「K排水路から汚染水が海洋流出」報道からわかる、排水路の港湾内への付け替えの意味
2/24、東京電力は2号機原子炉建屋の大物搬入口の屋上にたまっていた比較的高濃度の放射性物質を含む水(汚染水)が近くの排水路を通じて海に流出していた事を発表しました。東電はこの事実を昨年4月から知りながら10ヶ月間も公表しなかったそうです。
この問題は各メディアで大きく報道されました(毎日、読売、日経、朝日、NHKなど)。2/25に行われた福島県漁連組合長会議でも「信頼関係が失われた」などと厳しい指摘が相次いだそうです。福島原発事故から4年経ち、汚染水漏れがあってもあまり報道されなくなった中で今回は比較的大きく報道されたように思います。直前にあった港湾内への流出事故の影響もあるかもしれません。
今回は、この報道から見えてくるマスメディアの不思議な報道ルールについて考えてみたいと思います。
1. 事実関係
東電が2/24に発表した資料は東電HPの「2号機原子炉建屋大物搬入口屋上部の溜まり水調査結果」にあります。
今回の調査は、福島第一原発敷地内にあるいくつもの排水路の中で、K排水路と呼ばれる排水路の放射性物質濃度が高いことから、その原因を調査していて、今回その原因らしきものがわかったために公表したというもののようです。
では、いつものようにK排水路というものがどこにあるのか、まずはそれを見てみましょう。

(東電HP 2/24 2号機原子炉建屋大物搬入口屋上部の溜まり水調査結果 より)
福島第一原発の敷地内には5つの大きな排水路があり、A排水路、B排水路、C排水路、K排水路、物揚場排水路と呼ばれています。そのうちB排水路とC排水路については2011年12月のタンクからの汚染水漏れなどがあった影響でかなり前からその存在が知られていましたが、それ以外についてはどこにあるのかすら2013年の終わり頃まで明らかにされていませんでした(「福島第一原発にはA排水路以外にもK排水路、物揚場排水路もあった!」を参照)。
一方で、B排水路とC排水路については、何度も近くのタンクから汚染水漏れが起こって排水路にあふれ出た水が直接海に流出するという事態が起こっていたため、排水路の付け替えが計画され、2014年7月からその運用が開始されています。その話については2/23の「側溝放射線モニタの異常値についての続報 東電記者会見(2/23)での情報」においてもふれていますのでご覧下さい。
それ以外の排水路は、A排水路は5,6号機の方を通って5,6号放水口の方で海に直接注いでいます。物揚場排水路は、1,2号機付近から港湾内にある物揚場に排出される排水路です。そして今回のK排水路は、1,2号機から4号機を経て集中廃棄物処理施設の脇を通って海に直接注いでいます。海に注ぎ込む直前で、昨年付け替えられたB,C排水路と交差する形です。
ちなみに、なぜA,B,CのあとがKなのか?ということについては、「構内」排水路だから頭文字をとって「K」になったということらしいです。とにかくここで覚えておいていただきたい重要な事は、K排水路はA排水路と同様に現在でも海(外洋)に直接注ぎ込んでいるため、もしこの排水路の中を高い濃度の放射性物質を含む水(汚染水)が通った場合はそのまま海に流出するということです。
さて、2/24の発表に戻ります。K排水路で高濃度の放射性物質が観測される原因調査として、2号機の原子炉建屋の屋上を調査したところ、大物搬入口の屋上ではCs-137が23,000Bq/Lもあったということがわかりました。この2号機原子炉建屋大物搬入口というのは、下の図にあるように2号機原子炉建屋の西側(山側)にある構造物です。図の④にあたります。

(東電HP 2/24 2号機原子炉建屋大物搬入口屋上部の溜まり水調査結果 より)
そしてそのすぐそばにはピンクの線が走っていて、これはK排水路の上流に当たる枝排水路だそうです。このあとで示しますが、K排水路の放射性物質の濃度が他の排水路と比較して常に10倍近く高かったのは、この大物搬入口屋上にたまっていた水が雨が降った際にあふれ出して側溝からK排水路を通じて海に流出していたということが原因の一つとして考えられるのです。
同じ資料に載っていた各排水路の2014年4月から約10ヶ月のデータを比較するとはっきりとわかるように、K排水路は他の排水路よりも1桁(10倍)近く濃度が高いです。どの排水路も雨が降った時には濃度が高くなりますが、それ以外の時を比較すれば、Cs-137も全βも他の排水路では1.0E+01、つまり10Bq/L程度ですが、K排水路だけは普段から数十~100Bq/Lであることがわかります。雨が降るとK排水路は1.0E+03、つまり1000Bq/L程度にまではね上がります。


(東電HP 2/24 2号機原子炉建屋大物搬入口屋上部の溜まり水調査結果 より)
東電はこの事実を昨年4月以降把握していながら、これまで公表をせず、国にも報告してこなかったということです。後でも述べますが、これが今回問題にされている原因の一つです。
幸いなことに、海洋でのモニタリングポイントにおいてはこれまで大きな変動はありませんでした。ただ、このグラフは非常に小さな図で、細かい変動がわかりにくいような表示になっているため、本当に影響がなかったかどうかは不明です。データを詳細に解析したら、雨が降ってK排水路で濃度がはね上がったときにT-2-1というK排水路の1.3km南側にあるポイントのCs-137の濃度があがっていたという結果が出るような気もします。(今度時間があるときにチェックしてみますが今日のところは細かくは追求しません。)なお、T-2とT-2-1の違いについては2013年に書いた「汚染水タンクから最大300トンの漏えい!(4) 測定地点T-2とT-2-1のその後」をお読みください。

(東電HP 2/24 2号機原子炉建屋大物搬入口屋上部の溜まり水調査結果 より)
東電は、データを公表しなかった理由について、東電は「原因調査をして結果が出てから公表しようと考えた」と説明しているとのことです。2号機原子炉建屋の屋上にたまっていた汚染水からは放射性セシウムが合計29,400Bq/L検出されましたが、これは事故当時の水素爆発などで飛散した放射性物質が屋上に残っていたと東電は説明しています。排水路に放射性物質の吸着材を設置するなどの対策を取るということです。
2. その後の反応
もともと本日(25日)は福島県漁連組合長会議があることになっていたのですが、24日の発表が大きく報道された事もあって、タイミング的に東電はここでもその説明をする(リンク先が説明資料)必要が出てきました。
しかしながら、最初に書いたように、読売によるといわき市漁協の矢吹正一組合長は会議前、記者団に、「信用していたのに裏切られた。サブドレンどころではないという思いだ」と話したということです。今日のメインの議題はサブドレン処理水を海に流して良いかどうか、ということを説明するためのものだったのですが、その話題が吹っ飛んでしまったようです。
また、NHKによると福島県漁連の野崎哲会長は「海への汚染水の流出は、われわれ漁業者にとって非常に重要な問題であり、知らされていなかったことで、これまで廃炉のためにと協力してきた、われわれと東京電力との信頼関係が崩れたと思う。建屋の周辺からくみ上げた地下水を浄化して海に流す計画は信頼関係があって初めて実施できることであり、今回の問題で不信感を抱いたままでは見通しは立たない。国や東京電力には、しっかりとした対応を求めていきたい」と話したということです。
サブドレン処理水の放出問題は今回の問題でまた頓挫して遅くなる事になりそうです。
一方、菅官房長官は、朝日によると「港湾への汚染水への影響は完全にブロックされている。状況はコントロールされているという認識に変わりない」と述べたということです。この表現は安倍首相がオリンピック招致の際に用いた表現と同じですね。
これらを受けて、NHKによると東電は排水路のルートを変える工事を行う事を検討しているという話も出てきました。
3. 排水路の出口を港湾内に付け替えることの意味
今回の報道を見ていると、二つのポイントがあったことがわかります。一つは汚染された水が海に放出されていることを知りながら10ヶ月間報告をしなかったこと。もう一つは「外洋に直接」汚染された水が出ていたということです。
しかし、これがもしK排水路の水もB、C排水路と同様に付け替えられて港湾内に注がれていたとしましょう。すると、10ヶ月間報告しなかったという問題はあるものの、東電としては「これは港湾内であって外洋ではありません。だから外洋には出ていません。」という2/22の側溝放射線モニタの異常値の時に用いたロジックを使えるのです。するとおそらくこれほどまで報道されることもなく、大きな問題にはならなかったはずです。
ただ、「側溝放射線モニタの異常値についての続報 東電記者会見(2/23)での情報」において説明したように、港湾内の海水は毎日約50%が潮汐作用によって外洋の海水と入れ替わっています。ということは、海水で大幅に希釈されるものの、港湾内の水はいずれは外洋に出て行くのです。大幅に希釈されるために、確かに港湾外にはほとんどその影響が見られないのですが、それは単に大量の海水で希釈された結果に過ぎないということです。
ところが、今日の菅官房長官や、安倍首相のオリンピック招致の際の発言にもあったように、「汚染水の影響は港湾内で完全にブロックされている」ということが表向きはいわれていますから、港湾内に出た汚染水は仮に大量に出たとしてもあまり問題とならず、外洋に直接出た汚染水はどんなに少量であっても大きな問題となります。
実は、問題となるかどうかは単にマスメディアが大きく騒ぐかどうかだけの違いなのですが、どうもマスメディアの判断基準は外洋に直接出たかどうか、ということだけであり、どれだけの量が出たかということで判断するわけではないようなのです。
まだ両者の量的な評価ができていないので確かな事は言えませんが、私は、2/22の側溝放射線モニタの異常値を引き起こした港湾内への流出の方が今回のK排水路の外洋への流出よりも量が多いのではないかという印象を持っています。しかし、今回の報道の大きさを見てもわかるように、マスメディアの判断基準はそうではなく、東電が決めた「港湾内への流出は外洋ではない」というちょっと考えれば誰もがおかしいとわかるような理屈に従って、外洋へ直接流出したときには騒ぐが港湾内への流出についてはあまり騒がないことになっているようです。
つまり、東電にとって排水路の出口を港湾内に付け替えた事の意味は、もし今後も2/22のような汚染水の流出事故があったとしても、「これは港湾内ですから」という説明をできるようになったということで、非常にメディア戦略的には意味のあることなのです。
いいかげんにこういう報道の仕方から卒業して、本当にどれだけの量が流出したのか、環境中にどれだけの影響がありうるのか、という視点で報道するようになって欲しいと思います。また、報道を読む側も「港湾内は外洋ではない」という説明がどれだけ意味のないものであるのか、ということについて、よく考えながら報道を読んで欲しいと思います。
今回は、情報の出し手および受け手のそれぞれがどのように考えるべきか、という視点で少し考えてみました。
東電が2/24に発表した資料は東電HPの「2号機原子炉建屋大物搬入口屋上部の溜まり水調査結果」にあります。
今回の調査は、福島第一原発敷地内にあるいくつもの排水路の中で、K排水路と呼ばれる排水路の放射性物質濃度が高いことから、その原因を調査していて、今回その原因らしきものがわかったために公表したというもののようです。
では、いつものようにK排水路というものがどこにあるのか、まずはそれを見てみましょう。

(東電HP 2/24 2号機原子炉建屋大物搬入口屋上部の溜まり水調査結果 より)
福島第一原発の敷地内には5つの大きな排水路があり、A排水路、B排水路、C排水路、K排水路、物揚場排水路と呼ばれています。そのうちB排水路とC排水路については2011年12月のタンクからの汚染水漏れなどがあった影響でかなり前からその存在が知られていましたが、それ以外についてはどこにあるのかすら2013年の終わり頃まで明らかにされていませんでした(「福島第一原発にはA排水路以外にもK排水路、物揚場排水路もあった!」を参照)。
一方で、B排水路とC排水路については、何度も近くのタンクから汚染水漏れが起こって排水路にあふれ出た水が直接海に流出するという事態が起こっていたため、排水路の付け替えが計画され、2014年7月からその運用が開始されています。その話については2/23の「側溝放射線モニタの異常値についての続報 東電記者会見(2/23)での情報」においてもふれていますのでご覧下さい。
それ以外の排水路は、A排水路は5,6号機の方を通って5,6号放水口の方で海に直接注いでいます。物揚場排水路は、1,2号機付近から港湾内にある物揚場に排出される排水路です。そして今回のK排水路は、1,2号機から4号機を経て集中廃棄物処理施設の脇を通って海に直接注いでいます。海に注ぎ込む直前で、昨年付け替えられたB,C排水路と交差する形です。
ちなみに、なぜA,B,CのあとがKなのか?ということについては、「構内」排水路だから頭文字をとって「K」になったということらしいです。とにかくここで覚えておいていただきたい重要な事は、K排水路はA排水路と同様に現在でも海(外洋)に直接注ぎ込んでいるため、もしこの排水路の中を高い濃度の放射性物質を含む水(汚染水)が通った場合はそのまま海に流出するということです。
さて、2/24の発表に戻ります。K排水路で高濃度の放射性物質が観測される原因調査として、2号機の原子炉建屋の屋上を調査したところ、大物搬入口の屋上ではCs-137が23,000Bq/Lもあったということがわかりました。この2号機原子炉建屋大物搬入口というのは、下の図にあるように2号機原子炉建屋の西側(山側)にある構造物です。図の④にあたります。

(東電HP 2/24 2号機原子炉建屋大物搬入口屋上部の溜まり水調査結果 より)
そしてそのすぐそばにはピンクの線が走っていて、これはK排水路の上流に当たる枝排水路だそうです。このあとで示しますが、K排水路の放射性物質の濃度が他の排水路と比較して常に10倍近く高かったのは、この大物搬入口屋上にたまっていた水が雨が降った際にあふれ出して側溝からK排水路を通じて海に流出していたということが原因の一つとして考えられるのです。
同じ資料に載っていた各排水路の2014年4月から約10ヶ月のデータを比較するとはっきりとわかるように、K排水路は他の排水路よりも1桁(10倍)近く濃度が高いです。どの排水路も雨が降った時には濃度が高くなりますが、それ以外の時を比較すれば、Cs-137も全βも他の排水路では1.0E+01、つまり10Bq/L程度ですが、K排水路だけは普段から数十~100Bq/Lであることがわかります。雨が降るとK排水路は1.0E+03、つまり1000Bq/L程度にまではね上がります。


(東電HP 2/24 2号機原子炉建屋大物搬入口屋上部の溜まり水調査結果 より)
東電はこの事実を昨年4月以降把握していながら、これまで公表をせず、国にも報告してこなかったということです。後でも述べますが、これが今回問題にされている原因の一つです。
幸いなことに、海洋でのモニタリングポイントにおいてはこれまで大きな変動はありませんでした。ただ、このグラフは非常に小さな図で、細かい変動がわかりにくいような表示になっているため、本当に影響がなかったかどうかは不明です。データを詳細に解析したら、雨が降ってK排水路で濃度がはね上がったときにT-2-1というK排水路の1.3km南側にあるポイントのCs-137の濃度があがっていたという結果が出るような気もします。(今度時間があるときにチェックしてみますが今日のところは細かくは追求しません。)なお、T-2とT-2-1の違いについては2013年に書いた「汚染水タンクから最大300トンの漏えい!(4) 測定地点T-2とT-2-1のその後」をお読みください。

(東電HP 2/24 2号機原子炉建屋大物搬入口屋上部の溜まり水調査結果 より)
東電は、データを公表しなかった理由について、東電は「原因調査をして結果が出てから公表しようと考えた」と説明しているとのことです。2号機原子炉建屋の屋上にたまっていた汚染水からは放射性セシウムが合計29,400Bq/L検出されましたが、これは事故当時の水素爆発などで飛散した放射性物質が屋上に残っていたと東電は説明しています。排水路に放射性物質の吸着材を設置するなどの対策を取るということです。
2. その後の反応
もともと本日(25日)は福島県漁連組合長会議があることになっていたのですが、24日の発表が大きく報道された事もあって、タイミング的に東電はここでもその説明をする(リンク先が説明資料)必要が出てきました。
しかしながら、最初に書いたように、読売によるといわき市漁協の矢吹正一組合長は会議前、記者団に、「信用していたのに裏切られた。サブドレンどころではないという思いだ」と話したということです。今日のメインの議題はサブドレン処理水を海に流して良いかどうか、ということを説明するためのものだったのですが、その話題が吹っ飛んでしまったようです。
また、NHKによると福島県漁連の野崎哲会長は「海への汚染水の流出は、われわれ漁業者にとって非常に重要な問題であり、知らされていなかったことで、これまで廃炉のためにと協力してきた、われわれと東京電力との信頼関係が崩れたと思う。建屋の周辺からくみ上げた地下水を浄化して海に流す計画は信頼関係があって初めて実施できることであり、今回の問題で不信感を抱いたままでは見通しは立たない。国や東京電力には、しっかりとした対応を求めていきたい」と話したということです。
サブドレン処理水の放出問題は今回の問題でまた頓挫して遅くなる事になりそうです。
一方、菅官房長官は、朝日によると「港湾への汚染水への影響は完全にブロックされている。状況はコントロールされているという認識に変わりない」と述べたということです。この表現は安倍首相がオリンピック招致の際に用いた表現と同じですね。
これらを受けて、NHKによると東電は排水路のルートを変える工事を行う事を検討しているという話も出てきました。
3. 排水路の出口を港湾内に付け替えることの意味
今回の報道を見ていると、二つのポイントがあったことがわかります。一つは汚染された水が海に放出されていることを知りながら10ヶ月間報告をしなかったこと。もう一つは「外洋に直接」汚染された水が出ていたということです。
しかし、これがもしK排水路の水もB、C排水路と同様に付け替えられて港湾内に注がれていたとしましょう。すると、10ヶ月間報告しなかったという問題はあるものの、東電としては「これは港湾内であって外洋ではありません。だから外洋には出ていません。」という2/22の側溝放射線モニタの異常値の時に用いたロジックを使えるのです。するとおそらくこれほどまで報道されることもなく、大きな問題にはならなかったはずです。
ただ、「側溝放射線モニタの異常値についての続報 東電記者会見(2/23)での情報」において説明したように、港湾内の海水は毎日約50%が潮汐作用によって外洋の海水と入れ替わっています。ということは、海水で大幅に希釈されるものの、港湾内の水はいずれは外洋に出て行くのです。大幅に希釈されるために、確かに港湾外にはほとんどその影響が見られないのですが、それは単に大量の海水で希釈された結果に過ぎないということです。
ところが、今日の菅官房長官や、安倍首相のオリンピック招致の際の発言にもあったように、「汚染水の影響は港湾内で完全にブロックされている」ということが表向きはいわれていますから、港湾内に出た汚染水は仮に大量に出たとしてもあまり問題とならず、外洋に直接出た汚染水はどんなに少量であっても大きな問題となります。
実は、問題となるかどうかは単にマスメディアが大きく騒ぐかどうかだけの違いなのですが、どうもマスメディアの判断基準は外洋に直接出たかどうか、ということだけであり、どれだけの量が出たかということで判断するわけではないようなのです。
まだ両者の量的な評価ができていないので確かな事は言えませんが、私は、2/22の側溝放射線モニタの異常値を引き起こした港湾内への流出の方が今回のK排水路の外洋への流出よりも量が多いのではないかという印象を持っています。しかし、今回の報道の大きさを見てもわかるように、マスメディアの判断基準はそうではなく、東電が決めた「港湾内への流出は外洋ではない」というちょっと考えれば誰もがおかしいとわかるような理屈に従って、外洋へ直接流出したときには騒ぐが港湾内への流出についてはあまり騒がないことになっているようです。
つまり、東電にとって排水路の出口を港湾内に付け替えた事の意味は、もし今後も2/22のような汚染水の流出事故があったとしても、「これは港湾内ですから」という説明をできるようになったということで、非常にメディア戦略的には意味のあることなのです。
いいかげんにこういう報道の仕方から卒業して、本当にどれだけの量が流出したのか、環境中にどれだけの影響がありうるのか、という視点で報道するようになって欲しいと思います。また、報道を読む側も「港湾内は外洋ではない」という説明がどれだけ意味のないものであるのか、ということについて、よく考えながら報道を読んで欲しいと思います。
今回は、情報の出し手および受け手のそれぞれがどのように考えるべきか、という視点で少し考えてみました。
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