トリチウム水の放出について ALPS処理水のデータが公表されました
2018年10月13日
8月末に、公聴会を前に「トリチウム水の放出について」ということで書きました。その時には全く公表されていなかったデータが9月末に公表されました。また、10月1日には経産省で多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会(第10回)も開催されました。
9月28日の毎日新聞の記事「海洋放出、前提危うく 再処理コスト増も」を一部引用します。
「東京電力は福島第1原発の汚染水浄化後の処理水について、敷地内のタンクで保管する約89万トンのうち約8割の約75万トンで、トリチウム(三重水素)以外の放射性物質の濃度が国の排水基準値を上回っていたことを明らかにした。東電は処理水の再浄化を検討しているが、予定外の設備の新設や増設などが必要になり、廃炉コストも増大する可能性がある。【鈴木理之】」(毎日新聞より)
「しかし今回の東電の発表によると、処理水計約94万トン(20日現在)のうち約89万トンを分析した結果、トリチウム以外で排水基準値を下回るのは約14万トンで、約75万トンは超過すると推定される。基準値超えの中には半減期が約30年と長く、体内に入ると骨に蓄積しやすいストロンチウム90も含まれており、サンプル分析では最大で基準値の約2万倍の1リットル当たり約60万ベクレルが検出された。
基準値超えの原因として東電は、ALPSの不具合や、放射性物質を浄化する吸着材の交換時期が遅れたことなどを挙げた。」(同じく毎日新聞より)
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8月末に、公聴会を前に「トリチウム水の放出について」ということで書きました。その時には全く公表されていなかったデータが9月末に公表されました。また、10月1日には経産省で多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会(第10回)も開催されました。
9月28日の毎日新聞の記事「海洋放出、前提危うく 再処理コスト増も」を一部引用します。
「東京電力は福島第1原発の汚染水浄化後の処理水について、敷地内のタンクで保管する約89万トンのうち約8割の約75万トンで、トリチウム(三重水素)以外の放射性物質の濃度が国の排水基準値を上回っていたことを明らかにした。東電は処理水の再浄化を検討しているが、予定外の設備の新設や増設などが必要になり、廃炉コストも増大する可能性がある。【鈴木理之】」(毎日新聞より)
「しかし今回の東電の発表によると、処理水計約94万トン(20日現在)のうち約89万トンを分析した結果、トリチウム以外で排水基準値を下回るのは約14万トンで、約75万トンは超過すると推定される。基準値超えの中には半減期が約30年と長く、体内に入ると骨に蓄積しやすいストロンチウム90も含まれており、サンプル分析では最大で基準値の約2万倍の1リットル当たり約60万ベクレルが検出された。
基準値超えの原因として東電は、ALPSの不具合や、放射性物質を浄化する吸着材の交換時期が遅れたことなどを挙げた。」(同じく毎日新聞より)
詳細な情報は、東電のHPから探すのは大変だったのですが、経産省のHPに公表されている「多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会(第10回)‐配布資料」のページにあることがわかりました。
前回書いた「トリチウム水の放出について」でも、Ru-106がND(検出限界以下)ではないことがわかっていましたが、全部で89万トンもある多くのタンクの中には、その時のALPSの調子が悪くて予定されている性能を発揮せず、その結果としてSr-90やI-129などがかなり多く含まれていたことがわかります。
ALPSの運用は2013年から始まっています。また、既設ALPS、増設ALPS、高性能ALPSの3種類を運用してきており、それぞれの結果は年度ごとに異なっています。それについては、10月1日に開催された多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会(第10回)の資料で、下のグラフがわかりやすいと思いますので引用します。

(「資料3 多核種除去設備等処理水の性状について※9月28日23時更新(PDF形式:1,690KB)」 20ページより)
上のグラフは、多くのタンクからサンプリングし、年度ごとに告示濃度を上回っている核種がどれくらいあるかを示したものです。H-3(トリチウム)は除去できないのでここではグラフに出てきていません。それ以外の核種について、Sr-90やI-129が、特に2014年度から2015年度において告示濃度を上回っていたケースがかなりあったことがわかります。
一方で、2016年度は東電の資料ではフェーズ2と書いてありますが、増設ALPSも稼働して処理能力が向上したため、ごく一部でI-129が告示濃度を上回っていますが、それ以外は告示濃度以下に収まっています。しかし、フェーズ3とした2017年度以降は、フランジタンクの水を早く処理したいので稼働率を上げたためと書いてありますが、その結果は2016年度よりも少し悪くなっています。
ともかく、はっきりしたことは、8月末に公聴会を行いましたが、その前提となる「62核種のうちトリチウム以外の核種は十分に(できれば検出限界以下に)除去できている」はず、という期待は見事に裏切られたということです。予想通りともいえましたが、公聴会の開催前に提出すべきものであったとはいえ今回はともかく詳細な資料が出てきたことだけは評価したいと思います。
東電は、下記のように告示濃度を超えてしまった75万トンについても告示濃度以下になるように二次処理を行うことで対応したいと言っていますが、これは公聴会が行われる前に対応しておくべきことだったと思います。

(「資料3 多核種除去設備等処理水の性状について※9月28日23時更新(PDF形式:1,690KB)」 25ページより)
詳細はぜひご自分で下記の資料をご確認いただきたいと思います。
資料3 多核種除去設備等処理水の性状について※9月28日23時更新(PDF形式:1,690KB)
参考資料1 ALPS処理水データ集(出口濃度推移)※9月28日23時更新(PDF形式:1,880KB)
参考資料2 ALPS処理水データ集(62核種評価結果)(PDF形式:1,260KB)
参考資料3 ALPS処理水データ集(タンク群毎)(PDF形式:749KB)
それでは、また何か大きな動きがありましたらまとめることがあるかもしれません。期待せずにお待ちください。
前回書いた「トリチウム水の放出について」でも、Ru-106がND(検出限界以下)ではないことがわかっていましたが、全部で89万トンもある多くのタンクの中には、その時のALPSの調子が悪くて予定されている性能を発揮せず、その結果としてSr-90やI-129などがかなり多く含まれていたことがわかります。
ALPSの運用は2013年から始まっています。また、既設ALPS、増設ALPS、高性能ALPSの3種類を運用してきており、それぞれの結果は年度ごとに異なっています。それについては、10月1日に開催された多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会(第10回)の資料で、下のグラフがわかりやすいと思いますので引用します。

(「資料3 多核種除去設備等処理水の性状について※9月28日23時更新(PDF形式:1,690KB)」 20ページより)
上のグラフは、多くのタンクからサンプリングし、年度ごとに告示濃度を上回っている核種がどれくらいあるかを示したものです。H-3(トリチウム)は除去できないのでここではグラフに出てきていません。それ以外の核種について、Sr-90やI-129が、特に2014年度から2015年度において告示濃度を上回っていたケースがかなりあったことがわかります。
一方で、2016年度は東電の資料ではフェーズ2と書いてありますが、増設ALPSも稼働して処理能力が向上したため、ごく一部でI-129が告示濃度を上回っていますが、それ以外は告示濃度以下に収まっています。しかし、フェーズ3とした2017年度以降は、フランジタンクの水を早く処理したいので稼働率を上げたためと書いてありますが、その結果は2016年度よりも少し悪くなっています。
ともかく、はっきりしたことは、8月末に公聴会を行いましたが、その前提となる「62核種のうちトリチウム以外の核種は十分に(できれば検出限界以下に)除去できている」はず、という期待は見事に裏切られたということです。予想通りともいえましたが、公聴会の開催前に提出すべきものであったとはいえ今回はともかく詳細な資料が出てきたことだけは評価したいと思います。
東電は、下記のように告示濃度を超えてしまった75万トンについても告示濃度以下になるように二次処理を行うことで対応したいと言っていますが、これは公聴会が行われる前に対応しておくべきことだったと思います。

(「資料3 多核種除去設備等処理水の性状について※9月28日23時更新(PDF形式:1,690KB)」 25ページより)
詳細はぜひご自分で下記の資料をご確認いただきたいと思います。
資料3 多核種除去設備等処理水の性状について※9月28日23時更新(PDF形式:1,690KB)
参考資料1 ALPS処理水データ集(出口濃度推移)※9月28日23時更新(PDF形式:1,880KB)
参考資料2 ALPS処理水データ集(62核種評価結果)(PDF形式:1,260KB)
参考資料3 ALPS処理水データ集(タンク群毎)(PDF形式:749KB)
それでは、また何か大きな動きがありましたらまとめることがあるかもしれません。期待せずにお待ちください。
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