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初めて観測された山側サブドレンでの高濃度セシウム その原因は?

 
温泉水関連でトレンチの凍結以外の話題を書くのは久し振りになります。
今回は原子炉建屋の山側にあるサブドレンで初めて検出された高濃度のセシウム(トリチウムではありません)についてです。


1.今回のニュースの持つ意味

10/24、東電は日報において山側サブドレンのNo.18とNo.19でこれまで検出した最高値の800~900倍の高濃度の放射性セシウムが検出されたと発表しました。

私はこのニュースをNHKオンラインで見たのですが、詳細な情報を確認するために東電のHPを見たらNo.18とNo.19ということがわかってビックリしました。翌10/25に発表された東電HPの資料を見ると、No.18とNo.19のサブドレンの場所がわかります。私がびっくりしたのは、このサブドレンが建屋の海側ではなくこれまで汚染された地下水の報告がほとんどなかった建屋の山側だったからです。さらにこの濃度は、護岸側の地下水の放射性セシウム濃度の最高値よりも高かったからです。
1025-1
(東電HP 10/25 福島第一原子力発電所2号機建屋周辺地下水分析結果 より)

同じ資料には、10/24のデータが掲載されているのですが、日報に出ている数値と並べないとわからないと思いますので、そちらを示します。本日(10/26)には新たに10/25のデータも追加されました。この分だとこの4つのサブドレンについては今後もずっとデータが公開されるようです。)

1026-1

2.サブドレンとは、そして浄化後の排水計画

さて、サブドレンという言葉をここまで何の前置きもなく使用してきてしまいました。サブドレンの基本的な情報については少し古いですが「福島原発の汚染水をよく知るため、O.P.とサブドレンを理解しましょう」をお読みください。2011年の原発事故前は、全部で50基ほどあるサブドレンから毎日約850トンもの水を汲み上げていたのです。

ところが原発事故後にはサブドレンが稼働できなくなり、その結果として建屋付近の地下水位が上昇しました。そして、震災によって建屋にできたひび割れまたは穴から地下水が建屋に侵入し、建屋にたまっている原子炉冷却水と混ざって汚染水をどんどん増やしているというのが現状です。

従って、東電としてはサブドレンは早急に復帰させたかったのですが、サブドレンの中にフォールアウトによる放射性物質が混入したほか、サブドレン付近の地下水も汚染されてしまったため、汲み上げた地下水をそのまま以前のように海に流すことはできなくなってしまいました。そこで、2012年頃からサブドレンの復旧に向けてサブドレン浄化試験などを繰り返し、使えないサブドレンは付近に新しく掘り直しました。2013年に凍土遮水壁計画が決まったことから、その中でもサブドレンは地下水位のコントロール設備として重要な位置づけを持つようになり、2014年8月にようやく規制庁の認可がおりて使用が可能となりました。

しかし、サブドレンで汲み上げた水は以前のように完全にきれいな地下水というわけではなく、放射性物質を含みます。そこで、東電は汲み上げたサブドレン水を浄化する浄化設備を設置し、その処理水を海(港湾内)に流す計画を考えています。そのあたりの話は「サブドレンと浄化設備の計画が認可。浄化したあとの処理は?」をお読みください。

現状では、福島県漁協の反発は強く、まだ処理後の水を海に流すということは関係者の同意が得られていいません。今回新たに明らかになった高濃度に汚染されたサブドレンによって、さらに反対が高まる可能性すらあると思います。今回のこの現象は、どうしてこのような高い濃度のセシウムが観測されたのか、ということ以外に、サブドレンを汲み上げたあとの処理水を海に流す計画に与える影響、という2点で注目しておく必要があります。なお、東京電力はすでにこのNo.18とNo.19からの汲み上げは中止すると発表しています。

3.今回の汚染はどこから?

前置きがかなり長くなりましたが、10/24に発表されたNo.18とNo.19のデータを見ていきましょう。その前に、過去に観測されたこのあたりのデータを確認する必要があります。今年8月に認可された実施計画にその情報がありますのでまずはそれを確認しましょう。

0809-9
0809-10
(8/7 実施計画別紙2.35 サブドレン他水処理施設 110ページより)

これを見ればわかるように、2013年11月から2014年6月までの採水したデータでは、建屋の山側で放射性セシウムは数100Bq/L程度しか検出されていません。新しく掘ったN8などのNシリーズではほとんど検出限界以下に近い1桁の数値です。No.8とNo.40が1000Bq/Lを超えてやや高めですが、その原因については不明です。

さて、再度今回発表されたNo.18とNo.19の値を確認してみます。

1026-1

すると、直近(台風前の10月上旬)の値がないためにいつからこんなに高くなったのかが不明ですが、今回No.18とNo.19で観測された30万~40万Bq/Lというのがいかに高い値かということがおわかりいただけると思います。もっというと、東京電力は「福島第一港湾内、放水口付近、護岸の詳細分析結果」という資料を定期的に公表しているのですが、その最後のページにこれまでの最高値を添付してくれています。それと比較しても、最近放射性セシウム濃度が高くなってきた護岸側のNo.1-6という観測井戸があるのですが、それでもCs-137で最高値は200,000Bq/Lです。今回のNo.18の330,000Bq/LやNo.19の360,000Bq/Lというのはそれを遙かに上回っていますから、いかに高濃度かということです。

では、この汚染はどこから来たのでしょうか?No.18とNo.19は高濃度になりましたが付近のNo.20とN8はほとんど影響を受けていないことから、上流から流れてきたというものではなく、この付近で何か起こったという可能性があります。

現時点で考えられる事は、
1.台風(10/6の台風18号及び10/14の台風19号)によってフォールアウトで高濃度に汚染された土壌などがサブドレンの井戸に上から流れ込んだ。
2.台風によって地下水位が上昇するなど地下水の流れが大きく変わり、高濃度に汚染された地下水が移動してきた(セシウムは通常移動速度はかなり遅い)。
3.建屋の少し山側で行っている凍土遮水壁の掘削工事の影響で地下水の流れが影響を受け、1.や2.の現象が起きた。

くらいでしょうか。今年の前半や10月始め(台風18号の前)のデータがないので、この状況がいつから起こっていたのかがわからないのですが、2回の台風および凍土遮水壁の掘削工事が影響していることは間違いないと思います。ただ、それはあくまできっかけであって、これだけの高濃度の放射性セシウムがどこから来たのか?ということについては現時点では情報が少なくて判断できません。3年半以上が経過していますから、建屋のどこかに損傷をきたした、という可能性も否定できません。

参考として、護岸付近の地下水位の変動を示します。いつ雨が降ったか、それによって地下水位がどう変動しているかのイメージはつかめると思います。台風が来たときは、昨年もそうでしたが、地下水位が上昇し、地下水の流れも大きくなります。
1026-2
(東電HP 10/24 タービン建屋東側における地下水及び海水中の放射性物質濃度の状況等について より)

なお、10/25に発表された10/24のデータについて、私は大きな疑問を持っています。それは、10/23から10/24にかけてのセシウム濃度の降下が急激すぎるということです。これまでも他の護岸付近での観測井戸において、台風の影響で一過性にトリチウムや全βの濃度が上がることはありましたが、このように1日で急激に値が1/100程度まで低下するというのは考えられません。何らかの人為的な操作が入っていると思います。

2日続けて同様の値が出ていますから、測定サンプルの取り違えということはまず考えられません。とすると、特にHP上では記載がないものの、東電はNo.18とNo.19について10/23にサブドレンの洗浄のような事をおこなったのではないでしょうか?洗浄した結果、付近にあったフォールアウトで汚染された土壌の混入だったとわかったというならばそれでもいいと思うのですが、その点についての説明は必須です。この点についてはぜひ記者会見などで確認して欲しいところです。また、セシウム以外のγ核種のデータをみたら、きっとフォールアウト由来かどうか、わかるのではないでしょうか?

他にももっと書きたいことはあるのですが、今回はこの辺で終わりにしておきます。今後の展開によっては続きを書きたいと思います。


 
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1号機逆洗弁ピット

人身事故の騒動に隠れて見落としていましたが、1号機放水路の汚染について、第17回と18回の廃炉・汚染水対策現地調整会議で、1号機逆洗弁ピットのたまり水が有力な原因として報告があったのですね。昨日の記者会見場で小林氏の説明を聞いて、やっと認識しました。

当初ここはたまり水が少なく流出は無いとされていましたが、「だったらはやくサンプリングしとけよ」という気もしました。

最高値から考えると、これだけが原因とは言い切れないと思いますが、すばやい対応を望みます。

2号機山側サブドレンの汚染源は1・2号機排気筒の高線量汚染

TSOKDBAさんお久しぶりです。ひとり事故調です。
しばらく汚染水のフォローをサボっておりましたが、山側のサブドレンで高い値が出たという予想外の報道を目にしたので、何が起こっているのか考えてみました。東電報道資料と規制委の特定施設委資料のデータを検討した結果、表記のような結論に至りましたので、ご報告します。
東電の資料にもあるように、10月18~19日にサブドレンから汲み上げた結果、No.18や19と連結菅(横引き菅)で繋がっているNo.15,16,17の汚染水が引き込まれた、ということで間違いないと思います。10月30日に東電が公表した資料には、No.16から292万Bq/Lという高濃度のCs-137が検出されています。
問題は、その源です。例によって東電はフォールアウトだとしていますが、これはウソです。サブドレンNo.15~17は、1・2号機排気筒の根元にあります。この排気筒底部のベントラインからは10Sv/hを超える高線量が測定されています。これは、今年の春にNHK特集でも報道されたように、1号機のベントで高濃度の放射能に汚染されたものです。
排気筒は上が開いていますから、雨が中に降り込みます。当然、底の部分には雨水を抜くための排水孔があるはずです。それがどこに繋がっているのか明らかにはなっていませんが、おそらくサブドレンに連結されていると思います。雨水によって排気筒の内側に付着している放射能(主にセシウム)が流され、下のサブドレン水が汚染されるのだと考えられます。
なお、No.16の分析データから2011年3月11日時点でのCs134/Cs137比を計算した結果、0.910となり1号機の特徴に一致します(2・3号機より明らかに低いという特徴)。

以上

1号機放水路の流入経路

こんばんは。私もサブドレインNo.18,19が24日に2桁下がった時は、またまたご冗談を、と思いました。

--------
ところで先週発表された1号機放水路の高濃度セシウムの流入経路ですが、フォールアウト(10m盤から)の他に、4m盤(U字溝→マンホール→ヒューム管)からの流入はないのかな?とちょっと思いました。↓p.3
http://www.tepco.co.jp/nu/fukushima-np/handouts/2014/images/handouts_141023_06-j.pdf

U字溝のクラックは、全国どこの排水溝でも見られるものです。私は地下水バイパスの排水状況の写真を見た時、排水状況そのものよりクラックから染み出る地下水が気になった位です。
http://photo.tepco.co.jp/library/140521_01/140521_03.jpg

こんな感じで、護岸のNo.1-6や1-13付近の水位が大雨でO.P4m前後になった場合、U字溝へ逆流する事があるのではないでしょうか?もっというと、16m孔そのものが汚染源になっている可能性はないでしょうか?

1-2号機エリアでは、No.1休止以降、16m孔の水位が公開されていません。お隣のエリアの16m孔は、ちょっとした雨でO.P4m越えしていますよね。

なので、次の大雨の時は、目視だけではなく、マンホールの水の検査をした方がいいと思いますよ。サーベイメーターでは、流入経路は判らないのでは?

ぶらさがりで木野さんが食い下がってましたが、たかが大雨のフォールアウトで汚染が広がるのなら、今まで3年半で起こらなかった説明がつきませんよね。現在進行形の海側遮水壁での水位変動など、別の原因があるのかもしれません。

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TSOKDBA

Author:TSOKDBA
twitterは@tsokdbaです。
3.11では、停電・断水のため、一晩避難所で過ごし、震災後の情報収集をきっかけにブログを始めました。
これまで約4年間、原発事故関係のニュースを中心に独自の視点で発信してきました。その中でわかったことは情報の受け手も出し手も意識改革が必要だということです。従って、このブログの大きなテーマは情報の扱い方です。原発事故は一つのツールに過ぎません。

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