海側遮水壁を閉合すべきか、先に陸側の凍土遮水壁を閉合すべきか?をめぐる検討会での議論(2)
4/19になりますが、3/25に行われた第33回監視評価検討会での凍土壁をめぐる議論について「海側遮水壁を閉合すべきか、先に陸側の凍土遮水壁を閉合すべきか?をめぐる検討会での議論(1)」にその前提条件となる海側遮水壁の閉合問題についてまとめました。
続編となる(2)では、その後の凍土壁をめぐる議論を4/22に行われた第34回監視評価検討会にそってまとめようと思っていましたが、いろいろ事情があって3ヶ月近く経過してしまいました。
そのため、監視評価検討会も4/22の第34回のあと、5/22の第35回検討会、そして7/1の第36回検討会と3回も開催されました。
タイトルの「海側遮水壁を閉合すべきか、先に陸側の凍土遮水壁を閉合すべきか?をめぐる検討会での議論」としては、監視評価検討会の中では、海側遮水壁を先に閉合しその後で陸側の凍土遮水壁を閉合するのが基本シナリオである、という合意が公式に形成されました。これはエネ庁の新川室長(7月から総括調整官)も認めていることです。ただ、東電はあくまでも陸側の凍土遮水壁を早く閉合したいという意志がありありで、7/1の監視評価検討会においてもその旨の発言を行って更田委員から注意を受けています。
今回は監視評価検討会の3回分をレビューするような形で、この議論の流れを簡単にお伝えしたいと思います。試験凍結の状況の詳細については次回に回します。
1. 規制委員会が譲らない基本シナリオ
3月の第33回監視評価検討会においては、陸側の凍土遮水壁を今年度中に閉合して運用を開始したい東電と、海側遮水壁の閉合が最優先であるとする規制委員会および規制庁の見解はすれ違ったままでした。
詳細は前回の第33回監視評価検討会での凍土壁をめぐる議論について「海側遮水壁を閉合すべきか、先に陸側の凍土遮水壁を閉合すべきか?をめぐる検討会での議論(1)を読んでいただきたいのですが、意外に知られていない事実として、まだ10億ベクレル/日を超える多くの放射性物質が、いまだに閉じられていない海側遮水壁から港湾内を通じて海へ流出し続けているということは下のグラフで強調しておきたいと思います。

(第33回監視評価検討会の東電資料から作成)
第33回監視評価検討会の場で規制委員会から、海側遮水壁およびサブドレン、地下水ドレンの運用を先に開始して、その後で陸側遮水壁を閉止するというシナリオを基本シナリオとして次回はまずそれにそった説明をするように、という指示が出ました。
それを受けて東電が第34回の監視評価検討会において示したものが下記のシナリオです。

(第34回監視評価検討会 資料3 4ページより)
これを見ればおわかりのように、まずサブドレンを稼働し、その後海側遮水壁を閉合すると同時に地下水ドレンを稼働します。その後、陸側遮水壁の山側を閉合し、そのあとさらに陸側遮水壁の海側を併合するという流れです。
このシナリオの問題点は、サブドレンの稼働において、汲み上げた地下水を浄化し、基準値以下になった浄化水を海に排水するという計画を東電は立てているのですが、その浄化水の海への放出が地元の福島県や福島県漁連とコンセンサスが得られていないということです。今年2月に発覚した、K排水路などの排水路から海洋への放射性物質の流出問題(詳細は「「K排水路から汚染水が海洋流出」報道からわかる、排水路の港湾内への付け替えの意味」参照)で、せっかくある程度まとまりかけていた話がまた振り出しに戻り、いつ合意が得られるかわからないという状況があります。
とはいえ、6月末になっていわき市漁協は条件付きで容認へ、と報じられましたし、相馬双葉漁協も協議再開へ動き出したということで、この問題はまだまだ予断を許しませんが、早ければ数ヶ月で解決に向かう可能性もあります。
一方、東電が第34回監視評価検討会において示した「代替案」は規制委員会としては認められませんでした。更田委員はこの代替案について議論をするつもりはない、と門前払いでした。

(第34回監視評価検討会 資料3 19ページより)
今回の第36回監視評価検討会においても、基本シナリオに沿って進めるということを更田委員が何回もくり返して強調しています。第36回監視評価検討会の動画で1:01:30前後の福島県の高坂さんの質問に対する東電の回答が不満だったため、更田委員が確認のためにまとめますが、とコメントしています。1:04:00付近からご覧になるとよくわかると思います。
「・・・海側遮水壁の閉止以前に陸側遮水壁の運用を行うということについて言及したことはありませんし、今のところ認める方針はありません。まず大前提は海側遮水壁の閉止とサブドレン、地下水ドレンの運用。これは大前提であって、この基本シナリオに書かれる間隔(1ヶ月、3ヶ月など)についてはこれからの議論ですが、順番については、海側遮水壁がなかなか運用できないから陸側遮水壁を先に凍結を開始しましょうなんて議論はこれまで一切していないし、仮定すらしていません。まず大前提は海側遮水壁の閉止とサブドレンの運用、地下水ドレンの運用です。いまたまたま、これについてはいろんな意味での合意プロセスが進んでいるところなので、ある意味先取りする形で陸側遮水壁の議論をしていますが、陸側遮水壁がうまくいったらはじめましょう、という議論をしているわけでは決してありません。まず大前提は海側遮水壁の閉止と地下水ドレン、サブドレンの運用、これを前提としない議論は1分たりともしたことはありませんので。・・・」
「大前提は海側遮水壁の閉止と地下水ドレン、サブドレンの運用」という表現がわずか1分程度の話の中に3回も出てきている事でいかに更田委員がこの事を強調したいか、がわかると思います。
ただ、有識者委員の中でも福島県の高坂さんや、福島大学の渡辺教授などは、陸側遮水壁を早く閉合すべき、という意見のようです。また、東電も表向きは規制委員会のいうことに従っていますが、本心はそうでないことは今回の高坂さんの質問に対する答を見れば明白です。先の高坂さんの質問も、東電を擁護するような形で陸側遮水壁を進められないのか、と質問をしたためにかえって東電とともに基本はこうだと決めたんだぞ、と更田委員にクギを刺されてしまっています。
2. TSOKDBAの意見
このように、基本シナリオとしてはサブドレンの運用と海側遮水壁の閉合が大前提であり、そのあとではじめて陸側遮水壁を運用する、というのが規制委員会=規制庁のスタンスです。規制側としてはここは譲れない、といわれてしまったらこの方針はとても変えることができないため、予定通りに今年度中に凍結を行いたい東電やエネ庁側としては、試験凍結でもいいから少しでも凍結を進めていって、なし崩し的に凍結する部位を増やしていくという戦法に切り替えざるを得ませんでした。
ところが、今回は詳細は記載しませんが、予定通りに凍結が起こらないといった現象や凍結した周辺の地下水位が予想外に下がったという現象が起こっています。そのため、試験凍結も思った通りに進んでいない、というのが第36回監視評価検討会で明らかになった事です。次回の検討会でどこまで試験凍結が進むのか、現段階では見えていません。
ここでこの問題に対する私のスタンスを書いておきたいと思います。
私の個人的な意見としては、汚染水を減らすという意味では、震災前は毎日850トンも汲み上げることができていたサブドレンをいかに有効に活用するか、ということが重要であり、(今回も冒頭にグラフで示したように)今も汚染水が海に流出し続けている現状をいち早く止めることが大事なので、まずは海側遮水壁を閉合すべき、という現在の規制委員会の方針に賛成です。
そうなると当然サブドレンの浄化水を海に放出することがいいのか、という話になりますが、今回も冒頭でご紹介したように、現在も地下水から毎日10億ベクレル以上の放射性物質が流出しているのであれば、それと比べればはるかにきれいになっている浄化水を海(といっても港湾内でしょうが)に出すことは問題ないと思います。
むしろ、2月にもK排水路からの流出で問題となった時に「「K排水路から汚染水が海洋流出」報道からわかる、排水路の港湾内への付け替えの意味」で書きましたが、港湾内に流したら問題がなく、海に直接流出したら大問題だ、みたいな報道の仕方をする事は現実を直視していません。このように東電のレトリックに簡単にだまされる(あるいはだまされたふりをする)報道の姿勢に問題があり、現在も大量の放射性物質が港湾内を通じて海に流出していることをしっかりと報道していくべきと思います。
その現実を漁業者が知ったら、サブドレンの浄化水を海に放出することに対する理解というのはもっと深まるはずです。港湾内に流せば現在のマスコミの理屈では海に放出しないので問題ないことになるはずです。東電は漁連に対しても現状がどれだけ環境が汚染されているのか、説明をしっかりとしていないのではないでしょうか。おそらくその説明をしないのには理由があると思います。
以下は単なる私の推論ですが、おそらく東電は陸側遮水壁をなんとしても早く実施したいのです。そのためには、サブドレン問題はすぐに解決しない方が良いに決まっています。それが簡単に解決してしまったら、サブドレンを運用して海側遮水壁の閉止して、という規制委員会の方針通りに進みます。ただ、そうなるとその後に行う陸側遮水壁の閉合と運用にかなり時間がかかる可能性があります。なんせ廃炉作業でこれまで計画通りにいった作業などほとんどないのですから、予想外のトラブルが起きて陸側遮水壁の運用開始までに時間がかかるかもしれません。
それよりも、サブドレンの問題がなかなか解決しないので、いつまでもタンクに水を溜め続けているわけにはいかない、と規制委員会にプレッシャーをかけて、だったら先に陸側遮水壁を運用しましょう、という世論を形成する方が近道だと考えていたのではないでしょうか。
私は当初、更田委員は今年の9月で原子力規制委員の3年の任期を迎えますので、更田委員が交代するのを待って東電が陸側遮水壁の議論を進めようとしているのかと思っていましたが、今年の5月の国会において更田委員が再任されるということが同意されました。ということは更田委員は今後も5年間は規制委員会の委員として活躍していくわけで、そうなるとこの規制委員会の方針はそう簡単に変わるものではありません。
そのため、今回は東電としてもこれまでの抵抗を少し和らげ、サブドレンに対する理解を進めて早く海側遮水壁の運用ができるようにしよう、と陰で方針転換をしたのではないか、と想像しています。
以上は全く根拠がない単なる私の推論ですが、5月に国会での人事が同意されたあとの6月下旬になって漁協との話が急に進み出すかに見えてきたのも、辻褄は一応合います。更田委員がもともと再任予定だったのかどうかが私にはわからないのですが、陸側遮水壁の議論においては大きな障壁になっていたことは間違いないと思います。
陸側遮水壁の議論を進めていくことも大事だとは思いますが、これまでの廃炉処理工程において、汚染水関係の処理はことごとく計画通りに行っていないのが実態です。ですから、あれだけ複雑な水位管理を求められる凍土遮水壁を本当にうまく運用できるとは思いません。規制委員会が懸念するように、建屋から汚染水が漏れ出して凍土壁全体でガードしないといけない、といった状況になってしまう恐れが高いと思います。ですから、まずは実績のあるサブドレンと海側遮水壁と地下水ドレンで様子を見て、それでも足りないようであれば凍土壁を実行する位のスタンスでいいのではないか、というのが私の考え方です。
いずれにせよ現状としては、規制委員会が頑として譲らない基本シナリオを実行すべく、サブドレンの浄化水の放出を認めてもらえるように漁協への説得を続けて、それでうまくいけば基本シナリオを実行し、その後速やかに陸側遮水壁の凍結ができるようにする。一方で漁協の説得の間にも陸側遮水壁の試験凍結の範囲を少しずつ広げていき、もしどうしても漁協への説得がうまくいかなければ、陸側遮水壁の凍結を先にやろう、という議論に変更するためのチャンスを虎視眈々と狙っているのが東電とエネ庁の戦略なのだと思います。次回の監視評価検討会においてどのような議論になるのか、興味があります。
今回はタイトルにあるようなどちらが先か、という議論について表面上の決着がついたけれども内実はそうではないことを中心に書きました。次回はもう少し試験凍結の状況などについてまとめたいと思います。
3月の第33回監視評価検討会においては、陸側の凍土遮水壁を今年度中に閉合して運用を開始したい東電と、海側遮水壁の閉合が最優先であるとする規制委員会および規制庁の見解はすれ違ったままでした。
詳細は前回の第33回監視評価検討会での凍土壁をめぐる議論について「海側遮水壁を閉合すべきか、先に陸側の凍土遮水壁を閉合すべきか?をめぐる検討会での議論(1)を読んでいただきたいのですが、意外に知られていない事実として、まだ10億ベクレル/日を超える多くの放射性物質が、いまだに閉じられていない海側遮水壁から港湾内を通じて海へ流出し続けているということは下のグラフで強調しておきたいと思います。

(第33回監視評価検討会の東電資料から作成)
第33回監視評価検討会の場で規制委員会から、海側遮水壁およびサブドレン、地下水ドレンの運用を先に開始して、その後で陸側遮水壁を閉止するというシナリオを基本シナリオとして次回はまずそれにそった説明をするように、という指示が出ました。
それを受けて東電が第34回の監視評価検討会において示したものが下記のシナリオです。

(第34回監視評価検討会 資料3 4ページより)
これを見ればおわかりのように、まずサブドレンを稼働し、その後海側遮水壁を閉合すると同時に地下水ドレンを稼働します。その後、陸側遮水壁の山側を閉合し、そのあとさらに陸側遮水壁の海側を併合するという流れです。
このシナリオの問題点は、サブドレンの稼働において、汲み上げた地下水を浄化し、基準値以下になった浄化水を海に排水するという計画を東電は立てているのですが、その浄化水の海への放出が地元の福島県や福島県漁連とコンセンサスが得られていないということです。今年2月に発覚した、K排水路などの排水路から海洋への放射性物質の流出問題(詳細は「「K排水路から汚染水が海洋流出」報道からわかる、排水路の港湾内への付け替えの意味」参照)で、せっかくある程度まとまりかけていた話がまた振り出しに戻り、いつ合意が得られるかわからないという状況があります。
とはいえ、6月末になっていわき市漁協は条件付きで容認へ、と報じられましたし、相馬双葉漁協も協議再開へ動き出したということで、この問題はまだまだ予断を許しませんが、早ければ数ヶ月で解決に向かう可能性もあります。
一方、東電が第34回監視評価検討会において示した「代替案」は規制委員会としては認められませんでした。更田委員はこの代替案について議論をするつもりはない、と門前払いでした。

(第34回監視評価検討会 資料3 19ページより)
今回の第36回監視評価検討会においても、基本シナリオに沿って進めるということを更田委員が何回もくり返して強調しています。第36回監視評価検討会の動画で1:01:30前後の福島県の高坂さんの質問に対する東電の回答が不満だったため、更田委員が確認のためにまとめますが、とコメントしています。1:04:00付近からご覧になるとよくわかると思います。
「・・・海側遮水壁の閉止以前に陸側遮水壁の運用を行うということについて言及したことはありませんし、今のところ認める方針はありません。まず大前提は海側遮水壁の閉止とサブドレン、地下水ドレンの運用。これは大前提であって、この基本シナリオに書かれる間隔(1ヶ月、3ヶ月など)についてはこれからの議論ですが、順番については、海側遮水壁がなかなか運用できないから陸側遮水壁を先に凍結を開始しましょうなんて議論はこれまで一切していないし、仮定すらしていません。まず大前提は海側遮水壁の閉止とサブドレンの運用、地下水ドレンの運用です。いまたまたま、これについてはいろんな意味での合意プロセスが進んでいるところなので、ある意味先取りする形で陸側遮水壁の議論をしていますが、陸側遮水壁がうまくいったらはじめましょう、という議論をしているわけでは決してありません。まず大前提は海側遮水壁の閉止と地下水ドレン、サブドレンの運用、これを前提としない議論は1分たりともしたことはありませんので。・・・」
「大前提は海側遮水壁の閉止と地下水ドレン、サブドレンの運用」という表現がわずか1分程度の話の中に3回も出てきている事でいかに更田委員がこの事を強調したいか、がわかると思います。
ただ、有識者委員の中でも福島県の高坂さんや、福島大学の渡辺教授などは、陸側遮水壁を早く閉合すべき、という意見のようです。また、東電も表向きは規制委員会のいうことに従っていますが、本心はそうでないことは今回の高坂さんの質問に対する答を見れば明白です。先の高坂さんの質問も、東電を擁護するような形で陸側遮水壁を進められないのか、と質問をしたためにかえって東電とともに基本はこうだと決めたんだぞ、と更田委員にクギを刺されてしまっています。
2. TSOKDBAの意見
このように、基本シナリオとしてはサブドレンの運用と海側遮水壁の閉合が大前提であり、そのあとではじめて陸側遮水壁を運用する、というのが規制委員会=規制庁のスタンスです。規制側としてはここは譲れない、といわれてしまったらこの方針はとても変えることができないため、予定通りに今年度中に凍結を行いたい東電やエネ庁側としては、試験凍結でもいいから少しでも凍結を進めていって、なし崩し的に凍結する部位を増やしていくという戦法に切り替えざるを得ませんでした。
ところが、今回は詳細は記載しませんが、予定通りに凍結が起こらないといった現象や凍結した周辺の地下水位が予想外に下がったという現象が起こっています。そのため、試験凍結も思った通りに進んでいない、というのが第36回監視評価検討会で明らかになった事です。次回の検討会でどこまで試験凍結が進むのか、現段階では見えていません。
ここでこの問題に対する私のスタンスを書いておきたいと思います。
私の個人的な意見としては、汚染水を減らすという意味では、震災前は毎日850トンも汲み上げることができていたサブドレンをいかに有効に活用するか、ということが重要であり、(今回も冒頭にグラフで示したように)今も汚染水が海に流出し続けている現状をいち早く止めることが大事なので、まずは海側遮水壁を閉合すべき、という現在の規制委員会の方針に賛成です。
そうなると当然サブドレンの浄化水を海に放出することがいいのか、という話になりますが、今回も冒頭でご紹介したように、現在も地下水から毎日10億ベクレル以上の放射性物質が流出しているのであれば、それと比べればはるかにきれいになっている浄化水を海(といっても港湾内でしょうが)に出すことは問題ないと思います。
むしろ、2月にもK排水路からの流出で問題となった時に「「K排水路から汚染水が海洋流出」報道からわかる、排水路の港湾内への付け替えの意味」で書きましたが、港湾内に流したら問題がなく、海に直接流出したら大問題だ、みたいな報道の仕方をする事は現実を直視していません。このように東電のレトリックに簡単にだまされる(あるいはだまされたふりをする)報道の姿勢に問題があり、現在も大量の放射性物質が港湾内を通じて海に流出していることをしっかりと報道していくべきと思います。
その現実を漁業者が知ったら、サブドレンの浄化水を海に放出することに対する理解というのはもっと深まるはずです。港湾内に流せば現在のマスコミの理屈では海に放出しないので問題ないことになるはずです。東電は漁連に対しても現状がどれだけ環境が汚染されているのか、説明をしっかりとしていないのではないでしょうか。おそらくその説明をしないのには理由があると思います。
以下は単なる私の推論ですが、おそらく東電は陸側遮水壁をなんとしても早く実施したいのです。そのためには、サブドレン問題はすぐに解決しない方が良いに決まっています。それが簡単に解決してしまったら、サブドレンを運用して海側遮水壁の閉止して、という規制委員会の方針通りに進みます。ただ、そうなるとその後に行う陸側遮水壁の閉合と運用にかなり時間がかかる可能性があります。なんせ廃炉作業でこれまで計画通りにいった作業などほとんどないのですから、予想外のトラブルが起きて陸側遮水壁の運用開始までに時間がかかるかもしれません。
それよりも、サブドレンの問題がなかなか解決しないので、いつまでもタンクに水を溜め続けているわけにはいかない、と規制委員会にプレッシャーをかけて、だったら先に陸側遮水壁を運用しましょう、という世論を形成する方が近道だと考えていたのではないでしょうか。
私は当初、更田委員は今年の9月で原子力規制委員の3年の任期を迎えますので、更田委員が交代するのを待って東電が陸側遮水壁の議論を進めようとしているのかと思っていましたが、今年の5月の国会において更田委員が再任されるということが同意されました。ということは更田委員は今後も5年間は規制委員会の委員として活躍していくわけで、そうなるとこの規制委員会の方針はそう簡単に変わるものではありません。
そのため、今回は東電としてもこれまでの抵抗を少し和らげ、サブドレンに対する理解を進めて早く海側遮水壁の運用ができるようにしよう、と陰で方針転換をしたのではないか、と想像しています。
以上は全く根拠がない単なる私の推論ですが、5月に国会での人事が同意されたあとの6月下旬になって漁協との話が急に進み出すかに見えてきたのも、辻褄は一応合います。更田委員がもともと再任予定だったのかどうかが私にはわからないのですが、陸側遮水壁の議論においては大きな障壁になっていたことは間違いないと思います。
陸側遮水壁の議論を進めていくことも大事だとは思いますが、これまでの廃炉処理工程において、汚染水関係の処理はことごとく計画通りに行っていないのが実態です。ですから、あれだけ複雑な水位管理を求められる凍土遮水壁を本当にうまく運用できるとは思いません。規制委員会が懸念するように、建屋から汚染水が漏れ出して凍土壁全体でガードしないといけない、といった状況になってしまう恐れが高いと思います。ですから、まずは実績のあるサブドレンと海側遮水壁と地下水ドレンで様子を見て、それでも足りないようであれば凍土壁を実行する位のスタンスでいいのではないか、というのが私の考え方です。
いずれにせよ現状としては、規制委員会が頑として譲らない基本シナリオを実行すべく、サブドレンの浄化水の放出を認めてもらえるように漁協への説得を続けて、それでうまくいけば基本シナリオを実行し、その後速やかに陸側遮水壁の凍結ができるようにする。一方で漁協の説得の間にも陸側遮水壁の試験凍結の範囲を少しずつ広げていき、もしどうしても漁協への説得がうまくいかなければ、陸側遮水壁の凍結を先にやろう、という議論に変更するためのチャンスを虎視眈々と狙っているのが東電とエネ庁の戦略なのだと思います。次回の監視評価検討会においてどのような議論になるのか、興味があります。
今回はタイトルにあるようなどちらが先か、という議論について表面上の決着がついたけれども内実はそうではないことを中心に書きました。次回はもう少し試験凍結の状況などについてまとめたいと思います。
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