考えるべき。」という趣旨の厳しい発言をされました。
それに対して東電の姉川本部長は、「泥縄に見えるのは確かだが、繰り返しになるが、9割ほどは目的は達成しているのでこのまま続けたい。」と回答しました。
福島大学の渡辺先生は、「凍土壁でも同じように凍らない事態が起こらないのか気になる。」と指摘しました。これに対して更田委員は、「トレンチの止水と水抜きができなければ海側の凍土壁はできないので、まずはこのトレンチの止水に集中する。」と回答しました。
これらの議論は概して東電の進め方に対して懐疑的なものでしたが、一連の議論を受けて、まずは今の東電の方針で間詰め材の選定などを進めて、スケジュールから見て9月の上旬から中旬くらいに間詰め材の投入の前にもう一度検討会を開いてGoサインを出すかどうか確認をしたいというのが更田委員のまとめでした。
これらの議論の詳細については、公式YouTube動画とコアジサシさんのtogetterまとめを参考にして下さい。
3. 今後はどうなるのか?個人的感想
今回の議論を見ていて、氷の壁が完成してトレンチの汚染水を除去し終わるのはまだまだ時間がかかりそうな気がしました。9月中旬に開かれる次回の検討会では恐らく間詰め剤の充填にゴーサインが出ると思います。しかし、それでうまく凍結できるという保証はなく、またうまくいきませんでした、という話になって次の策を、となりそうな気がします。
今回は専門家の角山先生のコメントが印象的でした。
「戦略的にもう一度冷静に考えないと泥縄式にズルズル行ってしまう。発想を変えないといけないのではないかと思った。原子力屋は枯れた技術ではあるが、落ち度がないように細かい点を事前に試験をしておいて取りかかるもの。土木屋の発想でだめならそれで加えていくというようなやり方は福島のプラントでは困る。間詰め材は典型的な泥縄式のアプローチ。別働隊がクールに頭を冷やして考えるべき。」
泥縄式のアプローチをするのではなく戦略的に実行するべき、というものです。2011年以来、汚染水対策では戦略的アプローチが決定的に欠けていると思います。それに加えて東電の考え方の根本にある「後ろ向きの汚染水対策に余計なお金をかけたくない」という考え方があるため、対策は全て小出しであり、結果として後手を引いています。
東京電力の記者会見や検討会の議論を見ていると、今のままでは今後も「予想外」の現象が何度も起きてしまい、うまくいきませんでした、という話がくり返されるような気がしています。凍土壁についても、確かに水を直接凍らせるトレンチの止水とは違うのですが、場合によっては地下水の流速が速い場所もあるはずで、そういう場所で壁に穴が空いた状態になるのではないか、という懸念もあります。
今後もトレンチの止水の問題、凍土壁の問題については検討会の話を中心にフォローしていきますので、ぜひブログが更新されたときには見に来ていただければと思います。
- 関連記事
-
- トレンチの凍結による止水は断念して結局充填剤で埋めることに。第27回監視評価検討会での議論 (2014/10/13)
- 海水配管トレンチの止水、方針確定せず。9月中旬に再度判断へ。 (2014/08/24)
- 東電はサブドレン浄化後の地下水を港湾内に排出する方針を明言!漁協はどう対応するか? (2014/08/13)


↑日本ブログ村ランキングに参加しました。よかったらクリックお願いします。